さよなら言えてたらよかったのかな #夢小説 #ヒロアカ #百合夢
恋人のいる世界を守って死ぬ、ドラマの見過ぎなんじゃないの?
実際そんなことが自分の身に起きてしまうと、とたんに現実になる。折り合いがつけられない愛する人の死という現実が迫ってくる。
そこから目を逸らすために、私はキャシーの死に意味を持たせる。たとえキャシーがそんなこと望んでいなくても想定していなくても、生き残ってしまった私のために私はキャシーは、私のために世界を守って死んだのだと思い込む。思い込みたい。まさか私以外の誰かのために、キャシーが私からキャシーを奪って行ったなんて思いたくない。
でも、知ってるんだよね。
キャシーがヒーローになったきっかけのお師匠さんのために自分の立場も全部振り切って行っちゃったってこと。
私とキャシーの恋や愛の定義が違いすぎて、私の中に煮え切らない気持ちがあること。
死ぬつもりなんてなかったと思うけど、生きて帰れる保証もなかった。
それでも、キャシーは困ってる人がいる・怖がっている人がいると縁もゆかりも、キャシーが助けに行ってくれたことも認識してないようなやつらが大多数である国に行って、帰ってこなかった。私はキャシーの献身に似た陶酔を理解できなかった。キャシーも、私の……キャシーだけ無事でいてくれればいいという願いを理解できなかった。それを恋というラッピングに包んで二人で眺めていただけ。
キャシーがくれたアメが溶けて再度形づくってを繰り返すのを、私は一人で過ごさないといけないのかな。キャシーは、私がこんな気持ちになること想像してたかな。畳む
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夢とカプが混在しています/#夢小説 タグと#カップリング タグをつけていますので、よきに計らっていただけますと幸いです
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みやこ 成人/神奈川への望郷の念が強い
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タグ「ヒロアカ」を含む投稿[32件]
お題:闇、ハロウィン #カップリング #ヒロアカ #荼炎 #燈炎
お題:闇、ハロウィン #カップリング #ヒロアカ #荼炎 #燈炎
光の当たる場所にいたことは、闇を渡り歩くようになってからわかる。
誰にも、特にお父さんには言えなかったけど実は暗い場所は見るのも居るのも怖かったけど、今はそんなこと言ってられなくなった。焼けこげてつぎ当てた皮膚の色がどんどん沈着しているのと、皮膚だけでなく筋肉にまで食い込んでいる縫い跡があんまりにもバケモノで陽が落ちてから、夜の深い闇に紛れる以外の選択肢がなくなった。且つ、深くフードを被ってマスクをする怪しい風貌でも干渉されない環境といえば人間の個体数の母数が多い都会になる。
そんな俺がそこでしか生きられない時間・場所であるにもかかわらずハロウィンという祭で一儲けしようとした層のせいで静かな散歩すらできなくなってしまう。
「あ! オニーサァン笑 どしたんすかそんな俯いちゃってさ〜!!今日ハロウィンすよ!盛り上がっていかなきゃ損ですよぉ〜!!」
なんていう輩に絡まれてしまう。普段人通りなんて皆無である道を選んでも、だ。ここで消し炭にしてやることも時間をかけてじっくり殺してやることもできる。けどなんか気分が乗らないのはヤツのハロウィンコスがエンデヴァーだったからだ。
「お前、エンデヴァーのファンなの」
「いやショージキファンではないかな! 俺の体格に合ってるヒロコスの中でドンキで投げ売りになってるのがコレだったってわけ」
「ふーん…… エンデヴァーっていいところないかな」
「無いわけじゃないとは思うけど……俺には見えてこないかな〜……ってか、オニーサンエンデヴァーのファン?! 同担拒否? オニーサンもエンデヴァーコス買ったら?!」
「ファン……ファンってか、まぁ複雑な気持ち」
「そうなんだ〜 までも、俺が見た時まだ全然在庫あったよ!」
「そうなんだ。ありがと」
「いいってことよ!じゃね♡」
騒々しい男はぬるくなった缶ビールを押し付けて去っていった。初めて飲むビールは成人式のあとお父さんとって決めてたけどもう叶わないだろうからまぁいいかと思いプルタブをあげておろした。
苦くて、つまんない味だった。胃のあたたかさや思考を奪う酩酊感もなにも楽しくない。
昔お母さんにお願いしてお父さんのヒーロースーツを模した服を作ってもらったのを思い出した。本当にうれしくて、どこに行くにも着て行ったのを思い出して虚しさと怒りと、それと何か言語化しにくい気持ちが湧いてきた。オールマイトのは腐るほど売られてたけどまぁ、お父さんは一般ウケしなかったらしくて売ってなかった。だから特別だったんだけどあんなにわかが着てるくらい陳腐なものになってしまったとわかって心から苛立った。
とはいえ、父さんはヒロコスが売られるほど人気が出てきたみたいで、背筋がむずむずする。この積み上げた信頼、浮ついた人気、お父さんの考える正しさをめちゃくちゃにできるのかと思うと胸が躍った。踊るっていうか、胸がぽかぽかするっていうか。好きな子のとまどう顔が見たいってのもまた愛だよな。
出かけた時とは打って変わって機嫌良く帰宅(ってもダンボール敷いた公園だけど)した。
「お! ケンちゃん。今日はなんかご機嫌だな」
「うん。いいことあってさ」
「よかったなぁ。でも今日は気をつけてな。羽目を外した若いやつらに殺される路上生活のやつらは片手で足りないくらいいるからな」
「わかった。ありがと」
こんな満たされた気持ちになったのはいつぶりだろう。そして、また次にこんな気持ちになれるのはいつだろう。いつものようにスマホで登録者が全然いないお父さんのYouTubeチャンネルを視聴する。今日も悪いヤツをやっつけたんだって。お父さんの考える、悪いヤツを。
お父さんは、お父さん的には悪いヤツじゃないらしい。そこが面白くて俺は画面の向こうのお父さんから目を離せない。お父さんの考える正しさって何。それを聞く前に俺は捨てられてしまったから、今度ちゃんと話す機会があるなら聞いてみたいな。畳む
光の当たる場所にいたことは、闇を渡り歩くようになってからわかる。
誰にも、特にお父さんには言えなかったけど実は暗い場所は見るのも居るのも怖かったけど、今はそんなこと言ってられなくなった。焼けこげてつぎ当てた皮膚の色がどんどん沈着しているのと、皮膚だけでなく筋肉にまで食い込んでいる縫い跡があんまりにもバケモノで陽が落ちてから、夜の深い闇に紛れる以外の選択肢がなくなった。且つ、深くフードを被ってマスクをする怪しい風貌でも干渉されない環境といえば人間の個体数の母数が多い都会になる。
そんな俺がそこでしか生きられない時間・場所であるにもかかわらずハロウィンという祭で一儲けしようとした層のせいで静かな散歩すらできなくなってしまう。
「あ! オニーサァン笑 どしたんすかそんな俯いちゃってさ〜!!今日ハロウィンすよ!盛り上がっていかなきゃ損ですよぉ〜!!」
なんていう輩に絡まれてしまう。普段人通りなんて皆無である道を選んでも、だ。ここで消し炭にしてやることも時間をかけてじっくり殺してやることもできる。けどなんか気分が乗らないのはヤツのハロウィンコスがエンデヴァーだったからだ。
「お前、エンデヴァーのファンなの」
「いやショージキファンではないかな! 俺の体格に合ってるヒロコスの中でドンキで投げ売りになってるのがコレだったってわけ」
「ふーん…… エンデヴァーっていいところないかな」
「無いわけじゃないとは思うけど……俺には見えてこないかな〜……ってか、オニーサンエンデヴァーのファン?! 同担拒否? オニーサンもエンデヴァーコス買ったら?!」
「ファン……ファンってか、まぁ複雑な気持ち」
「そうなんだ〜 までも、俺が見た時まだ全然在庫あったよ!」
「そうなんだ。ありがと」
「いいってことよ!じゃね♡」
騒々しい男はぬるくなった缶ビールを押し付けて去っていった。初めて飲むビールは成人式のあとお父さんとって決めてたけどもう叶わないだろうからまぁいいかと思いプルタブをあげておろした。
苦くて、つまんない味だった。胃のあたたかさや思考を奪う酩酊感もなにも楽しくない。
昔お母さんにお願いしてお父さんのヒーロースーツを模した服を作ってもらったのを思い出した。本当にうれしくて、どこに行くにも着て行ったのを思い出して虚しさと怒りと、それと何か言語化しにくい気持ちが湧いてきた。オールマイトのは腐るほど売られてたけどまぁ、お父さんは一般ウケしなかったらしくて売ってなかった。だから特別だったんだけどあんなにわかが着てるくらい陳腐なものになってしまったとわかって心から苛立った。
とはいえ、父さんはヒロコスが売られるほど人気が出てきたみたいで、背筋がむずむずする。この積み上げた信頼、浮ついた人気、お父さんの考える正しさをめちゃくちゃにできるのかと思うと胸が躍った。踊るっていうか、胸がぽかぽかするっていうか。好きな子のとまどう顔が見たいってのもまた愛だよな。
出かけた時とは打って変わって機嫌良く帰宅(ってもダンボール敷いた公園だけど)した。
「お! ケンちゃん。今日はなんかご機嫌だな」
「うん。いいことあってさ」
「よかったなぁ。でも今日は気をつけてな。羽目を外した若いやつらに殺される路上生活のやつらは片手で足りないくらいいるからな」
「わかった。ありがと」
こんな満たされた気持ちになったのはいつぶりだろう。そして、また次にこんな気持ちになれるのはいつだろう。いつものようにスマホで登録者が全然いないお父さんのYouTubeチャンネルを視聴する。今日も悪いヤツをやっつけたんだって。お父さんの考える、悪いヤツを。
お父さんは、お父さん的には悪いヤツじゃないらしい。そこが面白くて俺は画面の向こうのお父さんから目を離せない。お父さんの考える正しさって何。それを聞く前に俺は捨てられてしまったから、今度ちゃんと話す機会があるなら聞いてみたいな。畳む
お題:星月夜 #ヒロアカ #カップリング #荼炎 #燈炎
お題:星月夜 #ヒロアカ #カップリング #荼炎 #燈炎
瀬古渡で泣いてた俺も、こんな夜空を見ていたっけな。
いや、夜空なんか見る余裕もなくってお父さんが来てくれるのを待ってた。いまこうしてしみじみと星を眺めていられるのは、俺が何者がみんなに知ってもらえたからだと思う。
すごく晴れ晴れとした気分だ。
秘密を一人で抱えるのは本当に辛かった。生きていくことが辛すぎてお父さんの提示した人生を生きることが頭によぎったのは一度や二度じゃない。
けどそのたび、望んだ性能を持った新しいオモチャで遊ぶお父さんを見て、そして俺の仏壇に手を合わせたときにやっと決意が固まった。
お父さん、震えてた。
ショックだったのかな。自分が厳格に守ってきた正しさに反している息子がいて。
あの時、俺が生きていると分かった時焦凍のことも何もかも忘れて「燈矢、生きていたのか!心配してたんだぞ」の一言や、駆け寄って抱きしめるとかそういうのがあったらここまで拗れてないかもしれないけど、お父さんは目を見開いて震えてるだけだった。俺が炎をけしかけても、焦凍が必死に呼びかけても。
今ごろお父さんどうしてるかな。お父さんの病院で治療を受けてるみたいだけど、アンチが病院まで押しかけて大変そう。病室から俺が見てるのと同じ月を見てるんだろうか。
ここまで長かったぶん、暴露してしまってからの時間が充実しすぎていてたまらず笑顔になる。顔の筋肉がひきつれて痛いけど、やっとここまで来れたと思ったら笑いが止まらなかった
。
俺のこと考えてるかな。なんて言おうとか、そういうの。次会った時、なんで言うかな。俺のこと、なんて呼ぶのかな。
瀬古渡で泣いてた俺も、こんな夜空を見ていたっけな。
いや、夜空なんか見る余裕もなくってお父さんが来てくれるのを待ってた。いまこうしてしみじみと星を眺めていられるのは、俺が何者がみんなに知ってもらえたからだと思う。
すごく晴れ晴れとした気分だ。
秘密を一人で抱えるのは本当に辛かった。生きていくことが辛すぎてお父さんの提示した人生を生きることが頭によぎったのは一度や二度じゃない。
けどそのたび、望んだ性能を持った新しいオモチャで遊ぶお父さんを見て、そして俺の仏壇に手を合わせたときにやっと決意が固まった。
お父さん、震えてた。
ショックだったのかな。自分が厳格に守ってきた正しさに反している息子がいて。
あの時、俺が生きていると分かった時焦凍のことも何もかも忘れて「燈矢、生きていたのか!心配してたんだぞ」の一言や、駆け寄って抱きしめるとかそういうのがあったらここまで拗れてないかもしれないけど、お父さんは目を見開いて震えてるだけだった。俺が炎をけしかけても、焦凍が必死に呼びかけても。
今ごろお父さんどうしてるかな。お父さんの病院で治療を受けてるみたいだけど、アンチが病院まで押しかけて大変そう。病室から俺が見てるのと同じ月を見てるんだろうか。
ここまで長かったぶん、暴露してしまってからの時間が充実しすぎていてたまらず笑顔になる。顔の筋肉がひきつれて痛いけど、やっとここまで来れたと思ったら笑いが止まらなかった
。
俺のこと考えてるかな。なんて言おうとか、そういうの。次会った時、なんで言うかな。俺のこと、なんて呼ぶのかな。
お題:もしも #カップリング #ヒロアカ #荼炎 #燈炎
お題:もしも #カップリング #ヒロアカ #荼炎 #燈炎
もしも、もしも俺がお父さんの個性だけを受け継いでお父さんを超える炎を出し続けてもなんの支障もないからだに生まれていたら、どんな人生を送っただろう。
高校なんか行かなくてもお父さんの右腕として活躍していたかもしれない。
でもお父さんは高校は行った方がいいと、俺に興味を持っているから進路に口を出してきたかもしれない。俺は仕方ないなぁなんて言って、雄英でアオハルしたりできたのかもしれない。
仲間と切磋琢磨して、お父さんの過保護を嘆いてみせたりして、自分の才能に酔いしれるタイミングがあるかもしれない。
ああ、俺は俺に生まれて良かったと、心から思えたかもしれない。
……そんな夢を見た日は本当に気分が悪い。心からそうであって欲しかった未来が決して手に入らないものであると何度でも思い知らないといけなくなる。そんな自分が可哀想で、ダサくて。
もしも、なんて夢想は俺が叶えない限り現実にはならないんだよ。努力しないと、夢は現実にならないんだよ。……努力したって、叶わないことだってあるんだよ。生まれつきのことは、努力したって満足いかない結果になることの方が多い。そんなの俺が一番わかっているし、そのために俺が今できることを頑張っているのに俺の深層心理はそう思ってなくて、何の努力もしないでこう在れたら、と俺の脳に映し出す。残酷すぎて涙が出そうだ。
ひとしきり毒づいたら、顔を洗って歩き出す。俺は、俺のやり方でお父さんに俺を認めさせる。夢見る乙女なんてやらねぇ。夢は見るけど、俺が俺の手で叶える。
なんだか少年漫画の主人公みたいだ。友情努力勝利。友情は無ぇけど、努力と勝利はあるだろ。
そんな鮮烈な復讐心を、いまだに思い出す。
焼け爛れた身体を懸命に世話をするかつて俺がこうありたいと心から願った人。こうありたかったからこそ、もう何もできない俺の世話を焼くみたいなつまんねぇことやって欲しくなかった。本当に本当に、この人生は……言葉にならない虚しさに襲われる。
もし、願いが叶うなら……戦いの中で死にたかった。たぶんあのまま家族を皆殺しにしてしまっていたら後悔しただろうけど、なんの価値もなくみじめったらしく排泄物を垂れ流すより全然ましだ。巨悪は去り、ハッピーエンドみたいな空気になってるのを見るのも嫌だ。
もし、願いが、今からでも、叶うなら……
すべてやり直して、俺が俺のやり方でヒーローに……
それは無理か。俺はフツウに生きるしか道が用意されてなくて、俺はそう生きたいわけじゃなかったんだから。お父さんがあの時来てくれていたなら、まだ何か変わったかな。
いや、そのもしもは叶わない。お父さんは、俺のところになんか来ない。行けなくて、じゃなくて行かなくて、なんだから。俺のお願いなんてとっくに聞いてもらえなかったんだよ。お父さんにとって、価値がなかったから。
わかっているはずなのに、あまりにひどいやつを好きになってしまって苦しくて笑いが止まらない。お父さんは能天気に「燈矢、うれしいことがあったのか?」なんてニコニコしてるし。もう個性もないから何もできないけど、バカバカしくって逆に面白い。ひどいやつ。大嫌い。大嫌い。大嫌い。
もしも、もしも俺がお父さんの個性だけを受け継いでお父さんを超える炎を出し続けてもなんの支障もないからだに生まれていたら、どんな人生を送っただろう。
高校なんか行かなくてもお父さんの右腕として活躍していたかもしれない。
でもお父さんは高校は行った方がいいと、俺に興味を持っているから進路に口を出してきたかもしれない。俺は仕方ないなぁなんて言って、雄英でアオハルしたりできたのかもしれない。
仲間と切磋琢磨して、お父さんの過保護を嘆いてみせたりして、自分の才能に酔いしれるタイミングがあるかもしれない。
ああ、俺は俺に生まれて良かったと、心から思えたかもしれない。
……そんな夢を見た日は本当に気分が悪い。心からそうであって欲しかった未来が決して手に入らないものであると何度でも思い知らないといけなくなる。そんな自分が可哀想で、ダサくて。
もしも、なんて夢想は俺が叶えない限り現実にはならないんだよ。努力しないと、夢は現実にならないんだよ。……努力したって、叶わないことだってあるんだよ。生まれつきのことは、努力したって満足いかない結果になることの方が多い。そんなの俺が一番わかっているし、そのために俺が今できることを頑張っているのに俺の深層心理はそう思ってなくて、何の努力もしないでこう在れたら、と俺の脳に映し出す。残酷すぎて涙が出そうだ。
ひとしきり毒づいたら、顔を洗って歩き出す。俺は、俺のやり方でお父さんに俺を認めさせる。夢見る乙女なんてやらねぇ。夢は見るけど、俺が俺の手で叶える。
なんだか少年漫画の主人公みたいだ。友情努力勝利。友情は無ぇけど、努力と勝利はあるだろ。
そんな鮮烈な復讐心を、いまだに思い出す。
焼け爛れた身体を懸命に世話をするかつて俺がこうありたいと心から願った人。こうありたかったからこそ、もう何もできない俺の世話を焼くみたいなつまんねぇことやって欲しくなかった。本当に本当に、この人生は……言葉にならない虚しさに襲われる。
もし、願いが叶うなら……戦いの中で死にたかった。たぶんあのまま家族を皆殺しにしてしまっていたら後悔しただろうけど、なんの価値もなくみじめったらしく排泄物を垂れ流すより全然ましだ。巨悪は去り、ハッピーエンドみたいな空気になってるのを見るのも嫌だ。
もし、願いが、今からでも、叶うなら……
すべてやり直して、俺が俺のやり方でヒーローに……
それは無理か。俺はフツウに生きるしか道が用意されてなくて、俺はそう生きたいわけじゃなかったんだから。お父さんがあの時来てくれていたなら、まだ何か変わったかな。
いや、そのもしもは叶わない。お父さんは、俺のところになんか来ない。行けなくて、じゃなくて行かなくて、なんだから。俺のお願いなんてとっくに聞いてもらえなかったんだよ。お父さんにとって、価値がなかったから。
わかっているはずなのに、あまりにひどいやつを好きになってしまって苦しくて笑いが止まらない。お父さんは能天気に「燈矢、うれしいことがあったのか?」なんてニコニコしてるし。もう個性もないから何もできないけど、バカバカしくって逆に面白い。ひどいやつ。大嫌い。大嫌い。大嫌い。
俺はな〜んも、わるくない!③ #ヒロアカ #モブ焦
俺はな〜んも、わるくない!③ #ヒロアカ #モブ焦
【下記の注意書きを必ずお読みください】
この作品はフィクション(現実ではない、ウソの物語)/現実では絶対やっちゃダメです🔞
⚠️未成年の性的搾取 ⚠️同意のない性行為
なぜ私が罪に問われているのでしょう?
私は、両親に愛されて育ちました。
世界で素晴らしい生き物として尊重され、大切にされて育ちました。その証として、神様しかできないことがたくさんできました。
一時間くらいでしたら、対象の時を止めることができます。複数人を止めるのは流石にできませんが、一人くらいでしたらどうってことありません。
やがて私は、私の力を、私の存在を崇める人々のことを教え導くことになりました。当然ですね。私以外の人間は、とても愚かで、救いのない世界を生きなければなりませんので、私が助けてやらないとなりません。
それなのに、あの、轟焦凍ときたら。
父親に虐げられて、母親にも虐げられた可哀想なやつだと思って救いの手を差し伸べたら、生意気にも私に救いの力がないと言ったのです。恵まれないお前のために私が助けてあげると言ったのに、それを無碍にしたのです。
それから先のことは、あまりよく覚えていないのです。
そう、きっと個性が暴走したのでしょう。気づいたらそこにいた信者たちも、そして轟焦凍の時も止まっていました。
私は、どうにかして轟焦凍を救おうと思い、性交をしようと考えました。
私は何度もその方法で信者たちを救い、子を授かったり、運命が好転した者もいます。だから同じように、救おうと思ったのです。
慣らしもしない尻穴はちっとも気持ち良くありませんでした。え? そんなことは聞いてない? そうですか……何の反応もないまま、私は轟焦凍の尻穴で吐精しました。途端頭がはっきりして、何だかどうでも良くなってしまったのです。私の救いに価値を感じない奴なんてのたれ死んでしまえばいいのです。
だから私は悪くありません。
救いの手を払い除けた轟焦凍が、全て悪いのです。そのくらい分かりますよね? なぜ私がこんな狭くて暗いところに閉じ込められ、あまつさえ手錠なんかかけられないとならないのでしょうか。あなたたち、死後罰を受けますよ。
神に授けられた個性がそれを証明しています。神たる私を虐げて、私が悪いだなんて小さな価値観で測って。愚かなやつ。地獄へ堕ちろ。畳む
【下記の注意書きを必ずお読みください】
この作品はフィクション(現実ではない、ウソの物語)/現実では絶対やっちゃダメです🔞
⚠️未成年の性的搾取 ⚠️同意のない性行為
なぜ私が罪に問われているのでしょう?
私は、両親に愛されて育ちました。
世界で素晴らしい生き物として尊重され、大切にされて育ちました。その証として、神様しかできないことがたくさんできました。
一時間くらいでしたら、対象の時を止めることができます。複数人を止めるのは流石にできませんが、一人くらいでしたらどうってことありません。
やがて私は、私の力を、私の存在を崇める人々のことを教え導くことになりました。当然ですね。私以外の人間は、とても愚かで、救いのない世界を生きなければなりませんので、私が助けてやらないとなりません。
それなのに、あの、轟焦凍ときたら。
父親に虐げられて、母親にも虐げられた可哀想なやつだと思って救いの手を差し伸べたら、生意気にも私に救いの力がないと言ったのです。恵まれないお前のために私が助けてあげると言ったのに、それを無碍にしたのです。
それから先のことは、あまりよく覚えていないのです。
そう、きっと個性が暴走したのでしょう。気づいたらそこにいた信者たちも、そして轟焦凍の時も止まっていました。
私は、どうにかして轟焦凍を救おうと思い、性交をしようと考えました。
私は何度もその方法で信者たちを救い、子を授かったり、運命が好転した者もいます。だから同じように、救おうと思ったのです。
慣らしもしない尻穴はちっとも気持ち良くありませんでした。え? そんなことは聞いてない? そうですか……何の反応もないまま、私は轟焦凍の尻穴で吐精しました。途端頭がはっきりして、何だかどうでも良くなってしまったのです。私の救いに価値を感じない奴なんてのたれ死んでしまえばいいのです。
だから私は悪くありません。
救いの手を払い除けた轟焦凍が、全て悪いのです。そのくらい分かりますよね? なぜ私がこんな狭くて暗いところに閉じ込められ、あまつさえ手錠なんかかけられないとならないのでしょうか。あなたたち、死後罰を受けますよ。
神に授けられた個性がそれを証明しています。神たる私を虐げて、私が悪いだなんて小さな価値観で測って。愚かなやつ。地獄へ堕ちろ。畳む
地獄 #カップリング #ヒロアカ #荼炎 #燈炎
地獄 #カップリング #ヒロアカ #荼炎 #燈炎
死んだ後にも地獄があるなら、これ以上の苦しみが待ち受けてるってことなのか。
俺が想像できる苦しみはすべて受けたと思う。
望んでいた機能を持ち合わせていないがために見捨てられる不安。
持たざるものとして生きなければならないと選択を押し付けられるみじめさ。
そして、文字通り身を焼く苦しみ……お父さんは知ってるのかな。火が燃え移ったことにパニックになって大きく息を吸い込んでしまい……そして、内臓が燃えて……モツにも神経って通ってるんだぜ?
それに助かってからもじくじくと痛む深いやけど……お母さんの個性のおかげでマシなのかもしれないけど、それでも。
環境的に恵まれた幼少期とは違い、泥水を啜り食べ物も満足になく、そして腐った人間に媚びないと今日の寝床すらない、お父さんからは見えない……見ようともしない沈殿物としての生活。ここはみじめとか痛いとか苦しいとかより、怨みが俺を形作ってくれていたから、あんまり大変じゃなかった。いや、大変じゃなかったというより、痛みを感じる器官もあの日瀬古渡で焼けてしまったんだ。
それに、同じく怒りや悲しみ、そして恨みを抱えたやつらと出会えた。
陳腐な結束でまとまってる奴らだったけど、社会のあぶれ者といると少しだけ気が楽になった。大人たちが連綿と作り上げた社会からこぼれ落ちたフツウになれなかったやつらたちといると、もしかして俺が雄英に入っていたらこうやってクラスメイトたちとくだらない話をしたりしたかなと不毛な妄想に浸ったりできた。
友情とか全然感じてなかったはずなのに、つまらない死に方したやつらのことを思い出しては少しだけしんみりとすることもあった。俺にちょっとの人間らしさ、年相応の人間らしさを与えてくれたのは、もう名前も顔も思い出せないあいつらなのかもしれない。
それでも、俺の人生は間違いなく地獄だった。死んだ後もこれ以上の苦しみがあるなんてあまりにも酷じゃないか。まあでも、コロシはコロシだもんな。
どんな地獄だろうな。弱って死を待つだけになったお父さんは罪を償うポーズだけは上手くて甲斐甲斐しく世話焼いてくれてるけど、それをまたお母さんに押し付けて誰かのためのヒーローになる、とか。そんで、俺はお父さんにブチ切れる個性もなくただ弱って死んでいく。マジで最悪。
でも、お父さんはヒーローだけど天国にはいけない。子供と妻をこんなにも苛んだんだから。轟家の中で地獄に行くのは俺とお父さんくらいだろうし、地獄でもいいや。お父さんも地獄でいいよね?まぁ回答権は無いんだけど……
俺とお父さん、誰もいない地獄でもう一回親子をやろう。死んでも、ずっと一緒。かわいくて頑張り屋さんの俺のお誘いを無視したんだからそれくらい、いいだろ?
死んだ後にも地獄があるなら、これ以上の苦しみが待ち受けてるってことなのか。
俺が想像できる苦しみはすべて受けたと思う。
望んでいた機能を持ち合わせていないがために見捨てられる不安。
持たざるものとして生きなければならないと選択を押し付けられるみじめさ。
そして、文字通り身を焼く苦しみ……お父さんは知ってるのかな。火が燃え移ったことにパニックになって大きく息を吸い込んでしまい……そして、内臓が燃えて……モツにも神経って通ってるんだぜ?
それに助かってからもじくじくと痛む深いやけど……お母さんの個性のおかげでマシなのかもしれないけど、それでも。
環境的に恵まれた幼少期とは違い、泥水を啜り食べ物も満足になく、そして腐った人間に媚びないと今日の寝床すらない、お父さんからは見えない……見ようともしない沈殿物としての生活。ここはみじめとか痛いとか苦しいとかより、怨みが俺を形作ってくれていたから、あんまり大変じゃなかった。いや、大変じゃなかったというより、痛みを感じる器官もあの日瀬古渡で焼けてしまったんだ。
それに、同じく怒りや悲しみ、そして恨みを抱えたやつらと出会えた。
陳腐な結束でまとまってる奴らだったけど、社会のあぶれ者といると少しだけ気が楽になった。大人たちが連綿と作り上げた社会からこぼれ落ちたフツウになれなかったやつらたちといると、もしかして俺が雄英に入っていたらこうやってクラスメイトたちとくだらない話をしたりしたかなと不毛な妄想に浸ったりできた。
友情とか全然感じてなかったはずなのに、つまらない死に方したやつらのことを思い出しては少しだけしんみりとすることもあった。俺にちょっとの人間らしさ、年相応の人間らしさを与えてくれたのは、もう名前も顔も思い出せないあいつらなのかもしれない。
それでも、俺の人生は間違いなく地獄だった。死んだ後もこれ以上の苦しみがあるなんてあまりにも酷じゃないか。まあでも、コロシはコロシだもんな。
どんな地獄だろうな。弱って死を待つだけになったお父さんは罪を償うポーズだけは上手くて甲斐甲斐しく世話焼いてくれてるけど、それをまたお母さんに押し付けて誰かのためのヒーローになる、とか。そんで、俺はお父さんにブチ切れる個性もなくただ弱って死んでいく。マジで最悪。
でも、お父さんはヒーローだけど天国にはいけない。子供と妻をこんなにも苛んだんだから。轟家の中で地獄に行くのは俺とお父さんくらいだろうし、地獄でもいいや。お父さんも地獄でいいよね?まぁ回答権は無いんだけど……
俺とお父さん、誰もいない地獄でもう一回親子をやろう。死んでも、ずっと一緒。かわいくて頑張り屋さんの俺のお誘いを無視したんだからそれくらい、いいだろ?
ノーチャンス! #夢小説 #ヒロアカ #飯田天晴
ノーチャンス! #夢小説 #ヒロアカ #飯田天晴
私の個性はエンジンの持久力を上げるための内燃機関。願ってもない個性だと思っていた。
飯田家が個性婚をやっている、というのは誰の目にも明らかだった。けれど飯田家がそれを表明しなかったから誰も言及しなかった。轟家があんなふうになってしまってからも、何も言わずにしれっとヒーロー活動してる。兄のほうはもうヒーローとして使い物にならないし、もしかしたら子供に夢を託したりしちゃうかもって。
だからちょっと期待しちゃった。
私にも、インゲニウムとワンチャンあるかなって。
でもそんなものなかった。飯田家はもうそういうのやめるんだって。こんなカス個性を引いてしまってから生きている価値を飯田家の個性婚に見出してるような私が悪いとでも言いたいのか、インゲニウムのサイドキックたちはあわれなものを見る目で私を見た。
「どうしたの」
「天晴さん」
車椅子に乗った精悍な顔立ちの青年が不思議そうに見上げてくる。
サイドキックの人がかいつまんで天晴さんに私のことを説明すると、明らかに顔が引き攣っているようだった。
それもそうか。自分の種でうまいことやろうとしている女なんかふつうにキモいわ。ヒーローも人間だったってことか。知らなかった。
それなのに天晴さんは、私に言葉を尽くして別の道で生きるように説得してくれた。個性だけが全てじゃないって。
でもそれって、"持っている"側の感覚よね。お金、学歴、美貌なんかと同じで持ってる側はお金じゃないんだよ、とかいけしゃあしゃあと言ってのけるんだ。"持っていない"側の僻みなんか思いもよらない。
そのままの君ていてほしい。
太陽は太陽のままそこに輝くことに意味がある。そのすがたを手が届くなんて思いもしないくらい遠くから眺めて、あんなに綺麗なひとがいるんだから私も、と思わせてほしい。偶像崇拝に近いような感じかな。
私の個性はエンジンの持久力を上げるための内燃機関。願ってもない個性だと思っていた。
飯田家が個性婚をやっている、というのは誰の目にも明らかだった。けれど飯田家がそれを表明しなかったから誰も言及しなかった。轟家があんなふうになってしまってからも、何も言わずにしれっとヒーロー活動してる。兄のほうはもうヒーローとして使い物にならないし、もしかしたら子供に夢を託したりしちゃうかもって。
だからちょっと期待しちゃった。
私にも、インゲニウムとワンチャンあるかなって。
でもそんなものなかった。飯田家はもうそういうのやめるんだって。こんなカス個性を引いてしまってから生きている価値を飯田家の個性婚に見出してるような私が悪いとでも言いたいのか、インゲニウムのサイドキックたちはあわれなものを見る目で私を見た。
「どうしたの」
「天晴さん」
車椅子に乗った精悍な顔立ちの青年が不思議そうに見上げてくる。
サイドキックの人がかいつまんで天晴さんに私のことを説明すると、明らかに顔が引き攣っているようだった。
それもそうか。自分の種でうまいことやろうとしている女なんかふつうにキモいわ。ヒーローも人間だったってことか。知らなかった。
それなのに天晴さんは、私に言葉を尽くして別の道で生きるように説得してくれた。個性だけが全てじゃないって。
でもそれって、"持っている"側の感覚よね。お金、学歴、美貌なんかと同じで持ってる側はお金じゃないんだよ、とかいけしゃあしゃあと言ってのけるんだ。"持っていない"側の僻みなんか思いもよらない。
そのままの君ていてほしい。
太陽は太陽のままそこに輝くことに意味がある。そのすがたを手が届くなんて思いもしないくらい遠くから眺めて、あんなに綺麗なひとがいるんだから私も、と思わせてほしい。偶像崇拝に近いような感じかな。
ワンドロ:ケーキ #レゾ #ヒロアカ #鳥師弟
ワンドロ:ケーキ #レゾ #ヒロアカ #鳥師弟
「ケーキっておいしいよね。俺さ、大人になってから初めて食べたんだけど美味しすぎてびっくりしたよ」
こうやって不遇だった子供時代をさらけだして特段憐れんだり気遣ったりしたりをせず、そうかとだけ言ってくれるこの後輩のことが不思議で仕方がない。
情が薄いというわけではない。むしろ他人のために自分を捧げることができる英雄たりえる精神を持ったひとだ。
「この前の時任さん(ホークス事務所事務員)のお誕生会でチマチマケーキ食べてるなと思っていましたが、そういうことでしたか」
「食べたらなくなるし」
「そりゃ、そうだ」
「くだらなくて、涙が出そうになるくらい大切な時間だったよ。終わっちゃうのすごく寂しかったな〜……」
「感傷的ですね……またやればいいじゃないですか。誕生日は毎年来ますよ」
「ほんと、そうだよねぇ……誕生日を迎えられるように頑張ろうね」
「ホークスか頑張るんで、俺は高みの見物してます」
「ちょっと前までは俺が頑張るんでホークスは休んでてください!って張り切ってたのに」
「ホークスはただぼんやり休んでるより身体動かしてたほうが気がまぎれるタイプかなと思ってのことです。そうですよね?」
「そう。その通り。だから俺あんまり家に帰ってないんだよね。一人で休んでると考えが悪い方向にばっかりいっちゃって」
「だからカプセルホテルでの目撃情報がたくさんあるんですね」
「そう。他人のいびき聞こえる環境が一番ゆっくりできる」
「へー。よくわからないですね。あの生活感のなさ納得です」
「まあ使わないから、物置だよね」
「あの立地を物置に……」
「使いたかったら使ってもいいよ」
「ほんとですか? じゃあ今度みんなでシャトレーゼのケーキ全種類買って食べましょう」
「楽しそう。不二家のもやりたい。猫の形したやつとか」
「いいですね」
あるかどうかもわからない未来の約束をするのは楽しい。そこまで頑張るかって思えるから。叶えられなくてもいい。そっちの方が楽しみだからくだらなくて何にも替えられない約束をする。ささやかな幸せを想像して眠りにつくのも楽しい。消化試合みたいに生きるより、ずっといい。
「ケーキっておいしいよね。俺さ、大人になってから初めて食べたんだけど美味しすぎてびっくりしたよ」
こうやって不遇だった子供時代をさらけだして特段憐れんだり気遣ったりしたりをせず、そうかとだけ言ってくれるこの後輩のことが不思議で仕方がない。
情が薄いというわけではない。むしろ他人のために自分を捧げることができる英雄たりえる精神を持ったひとだ。
「この前の時任さん(ホークス事務所事務員)のお誕生会でチマチマケーキ食べてるなと思っていましたが、そういうことでしたか」
「食べたらなくなるし」
「そりゃ、そうだ」
「くだらなくて、涙が出そうになるくらい大切な時間だったよ。終わっちゃうのすごく寂しかったな〜……」
「感傷的ですね……またやればいいじゃないですか。誕生日は毎年来ますよ」
「ほんと、そうだよねぇ……誕生日を迎えられるように頑張ろうね」
「ホークスか頑張るんで、俺は高みの見物してます」
「ちょっと前までは俺が頑張るんでホークスは休んでてください!って張り切ってたのに」
「ホークスはただぼんやり休んでるより身体動かしてたほうが気がまぎれるタイプかなと思ってのことです。そうですよね?」
「そう。その通り。だから俺あんまり家に帰ってないんだよね。一人で休んでると考えが悪い方向にばっかりいっちゃって」
「だからカプセルホテルでの目撃情報がたくさんあるんですね」
「そう。他人のいびき聞こえる環境が一番ゆっくりできる」
「へー。よくわからないですね。あの生活感のなさ納得です」
「まあ使わないから、物置だよね」
「あの立地を物置に……」
「使いたかったら使ってもいいよ」
「ほんとですか? じゃあ今度みんなでシャトレーゼのケーキ全種類買って食べましょう」
「楽しそう。不二家のもやりたい。猫の形したやつとか」
「いいですね」
あるかどうかもわからない未来の約束をするのは楽しい。そこまで頑張るかって思えるから。叶えられなくてもいい。そっちの方が楽しみだからくだらなくて何にも替えられない約束をする。ささやかな幸せを想像して眠りにつくのも楽しい。消化試合みたいに生きるより、ずっといい。
ワンドロ:絆 #カップリング #ヒロアカ #荼炎 #燈炎
ワンドロ:絆 #カップリング #ヒロアカ #荼炎 #燈炎
俺の仏壇を拝んで、”荼毘”になってから数日くらいはさ……親子の絆が俺とお父さんを結びつけてくれるって思ってたんだよ。
でも実際そんなことはなくて、俺が「初めまして」だなんて言ったらお父さんは気づきもしなかった。絆なんてウソだね。お互いの努力があって関係を維持しようと関わり続ける意思のことを絆って呼んでることを、荼毘になりたての俺に伝えてやりたいよ。かわいそうな俺。もしかしたら殺し続けることでお父さんが俺のこと見つけてくれないかなって期待してたんだぜ。罪が俺たちを結ぶ絆になるかもしれないって。でもそんなことなかった。俺だって生殖にそんな夢見てるような歳じゃないけどさ、もしかしたら血のつながりにはなんかしらの絆が生まれるのかもって。でも全然そんなことなかった! 俺のこと憎らしい人殺しを見る目で見た! 俺ずーっと、お父さんのこと待ってたのに。涙なんか出るなって言ってたら本当に出なくなっちゃうまで焼けてしまったのに。お父さんがあの時来てくれたらこんなことにはなっていなかったのに。お父さんのせいなのに。
あんな目で、俺を見た。
俺の仏壇を拝んで、”荼毘”になってから数日くらいはさ……親子の絆が俺とお父さんを結びつけてくれるって思ってたんだよ。
でも実際そんなことはなくて、俺が「初めまして」だなんて言ったらお父さんは気づきもしなかった。絆なんてウソだね。お互いの努力があって関係を維持しようと関わり続ける意思のことを絆って呼んでることを、荼毘になりたての俺に伝えてやりたいよ。かわいそうな俺。もしかしたら殺し続けることでお父さんが俺のこと見つけてくれないかなって期待してたんだぜ。罪が俺たちを結ぶ絆になるかもしれないって。でもそんなことなかった。俺だって生殖にそんな夢見てるような歳じゃないけどさ、もしかしたら血のつながりにはなんかしらの絆が生まれるのかもって。でも全然そんなことなかった! 俺のこと憎らしい人殺しを見る目で見た! 俺ずーっと、お父さんのこと待ってたのに。涙なんか出るなって言ってたら本当に出なくなっちゃうまで焼けてしまったのに。お父さんがあの時来てくれたらこんなことにはなっていなかったのに。お父さんのせいなのに。
あんな目で、俺を見た。
ワンドロ:ふたり #カップリング #荼炎 #燈炎 #ヒロアカ
ワンドロ:ふたり #カップリング #荼炎 #燈炎 #ヒロアカ
あのとき、お父さん助けてとは言えなかった。助けを求めるというのは自分が相手に無償の加護を求めることであり自分が不良品であることを認めることに等しかったから。
いや、言ったほうのかもしれない。
助けて
痛い
怖い
と。
それはどれも届かなかった。そこにいない人にどれだけ伝えたいと思っても伝わるようなもんじゃない。テレパシーとかないからね。それにパニックになって叫ぼうとして深く息を吸ってしまったら、炎は簡単に肺に届き、喉を灼いた。
そして、俺は荼毘になって「はじめまして」と言った。焼けた喉から絞り出された声は燈矢のものだとわからなかったみたい。
あれから俺はうめき声しかあげれないまだ死んでない焼死体になったわけだけど、その声の方が燈矢のものだってわかるみたい。
俺がどれだけなじっても、ずっと相槌を打ってくれる。それも興味ないやつにやる適当な返事じゃなくて、ちゃんと会話になってるやつ。俺がこんなふうになる前に気づいて欲しかったんだけど、それができなかったから俺たちは……いま戻せない時を、消せない過去を取り出して眺めては今を生きている。変なの。バカみたい。でも今の俺はちょっと満足してる。許してはないけど、満足している。
あのとき、お父さん助けてとは言えなかった。助けを求めるというのは自分が相手に無償の加護を求めることであり自分が不良品であることを認めることに等しかったから。
いや、言ったほうのかもしれない。
助けて
痛い
怖い
と。
それはどれも届かなかった。そこにいない人にどれだけ伝えたいと思っても伝わるようなもんじゃない。テレパシーとかないからね。それにパニックになって叫ぼうとして深く息を吸ってしまったら、炎は簡単に肺に届き、喉を灼いた。
そして、俺は荼毘になって「はじめまして」と言った。焼けた喉から絞り出された声は燈矢のものだとわからなかったみたい。
あれから俺はうめき声しかあげれないまだ死んでない焼死体になったわけだけど、その声の方が燈矢のものだってわかるみたい。
俺がどれだけなじっても、ずっと相槌を打ってくれる。それも興味ないやつにやる適当な返事じゃなくて、ちゃんと会話になってるやつ。俺がこんなふうになる前に気づいて欲しかったんだけど、それができなかったから俺たちは……いま戻せない時を、消せない過去を取り出して眺めては今を生きている。変なの。バカみたい。でも今の俺はちょっと満足してる。許してはないけど、満足している。
俺たちのグッズが出た #カップリング #ヒロアカ #ミリ環
俺たちのグッズが出た #カップリング #ヒロアカ #ミリ環
「波動さんのぬいぐるみを着飾って楽しむ趣味ができた」
「へー」
「あのね、いろんな作家さんが帽子とか洋服とか作ってて……」
「かわいい。波動さんはこういう少女趣味な服着ることなさそうだから尚更」
「そう。波動さんは絶対にこんなフリルフリルした服は着ない」
「着ないねえ……波動さんは服のこと隠すべきところを隠すくらいの勢いしかないと思う。その流れで言うと俺は環とファットと切島くんとてつてつくんのアクリルジオラマ持ってる」
「あ、あれ俺も好き。ファットが集合写真の時前に横たわるタイプの上司だってことをしっかり描いてるし」
「そこかぁ……」
「そう。いつもはかなり大雑把でアホっぽい大人のフリしてるけど、一番税金とか法律のことわかってるし、労働時間に気を使ってるし、労災とかの手続き手伝ってくれる。そういうタイプの大人でもある」
「いい職場だ」
「うん。切島くんとてつてつくんはあのキラキラした目でカニカマを食べる俺を見て、カニの形質が出てこないか待っててかわいい。カニカマのことカニだと思ってて……」
「かわいい。環が仕事先でうまくやってるみたいでよかった」
「うん。みんなが元気な限りは頑張りたいな」
「そう、そうありたいよね」
「ね」
「波動さんのぬいぐるみを着飾って楽しむ趣味ができた」
「へー」
「あのね、いろんな作家さんが帽子とか洋服とか作ってて……」
「かわいい。波動さんはこういう少女趣味な服着ることなさそうだから尚更」
「そう。波動さんは絶対にこんなフリルフリルした服は着ない」
「着ないねえ……波動さんは服のこと隠すべきところを隠すくらいの勢いしかないと思う。その流れで言うと俺は環とファットと切島くんとてつてつくんのアクリルジオラマ持ってる」
「あ、あれ俺も好き。ファットが集合写真の時前に横たわるタイプの上司だってことをしっかり描いてるし」
「そこかぁ……」
「そう。いつもはかなり大雑把でアホっぽい大人のフリしてるけど、一番税金とか法律のことわかってるし、労働時間に気を使ってるし、労災とかの手続き手伝ってくれる。そういうタイプの大人でもある」
「いい職場だ」
「うん。切島くんとてつてつくんはあのキラキラした目でカニカマを食べる俺を見て、カニの形質が出てこないか待っててかわいい。カニカマのことカニだと思ってて……」
「かわいい。環が仕事先でうまくやってるみたいでよかった」
「うん。みんなが元気な限りは頑張りたいな」
「そう、そうありたいよね」
「ね」
運命の赤い糸が目に見えないばかりに #カップリング #ヒロアカ #ミリ環
運命の赤い糸が目に見えないばかりに #カップリング #ヒロアカ #ミリ環
「波動さん、綺麗だったね」
「うん。ドレスの色がすごく似合ってたね」
波動さんの結婚式か終わった後、俺が大阪に帰る前にちょっと時間作ろうと言って会っているけどやっぱり毎日顔を合わせていたときよりはお互いの今を探り合っているような気がする。いつもはちょっと話しただけで昨日さよならと言って別れたくらいのノリで話せるのに。
「いいなあ、結婚」
「ミリオ、結婚したい人がいるの?」
「うん。いる」
「そうなんだ……したいなら、すればいいのに」
「そうもいかない事情があって……でも、俺が死ぬ時はその人に喪主を頼みたいと思ってて」
「そういう理由で結婚考える人っているんだ」
「結婚はロマンスだけではやっていけないからね」
「何か知っているような口ぶりだね」
「まあ俺も社会に揉まれていろいろ見てきたってこと」
「そっか」
「っていうか、やっと環が話してくれた気がする。聞かれたら答えるだったじゃん。さっきまで」
「いや俺たちなんだかんだで一年会ってないから、今のミリオのノリがわからなくて」
「変わらないよ、そんなの」
「変わるよ。波動さんだってあんな……俺たち以外のやつと結婚したし……」
「さみしいならさみしいってちゃんと言いなよ」
「ほんとだ……さみしい! もう俺たちとドッジボールとか缶けりとかしてくれないかもしれない……」
「それはないでしょ。あの子、勝てる勝負好きじゃん」
「俺は別に手を抜いているわけでは……」
そこまで言って、俺は言葉を失った。俺だけが誰とも結婚したいほどの関係性を作れていない焦りが顔を出したのだ。別にそんなもの無くてもいいんだけど、無いと二人と一緒になれないような気がして。いやもう、違う道を歩いているんだから一緒じゃなくてもいいんだけど、少しでも共通点が多くないと俺だけその輪からいなくなっちゃうような気がして。くだらないのはわかってる。みんなと一緒じゃないからとパートナーを求めたってそんなのパートナーの人に失礼だっていうのもわかる。わかるけど今日の俺は波動さんの結婚に少なからずショックを受けてしまっているのだと思う。
「ミリオまで結婚しちゃったら、俺どうしたらいいんだろう」
「どうもしなくていいよ」
「それは、わかるけど……」
せっかく久しぶりに会ったのだからこんな湿っぽい話はしたくないのに、一度マイナス思考が始まったら下り坂を駆け下りるように止まらない。ミリオはそんな俺を知ってるから、マイナス思考には運動が一番とか言って、スマホから底抜けに明るいおなじみの前奏を流し出した。
「ラ、ラジオ体操第二……あー運動する気なんかないのにこの前奏を聞くとあー……身体が勝手に……」
「でしょ? 俺最近ウジウジした時はラジオ体操してんの」
「へー」
日が暮れた公園でいい大人二人、しかも多少名の売れた二人がラジオ体操をしているのは滑稽に映ってはいたものの、みんなあの前奏には我慢できずに文句垂れながらも深呼吸まで済ませてしまった。
「どうしたのルミリオンじゃん。急にラジオ体操とかして」
「今日は友達の結婚式があって」
「文脈機能してないけど?」
「ダハハ」
知らない人とも積極的に雑談できるミリオの影でそれを眺めていた。
「環、また気分落ち込んだら俺のこと思い出して。俺はずっと味方だから。そして、ラジオ体操をして」
「う、うん……」
「スマホ出して。サブスク入ってる?入ってなかったら俺が買ってあげる」
「入ってない。っていうか圧がすごい」
「ファットも切島くんもてつてつくんもいい人たちだから大丈夫だろうけど、それでも環は落ち込むでしょ。そしたら俺がいるってわかってたら、安心するといいなって……もう何もかも嫌になったら俺のとこ来ればいいし……」
「ありがと……」
こんなにいいやつが近くにいるのに、俺は何を落ち込む必要があったんだろう。それでも俺はこういう気質だから落ち込むんだろうけど、その度浮かんで来れる。縦の糸と横の糸、水と魚、錘と浮きの俺たち。まあなんと、いい関係じゃないか。
「波動さん、綺麗だったね」
「うん。ドレスの色がすごく似合ってたね」
波動さんの結婚式か終わった後、俺が大阪に帰る前にちょっと時間作ろうと言って会っているけどやっぱり毎日顔を合わせていたときよりはお互いの今を探り合っているような気がする。いつもはちょっと話しただけで昨日さよならと言って別れたくらいのノリで話せるのに。
「いいなあ、結婚」
「ミリオ、結婚したい人がいるの?」
「うん。いる」
「そうなんだ……したいなら、すればいいのに」
「そうもいかない事情があって……でも、俺が死ぬ時はその人に喪主を頼みたいと思ってて」
「そういう理由で結婚考える人っているんだ」
「結婚はロマンスだけではやっていけないからね」
「何か知っているような口ぶりだね」
「まあ俺も社会に揉まれていろいろ見てきたってこと」
「そっか」
「っていうか、やっと環が話してくれた気がする。聞かれたら答えるだったじゃん。さっきまで」
「いや俺たちなんだかんだで一年会ってないから、今のミリオのノリがわからなくて」
「変わらないよ、そんなの」
「変わるよ。波動さんだってあんな……俺たち以外のやつと結婚したし……」
「さみしいならさみしいってちゃんと言いなよ」
「ほんとだ……さみしい! もう俺たちとドッジボールとか缶けりとかしてくれないかもしれない……」
「それはないでしょ。あの子、勝てる勝負好きじゃん」
「俺は別に手を抜いているわけでは……」
そこまで言って、俺は言葉を失った。俺だけが誰とも結婚したいほどの関係性を作れていない焦りが顔を出したのだ。別にそんなもの無くてもいいんだけど、無いと二人と一緒になれないような気がして。いやもう、違う道を歩いているんだから一緒じゃなくてもいいんだけど、少しでも共通点が多くないと俺だけその輪からいなくなっちゃうような気がして。くだらないのはわかってる。みんなと一緒じゃないからとパートナーを求めたってそんなのパートナーの人に失礼だっていうのもわかる。わかるけど今日の俺は波動さんの結婚に少なからずショックを受けてしまっているのだと思う。
「ミリオまで結婚しちゃったら、俺どうしたらいいんだろう」
「どうもしなくていいよ」
「それは、わかるけど……」
せっかく久しぶりに会ったのだからこんな湿っぽい話はしたくないのに、一度マイナス思考が始まったら下り坂を駆け下りるように止まらない。ミリオはそんな俺を知ってるから、マイナス思考には運動が一番とか言って、スマホから底抜けに明るいおなじみの前奏を流し出した。
「ラ、ラジオ体操第二……あー運動する気なんかないのにこの前奏を聞くとあー……身体が勝手に……」
「でしょ? 俺最近ウジウジした時はラジオ体操してんの」
「へー」
日が暮れた公園でいい大人二人、しかも多少名の売れた二人がラジオ体操をしているのは滑稽に映ってはいたものの、みんなあの前奏には我慢できずに文句垂れながらも深呼吸まで済ませてしまった。
「どうしたのルミリオンじゃん。急にラジオ体操とかして」
「今日は友達の結婚式があって」
「文脈機能してないけど?」
「ダハハ」
知らない人とも積極的に雑談できるミリオの影でそれを眺めていた。
「環、また気分落ち込んだら俺のこと思い出して。俺はずっと味方だから。そして、ラジオ体操をして」
「う、うん……」
「スマホ出して。サブスク入ってる?入ってなかったら俺が買ってあげる」
「入ってない。っていうか圧がすごい」
「ファットも切島くんもてつてつくんもいい人たちだから大丈夫だろうけど、それでも環は落ち込むでしょ。そしたら俺がいるってわかってたら、安心するといいなって……もう何もかも嫌になったら俺のとこ来ればいいし……」
「ありがと……」
こんなにいいやつが近くにいるのに、俺は何を落ち込む必要があったんだろう。それでも俺はこういう気質だから落ち込むんだろうけど、その度浮かんで来れる。縦の糸と横の糸、水と魚、錘と浮きの俺たち。まあなんと、いい関係じゃないか。
永遠 #カップリング #ヒロアカ #荼炎 #燈炎
永遠 #カップリング #ヒロアカ #荼炎 #燈炎
結局お父さんは個性婚の結果として俺らを作って、何かを得ることができたんだろうか。
おだやかに風が吹くとてもいい季節なんだと思う。水の底から見る景色みたいにぼんやり歪んだ視界、ごうごうと血の流れだけが聞こえる耳、風の流れすらわからない肌。どれもがこの季節を教えてくれないけど、お父さんが教えてくれるんだ。
「燈矢、今日は風が吹いているんだ。優しい風だ。燈矢の周りにだって吹いてるぞ」
「見てごらん、あれは……何らかの鳥だ」
とか。
俺は多分もうお父さんの願い、一番になりたかったという願いを叶えてあげられない。けれどこうして大切に余生を過ごしている。ほかに願いがあるなら、俺でも叶えてあげられられる願いがあればいいんだけど、こんな身体じゃもう無理だ。俺がこの前、こんな弱くなった俺を見られたくない、捨てて欲しいと言ったら、
「なにを言うんだ燈矢。俺は燈矢に……家族に、俺がなにを大切にしなければいけなかったか、俺の本当の願いは何かということを教えてもらったんだ」
「そうなんだ……お父さんの願いって、何?」
「それは、燈矢。家族がみんな幸せを感じながら生きることだ」
「そっか……いまからでも、まだそうなれるなら、そうなりたいね……」
「過去は消えない。変えることはできない。けれど、おそらく……過去を現在や未来で雪ぐことはできると思うんだ。燈矢はどう思う」
「俺は、それでもいいよ。これから……っても、そう長くはないけど俺や俺のきょうだい達のわだかまりを雪いでよ」
「ありがとう、燈矢」
「自分の考えややりたいこと、これがイイと思った事を家族に押し付けないだけでちょっと進歩」
そうやってちょっと笑っただけで頬が裂けるように痛い。けどお父さんも苦笑いの部類では、るけど、笑ってくれたから、いい。今の俺は、それでいい。
畳む
結局お父さんは個性婚の結果として俺らを作って、何かを得ることができたんだろうか。
おだやかに風が吹くとてもいい季節なんだと思う。水の底から見る景色みたいにぼんやり歪んだ視界、ごうごうと血の流れだけが聞こえる耳、風の流れすらわからない肌。どれもがこの季節を教えてくれないけど、お父さんが教えてくれるんだ。
「燈矢、今日は風が吹いているんだ。優しい風だ。燈矢の周りにだって吹いてるぞ」
「見てごらん、あれは……何らかの鳥だ」
とか。
俺は多分もうお父さんの願い、一番になりたかったという願いを叶えてあげられない。けれどこうして大切に余生を過ごしている。ほかに願いがあるなら、俺でも叶えてあげられられる願いがあればいいんだけど、こんな身体じゃもう無理だ。俺がこの前、こんな弱くなった俺を見られたくない、捨てて欲しいと言ったら、
「なにを言うんだ燈矢。俺は燈矢に……家族に、俺がなにを大切にしなければいけなかったか、俺の本当の願いは何かということを教えてもらったんだ」
「そうなんだ……お父さんの願いって、何?」
「それは、燈矢。家族がみんな幸せを感じながら生きることだ」
「そっか……いまからでも、まだそうなれるなら、そうなりたいね……」
「過去は消えない。変えることはできない。けれど、おそらく……過去を現在や未来で雪ぐことはできると思うんだ。燈矢はどう思う」
「俺は、それでもいいよ。これから……っても、そう長くはないけど俺や俺のきょうだい達のわだかまりを雪いでよ」
「ありがとう、燈矢」
「自分の考えややりたいこと、これがイイと思った事を家族に押し付けないだけでちょっと進歩」
そうやってちょっと笑っただけで頬が裂けるように痛い。けどお父さんも苦笑いの部類では、るけど、笑ってくれたから、いい。今の俺は、それでいい。
畳む
碇 #レゾ #ヒロアカ #鳥師弟
碇 #レゾ #ヒロアカ #鳥師弟
「常闇くん……」
「なんです。そんな神妙な顔して」
「俺この前常闇くんとモスバーガー食べに行ったじゃん。あの時ね、オニポテリング一個くれたじゃん」
「そうだったかな。確か師が初めてモス来たわ〜などと言っていたので、オニポテを食べずにいるのはなと思い」
「それはさ、雪見だいふくの一個だったり、ピノの一個みたいなそういう……」
「ああ、まあでもそこまで食に執着がないから俺はそういうのはいいんです」
「えー、常闇くんの方が大人みたい」
「執着の先は人それぞれです」
「そっかあ……常闇くんは、何に執着してんの?」
「そうですね……職場環境ですかね。ホークスが想像している以上に異形個性は蔑まれるので、ホークスみたいに名前が売れてて、若い女性のファンが多いヒーローの下だと働きやすいんですよ」
「あー、そういう。なんかもっと俗物的な回答がもらえるかなって……」
「あなたにそんな顔させたくなかったから言わないでいたんですが」
「なんだ、隠してたんだ」
「まぁ、そうですね」
ホークスのせいではないのに、そうやって俺のことを自分ごとのように傷ついてくれるあなたの顔が見たくてこの話をしたのかもしれない。
たかだか五年程度早く生まれた程度で世界は変えられない。そんなことくらい俺ですらわかっているのに、ホークスは釈然としない顔をして俺に降りかかる悪意を嘆いてくれている。
「俺はそうやって傷つく常闇くんに何してあげられるかな」
「うーん……スマブラをしたり、温泉に行ったり、潮干狩りに行ったり、ポットのお湯が切れそうだったら補充したり、靴を揃えたり、事務所の鍵をちゃんとしめたり……」
「最後の方申し訳ないと思ってはいるけどできてないやつ出てきたな……俺さ、小さい頃からゲームっていうかテレビもなくてそういう経験? 子供の頃みんなやっているであろうことが本当にできてなくて……できればそういう子供時代を取り戻したいんだよね」
「隠し事なくてえらいじゃないですか。いいですよ。やりましょう。スマブラでも、アサガオの観察でもなんでも」
「わーい。楽しみだな」
「そしたら、元気にしてないとダメですからね」
「肝に銘じます」
そういうことをちゃんと言葉にしないと、ホークスはフラフラとどこかに行ってしまいそうだから俺はホークスがここに居たくなりそうなことを並べ立てる。この人はどんなに親しい人であれ失う経験がありすぎて、執着が薄すぎるから自分の命すら軽んじるような言動が見受けられる。俺はそれを見るのがなんだか悲しくて、この人の速度を落とすようなことをしてしまう。
それでも、執着しているものを分け与えるような信頼をされているのだと思うと、どこかに行ってしまう前に声くらいはかけてもらえるのかもしれないと自惚れてしまう。あんまり期待しないほうが良さそうだとは思うのだが。
「常闇くん……」
「なんです。そんな神妙な顔して」
「俺この前常闇くんとモスバーガー食べに行ったじゃん。あの時ね、オニポテリング一個くれたじゃん」
「そうだったかな。確か師が初めてモス来たわ〜などと言っていたので、オニポテを食べずにいるのはなと思い」
「それはさ、雪見だいふくの一個だったり、ピノの一個みたいなそういう……」
「ああ、まあでもそこまで食に執着がないから俺はそういうのはいいんです」
「えー、常闇くんの方が大人みたい」
「執着の先は人それぞれです」
「そっかあ……常闇くんは、何に執着してんの?」
「そうですね……職場環境ですかね。ホークスが想像している以上に異形個性は蔑まれるので、ホークスみたいに名前が売れてて、若い女性のファンが多いヒーローの下だと働きやすいんですよ」
「あー、そういう。なんかもっと俗物的な回答がもらえるかなって……」
「あなたにそんな顔させたくなかったから言わないでいたんですが」
「なんだ、隠してたんだ」
「まぁ、そうですね」
ホークスのせいではないのに、そうやって俺のことを自分ごとのように傷ついてくれるあなたの顔が見たくてこの話をしたのかもしれない。
たかだか五年程度早く生まれた程度で世界は変えられない。そんなことくらい俺ですらわかっているのに、ホークスは釈然としない顔をして俺に降りかかる悪意を嘆いてくれている。
「俺はそうやって傷つく常闇くんに何してあげられるかな」
「うーん……スマブラをしたり、温泉に行ったり、潮干狩りに行ったり、ポットのお湯が切れそうだったら補充したり、靴を揃えたり、事務所の鍵をちゃんとしめたり……」
「最後の方申し訳ないと思ってはいるけどできてないやつ出てきたな……俺さ、小さい頃からゲームっていうかテレビもなくてそういう経験? 子供の頃みんなやっているであろうことが本当にできてなくて……できればそういう子供時代を取り戻したいんだよね」
「隠し事なくてえらいじゃないですか。いいですよ。やりましょう。スマブラでも、アサガオの観察でもなんでも」
「わーい。楽しみだな」
「そしたら、元気にしてないとダメですからね」
「肝に銘じます」
そういうことをちゃんと言葉にしないと、ホークスはフラフラとどこかに行ってしまいそうだから俺はホークスがここに居たくなりそうなことを並べ立てる。この人はどんなに親しい人であれ失う経験がありすぎて、執着が薄すぎるから自分の命すら軽んじるような言動が見受けられる。俺はそれを見るのがなんだか悲しくて、この人の速度を落とすようなことをしてしまう。
それでも、執着しているものを分け与えるような信頼をされているのだと思うと、どこかに行ってしまう前に声くらいはかけてもらえるのかもしれないと自惚れてしまう。あんまり期待しないほうが良さそうだとは思うのだが。
私をうまく使ってくれるだけでいいのに。 #夢小説 #ヒロアカ #飯田天晴
私をうまく使ってくれるだけでいいのに。 #夢小説 #ヒロアカ #飯田天晴
私の個性はエンジンの持久力を上げるための内燃機関。願ってもない個性だと思っていた。
飯田家が個性婚をやっている、というのは誰の目にも明らかだった。けれど飯田家がそれを表明しなかったから誰も言及しなかった。轟家があんなふうになってしまってからも、何も言わずにしれっとヒーロー活動してる。兄のほうはもうヒーローとして使い物にならないし、もしかしたら子供に夢を託したりしちゃうかもって。
だからちょっと期待しちゃった。
私にも、インゲニウムとワンチャンあるかなって。
でもそんなものなかった。飯田家はもうそういうのやめるんだって。こんなカス個性を引いてしまってから生きている価値を飯田家の個性婚に見出してるような私が悪いとでも言いたいのか、インゲニウムのサイドキックたちはあわれなものを見る目で私を見た。
「どうしたの」
「天晴さん」
車椅子に乗った精悍な顔立ちの青年が不思議そうに見上げてくる。
サイドキックの人がかいつまんで天晴さんに私のことを説明すると、明らかに顔が引き攣っているようだった。
それもそうか。自分の種でうまいことやろうとしている女なんかふつうにキモいわ。ヒーローも人間だったってことか。知らなかった。
それなのに天晴さんは、私に言葉を尽くして別の道で生きるように説得してくれた。個性だけが全てじゃないって。
でもそれって、"持っている"側の感覚よね。お金、学歴、美貌なんかと同じで持ってる側はお金じゃないんだよ、とかいけしゃあしゃあと言ってのけるんだ。"持っていない"側の僻みなんか思いもよらない。
そのままの君ていてほしい。
太陽は太陽のままそこに輝くことに意味がある。そのすがたを手が届くなんて思いもしないくらい遠くから眺めて、あんなに綺麗なひとがいるんだから私も、と思わせてほしい。偶像崇拝に近いような感じかな。畳む
私の個性はエンジンの持久力を上げるための内燃機関。願ってもない個性だと思っていた。
飯田家が個性婚をやっている、というのは誰の目にも明らかだった。けれど飯田家がそれを表明しなかったから誰も言及しなかった。轟家があんなふうになってしまってからも、何も言わずにしれっとヒーロー活動してる。兄のほうはもうヒーローとして使い物にならないし、もしかしたら子供に夢を託したりしちゃうかもって。
だからちょっと期待しちゃった。
私にも、インゲニウムとワンチャンあるかなって。
でもそんなものなかった。飯田家はもうそういうのやめるんだって。こんなカス個性を引いてしまってから生きている価値を飯田家の個性婚に見出してるような私が悪いとでも言いたいのか、インゲニウムのサイドキックたちはあわれなものを見る目で私を見た。
「どうしたの」
「天晴さん」
車椅子に乗った精悍な顔立ちの青年が不思議そうに見上げてくる。
サイドキックの人がかいつまんで天晴さんに私のことを説明すると、明らかに顔が引き攣っているようだった。
それもそうか。自分の種でうまいことやろうとしている女なんかふつうにキモいわ。ヒーローも人間だったってことか。知らなかった。
それなのに天晴さんは、私に言葉を尽くして別の道で生きるように説得してくれた。個性だけが全てじゃないって。
でもそれって、"持っている"側の感覚よね。お金、学歴、美貌なんかと同じで持ってる側はお金じゃないんだよ、とかいけしゃあしゃあと言ってのけるんだ。"持っていない"側の僻みなんか思いもよらない。
そのままの君ていてほしい。
太陽は太陽のままそこに輝くことに意味がある。そのすがたを手が届くなんて思いもしないくらい遠くから眺めて、あんなに綺麗なひとがいるんだから私も、と思わせてほしい。偶像崇拝に近いような感じかな。畳む
個性の証明 #カップリング #ヒロアカ #荼炎 #燈炎
個性の証明 #カップリング #ヒロアカ #荼炎 #燈炎
西暦20XX年——ビルの光が空を覆い、人々が空を自由に駆けるようになっても、人権や個性がなくなっていない近未来。
「燈矢の体を捨てる……?」
「ええ、騙し騙しやってきましたけど、もう燈矢さんの体は限界なんです。ボロボロのまま焦凍さんと戦って、さらにボロボロになって、今までつぎはぎしてきましたけど、限界です」
「肉体を捨ててしまったら、燈矢はどうなるんです」
「そうですね。脳を機械の体に乗せましょう」
お医者様がいうことは突飛なことに聞こえたが、国内で五つの症例があるという。脳を取り出して機械の脊髄や諸神経と繋ぎ、肉体が死んだとしても生きることができるという。燈矢は一度体調を崩してから二ヶ月意識がないのでは本人に確認できないので親である俺たちが決めれるという。
冷は、生かしてやりたいという。
例え死刑を待つ身であっても、目が動いて私とコミュニケーションをとることができていた燈矢をみすみす死なせてしまいたくはないという。
俺は、決めかねていた。
手術では個性を引き継ぐことはできないという。自らの個性に強くこだわり、指先すら動かせない体でもお父さんに俺の技を見てもらいたいんだとタッチパッドを使ってコミュニケーションをとった燈矢が、果たして個性を持たない自分を受け入れることができるだろうか。
時間は予断を許さず、俺は疑問を持ちながらも燈矢の命を諦める決断はできなかった。
手術は成功した。
燈矢は肉体の死による死を免れ、医療によるメンテナンスを生涯必要とする体になった。
夏雄が見舞いに行った時に目を覚ましたという燈矢は、指先を見つめては涙をこぼしたという。指先、それは最初に炎を灯した器官だと気づき、病室に急いだ。
「お父さん、俺」
「燈矢」
「本当に……何にもなくなっちゃった……」
「燈矢、お前はお前でいてくれるだけでいいんだ」
「俺は、お父さんに認められる俺以外を俺と認めてやれないよ」
「燈矢」
「お父さんならわかってくれると思った……個性がない自分を認めてやれない気持ちがさ……死刑になるために生かされたの? 俺」
「……燈矢、それは」
「もういいよ、バイバイ。お父さん。俺はお父さんが全てだったんだよ」
「と「もう帰って」
それが永訣の別れとなるとは考えても見なかった。燈矢は死刑判決を受け、世間の声に押されて異例の早さで刑が執行された。頸部を縄で圧迫された跡が残った遺体が轟家に戻ってきた。
燈矢は最後の食事をとらずに死刑に望んだらしい。自ら栄養を取らなくても生きながらえる体を忌まわしく思っていたらしく、体を壁にぶつけるなどの自傷が目立ったという。
脳だけを燃やし、燈矢の骨壷に納めた。陶器の壺に収まった燈矢はまるで初めて抱いた時のように小さく、頼りなかった。
『個性の証明』 完
西暦20XX年——ビルの光が空を覆い、人々が空を自由に駆けるようになっても、人権や個性がなくなっていない近未来。
「燈矢の体を捨てる……?」
「ええ、騙し騙しやってきましたけど、もう燈矢さんの体は限界なんです。ボロボロのまま焦凍さんと戦って、さらにボロボロになって、今までつぎはぎしてきましたけど、限界です」
「肉体を捨ててしまったら、燈矢はどうなるんです」
「そうですね。脳を機械の体に乗せましょう」
お医者様がいうことは突飛なことに聞こえたが、国内で五つの症例があるという。脳を取り出して機械の脊髄や諸神経と繋ぎ、肉体が死んだとしても生きることができるという。燈矢は一度体調を崩してから二ヶ月意識がないのでは本人に確認できないので親である俺たちが決めれるという。
冷は、生かしてやりたいという。
例え死刑を待つ身であっても、目が動いて私とコミュニケーションをとることができていた燈矢をみすみす死なせてしまいたくはないという。
俺は、決めかねていた。
手術では個性を引き継ぐことはできないという。自らの個性に強くこだわり、指先すら動かせない体でもお父さんに俺の技を見てもらいたいんだとタッチパッドを使ってコミュニケーションをとった燈矢が、果たして個性を持たない自分を受け入れることができるだろうか。
時間は予断を許さず、俺は疑問を持ちながらも燈矢の命を諦める決断はできなかった。
手術は成功した。
燈矢は肉体の死による死を免れ、医療によるメンテナンスを生涯必要とする体になった。
夏雄が見舞いに行った時に目を覚ましたという燈矢は、指先を見つめては涙をこぼしたという。指先、それは最初に炎を灯した器官だと気づき、病室に急いだ。
「お父さん、俺」
「燈矢」
「本当に……何にもなくなっちゃった……」
「燈矢、お前はお前でいてくれるだけでいいんだ」
「俺は、お父さんに認められる俺以外を俺と認めてやれないよ」
「燈矢」
「お父さんならわかってくれると思った……個性がない自分を認めてやれない気持ちがさ……死刑になるために生かされたの? 俺」
「……燈矢、それは」
「もういいよ、バイバイ。お父さん。俺はお父さんが全てだったんだよ」
「と「もう帰って」
それが永訣の別れとなるとは考えても見なかった。燈矢は死刑判決を受け、世間の声に押されて異例の早さで刑が執行された。頸部を縄で圧迫された跡が残った遺体が轟家に戻ってきた。
燈矢は最後の食事をとらずに死刑に望んだらしい。自ら栄養を取らなくても生きながらえる体を忌まわしく思っていたらしく、体を壁にぶつけるなどの自傷が目立ったという。
脳だけを燃やし、燈矢の骨壷に納めた。陶器の壺に収まった燈矢はまるで初めて抱いた時のように小さく、頼りなかった。
『個性の証明』 完
鯉のぼりばっかり景気がいい #ヒロアカ #カプなし #轟冬美
鯉のぼりばっかり景気がいい #ヒロアカ #カプなし #轟冬美
夏も焦凍もこの家には寄り付かないのにお父さんは、しぼんだ身体を折り曲げて金太郎人形を玄関に飾り、鯉のぼりをあげる。
この辺じゃいちばん大きな鯉のぼりだ。
健康を祈る男児はだれひとりここにはいないのに、鯉のぼりは風を受けて元気にはためいている。夏くんはゼミのみんなと飲み会、焦凍は学校、燈矢兄さんは刑務所。
この鯉のぼりを買った時は燈矢兄さんの初節句だという。その頃にはまさかこんなことになるなんて誰も想像してなかった。
あの、燈矢兄さんの罪の告白……
轟家の罪の告白を思い出すたびに冷や汗が出る。けどほんの少しだけ、うれしかった。燈矢兄さんが生きていてくれて。そして期待した。もしかしたら燈矢兄さんが焦凍を虐待するお父さんを止めてくれないかなって。私じゃできなかったことを燈矢兄さんなら叶えてくれるんじゃないかって。
でも現実はそううまくいかない。燈矢兄さんは燈矢兄さんのためだけに行動した。やっぱり私の中のわだかまりは私か解決するしかなさそうだ。
燈矢兄さんのための仏壇はあの時から閉まったままだ。たぶんお父さんがやった。生きている人間の菩提を弔っても仕方ないもんね。そういう時ばっかり、マメなんだから。
夏も焦凍もこの家には寄り付かないのにお父さんは、しぼんだ身体を折り曲げて金太郎人形を玄関に飾り、鯉のぼりをあげる。
この辺じゃいちばん大きな鯉のぼりだ。
健康を祈る男児はだれひとりここにはいないのに、鯉のぼりは風を受けて元気にはためいている。夏くんはゼミのみんなと飲み会、焦凍は学校、燈矢兄さんは刑務所。
この鯉のぼりを買った時は燈矢兄さんの初節句だという。その頃にはまさかこんなことになるなんて誰も想像してなかった。
あの、燈矢兄さんの罪の告白……
轟家の罪の告白を思い出すたびに冷や汗が出る。けどほんの少しだけ、うれしかった。燈矢兄さんが生きていてくれて。そして期待した。もしかしたら燈矢兄さんが焦凍を虐待するお父さんを止めてくれないかなって。私じゃできなかったことを燈矢兄さんなら叶えてくれるんじゃないかって。
でも現実はそううまくいかない。燈矢兄さんは燈矢兄さんのためだけに行動した。やっぱり私の中のわだかまりは私か解決するしかなさそうだ。
燈矢兄さんのための仏壇はあの時から閉まったままだ。たぶんお父さんがやった。生きている人間の菩提を弔っても仕方ないもんね。そういう時ばっかり、マメなんだから。
お題:冬 #カップリング #ヒロアカ #荼炎 #燈炎
お題:冬 #カップリング #ヒロアカ #荼炎 #燈炎
夏は膿が止まらないけど、冬は肌というか、肌の下の筋組織が軋んで痛む。
痛むからといってそれから逃れる術はなく、ただうーうーと、うめくことしかできない。
お父さんは夏にできた膿を拭うより冬の肌の軋みの方が見ていてつらいらしい。前者は自分で膿をぬぐってやることができて、目に見えてそして行動として何かやったつもりになれるからいいのかもしれない。
お父さんはじつに甲斐甲斐しく俺の世話を焼く。この1%でも俺の子供時代にしてくれていたらこんなことにはなってないはずなんだけど、後悔先に立たず。
お父さんの罪であり、個性社会の膿であり、お父さんの後悔そのものである俺。ほんとはそんなふうに生まれてきたはずじゃなくて、焦凍とは性能が違うだけでSSRだったはずなんだよ。そうじゃなきゃ、あんなに焦凍やお父さんのことを追い詰めることはできなかっただろ。
数々のifをかいくぐって、俺は今お父さんの負債としてこの家の畳のシミの範囲を広げることしかできない。
どこで間違った?
何がいけなかった。
一緒に考えて、手を取り合って答えを出そう。この奇跡みたいな時間を使ってさ。俺のこと見てくれるんでしょ? それってほんとに、ただ見るだけの見る? 見て、聞いて、答えてくれる見るじゃなくて? 熱で風の音がして、よく聞こえないんだ……
夏は膿が止まらないけど、冬は肌というか、肌の下の筋組織が軋んで痛む。
痛むからといってそれから逃れる術はなく、ただうーうーと、うめくことしかできない。
お父さんは夏にできた膿を拭うより冬の肌の軋みの方が見ていてつらいらしい。前者は自分で膿をぬぐってやることができて、目に見えてそして行動として何かやったつもりになれるからいいのかもしれない。
お父さんはじつに甲斐甲斐しく俺の世話を焼く。この1%でも俺の子供時代にしてくれていたらこんなことにはなってないはずなんだけど、後悔先に立たず。
お父さんの罪であり、個性社会の膿であり、お父さんの後悔そのものである俺。ほんとはそんなふうに生まれてきたはずじゃなくて、焦凍とは性能が違うだけでSSRだったはずなんだよ。そうじゃなきゃ、あんなに焦凍やお父さんのことを追い詰めることはできなかっただろ。
数々のifをかいくぐって、俺は今お父さんの負債としてこの家の畳のシミの範囲を広げることしかできない。
どこで間違った?
何がいけなかった。
一緒に考えて、手を取り合って答えを出そう。この奇跡みたいな時間を使ってさ。俺のこと見てくれるんでしょ? それってほんとに、ただ見るだけの見る? 見て、聞いて、答えてくれる見るじゃなくて? 熱で風の音がして、よく聞こえないんだ……
お題:耳 #カップリング #ヒロアカ #荼炎 #燈炎
お題:耳 #カップリング #ヒロアカ #荼炎 #燈炎
水の中で聞く人の声みたいに、どこかぼんやりとした音が耳に届く。聞こえるからと言って返事をするだけの声帯は焼け落ちてしまっているので、目の動きで文字入力ができる機械でお父さんと意思疎通をする。
とはいえ細かいニュアンスまでは伝えきれない。そんな苛立ちをぶつけようにも身体はどこも動かない。
身体中の水分が入れても入れても蒸発するのに、お父さんは俺の胃腸につながる管に水を切らさないようにどんなに遅い夜中だって欠かさず点検している。そんなこともうしなくていいよ、無駄だよって言ってもいいんだ、って言って俺の世話を焼いてお父さん自身がが気持ちよくなってるのをみたくないのにそれを伝えられず俺は横たわることしかできない。
なんていうかこう、俺が無駄だからやめろって言っても俺のために何かしてくれるのがうれしくないワケじゃない。なんだけど、お父さんが俺を見る目が将来楽しみな息子、じゃなくて自分が世話をしなくては弱って死んでしまう可哀想な息子、になってるのが嫌なんだよな。
ああ、あの戦いで死ねればよかった。こんな無様を晒すぐらいなら。
水の中で聞く人の声みたいに、どこかぼんやりとした音が耳に届く。聞こえるからと言って返事をするだけの声帯は焼け落ちてしまっているので、目の動きで文字入力ができる機械でお父さんと意思疎通をする。
とはいえ細かいニュアンスまでは伝えきれない。そんな苛立ちをぶつけようにも身体はどこも動かない。
身体中の水分が入れても入れても蒸発するのに、お父さんは俺の胃腸につながる管に水を切らさないようにどんなに遅い夜中だって欠かさず点検している。そんなこともうしなくていいよ、無駄だよって言ってもいいんだ、って言って俺の世話を焼いてお父さん自身がが気持ちよくなってるのをみたくないのにそれを伝えられず俺は横たわることしかできない。
なんていうかこう、俺が無駄だからやめろって言っても俺のために何かしてくれるのがうれしくないワケじゃない。なんだけど、お父さんが俺を見る目が将来楽しみな息子、じゃなくて自分が世話をしなくては弱って死んでしまう可哀想な息子、になってるのが嫌なんだよな。
ああ、あの戦いで死ねればよかった。こんな無様を晒すぐらいなら。
お題:はさみ #ヒロアカ が#カップリング #荼炎 #燈炎
お題:はさみ #ヒロアカ が#カップリング #荼炎 #燈炎
すーっと銀色の刃が俺を包む何重にもなった包帯を裂いてゆく。
もう長く持たない俺のために、訪問看護の人が来てくれている。お父さんは何か言ってるみたいだけどジージーと耳鳴りがするだけで何も聞こえない。でも触れ方でわかる。こわごわと俺がいつ気が変わってここを火の海にしてしまわないかと触れる方が訪問看護師さん。で、素人のくせに扱いがぶきっちょで、俺の皮膚がずるりと剥けてしまったときにびくっ、と震えるのがお父さん。お母さんは、ひんやりとしてるから一番よくわかる。
こんなになってまで、弱く守られるだけの俺に存在価値なんてあるのかな。
少なくとも俺自身は今の俺のことものすごくみじめだと思う。お父さんは知ってか知らずか、俺が暑いと感じてほんの少し身じろぎをしただけで氷枕をあててくれている。こんなになるまでお父さんは俺のことを見なかったんだと思うと涙が出そうになるけど、こんなコゲコゲになってて涙なんか出るわけなじゃん。
すーっと銀色の刃が俺を包む何重にもなった包帯を裂いてゆく。
もう長く持たない俺のために、訪問看護の人が来てくれている。お父さんは何か言ってるみたいだけどジージーと耳鳴りがするだけで何も聞こえない。でも触れ方でわかる。こわごわと俺がいつ気が変わってここを火の海にしてしまわないかと触れる方が訪問看護師さん。で、素人のくせに扱いがぶきっちょで、俺の皮膚がずるりと剥けてしまったときにびくっ、と震えるのがお父さん。お母さんは、ひんやりとしてるから一番よくわかる。
こんなになってまで、弱く守られるだけの俺に存在価値なんてあるのかな。
少なくとも俺自身は今の俺のことものすごくみじめだと思う。お父さんは知ってか知らずか、俺が暑いと感じてほんの少し身じろぎをしただけで氷枕をあててくれている。こんなになるまでお父さんは俺のことを見なかったんだと思うと涙が出そうになるけど、こんなコゲコゲになってて涙なんか出るわけなじゃん。
泥の中でいっしょだよ #夢小説 #ヒロアカ #だいなま
泥の中でいっしょだよ #夢小説 #ヒロアカ #だいなま
だいなまちゃんは、わたしを助けてくれたんだよ。
“イギョウ”の人たちがおとうさんのしごとをうばってしまったと言って、いつもお家にいるようになった。わたしが学校からかえってくると、お父さんはお酒くさいいきを吐いて「うるせえ」とどなってカンを投げてくるようになった。
わたしはおとうさんといっしょにいたくなくて、公えんに行った。だいなまちゃんはそこにいたんだ。
「ク?」
くりくりおめめがかわいいだいなまちゃん。だいなまちゃんは「ひろってあげてください」とダンボール箱に入れられて、お腹がぐうぐうなっててかわいそうだった。わたしよりかわいそうなコを見つけてわたしは嬉しかった。わたしの手でも助けることができるコがいて、弱いだけの子どもじゃないんだって思えた。
だいなまちゃんに、お母さんがくれたお昼ごはんのお金を使ってメロンパンを買ってあげた。わたしと半分こなのに、とっても喜んでくれた。「クソが! クソが!」っていう鳴き声が喜んでいるのかはわからないけど。
だいなまちゃんはお家にはつれてかえれない。お父さんの気にさわるのはまちがいないから。さむい雨がふる中、泣いてすがるだいなまちゃんをふりはらっていくのは心がいたいけど、どうにもできなかった。うちのゴミ箱に入っていた古いセーターを入れたけど、温まりたいだけじゃないんだ。わたしも同じだからわかる。だれかにそばにいてほしいんだよね、だいなまちゃん。だいなまちゃんの小さなおててをにぎって、ごめんねと言ったけどだいなまちゃんは泣いていた。
いつかだいなまちゃんが本当の家族……わたしみたいな弱い子供じゃない、だいなまちゃんのことを助けてくれる人がくるからね。それまでわたしが生きのびさせないと。運動会のバトンリレーみたいに次の人に渡せるように。
だいなまちゃんは、わたしを助けてくれたんだよ。
“イギョウ”の人たちがおとうさんのしごとをうばってしまったと言って、いつもお家にいるようになった。わたしが学校からかえってくると、お父さんはお酒くさいいきを吐いて「うるせえ」とどなってカンを投げてくるようになった。
わたしはおとうさんといっしょにいたくなくて、公えんに行った。だいなまちゃんはそこにいたんだ。
「ク?」
くりくりおめめがかわいいだいなまちゃん。だいなまちゃんは「ひろってあげてください」とダンボール箱に入れられて、お腹がぐうぐうなっててかわいそうだった。わたしよりかわいそうなコを見つけてわたしは嬉しかった。わたしの手でも助けることができるコがいて、弱いだけの子どもじゃないんだって思えた。
だいなまちゃんに、お母さんがくれたお昼ごはんのお金を使ってメロンパンを買ってあげた。わたしと半分こなのに、とっても喜んでくれた。「クソが! クソが!」っていう鳴き声が喜んでいるのかはわからないけど。
だいなまちゃんはお家にはつれてかえれない。お父さんの気にさわるのはまちがいないから。さむい雨がふる中、泣いてすがるだいなまちゃんをふりはらっていくのは心がいたいけど、どうにもできなかった。うちのゴミ箱に入っていた古いセーターを入れたけど、温まりたいだけじゃないんだ。わたしも同じだからわかる。だれかにそばにいてほしいんだよね、だいなまちゃん。だいなまちゃんの小さなおててをにぎって、ごめんねと言ったけどだいなまちゃんは泣いていた。
いつかだいなまちゃんが本当の家族……わたしみたいな弱い子供じゃない、だいなまちゃんのことを助けてくれる人がくるからね。それまでわたしが生きのびさせないと。運動会のバトンリレーみたいに次の人に渡せるように。
うつくしく散る姿こそ #ヒロアカ #夢小説 #女夢主 #スターアンドストライプ
うつくしく散る姿こそ #ヒロアカ #夢小説 #女夢主 #スターアンドストライプ
「ちょ、ちょっと待ってよキャシー。シガラギとがいうやつが日本で暴れてるのは知ってるわ。大変なんだってね。でもそれをなんでアメリカの国防の要であるあなたが助けないとならないの」
学生時代からの恋人であった私とキャシー。それが日本とかいう小さな島国で起きているゴタゴタのために亀裂が走っていることに苛立ちを隠せなかった。
そんな私をキャシーは悲しい目をして見ていた。そんな目で私を見ないでほしい。あなたはひだまりの中で静かに笑っているのが一番似合うのに。
「ナマエ、あなたがそんなことをいう人だとは思わなかった」
「で、でもキャシー、あなたの師匠とかいう人がどうにかしてくれるよきっと。あなたが出る幕じゃない」
「師匠は力を失っている。私しかいないんだ。怖い目にあっている人を、私は放っておけない」
「日本にだってヒーローはいるよ。けど、キャシーあなたの代わりはどこにもいないんだから、ねえお願いやめて」
「ナマエ、コスチュームを隠したでしょう。あれでなくてもいいけど、できればあれがいいんだ」
「……キャシー。あなたの個性がもっと凡百の物だったらよかったのに」
「そうだったら、あの時ナマエを助けることもなかったし、私たちが恋仲になることもなかったよ、きっと」
「そんなことない。私はあなたの個性を愛したんじゃなくて、あなたそのものを愛したのに」
「私と個性は切り離せないよ…… ナマエ、そろそろ行くね」
「バカッ……ちゃんと戻ってこなかったら許さないんだからねッ……」
「泣かないで、ナマエ……」
やさしくあたたかな私にキスをくれたキャシーは、髪の毛一本、骨の一欠片も残さず死んでしまった。シガラギは倒せなかったが、弱体化はできたという。
正しさを執行するという脳味噌がアドレナリンでひたひたになっている正義中毒のバカが一人いなくなっただけなのに、私は寂しくて仕方ない。彼女が残した歯ブラシ、殉職で特進してもらった勲章、そしてお揃いで買ったネックレスだとかが私の中に楔のように穿ち続ける。
彼女を運んだ戦闘機乗りの方々に、彼女が散ったという海へ連れていってもらった。暗澹として冷たい海。その海水を瓶に汲んで、墓にかけてみたら少しはあの空っぽの墓に信憑性が出るかなと思っていたけど、何にもなかった。どんなにいとしい人であれ、死んでしまったら失ってしまったらそれまでなのだと私は身を以て知った。
「さよなら」
私は誰にも聞こえないような小さな声で別れを告げた。私の中のケジメをつけるために、キャシーがもういなくなってしまったんだと自分の中に刻むように、静かに。日本の人々は、ヒーローぐらいしか彼女が自国のために死んでいったと知る人はいないだろう。それがどうにも悔しかったけど、恩着せがましく宣うのはきっとキャシーは嫌がるだろうから黙って帰ることにした。まだ瓦礫の山や、愛する人の死など傷だらけの人たちばかりだったけど、諦めようとしてはいなかった。
ひだまりの中、赤ん坊がお父さんに抱かれて笑っている。炊き出しの列は途切れないけど、絶望のあまり道端で座り込む人に食べ物を渡す人がいる。彼女が守った幸せたちが、この小さな島国で芽吹き始めているのを見届けて、私は日本を去った。
2022/10/15
「ちょ、ちょっと待ってよキャシー。シガラギとがいうやつが日本で暴れてるのは知ってるわ。大変なんだってね。でもそれをなんでアメリカの国防の要であるあなたが助けないとならないの」
学生時代からの恋人であった私とキャシー。それが日本とかいう小さな島国で起きているゴタゴタのために亀裂が走っていることに苛立ちを隠せなかった。
そんな私をキャシーは悲しい目をして見ていた。そんな目で私を見ないでほしい。あなたはひだまりの中で静かに笑っているのが一番似合うのに。
「ナマエ、あなたがそんなことをいう人だとは思わなかった」
「で、でもキャシー、あなたの師匠とかいう人がどうにかしてくれるよきっと。あなたが出る幕じゃない」
「師匠は力を失っている。私しかいないんだ。怖い目にあっている人を、私は放っておけない」
「日本にだってヒーローはいるよ。けど、キャシーあなたの代わりはどこにもいないんだから、ねえお願いやめて」
「ナマエ、コスチュームを隠したでしょう。あれでなくてもいいけど、できればあれがいいんだ」
「……キャシー。あなたの個性がもっと凡百の物だったらよかったのに」
「そうだったら、あの時ナマエを助けることもなかったし、私たちが恋仲になることもなかったよ、きっと」
「そんなことない。私はあなたの個性を愛したんじゃなくて、あなたそのものを愛したのに」
「私と個性は切り離せないよ…… ナマエ、そろそろ行くね」
「バカッ……ちゃんと戻ってこなかったら許さないんだからねッ……」
「泣かないで、ナマエ……」
やさしくあたたかな私にキスをくれたキャシーは、髪の毛一本、骨の一欠片も残さず死んでしまった。シガラギは倒せなかったが、弱体化はできたという。
正しさを執行するという脳味噌がアドレナリンでひたひたになっている正義中毒のバカが一人いなくなっただけなのに、私は寂しくて仕方ない。彼女が残した歯ブラシ、殉職で特進してもらった勲章、そしてお揃いで買ったネックレスだとかが私の中に楔のように穿ち続ける。
彼女を運んだ戦闘機乗りの方々に、彼女が散ったという海へ連れていってもらった。暗澹として冷たい海。その海水を瓶に汲んで、墓にかけてみたら少しはあの空っぽの墓に信憑性が出るかなと思っていたけど、何にもなかった。どんなにいとしい人であれ、死んでしまったら失ってしまったらそれまでなのだと私は身を以て知った。
「さよなら」
私は誰にも聞こえないような小さな声で別れを告げた。私の中のケジメをつけるために、キャシーがもういなくなってしまったんだと自分の中に刻むように、静かに。日本の人々は、ヒーローぐらいしか彼女が自国のために死んでいったと知る人はいないだろう。それがどうにも悔しかったけど、恩着せがましく宣うのはきっとキャシーは嫌がるだろうから黙って帰ることにした。まだ瓦礫の山や、愛する人の死など傷だらけの人たちばかりだったけど、諦めようとしてはいなかった。
ひだまりの中、赤ん坊がお父さんに抱かれて笑っている。炊き出しの列は途切れないけど、絶望のあまり道端で座り込む人に食べ物を渡す人がいる。彼女が守った幸せたちが、この小さな島国で芽吹き始めているのを見届けて、私は日本を去った。
2022/10/15
傷つく君は人間だったね #ヒロアカ #夢小説 #女夢主 #スターアンドストライプ
傷つく君は人間だったね #ヒロアカ #夢小説 #女夢主 #スターアンドストライプ
「それはあなたが女の子だからだよ、キャシー」
「…… ナマエ、もうそれを言うのはやめて」
この言葉がいちばんキャシーを傷つけることがわかっていて、私は言葉を重ねる。それでもキャシーは私から離れていかないと驕り昂り、私は言葉を連ねる。
「でも、本当のことだよ。次は死んじゃうかもしれない。あなたが憧れている師がいるのはわかるけど、その人は男の人で、わたしたちとは違うんだよ」
「何も違わない。性別のせいにしてなにもかもあきらめているのは名前の方だよ」
「昔々、オリンピックっていうスポーツのお祭りがあったというじゃない。あれはなぜ男女で別れていたかわかる?男と女には埋めがたい差があるからだよ」
「…… ナマエはそうやって諦める理由を捏ね回していればいいさ」
呆れたように吐き捨てて、私との会話を終えるキャシー。そんなキャシーが次の日には髪の毛一本残さず死んでしまうなんて誰が想像するだろう。
日本のヴィランは日本のヒーローに任せておけばいいし、日本が産んだ怪物をアメリカが助けてやる義理はないと何度も言ったはずなのに、キャシーは師のために、日本のために、世界のために美しく散っていった。
日本にはカミカゼという言葉があるらしい。国難に神が風を吹かせて救ってくださるらしい。ならばなぜキャシーの死に際吹いてくださらなかった。
放っておいてもカミカゼだなんだと言いながら滅んでいく民族のことなんか知ったことじゃない。
でも、こんな理屈キャシーは一笑に付して戦闘機に立ち、困っている人がいるから助けに行くだなんて自己犠牲のお笑い草にみずからなりにいく。
そんなところが好きなんだけど、死んでしまったら何にもならないじゃない。軽すぎる棺にキャシーは宿っただろうか。魂くらいは、帰ってきてほしいものだけど。
お題は天文学様より
2022/7/13
「それはあなたが女の子だからだよ、キャシー」
「…… ナマエ、もうそれを言うのはやめて」
この言葉がいちばんキャシーを傷つけることがわかっていて、私は言葉を重ねる。それでもキャシーは私から離れていかないと驕り昂り、私は言葉を連ねる。
「でも、本当のことだよ。次は死んじゃうかもしれない。あなたが憧れている師がいるのはわかるけど、その人は男の人で、わたしたちとは違うんだよ」
「何も違わない。性別のせいにしてなにもかもあきらめているのは名前の方だよ」
「昔々、オリンピックっていうスポーツのお祭りがあったというじゃない。あれはなぜ男女で別れていたかわかる?男と女には埋めがたい差があるからだよ」
「…… ナマエはそうやって諦める理由を捏ね回していればいいさ」
呆れたように吐き捨てて、私との会話を終えるキャシー。そんなキャシーが次の日には髪の毛一本残さず死んでしまうなんて誰が想像するだろう。
日本のヴィランは日本のヒーローに任せておけばいいし、日本が産んだ怪物をアメリカが助けてやる義理はないと何度も言ったはずなのに、キャシーは師のために、日本のために、世界のために美しく散っていった。
日本にはカミカゼという言葉があるらしい。国難に神が風を吹かせて救ってくださるらしい。ならばなぜキャシーの死に際吹いてくださらなかった。
放っておいてもカミカゼだなんだと言いながら滅んでいく民族のことなんか知ったことじゃない。
でも、こんな理屈キャシーは一笑に付して戦闘機に立ち、困っている人がいるから助けに行くだなんて自己犠牲のお笑い草にみずからなりにいく。
そんなところが好きなんだけど、死んでしまったら何にもならないじゃない。軽すぎる棺にキャシーは宿っただろうか。魂くらいは、帰ってきてほしいものだけど。
お題は天文学様より
2022/7/13
ifのない世界 #ヒロアカ #カップリング #荼炎 #燈炎
ifのない世界 #ヒロアカ #カップリング #荼炎 #燈炎
僕の名前は、轟燈矢。
お父さんと、お母さんと、僕の三人暮らし。仲の良いお父さんとお母さん、そしてその二人の唯一の宝である俺。何も欠けない幸せ。プロヒーローであるお父さんは過保護なくらい僕を気にしていて、ちょっと鬱陶しいくらい……
だいたいわかってくるだよ。
自分が見る夢の傾向が。
あれだけのことをされていながら、俺はいつだってお父さんに必要とされたいと心のどこかで願っている。俺の個性に満足して次のガチャを回さないで、俺の性能が気に食わなかったからってボックスに閉じ込めないでと俺の中のかわいそうな子供が泣いている。俺はもう泣いてやれないから、他の方法で感情を表すしかない。例えば怒り。
俺はこうして人を理不尽に焼いていれば、いつかお父さんが俺のこと見つけれくれるんじゃないかって思っていた。
でも、いつからか期待は俺を苦しめるだけだとわかったので俺は俺のために人を殺すことにした。俺が強くなったと、俺の火力がより一層強力になったと証明するための試験紙としての、殺し。
だから、捕まって人を殺したことへの謝罪をして欲しそうな時はどうしたらいいかわからなかった。悲しそうな顔をして、謝罪の言葉を並べたら幾分スッキリしたんだろうか。
でもでも、俺が殺した人たちにお父さんがひどい中傷を受けていると聞いたときには、俺がしてきたことは結果的にお父さんを苛んでいるかと思うと目的を達成していると言えるのかもしれない。
どんなやり方だったとしても、結果への道をあきらめない。そう、だって俺、努力《エンデヴァー》の息子だし。ね。
僕の名前は、轟燈矢。
お父さんと、お母さんと、僕の三人暮らし。仲の良いお父さんとお母さん、そしてその二人の唯一の宝である俺。何も欠けない幸せ。プロヒーローであるお父さんは過保護なくらい僕を気にしていて、ちょっと鬱陶しいくらい……
だいたいわかってくるだよ。
自分が見る夢の傾向が。
あれだけのことをされていながら、俺はいつだってお父さんに必要とされたいと心のどこかで願っている。俺の個性に満足して次のガチャを回さないで、俺の性能が気に食わなかったからってボックスに閉じ込めないでと俺の中のかわいそうな子供が泣いている。俺はもう泣いてやれないから、他の方法で感情を表すしかない。例えば怒り。
俺はこうして人を理不尽に焼いていれば、いつかお父さんが俺のこと見つけれくれるんじゃないかって思っていた。
でも、いつからか期待は俺を苦しめるだけだとわかったので俺は俺のために人を殺すことにした。俺が強くなったと、俺の火力がより一層強力になったと証明するための試験紙としての、殺し。
だから、捕まって人を殺したことへの謝罪をして欲しそうな時はどうしたらいいかわからなかった。悲しそうな顔をして、謝罪の言葉を並べたら幾分スッキリしたんだろうか。
でもでも、俺が殺した人たちにお父さんがひどい中傷を受けていると聞いたときには、俺がしてきたことは結果的にお父さんを苛んでいるかと思うと目的を達成していると言えるのかもしれない。
どんなやり方だったとしても、結果への道をあきらめない。そう、だって俺、努力《エンデヴァー》の息子だし。ね。
泥の底 #ヒロアカ #夢小説 #だいなま
泥の底 #ヒロアカ #夢小説 #だいなま
⚠️暴力表現
⚠️生き物への加害
鳴き声が「クソが」なんて、この世界に生きる生き物として不遇すぎる。それが私が抱いた感想だった。この小さな生き物が罵倒の意味をもってこんな言葉を吐いているとは考えにくい。ただ、鳴き声がこの言語圏で意味をもってしまっているばかりに、この生き物は鬱屈した害意を一身に受けている。
一身に、という表現は危ういかもしれない。一つの種族が、「想像の及ぶかぎり悪いことをしてもいいもの」と大多数が判断して、普段敵からいいように押し込められたフラストレーションをぶつけられているのだ。
本邦では天地開闢の昔から、多数がしている行動に対して善悪の意識が働きにくいように思える。最悪の組み合わせだ。
動物の死骸は適切に処理しないといけないのに、だいなまは動物だとも判断されず生ゴミとしてゴミに出される。今日もどこかの家のゴミ袋にだいなまと思しき破片(身体のパーツ)がのぞいている。あわれだいなまは、痛みを感じ、感情を持ち、ある程度の知性を持つ。それを虐げ、およそ生き物にするべきではない加害の蠱毒にだいなまを浸して喜ぶ。弱りゆく鳴き声を聞いて心を潤し、助けを読んでいるであろう鳴き声が……生きているのに助けが来ないと察し、悲鳴すら出さずに命の灯火をゆらめかせ、そして消えるのを恍惚の目で眺めた。それが社会の弱者であり、ピラミッドの限りなく底に位置する、個性が強く発現しなかったものの生存戦略なのだということだろうか。
自分が底に沈殿する不要物でないと証明することこそ、弱く、助けを呼ぶ力がなく、他者を貶す言葉を鳴き声として持つ生き物を苦しめて殺すことが、弱く生まれた人間の心のオアシスなのだとしたら、誰が彼らを責められようか。
いや、責められるべきなのだ。
一方的に虐げられる生き物があってはならない。それは普遍の真理だろう。真理というより、倫理であろう。
誰もが正しく在りたいという善性を宿しているはずなのに、善性はあまりに脆く儚い。だいなまという都合のいい悪意の矛先を、神は何のために遣わせたのか。なぜだいなまは、悪意の矛で全身を貫かれた姿を民衆に喜ばれなくてはならないのか。それは私がだいなまを虐げる側の人間の属性から彼らを見ているからそう思うのであって、今なお暴力にその身を生きながらにして焼かれているだいなまにとっては、そんなことを考える余裕はなく、どうにかしてこの状況から逃れる術を探しているのだろう。
ああ、哀れなだいなま。
願わくば、彼らを守る法が早急に成立すること……いや、この誰もが命の危険に晒されるストレスを感じる生活が終わりを告げてくれれば一番いいのだが。
夜明け前が一番暗いというが、だいなまにとってはずぅっと夜のままだ。ああ、哀れなだいなま。優しく抱きとめられ、愛されるのはほんの一部の個体だという。あのひどい鳴き声に耐えられる心の広い人間に見つかるという運のめぐりあわせがよければ、あるいは、だいなまは……
2023/3/21
⚠️暴力表現
⚠️生き物への加害
鳴き声が「クソが」なんて、この世界に生きる生き物として不遇すぎる。それが私が抱いた感想だった。この小さな生き物が罵倒の意味をもってこんな言葉を吐いているとは考えにくい。ただ、鳴き声がこの言語圏で意味をもってしまっているばかりに、この生き物は鬱屈した害意を一身に受けている。
一身に、という表現は危ういかもしれない。一つの種族が、「想像の及ぶかぎり悪いことをしてもいいもの」と大多数が判断して、普段敵からいいように押し込められたフラストレーションをぶつけられているのだ。
本邦では天地開闢の昔から、多数がしている行動に対して善悪の意識が働きにくいように思える。最悪の組み合わせだ。
動物の死骸は適切に処理しないといけないのに、だいなまは動物だとも判断されず生ゴミとしてゴミに出される。今日もどこかの家のゴミ袋にだいなまと思しき破片(身体のパーツ)がのぞいている。あわれだいなまは、痛みを感じ、感情を持ち、ある程度の知性を持つ。それを虐げ、およそ生き物にするべきではない加害の蠱毒にだいなまを浸して喜ぶ。弱りゆく鳴き声を聞いて心を潤し、助けを読んでいるであろう鳴き声が……生きているのに助けが来ないと察し、悲鳴すら出さずに命の灯火をゆらめかせ、そして消えるのを恍惚の目で眺めた。それが社会の弱者であり、ピラミッドの限りなく底に位置する、個性が強く発現しなかったものの生存戦略なのだということだろうか。
自分が底に沈殿する不要物でないと証明することこそ、弱く、助けを呼ぶ力がなく、他者を貶す言葉を鳴き声として持つ生き物を苦しめて殺すことが、弱く生まれた人間の心のオアシスなのだとしたら、誰が彼らを責められようか。
いや、責められるべきなのだ。
一方的に虐げられる生き物があってはならない。それは普遍の真理だろう。真理というより、倫理であろう。
誰もが正しく在りたいという善性を宿しているはずなのに、善性はあまりに脆く儚い。だいなまという都合のいい悪意の矛先を、神は何のために遣わせたのか。なぜだいなまは、悪意の矛で全身を貫かれた姿を民衆に喜ばれなくてはならないのか。それは私がだいなまを虐げる側の人間の属性から彼らを見ているからそう思うのであって、今なお暴力にその身を生きながらにして焼かれているだいなまにとっては、そんなことを考える余裕はなく、どうにかしてこの状況から逃れる術を探しているのだろう。
ああ、哀れなだいなま。
願わくば、彼らを守る法が早急に成立すること……いや、この誰もが命の危険に晒されるストレスを感じる生活が終わりを告げてくれれば一番いいのだが。
夜明け前が一番暗いというが、だいなまにとってはずぅっと夜のままだ。ああ、哀れなだいなま。優しく抱きとめられ、愛されるのはほんの一部の個体だという。あのひどい鳴き声に耐えられる心の広い人間に見つかるという運のめぐりあわせがよければ、あるいは、だいなまは……
2023/3/21
路傍の石風情が、星になりたいと願うなんて #ヒロアカ #夢小説 #男夢主 #八木俊典
路傍の石風情が、星になりたいと願うなんて #ヒロアカ #夢小説 #男夢主 #八木俊典
俺が一番になりたいって言えなかったから、今この現実が俺に与えられるってわけ。一番になりたい、って言ってたら結ばれたかというとそうでもないだろう。けどこんなに執着することだってなかったはずだ。
テレビやSNSで活躍を知るたびに胸が締め付けられる。ネットで叩かれてるのを見るたびに怒りに震えた。彼の手は二本しか生えてないのだから、みんなを救いきれるはずがないのに、救われなかった奴らが恨みを抱いている。
八木だって、一人の人間なんだよ。
今、あんなふうに目に見えるもの全て救おうとする彼を見てると信じられないかもしれないけど、人間なんだよ。俺みたいに、ヒーロー科まで出たのに怪我で活動できなくなったやつのことまで覚えていて、救ってくれようとするんだから。
「ナマエくん、調子はどうだい?」
「ああ、ダメ。もうヒーローはできないよ。俺これからどうやって生きればいいんだろ。ヒーロー科みたいな単科高校出てたら、仕事なんて見つからないよ。ヒーローやらないヒーローって、何?」
せっかく訪ねてくれた八木に、俺は饒舌に絶望を吐いた。そんなこと休みの日にまで聞きたくないだろうに、八木はやさしく微笑んで、俺の肩に手を乗せた。
「ナマエくん。前線に立っているだけがヒーローじゃない。敵と戦うだけがヒーローじゃない。大丈夫!ナマエくんのような人あたりのいい人はどこでだって重宝されるよ」
「ナンバーワンヒーローにお墨付きもらったんなら、励みになるな」
「元気なナマエくんとまた一緒に活動できたらうれしいな」
そう言って笑った八木は、十年以上の時を経て痩せほそった姿でテレビに映し出された。オールマイトの時代が終わったと強調するアナウンサーの言葉が俺の心に深く突き刺さった。
俺を励ましてから、いやそれよりずっと前から八木は傷ついていて、でもその傷のこと誰にも言えてなかったんだよな。無論、俺にも。
学校では結構仲良くしていたつもりなんだけどな、その程度だったのか。八木から俺に対する信頼なんて。八木のことだから、巻き込まないためだなんて言いそうだけど、わかるだろ。ヒーローなら。大切なひとが辛い時、辛いと言ってくれないことのほうが辛いって。
この戦いが終わったら、また八木に連絡してみようかな。酒でも飲んで、そしたらまた、腹を割って話せるかもしれないし。希望は捨てない。だってヒーローが希望を失ったら、誰が希望を、綺麗事を、理想を語るんだっての。
俺が一番になりたいって言えなかったから、今この現実が俺に与えられるってわけ。一番になりたい、って言ってたら結ばれたかというとそうでもないだろう。けどこんなに執着することだってなかったはずだ。
テレビやSNSで活躍を知るたびに胸が締め付けられる。ネットで叩かれてるのを見るたびに怒りに震えた。彼の手は二本しか生えてないのだから、みんなを救いきれるはずがないのに、救われなかった奴らが恨みを抱いている。
八木だって、一人の人間なんだよ。
今、あんなふうに目に見えるもの全て救おうとする彼を見てると信じられないかもしれないけど、人間なんだよ。俺みたいに、ヒーロー科まで出たのに怪我で活動できなくなったやつのことまで覚えていて、救ってくれようとするんだから。
「ナマエくん、調子はどうだい?」
「ああ、ダメ。もうヒーローはできないよ。俺これからどうやって生きればいいんだろ。ヒーロー科みたいな単科高校出てたら、仕事なんて見つからないよ。ヒーローやらないヒーローって、何?」
せっかく訪ねてくれた八木に、俺は饒舌に絶望を吐いた。そんなこと休みの日にまで聞きたくないだろうに、八木はやさしく微笑んで、俺の肩に手を乗せた。
「ナマエくん。前線に立っているだけがヒーローじゃない。敵と戦うだけがヒーローじゃない。大丈夫!ナマエくんのような人あたりのいい人はどこでだって重宝されるよ」
「ナンバーワンヒーローにお墨付きもらったんなら、励みになるな」
「元気なナマエくんとまた一緒に活動できたらうれしいな」
そう言って笑った八木は、十年以上の時を経て痩せほそった姿でテレビに映し出された。オールマイトの時代が終わったと強調するアナウンサーの言葉が俺の心に深く突き刺さった。
俺を励ましてから、いやそれよりずっと前から八木は傷ついていて、でもその傷のこと誰にも言えてなかったんだよな。無論、俺にも。
学校では結構仲良くしていたつもりなんだけどな、その程度だったのか。八木から俺に対する信頼なんて。八木のことだから、巻き込まないためだなんて言いそうだけど、わかるだろ。ヒーローなら。大切なひとが辛い時、辛いと言ってくれないことのほうが辛いって。
この戦いが終わったら、また八木に連絡してみようかな。酒でも飲んで、そしたらまた、腹を割って話せるかもしれないし。希望は捨てない。だってヒーローが希望を失ったら、誰が希望を、綺麗事を、理想を語るんだっての。
檸檬(レモン)、そして絆 #ヒロアカ #カップリング #荼炎 #荼炎 #燈炎
檸檬(レモン)、そして絆 #ヒロアカ #カップリング #荼炎 #荼炎 #燈炎
高村光太郎「智恵子抄」
梶井基次郎「檸檬」
をうっすらオマージュしてます
誰もが口々に自らの息子の死を願うというなら、親である俺に何がしてやれるだろう。何かしてやる、という仮定からして間違っていてしてやるのではなく、しなければならないのだと思う。子の罪は親が雪ぐ。世間からしてみれば当たり前のことだが、胃を苛んでやまない。燈矢のことが面倒になったわけではない。もちろんそんなことはあり得ない。あの焼け野原になった小山とその裾野を幾度歩き、名前を呼んでも答えなかった子がどんな形であれ戻ったのだから、うれしいにきまっている。
新しい家に夏雄と冬美、そして焦凍、冷を住まわせて、この二人で暮らすには広すぎる日本家屋に燈矢と二人で住んでいる。
燈矢は意志の強さで今まで体を支えていたようなものだというのが医師の見解で、こうして上半身を上げて本を読むことができるということが奇跡だという。何度も奇跡を乗り越えて、燈矢は三度目の冬を迎える。
荼毘と名乗り罪なき人を焼き殺した燈矢は、その頃の粗暴な言動をどこへやったのか、記憶の中の燈矢が穏やかに成長すればこのようになるであろうと想定した通りの優しげな、棘のない青年となっている。焦凍が来るとそうもいかないらしいが、想像がつかない。
燈矢は本を貪るように読んでいる。特段好みはないらしく、書店で平積みになっているものを買って与えたら特段何も言わずに黙々と読んでいる。本が好きな冬美と話が合うらしく、冬美の本を貸すこともあるという。けれど個性の調整が前ほどうまく行かず、冬美ちゃんの本を燃やしてしまうのは嫌だから、お父さんが買って欲しいと言われた。そのくらいならいくらでも買ってやる。あさましいことだが、それで少し救われた気になっていた。
冬美が連れてきた婚約者には、燈矢さんのこともありますし、疎遠になるかと思いますと初対面で言われてしまう始末だった。婚約者からしてみれば、近親者に人殺しがいるという時点でマイナスなのだろうけれど、自分が犯した罪の重さを再度確認させられているようで、胃がじわじわと苛んだ。生涯償い続けるといえば威勢がいいが、そうもいかない。真綿で締められるような苦しみとはこのようなことを言うのだと思う。胃薬は手放せないものとなったり、食事が喉を通らなくなり、以前のような力も出せない。片手がないぶん不自由も増えた。いつしか、人生の選択肢に引退と死がよぎるようになってきた。今となっては逃げだとか、錯乱していると考えることができるが、当時はそのような考えには至らなかった。そのうちどちらが魅力的に映ったかといえば、死の方だった。
夜中、喉の渇きを覚えて台所に立つと、何かを引きずるような音を聞いた。燈矢だった。
「どうした、こんな夜遅くに。歩けるようになったのか」
答えはなかった。正確には声帯まで焼けてしまっているため声が出ないという。器用にスマホで文字を入力して、薄ぼんやり光る画面を見せてきた。老眼が進んできた目をどうにか合わせて、画面を読む。
『夏くんが都合つく土日に、歩く練習をしてる』
「夏が? そうか、よかった」
『お父さん、レモンが食べたい』
本を欲する以外に、燈矢と再会してからはじめてのおねだりだった。深夜二時。やっている店といえばコンビニしかないが、飲み屋街のコンビニには酒に入れるためのレモンが売っていると聞いたことがある。燈矢がいままで俺にねだったのは修行だけだった。家族旅行も、流行りのおもちゃも欲しがらず友達の一人もつくらずに修行に明け暮れた。そんな燈矢の願い、叶えてないわけにはいかなかった。
コートを片手なしで着るのにも慣れており、マフラーを巻いて寒風吹き荒ぶ街に出た。しんしんと冷える冬空は星に満ちており、そういえば冬美が生まれたときもこんな寒い日だったと思い返した。
レモンは、と聞くともう無いですね、と言われたりうちには置いてないですと言われたり。燈矢がやっと心を許し、してくれたおねだりを早く叶えてやりたいと思うのは親の性だろうか、それとも罪滅ぼしだろうか。五件目でやっとひとつ、つやりとまぶしく蛍光灯の光を弾くレモンを買うことができた。片手で収まる果実を潰さないようにポケットに入れ、店を出た。現金で買い物をする人は年々減っているらしく、店内で人を探してやっと見つけた店員が面倒そうに会計をしてくれた。
『遅い』
「ああ、悪い燈矢……なかなか見つからなくてな。すぐに洗ってくるから、待ってろ。切ってやろうか?」
『いい』
俺が洗ってきたレモンを受け取るや否や、その白い歯がさくりとその鮮やかな黄色を穿った。燈矢は顔を顰めてひとつ咳をすると、もう一口齧った。
『お父さんも』
そう言って歯型がならぶ皮に、思い切って歯を立てた。燈矢が顔を顰めたとおり、酸味が味蕾をとおして脳に届く。
「酸っぱいな」
『お母さんがくれたレモン味の飴、美味しかったからレモンも食べたくなってさ。ありがとう』
それだけ残し、燈矢は歯を立てては顔を顰めを繰り返しながら寝室に戻っていった。
緊張がとけたのか、俺はほっと息をついた。
それからしばらくして、燈矢は帰らぬ人となった。世間は罰を受けずに死んでしまったと非難轟々だったが、燈矢はもう十分苦しんだ。ただしくは俺が苦しませたのだが、燈矢が受けるべきだった苦しみは俺が代わりに苦しむことで、世間には許しを乞い続けることにした。
親子の絆など、おこがましいことだが俺と燈矢に残った絆とはこの罪であり、罰であるのだと思う。他の親子がもつようなが持つようなうつくしい形をしていなくても、これこそが死がふたりを分つとも絶えることのない絆なのだと解釈する。
さよなら燈矢、もう少しだけ待っていてくれと墓石を撫でながら独りごつ。そんな石になってからじゃなくて、生きている間にこうして頭を撫でてやればよかったと後悔するが、燈矢はきっと地獄に下る俺を待っていてくれるような気がする。その時でも遅くはないだろう。春の兆しを見せる寒空を見上げ、レモンの果実とレモン味の飴を残して墓を後にした。
2022/7
高村光太郎「智恵子抄」
梶井基次郎「檸檬」
をうっすらオマージュしてます
誰もが口々に自らの息子の死を願うというなら、親である俺に何がしてやれるだろう。何かしてやる、という仮定からして間違っていてしてやるのではなく、しなければならないのだと思う。子の罪は親が雪ぐ。世間からしてみれば当たり前のことだが、胃を苛んでやまない。燈矢のことが面倒になったわけではない。もちろんそんなことはあり得ない。あの焼け野原になった小山とその裾野を幾度歩き、名前を呼んでも答えなかった子がどんな形であれ戻ったのだから、うれしいにきまっている。
新しい家に夏雄と冬美、そして焦凍、冷を住まわせて、この二人で暮らすには広すぎる日本家屋に燈矢と二人で住んでいる。
燈矢は意志の強さで今まで体を支えていたようなものだというのが医師の見解で、こうして上半身を上げて本を読むことができるということが奇跡だという。何度も奇跡を乗り越えて、燈矢は三度目の冬を迎える。
荼毘と名乗り罪なき人を焼き殺した燈矢は、その頃の粗暴な言動をどこへやったのか、記憶の中の燈矢が穏やかに成長すればこのようになるであろうと想定した通りの優しげな、棘のない青年となっている。焦凍が来るとそうもいかないらしいが、想像がつかない。
燈矢は本を貪るように読んでいる。特段好みはないらしく、書店で平積みになっているものを買って与えたら特段何も言わずに黙々と読んでいる。本が好きな冬美と話が合うらしく、冬美の本を貸すこともあるという。けれど個性の調整が前ほどうまく行かず、冬美ちゃんの本を燃やしてしまうのは嫌だから、お父さんが買って欲しいと言われた。そのくらいならいくらでも買ってやる。あさましいことだが、それで少し救われた気になっていた。
冬美が連れてきた婚約者には、燈矢さんのこともありますし、疎遠になるかと思いますと初対面で言われてしまう始末だった。婚約者からしてみれば、近親者に人殺しがいるという時点でマイナスなのだろうけれど、自分が犯した罪の重さを再度確認させられているようで、胃がじわじわと苛んだ。生涯償い続けるといえば威勢がいいが、そうもいかない。真綿で締められるような苦しみとはこのようなことを言うのだと思う。胃薬は手放せないものとなったり、食事が喉を通らなくなり、以前のような力も出せない。片手がないぶん不自由も増えた。いつしか、人生の選択肢に引退と死がよぎるようになってきた。今となっては逃げだとか、錯乱していると考えることができるが、当時はそのような考えには至らなかった。そのうちどちらが魅力的に映ったかといえば、死の方だった。
夜中、喉の渇きを覚えて台所に立つと、何かを引きずるような音を聞いた。燈矢だった。
「どうした、こんな夜遅くに。歩けるようになったのか」
答えはなかった。正確には声帯まで焼けてしまっているため声が出ないという。器用にスマホで文字を入力して、薄ぼんやり光る画面を見せてきた。老眼が進んできた目をどうにか合わせて、画面を読む。
『夏くんが都合つく土日に、歩く練習をしてる』
「夏が? そうか、よかった」
『お父さん、レモンが食べたい』
本を欲する以外に、燈矢と再会してからはじめてのおねだりだった。深夜二時。やっている店といえばコンビニしかないが、飲み屋街のコンビニには酒に入れるためのレモンが売っていると聞いたことがある。燈矢がいままで俺にねだったのは修行だけだった。家族旅行も、流行りのおもちゃも欲しがらず友達の一人もつくらずに修行に明け暮れた。そんな燈矢の願い、叶えてないわけにはいかなかった。
コートを片手なしで着るのにも慣れており、マフラーを巻いて寒風吹き荒ぶ街に出た。しんしんと冷える冬空は星に満ちており、そういえば冬美が生まれたときもこんな寒い日だったと思い返した。
レモンは、と聞くともう無いですね、と言われたりうちには置いてないですと言われたり。燈矢がやっと心を許し、してくれたおねだりを早く叶えてやりたいと思うのは親の性だろうか、それとも罪滅ぼしだろうか。五件目でやっとひとつ、つやりとまぶしく蛍光灯の光を弾くレモンを買うことができた。片手で収まる果実を潰さないようにポケットに入れ、店を出た。現金で買い物をする人は年々減っているらしく、店内で人を探してやっと見つけた店員が面倒そうに会計をしてくれた。
『遅い』
「ああ、悪い燈矢……なかなか見つからなくてな。すぐに洗ってくるから、待ってろ。切ってやろうか?」
『いい』
俺が洗ってきたレモンを受け取るや否や、その白い歯がさくりとその鮮やかな黄色を穿った。燈矢は顔を顰めてひとつ咳をすると、もう一口齧った。
『お父さんも』
そう言って歯型がならぶ皮に、思い切って歯を立てた。燈矢が顔を顰めたとおり、酸味が味蕾をとおして脳に届く。
「酸っぱいな」
『お母さんがくれたレモン味の飴、美味しかったからレモンも食べたくなってさ。ありがとう』
それだけ残し、燈矢は歯を立てては顔を顰めを繰り返しながら寝室に戻っていった。
緊張がとけたのか、俺はほっと息をついた。
それからしばらくして、燈矢は帰らぬ人となった。世間は罰を受けずに死んでしまったと非難轟々だったが、燈矢はもう十分苦しんだ。ただしくは俺が苦しませたのだが、燈矢が受けるべきだった苦しみは俺が代わりに苦しむことで、世間には許しを乞い続けることにした。
親子の絆など、おこがましいことだが俺と燈矢に残った絆とはこの罪であり、罰であるのだと思う。他の親子がもつようなが持つようなうつくしい形をしていなくても、これこそが死がふたりを分つとも絶えることのない絆なのだと解釈する。
さよなら燈矢、もう少しだけ待っていてくれと墓石を撫でながら独りごつ。そんな石になってからじゃなくて、生きている間にこうして頭を撫でてやればよかったと後悔するが、燈矢はきっと地獄に下る俺を待っていてくれるような気がする。その時でも遅くはないだろう。春の兆しを見せる寒空を見上げ、レモンの果実とレモン味の飴を残して墓を後にした。
2022/7
はじめての共同作業(広義)#ヒロアカ #カップリング #荼炎
はじめての共同作業(広義)#ヒロアカ #カップリング #荼炎
死後裁かれる、ってポスターを見つけてからずっと考えてたんだよ。もう俺は人を殺しすぎた。もう裁きからは免れない。
ならできるだけ罪を犯したほうがお得だよなぁ、お父さん?
なんだよ、そんなに怯えることないだろ。俺とセックスするのそんなに嫌なのか?お父さんは俺がどういう感情を向けてきたって、逃げない見続けるってカッコつけてたじゃんかよ。また、嘘つくのかよ。
尻たぶを割り開き、つんと尿のにおいがかおる。尻穴のまわりに生えた毛を引っ張ると大袈裟なくらい身を固くし、それが面白くて俺は大きな声をあげて笑った。
ふ、となでるように手を振るとお父さんの尻毛に火がついて、尻と脚の筋肉がこわばった。火はほんのすこしだけ燃えた後消えた。
「なんかもっと、悲鳴とかあげるのかと思った……あ、口にタオル詰めたんだった」
舌を切ってしまわないように詰めたタオルを取り除いてやっても、何も言わなかった。親っぽいこととか言うかな?と思ったけど何もなかった。ただ黙って、唇を弾き結んでいる。嵐に耐えたら、また日が昇ると信じてるやつみたいで、やまない雨はないと信じているやつみたいで腹が立った。俺の太陽は二度と登らなかったのに。俺に降る雨を防ぐために、傘を持ってたのにくれなかったくせに。
失ったもの、手に入らなかったものをずぅっと欲しがって、諦めることができたらよかったのかもしれないけど、そこはさ、俺だってお父さんの息子だから。
ものはためしでちんこ挿れてみたけど、全然。面白くもなんともない。気持ち良くもない。ただただお父さんが苦しげに呼吸するのを聞いていただけだ。
俺は、お父さんのことを罰したい訳じゃない……ような気がする。でも罪をつぐなってほしい気持ちもある。複雑。俺は、お父さんをどうしたいんだろう。
俺のこと好きになってほしいのかも。大事なものだったって抱きしめてほしいのかも。なんとなくわかっているのに、こうして突き放して、罰してしまう。
すぐに答えを出さなくていいや。俺の命が続く限り、問い続けていたい。俺はお父さんを……どうしたいのか、どうして欲しかったのか。いま、どうしてほしいのか。
お父さんの拘束を解いてやると、ふらふらとトイレまで歩いて行って吐いているみたいだった。かわいそうなお父さん。罪作りなお父さん。俺ともっと作ろうね、罪!
2023/3/17
死後裁かれる、ってポスターを見つけてからずっと考えてたんだよ。もう俺は人を殺しすぎた。もう裁きからは免れない。
ならできるだけ罪を犯したほうがお得だよなぁ、お父さん?
なんだよ、そんなに怯えることないだろ。俺とセックスするのそんなに嫌なのか?お父さんは俺がどういう感情を向けてきたって、逃げない見続けるってカッコつけてたじゃんかよ。また、嘘つくのかよ。
尻たぶを割り開き、つんと尿のにおいがかおる。尻穴のまわりに生えた毛を引っ張ると大袈裟なくらい身を固くし、それが面白くて俺は大きな声をあげて笑った。
ふ、となでるように手を振るとお父さんの尻毛に火がついて、尻と脚の筋肉がこわばった。火はほんのすこしだけ燃えた後消えた。
「なんかもっと、悲鳴とかあげるのかと思った……あ、口にタオル詰めたんだった」
舌を切ってしまわないように詰めたタオルを取り除いてやっても、何も言わなかった。親っぽいこととか言うかな?と思ったけど何もなかった。ただ黙って、唇を弾き結んでいる。嵐に耐えたら、また日が昇ると信じてるやつみたいで、やまない雨はないと信じているやつみたいで腹が立った。俺の太陽は二度と登らなかったのに。俺に降る雨を防ぐために、傘を持ってたのにくれなかったくせに。
失ったもの、手に入らなかったものをずぅっと欲しがって、諦めることができたらよかったのかもしれないけど、そこはさ、俺だってお父さんの息子だから。
ものはためしでちんこ挿れてみたけど、全然。面白くもなんともない。気持ち良くもない。ただただお父さんが苦しげに呼吸するのを聞いていただけだ。
俺は、お父さんのことを罰したい訳じゃない……ような気がする。でも罪をつぐなってほしい気持ちもある。複雑。俺は、お父さんをどうしたいんだろう。
俺のこと好きになってほしいのかも。大事なものだったって抱きしめてほしいのかも。なんとなくわかっているのに、こうして突き放して、罰してしまう。
すぐに答えを出さなくていいや。俺の命が続く限り、問い続けていたい。俺はお父さんを……どうしたいのか、どうして欲しかったのか。いま、どうしてほしいのか。
お父さんの拘束を解いてやると、ふらふらとトイレまで歩いて行って吐いているみたいだった。かわいそうなお父さん。罪作りなお父さん。俺ともっと作ろうね、罪!
2023/3/17
天より高く海より深い愛 #ヒロアカ #カップリング #荼炎 #燈炎
天より高く海より深い愛 #ヒロアカ #カップリング #荼炎 #燈炎
夏は燈矢の瑕から膿が止まらない。
時には肉が縫い目から剥がれて落ちていることすらある。固形物を食べているところを見たことがない。さまざまな要因から、燈矢はもう長くないということを思い知らされる。燈矢もそれがわかっているらしく、刑罰の一種として個性を抑制させる薬をわざと飲まずにおいて、俺を焼き殺そうとする。
一度憎んだ父親が甲斐甲斐しく介護をするのは嫌なのだろう。けれど冷や冬美、夏雄や焦凍にも危害を加えてしまったらそれこそ取り返しがつかない。だからこうして俺の命だけで勘弁してもらおうという腹だ。
そんな浅はかな計略はとっくに見抜かれているらしく、燈矢は俺がどれだけ献身的に世話をしようと、話しかけようとも反応は剣呑なものだった。
「お父さん、俺が早く死ねばいいって思ってるだろ」
「そんなこと思わない。燈矢、俺を信じろ」
「信じろ? 信じて、捨てただろ」
「捨てたわけじゃ」
「結果的に捨ててんの。焦凍が生まれるまでに生んだ命すべてに謝れ」
「燈矢、俺は」
「うるせえッ!!」
罵声ともに、蒼炎が上がる。燈矢の居室はどれだけ塗り直しても焦げが絶えることはない。最初こそ塗り直していたが、有機溶剤に引火してからはそのままにしている。いっそこの炎に巻かれてしまったら燈矢は気分がスッキリするだろうかなんて考えて炎に触れようとしたら、ふっ、と炎は消えた。
「死ぬぞ」
「……」
「お父さん、お前は生きて償い続けないといけない。死ぬなんて、俺が許さない。俺が死んでも、死ぬな。後追いなんかして楽になろうとするなよ」
「わかっている、わかっているが……」
「どうしても辛くて、生きていたくないなら……その時は俺が殺してやるよ」
燈矢は、修行をせがんで俺の手を引いていた時と同じ笑顔でそう言った。
2022/7/29
夏は燈矢の瑕から膿が止まらない。
時には肉が縫い目から剥がれて落ちていることすらある。固形物を食べているところを見たことがない。さまざまな要因から、燈矢はもう長くないということを思い知らされる。燈矢もそれがわかっているらしく、刑罰の一種として個性を抑制させる薬をわざと飲まずにおいて、俺を焼き殺そうとする。
一度憎んだ父親が甲斐甲斐しく介護をするのは嫌なのだろう。けれど冷や冬美、夏雄や焦凍にも危害を加えてしまったらそれこそ取り返しがつかない。だからこうして俺の命だけで勘弁してもらおうという腹だ。
そんな浅はかな計略はとっくに見抜かれているらしく、燈矢は俺がどれだけ献身的に世話をしようと、話しかけようとも反応は剣呑なものだった。
「お父さん、俺が早く死ねばいいって思ってるだろ」
「そんなこと思わない。燈矢、俺を信じろ」
「信じろ? 信じて、捨てただろ」
「捨てたわけじゃ」
「結果的に捨ててんの。焦凍が生まれるまでに生んだ命すべてに謝れ」
「燈矢、俺は」
「うるせえッ!!」
罵声ともに、蒼炎が上がる。燈矢の居室はどれだけ塗り直しても焦げが絶えることはない。最初こそ塗り直していたが、有機溶剤に引火してからはそのままにしている。いっそこの炎に巻かれてしまったら燈矢は気分がスッキリするだろうかなんて考えて炎に触れようとしたら、ふっ、と炎は消えた。
「死ぬぞ」
「……」
「お父さん、お前は生きて償い続けないといけない。死ぬなんて、俺が許さない。俺が死んでも、死ぬな。後追いなんかして楽になろうとするなよ」
「わかっている、わかっているが……」
「どうしても辛くて、生きていたくないなら……その時は俺が殺してやるよ」
燈矢は、修行をせがんで俺の手を引いていた時と同じ笑顔でそう言った。
2022/7/29
DABI NEVER DIE! #ヒロアカ #カップリング #荼炎 #燈炎
DABI NEVER DIE! #ヒロアカ #カップリング #荼炎 #燈炎
人はいつ死ぬのか。
お父さんにたんまりかけたガソリンの臭さに辟易しながらも、俺はそんなことを考えた。病院には、たくさんの死にかけた人間たちのうめきで満たされていて、そのどれもが生きてはいなかった。俺もその一員となってうめきの波間に揺られていたんだけど、俺はこんなふうに死にたくないと思って一念発起して今は思い出の瀬古渡にいる。
俺はそうだなあ……俺の次の子ガチャが回された時、お母さんが次の子供を妊娠したと知った時死んでしまったんだと思う。俺を見限って俺があこがれた世界から遠ざけられなんの面白みもない人生を歩めといわれた時に……そして……焦凍が生まれて俺の息の根は止まってしまった。
お父さんはいつ死ぬのか。
俺が今少しでも火を出してしまえばお父さんは火だるまになって死んでしまうんだけど、そうじゃない。お父さんは俺が殺した。荼毘が全世界に向けてお父さんの非道を晒してしまったことで、ヒーローとしてのお父さんは死んでしまった。
俺が殺してしまったのだと気づいた時、感じていたのは脳を突くよろこびと虚しさだった。守るはずの民衆から唾はかれて罵声を浴びせられ、ザマアミロ、俺を蔑ろにするからそんな目に遭うんだと思ったけどよろこびは風船がしぼんでいくみたいに小さくなっていった。俺はお父さんをどうしたかったんだろう。一人で修行した成果を見て欲しかったのかな。お父さんが焦凍じゃなくて俺を選んで教育し直すっていう夢はたくさん見たけど、それが俺の深層心理だなんて信じたくない。
ガソリンが鼻に入ってしまったらしくむせているけど口はガムテープで塞がっていて苦しそうにもぞもぞしているお父さん。情けなくて、かわいそう。俺はお父さんのでかいケツを蹴り飛ばして天を仰いだ。月のないいい夜だ。さぞお父さんを燃やした炎がうつくしく映えるだろう。
しばらく、酒を飲みながらガソリンまみれのお父さんを眺めていた。
抵抗するそぶりは見せなかった。黙って横になって、まるで点火を待っているかのようだった。憎しみで、怒りでいっぱいだった俺なら迷いなくつけただろうけど、今の俺はなんだか頭がぼんやり霧がかかったようにまとまらない。
死んでしまったらこの世で受ける罰は全て放り投げて逝けると思っているのだろうか。そうだったら、悔しい。お父さんの罪の具現である俺が生きてるのに、罪を犯した張本人が死んで楽になってどうするんだよ。俺は思い直して公園の水道までお父さんを引きずっていき、石鹸で雑に洗い流した。
「許してくれるのか……?」
「んなわけねーだろボケが。生きて罪をすすげ」
「復讐を果たした方が燈矢の気が晴れるかと思ったが」
「俺は、今の気分はそうじゃなかった。今後殺したくなった時は殺されて」
「……わかった」
「生きてる方が苦しいことだってあるから。俺はそれを見て気を晴らすよ」
「そうか……」
「今日は帰ろう」
そう言って、お父さんお抱えの運転手さんに来てもらって家に帰った。ガソリン臭いお父さんを車に迎え入れても何も言及しないあたりプロだなあって思う。びしょ濡れで何処か虚な目をして外を見ているお父さんが可愛くって、ほんとゾクゾクしちゃった。サイコーすぎる!もっとやろう!
2022/11/6
人はいつ死ぬのか。
お父さんにたんまりかけたガソリンの臭さに辟易しながらも、俺はそんなことを考えた。病院には、たくさんの死にかけた人間たちのうめきで満たされていて、そのどれもが生きてはいなかった。俺もその一員となってうめきの波間に揺られていたんだけど、俺はこんなふうに死にたくないと思って一念発起して今は思い出の瀬古渡にいる。
俺はそうだなあ……俺の次の子ガチャが回された時、お母さんが次の子供を妊娠したと知った時死んでしまったんだと思う。俺を見限って俺があこがれた世界から遠ざけられなんの面白みもない人生を歩めといわれた時に……そして……焦凍が生まれて俺の息の根は止まってしまった。
お父さんはいつ死ぬのか。
俺が今少しでも火を出してしまえばお父さんは火だるまになって死んでしまうんだけど、そうじゃない。お父さんは俺が殺した。荼毘が全世界に向けてお父さんの非道を晒してしまったことで、ヒーローとしてのお父さんは死んでしまった。
俺が殺してしまったのだと気づいた時、感じていたのは脳を突くよろこびと虚しさだった。守るはずの民衆から唾はかれて罵声を浴びせられ、ザマアミロ、俺を蔑ろにするからそんな目に遭うんだと思ったけどよろこびは風船がしぼんでいくみたいに小さくなっていった。俺はお父さんをどうしたかったんだろう。一人で修行した成果を見て欲しかったのかな。お父さんが焦凍じゃなくて俺を選んで教育し直すっていう夢はたくさん見たけど、それが俺の深層心理だなんて信じたくない。
ガソリンが鼻に入ってしまったらしくむせているけど口はガムテープで塞がっていて苦しそうにもぞもぞしているお父さん。情けなくて、かわいそう。俺はお父さんのでかいケツを蹴り飛ばして天を仰いだ。月のないいい夜だ。さぞお父さんを燃やした炎がうつくしく映えるだろう。
しばらく、酒を飲みながらガソリンまみれのお父さんを眺めていた。
抵抗するそぶりは見せなかった。黙って横になって、まるで点火を待っているかのようだった。憎しみで、怒りでいっぱいだった俺なら迷いなくつけただろうけど、今の俺はなんだか頭がぼんやり霧がかかったようにまとまらない。
死んでしまったらこの世で受ける罰は全て放り投げて逝けると思っているのだろうか。そうだったら、悔しい。お父さんの罪の具現である俺が生きてるのに、罪を犯した張本人が死んで楽になってどうするんだよ。俺は思い直して公園の水道までお父さんを引きずっていき、石鹸で雑に洗い流した。
「許してくれるのか……?」
「んなわけねーだろボケが。生きて罪をすすげ」
「復讐を果たした方が燈矢の気が晴れるかと思ったが」
「俺は、今の気分はそうじゃなかった。今後殺したくなった時は殺されて」
「……わかった」
「生きてる方が苦しいことだってあるから。俺はそれを見て気を晴らすよ」
「そうか……」
「今日は帰ろう」
そう言って、お父さんお抱えの運転手さんに来てもらって家に帰った。ガソリン臭いお父さんを車に迎え入れても何も言及しないあたりプロだなあって思う。びしょ濡れで何処か虚な目をして外を見ているお父さんが可愛くって、ほんとゾクゾクしちゃった。サイコーすぎる!もっとやろう!
2022/11/6