#レゾ #ヒロアカ #鳥師弟
「常闇くん……」
「なんです。そんな神妙な顔して」
「俺この前常闇くんとモスバーガー食べに行ったじゃん。あの時ね、オニポテリング一個くれたじゃん」
「そうだったかな。確か師が初めてモス来たわ〜などと言っていたので、オニポテを食べずにいるのはなと思い」
「それはさ、雪見だいふくの一個だったり、ピノの一個みたいなそういう……」
「ああ、まあでもそこまで食に執着がないから俺はそういうのはいいんです」
「えー、常闇くんの方が大人みたい」
「執着の先は人それぞれです」
「そっかあ……常闇くんは、何に執着してんの?」
「そうですね……職場環境ですかね。ホークスが想像している以上に異形個性は蔑まれるので、ホークスみたいに名前が売れてて、若い女性のファンが多いヒーローの下だと働きやすいんですよ」
「あー、そういう。なんかもっと俗物的な回答がもらえるかなって……」
「あなたにそんな顔させたくなかったから言わないでいたんですが」
「なんだ、隠してたんだ」
「まぁ、そうですね」
 ホークスのせいではないのに、そうやって俺のことを自分ごとのように傷ついてくれるあなたの顔が見たくてこの話をしたのかもしれない。
 たかだか五年程度早く生まれた程度で世界は変えられない。そんなことくらい俺ですらわかっているのに、ホークスは釈然としない顔をして俺に降りかかる悪意を嘆いてくれている。
「俺はそうやって傷つく常闇くんに何してあげられるかな」
「うーん……スマブラをしたり、温泉に行ったり、潮干狩りに行ったり、ポットのお湯が切れそうだったら補充したり、靴を揃えたり、事務所の鍵をちゃんとしめたり……」
「最後の方申し訳ないと思ってはいるけどできてないやつ出てきたな……俺さ、小さい頃からゲームっていうかテレビもなくてそういう経験? 子供の頃みんなやっているであろうことが本当にできてなくて……できればそういう子供時代を取り戻したいんだよね」
「隠し事なくてえらいじゃないですか。いいですよ。やりましょう。スマブラでも、アサガオの観察でもなんでも」
「わーい。楽しみだな」
「そしたら、元気にしてないとダメですからね」
「肝に銘じます」
 そういうことをちゃんと言葉にしないと、ホークスはフラフラとどこかに行ってしまいそうだから俺はホークスがここに居たくなりそうなことを並べ立てる。この人はどんなに親しい人であれ失う経験がありすぎて、執着が薄すぎるから自分の命すら軽んじるような言動が見受けられる。俺はそれを見るのがなんだか悲しくて、この人の速度を落とすようなことをしてしまう。
 それでも、執着しているものを分け与えるような信頼をされているのだと思うと、どこかに行ってしまう前に声くらいはかけてもらえるのかもしれないと自惚れてしまう。あんまり期待しないほうが良さそうだとは思うのだが。