だいすき #ストリートファイター6 #夢小説 #春麗
リーフェンみたいに才能の芽が出ていたりパソコンができるわけでもなく、最近春麗さんに弟子入りした人みたいにひたむきに努力できるわけでもなく。ただ春麗さんの教室に足繁く通うだけの存在。それが私。
でもそれに特段不満があるわけではない。私には私のポジションが与えられ、私の視点から春麗さんに関わることができる。
「おはようナマエさん。今日も元気かしら」
「ええ、おかげさまで。肩こりや腰痛が軽くなったんですよ」
「まぁ、それは良かった」
そう言って微笑む春麗さんの、自分の生徒が良い方向に向かったことをうれしく思うためのパーツである喜びだってあっていいのだと私は思っている。
思っていた。
いつからだろう。
春麗さんが穏やかに視線を送るもの全てが憎らしく、そんなことできるはずがない、こんなことを表に出してしまったら敬遠されるに違いないのに、それでも、どうしてもつらい。
つらくても、私はこの”春麗さんの教室に通う生徒”の役から降りたくない。私の役はもうすぐ破滅とともになくなると分かっていても、まだ私に春麗さんが話しかけてくれたり、昔の話をしてくださったりする間柄で居させてくれるのなら、ここに居たい。
「ナマエさんどうかした? 眉間にシワが」
「あ、ああ。ちょっと歯が痛くて」
「ダメよ。歯が痛いのは放っておいてはダメ。すぐに悪くなってしまうわ」
「はぁい」
好きな人が私を気にかけてくれる。こんな幸せがあるか? 些細であるはずもない。私は、欠けることなく幸せに満ちている。畳む
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夢とカプが混在しています/#夢小説 タグと#カップリング タグをつけていますので、よきに計らっていただけますと幸いです
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みやこ 成人/神奈川への望郷の念が強い
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2023年の投稿[69件]
2023年12月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する
さよなら言えてたらよかったのかな #夢小説 #ヒロアカ #百合夢
さよなら言えてたらよかったのかな #夢小説 #ヒロアカ #百合夢
恋人のいる世界を守って死ぬ、ドラマの見過ぎなんじゃないの?
実際そんなことが自分の身に起きてしまうと、とたんに現実になる。折り合いがつけられない愛する人の死という現実が迫ってくる。
そこから目を逸らすために、私はキャシーの死に意味を持たせる。たとえキャシーがそんなこと望んでいなくても想定していなくても、生き残ってしまった私のために私はキャシーは、私のために世界を守って死んだのだと思い込む。思い込みたい。まさか私以外の誰かのために、キャシーが私からキャシーを奪って行ったなんて思いたくない。
でも、知ってるんだよね。
キャシーがヒーローになったきっかけのお師匠さんのために自分の立場も全部振り切って行っちゃったってこと。
私とキャシーの恋や愛の定義が違いすぎて、私の中に煮え切らない気持ちがあること。
死ぬつもりなんてなかったと思うけど、生きて帰れる保証もなかった。
それでも、キャシーは困ってる人がいる・怖がっている人がいると縁もゆかりも、キャシーが助けに行ってくれたことも認識してないようなやつらが大多数である国に行って、帰ってこなかった。私はキャシーの献身に似た陶酔を理解できなかった。キャシーも、私の……キャシーだけ無事でいてくれればいいという願いを理解できなかった。それを恋というラッピングに包んで二人で眺めていただけ。
キャシーがくれたアメが溶けて再度形づくってを繰り返すのを、私は一人で過ごさないといけないのかな。キャシーは、私がこんな気持ちになること想像してたかな。畳む
恋人のいる世界を守って死ぬ、ドラマの見過ぎなんじゃないの?
実際そんなことが自分の身に起きてしまうと、とたんに現実になる。折り合いがつけられない愛する人の死という現実が迫ってくる。
そこから目を逸らすために、私はキャシーの死に意味を持たせる。たとえキャシーがそんなこと望んでいなくても想定していなくても、生き残ってしまった私のために私はキャシーは、私のために世界を守って死んだのだと思い込む。思い込みたい。まさか私以外の誰かのために、キャシーが私からキャシーを奪って行ったなんて思いたくない。
でも、知ってるんだよね。
キャシーがヒーローになったきっかけのお師匠さんのために自分の立場も全部振り切って行っちゃったってこと。
私とキャシーの恋や愛の定義が違いすぎて、私の中に煮え切らない気持ちがあること。
死ぬつもりなんてなかったと思うけど、生きて帰れる保証もなかった。
それでも、キャシーは困ってる人がいる・怖がっている人がいると縁もゆかりも、キャシーが助けに行ってくれたことも認識してないようなやつらが大多数である国に行って、帰ってこなかった。私はキャシーの献身に似た陶酔を理解できなかった。キャシーも、私の……キャシーだけ無事でいてくれればいいという願いを理解できなかった。それを恋というラッピングに包んで二人で眺めていただけ。
キャシーがくれたアメが溶けて再度形づくってを繰り返すのを、私は一人で過ごさないといけないのかな。キャシーは、私がこんな気持ちになること想像してたかな。畳む
2023年10月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する
お題:闇、ハロウィン #カップリング #ヒロアカ #荼炎 #燈炎
お題:闇、ハロウィン #カップリング #ヒロアカ #荼炎 #燈炎
光の当たる場所にいたことは、闇を渡り歩くようになってからわかる。
誰にも、特にお父さんには言えなかったけど実は暗い場所は見るのも居るのも怖かったけど、今はそんなこと言ってられなくなった。焼けこげてつぎ当てた皮膚の色がどんどん沈着しているのと、皮膚だけでなく筋肉にまで食い込んでいる縫い跡があんまりにもバケモノで陽が落ちてから、夜の深い闇に紛れる以外の選択肢がなくなった。且つ、深くフードを被ってマスクをする怪しい風貌でも干渉されない環境といえば人間の個体数の母数が多い都会になる。
そんな俺がそこでしか生きられない時間・場所であるにもかかわらずハロウィンという祭で一儲けしようとした層のせいで静かな散歩すらできなくなってしまう。
「あ! オニーサァン笑 どしたんすかそんな俯いちゃってさ〜!!今日ハロウィンすよ!盛り上がっていかなきゃ損ですよぉ〜!!」
なんていう輩に絡まれてしまう。普段人通りなんて皆無である道を選んでも、だ。ここで消し炭にしてやることも時間をかけてじっくり殺してやることもできる。けどなんか気分が乗らないのはヤツのハロウィンコスがエンデヴァーだったからだ。
「お前、エンデヴァーのファンなの」
「いやショージキファンではないかな! 俺の体格に合ってるヒロコスの中でドンキで投げ売りになってるのがコレだったってわけ」
「ふーん…… エンデヴァーっていいところないかな」
「無いわけじゃないとは思うけど……俺には見えてこないかな〜……ってか、オニーサンエンデヴァーのファン?! 同担拒否? オニーサンもエンデヴァーコス買ったら?!」
「ファン……ファンってか、まぁ複雑な気持ち」
「そうなんだ〜 までも、俺が見た時まだ全然在庫あったよ!」
「そうなんだ。ありがと」
「いいってことよ!じゃね♡」
騒々しい男はぬるくなった缶ビールを押し付けて去っていった。初めて飲むビールは成人式のあとお父さんとって決めてたけどもう叶わないだろうからまぁいいかと思いプルタブをあげておろした。
苦くて、つまんない味だった。胃のあたたかさや思考を奪う酩酊感もなにも楽しくない。
昔お母さんにお願いしてお父さんのヒーロースーツを模した服を作ってもらったのを思い出した。本当にうれしくて、どこに行くにも着て行ったのを思い出して虚しさと怒りと、それと何か言語化しにくい気持ちが湧いてきた。オールマイトのは腐るほど売られてたけどまぁ、お父さんは一般ウケしなかったらしくて売ってなかった。だから特別だったんだけどあんなにわかが着てるくらい陳腐なものになってしまったとわかって心から苛立った。
とはいえ、父さんはヒロコスが売られるほど人気が出てきたみたいで、背筋がむずむずする。この積み上げた信頼、浮ついた人気、お父さんの考える正しさをめちゃくちゃにできるのかと思うと胸が躍った。踊るっていうか、胸がぽかぽかするっていうか。好きな子のとまどう顔が見たいってのもまた愛だよな。
出かけた時とは打って変わって機嫌良く帰宅(ってもダンボール敷いた公園だけど)した。
「お! ケンちゃん。今日はなんかご機嫌だな」
「うん。いいことあってさ」
「よかったなぁ。でも今日は気をつけてな。羽目を外した若いやつらに殺される路上生活のやつらは片手で足りないくらいいるからな」
「わかった。ありがと」
こんな満たされた気持ちになったのはいつぶりだろう。そして、また次にこんな気持ちになれるのはいつだろう。いつものようにスマホで登録者が全然いないお父さんのYouTubeチャンネルを視聴する。今日も悪いヤツをやっつけたんだって。お父さんの考える、悪いヤツを。
お父さんは、お父さん的には悪いヤツじゃないらしい。そこが面白くて俺は画面の向こうのお父さんから目を離せない。お父さんの考える正しさって何。それを聞く前に俺は捨てられてしまったから、今度ちゃんと話す機会があるなら聞いてみたいな。畳む
光の当たる場所にいたことは、闇を渡り歩くようになってからわかる。
誰にも、特にお父さんには言えなかったけど実は暗い場所は見るのも居るのも怖かったけど、今はそんなこと言ってられなくなった。焼けこげてつぎ当てた皮膚の色がどんどん沈着しているのと、皮膚だけでなく筋肉にまで食い込んでいる縫い跡があんまりにもバケモノで陽が落ちてから、夜の深い闇に紛れる以外の選択肢がなくなった。且つ、深くフードを被ってマスクをする怪しい風貌でも干渉されない環境といえば人間の個体数の母数が多い都会になる。
そんな俺がそこでしか生きられない時間・場所であるにもかかわらずハロウィンという祭で一儲けしようとした層のせいで静かな散歩すらできなくなってしまう。
「あ! オニーサァン笑 どしたんすかそんな俯いちゃってさ〜!!今日ハロウィンすよ!盛り上がっていかなきゃ損ですよぉ〜!!」
なんていう輩に絡まれてしまう。普段人通りなんて皆無である道を選んでも、だ。ここで消し炭にしてやることも時間をかけてじっくり殺してやることもできる。けどなんか気分が乗らないのはヤツのハロウィンコスがエンデヴァーだったからだ。
「お前、エンデヴァーのファンなの」
「いやショージキファンではないかな! 俺の体格に合ってるヒロコスの中でドンキで投げ売りになってるのがコレだったってわけ」
「ふーん…… エンデヴァーっていいところないかな」
「無いわけじゃないとは思うけど……俺には見えてこないかな〜……ってか、オニーサンエンデヴァーのファン?! 同担拒否? オニーサンもエンデヴァーコス買ったら?!」
「ファン……ファンってか、まぁ複雑な気持ち」
「そうなんだ〜 までも、俺が見た時まだ全然在庫あったよ!」
「そうなんだ。ありがと」
「いいってことよ!じゃね♡」
騒々しい男はぬるくなった缶ビールを押し付けて去っていった。初めて飲むビールは成人式のあとお父さんとって決めてたけどもう叶わないだろうからまぁいいかと思いプルタブをあげておろした。
苦くて、つまんない味だった。胃のあたたかさや思考を奪う酩酊感もなにも楽しくない。
昔お母さんにお願いしてお父さんのヒーロースーツを模した服を作ってもらったのを思い出した。本当にうれしくて、どこに行くにも着て行ったのを思い出して虚しさと怒りと、それと何か言語化しにくい気持ちが湧いてきた。オールマイトのは腐るほど売られてたけどまぁ、お父さんは一般ウケしなかったらしくて売ってなかった。だから特別だったんだけどあんなにわかが着てるくらい陳腐なものになってしまったとわかって心から苛立った。
とはいえ、父さんはヒロコスが売られるほど人気が出てきたみたいで、背筋がむずむずする。この積み上げた信頼、浮ついた人気、お父さんの考える正しさをめちゃくちゃにできるのかと思うと胸が躍った。踊るっていうか、胸がぽかぽかするっていうか。好きな子のとまどう顔が見たいってのもまた愛だよな。
出かけた時とは打って変わって機嫌良く帰宅(ってもダンボール敷いた公園だけど)した。
「お! ケンちゃん。今日はなんかご機嫌だな」
「うん。いいことあってさ」
「よかったなぁ。でも今日は気をつけてな。羽目を外した若いやつらに殺される路上生活のやつらは片手で足りないくらいいるからな」
「わかった。ありがと」
こんな満たされた気持ちになったのはいつぶりだろう。そして、また次にこんな気持ちになれるのはいつだろう。いつものようにスマホで登録者が全然いないお父さんのYouTubeチャンネルを視聴する。今日も悪いヤツをやっつけたんだって。お父さんの考える、悪いヤツを。
お父さんは、お父さん的には悪いヤツじゃないらしい。そこが面白くて俺は画面の向こうのお父さんから目を離せない。お父さんの考える正しさって何。それを聞く前に俺は捨てられてしまったから、今度ちゃんと話す機会があるなら聞いてみたいな。畳む
2023年9月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する
お題:星月夜 #ヒロアカ #カップリング #荼炎 #燈炎
お題:星月夜 #ヒロアカ #カップリング #荼炎 #燈炎
瀬古渡で泣いてた俺も、こんな夜空を見ていたっけな。
いや、夜空なんか見る余裕もなくってお父さんが来てくれるのを待ってた。いまこうしてしみじみと星を眺めていられるのは、俺が何者がみんなに知ってもらえたからだと思う。
すごく晴れ晴れとした気分だ。
秘密を一人で抱えるのは本当に辛かった。生きていくことが辛すぎてお父さんの提示した人生を生きることが頭によぎったのは一度や二度じゃない。
けどそのたび、望んだ性能を持った新しいオモチャで遊ぶお父さんを見て、そして俺の仏壇に手を合わせたときにやっと決意が固まった。
お父さん、震えてた。
ショックだったのかな。自分が厳格に守ってきた正しさに反している息子がいて。
あの時、俺が生きていると分かった時焦凍のことも何もかも忘れて「燈矢、生きていたのか!心配してたんだぞ」の一言や、駆け寄って抱きしめるとかそういうのがあったらここまで拗れてないかもしれないけど、お父さんは目を見開いて震えてるだけだった。俺が炎をけしかけても、焦凍が必死に呼びかけても。
今ごろお父さんどうしてるかな。お父さんの病院で治療を受けてるみたいだけど、アンチが病院まで押しかけて大変そう。病室から俺が見てるのと同じ月を見てるんだろうか。
ここまで長かったぶん、暴露してしまってからの時間が充実しすぎていてたまらず笑顔になる。顔の筋肉がひきつれて痛いけど、やっとここまで来れたと思ったら笑いが止まらなかった
。
俺のこと考えてるかな。なんて言おうとか、そういうの。次会った時、なんで言うかな。俺のこと、なんて呼ぶのかな。
瀬古渡で泣いてた俺も、こんな夜空を見ていたっけな。
いや、夜空なんか見る余裕もなくってお父さんが来てくれるのを待ってた。いまこうしてしみじみと星を眺めていられるのは、俺が何者がみんなに知ってもらえたからだと思う。
すごく晴れ晴れとした気分だ。
秘密を一人で抱えるのは本当に辛かった。生きていくことが辛すぎてお父さんの提示した人生を生きることが頭によぎったのは一度や二度じゃない。
けどそのたび、望んだ性能を持った新しいオモチャで遊ぶお父さんを見て、そして俺の仏壇に手を合わせたときにやっと決意が固まった。
お父さん、震えてた。
ショックだったのかな。自分が厳格に守ってきた正しさに反している息子がいて。
あの時、俺が生きていると分かった時焦凍のことも何もかも忘れて「燈矢、生きていたのか!心配してたんだぞ」の一言や、駆け寄って抱きしめるとかそういうのがあったらここまで拗れてないかもしれないけど、お父さんは目を見開いて震えてるだけだった。俺が炎をけしかけても、焦凍が必死に呼びかけても。
今ごろお父さんどうしてるかな。お父さんの病院で治療を受けてるみたいだけど、アンチが病院まで押しかけて大変そう。病室から俺が見てるのと同じ月を見てるんだろうか。
ここまで長かったぶん、暴露してしまってからの時間が充実しすぎていてたまらず笑顔になる。顔の筋肉がひきつれて痛いけど、やっとここまで来れたと思ったら笑いが止まらなかった
。
俺のこと考えてるかな。なんて言おうとか、そういうの。次会った時、なんで言うかな。俺のこと、なんて呼ぶのかな。
ぬいぬい #ブルーロック #カップリング #ネスカイ
ぬいぬい #ブルーロック #カップリング #ネスカイ
「こ、これは……」
「新しいグッズだとよ。いらねーってのに」
「僕にください」
「あ? まぁ別にいいけど」
「ありがとうございます!」
こうして手のひらに収まるサイズのカイザーを僕が所有するという大興奮な生活が幕を開けた。
男のぬいぐるみ趣味なんて一番バカにされてしまう環境なんだけど、僕がカイザーのぬいぐるみにどう転んだってカイザーが絶対着ないような少女趣味な服を作って着せ替えしたり、家具を作ったり、連れ出して写真を撮っているのを見ても誰も何も言わなかった。
チームメイトたちに聞いたら「この商品を見た時ネスならやると思ったし、カイザーがくれてやらないなら俺らで買ってやろうと思ってた」という。
意外とこいつら僕のことわかってるしいいやつだなと思った。
「カイザー、僕、少し旅行に」
「一人でか?」
「まぁ、一人ですね」
「あの綿とだろ」
「なんでわかったんですか」
「お前が遠征する先々の観光地で俺のぬいぐるみと写真を撮ってるのが話題になってる」
「えっ……」
「旅行いくなら俺も連れてけ。お前と旅行行くと楽しむだけでいいから好きなんだ」
「!??!!?!!♡♡♡!!?♡!??♡♡!♡♡♡♡♡♡♡♡♡はい!!!!♡♡♡♡♡♡♡♡♡」
こうして、ネスとカイザーとカイザーぬいは旅行を楽しみましたとさ。
おしまい
「こ、これは……」
「新しいグッズだとよ。いらねーってのに」
「僕にください」
「あ? まぁ別にいいけど」
「ありがとうございます!」
こうして手のひらに収まるサイズのカイザーを僕が所有するという大興奮な生活が幕を開けた。
男のぬいぐるみ趣味なんて一番バカにされてしまう環境なんだけど、僕がカイザーのぬいぐるみにどう転んだってカイザーが絶対着ないような少女趣味な服を作って着せ替えしたり、家具を作ったり、連れ出して写真を撮っているのを見ても誰も何も言わなかった。
チームメイトたちに聞いたら「この商品を見た時ネスならやると思ったし、カイザーがくれてやらないなら俺らで買ってやろうと思ってた」という。
意外とこいつら僕のことわかってるしいいやつだなと思った。
「カイザー、僕、少し旅行に」
「一人でか?」
「まぁ、一人ですね」
「あの綿とだろ」
「なんでわかったんですか」
「お前が遠征する先々の観光地で俺のぬいぐるみと写真を撮ってるのが話題になってる」
「えっ……」
「旅行いくなら俺も連れてけ。お前と旅行行くと楽しむだけでいいから好きなんだ」
「!??!!?!!♡♡♡!!?♡!??♡♡!♡♡♡♡♡♡♡♡♡はい!!!!♡♡♡♡♡♡♡♡♡」
こうして、ネスとカイザーとカイザーぬいは旅行を楽しみましたとさ。
おしまい
習作② #ブルーロック #カップリング #ネスカイ
習作② #ブルーロック #カップリング #ネスカイ
好きな歯磨き粉の味、コーヒーには何を入れるか、好きなタオルの素材、シーツは毎日取り替えたい、嗜好品として好きな食べ物と、アスリートの身体を作るための食事の中で好きな食べ物……等々。
知らなくても僕自身のパフォーマンスには影響しないものだけど、こういった知識を仕入れることをやめようと思ったことはない。
なんでカイザーのことをこんなに大切に思っているのかもわからない。わからないというか、言葉で説明できない、というのが正しい。
言葉にするとなると「何となく」とか「好きだから」とかいう一見陳腐に聞こえる言葉でしかこの感情を飾れないのなら、最初から言葉にしないほうがいい。
カイザーは僕がいなくなったら、自分好みの生活に辿り着くための速度が落ちるだけで、僕がいないと何もできないなんてことではない。カイザー自身でもできるけど、僕がやりたいって言うからやらせてくれているだけ
。
僕はそれをカイザーの優しさだと思ってるけど、他の人はそう見えてない、カイザーが僕をこき使っているように見えているらしい。「ネス、あなたはカイザーの召使じゃなくてあなたはあなたの人生を生きたほうがいい」なんて。
そういうやつと話していると頭にくるけど、僕のことを心配してくれているんだと自分に言い聞かせている。それでもイラつくけど、一回ひどく怒鳴ったらカイザーに洗脳されてるからそういうことをしてしまうんだなんていう超理論を掲げられて、相手の中でもう答えが決まってることにこちらが何を言っても意味がないと悟り、話だけ聞いて満足して帰ってもらった。
確か、スポンサーの親族だったはず。そうでもなきゃ、話切り上げて練習に戻ってる。
僕は僕の選択で僕の人生を生きているからこそ、これなんだ。これが一番納得いってる。一番かっこよくて一番強い人の影でいられることがどんなにうれしいかわからないなら黙っていて欲しい。僕は今本当に幸せなんだから。
好きな歯磨き粉の味、コーヒーには何を入れるか、好きなタオルの素材、シーツは毎日取り替えたい、嗜好品として好きな食べ物と、アスリートの身体を作るための食事の中で好きな食べ物……等々。
知らなくても僕自身のパフォーマンスには影響しないものだけど、こういった知識を仕入れることをやめようと思ったことはない。
なんでカイザーのことをこんなに大切に思っているのかもわからない。わからないというか、言葉で説明できない、というのが正しい。
言葉にするとなると「何となく」とか「好きだから」とかいう一見陳腐に聞こえる言葉でしかこの感情を飾れないのなら、最初から言葉にしないほうがいい。
カイザーは僕がいなくなったら、自分好みの生活に辿り着くための速度が落ちるだけで、僕がいないと何もできないなんてことではない。カイザー自身でもできるけど、僕がやりたいって言うからやらせてくれているだけ
。
僕はそれをカイザーの優しさだと思ってるけど、他の人はそう見えてない、カイザーが僕をこき使っているように見えているらしい。「ネス、あなたはカイザーの召使じゃなくてあなたはあなたの人生を生きたほうがいい」なんて。
そういうやつと話していると頭にくるけど、僕のことを心配してくれているんだと自分に言い聞かせている。それでもイラつくけど、一回ひどく怒鳴ったらカイザーに洗脳されてるからそういうことをしてしまうんだなんていう超理論を掲げられて、相手の中でもう答えが決まってることにこちらが何を言っても意味がないと悟り、話だけ聞いて満足して帰ってもらった。
確か、スポンサーの親族だったはず。そうでもなきゃ、話切り上げて練習に戻ってる。
僕は僕の選択で僕の人生を生きているからこそ、これなんだ。これが一番納得いってる。一番かっこよくて一番強い人の影でいられることがどんなにうれしいかわからないなら黙っていて欲しい。僕は今本当に幸せなんだから。
水底 #呪術廻戦 #禪院真希 #夢小説 #女夢主
水底 #呪術廻戦 #禪院真希 #夢小説 #女夢主
真希ねえさまが出て行ってしまうと聞いてから、私の心は休まりませんでした。
禪院の男たちから我が身を守る……貞操を守り、同意なく孕まないでいるには、禪院の女は弱すぎました。そんな弱い禪院の女の中でも真希ねえさまは私の希望でした。
もしかしたら、私も頑張れば真希ねえさまのようにできるかもしれない、と。
でも、真希ねえさまが出ていく日が近づくにつれてそれは違うと実感するようになりました。
真希ねえさまは、どんなにこの世を恨んでも、絶望に足をすくわれそうになっても歩みを止めないのです。どんなにいじめられても、悪態をついて立ち上がるのです。私のように、されたことにばかり目を向けていつまでもそこで嘆いてるような女とは違ったのです。
私は禪院と他の呪術の家系との婚姻関係を結んで関係を確認する駒以外の役割はできないでしょう。
もう抗ったり、新しい世界に希望を持って駆け出す気力は無いのです。
真希ねえさまのように、叩かれても叩き返したり、次叩かれないようにするために頭を回すこともできず、ただ怯えて身体を縮めることしかできないのです。これは努力がどうとかでは無いと思っています。私が弱いから、と卑屈になる気もありません。
真希ねえさまのことは羨ましいとは思いますが、まだ、この禪院の女という生を続けるつもりなのだと、驚きと侮蔑の念があります。もうやめればいいのに、外に行ってもつらいだけだと思うのですが……
「おお、[FN:ナマエ]。見送りに来てくれたのか」
「ねえさま」
「こんな夜逃げみたいな出発になったけど、まあなんとかやるから」
「ええ、その、私……ねえさまのこと」
「うん、応援してくれんだよな」
「……ええ。ねえさまがのゆく先が……幸せでありますように」
「はは、そんなことできると思ってないだろ」
「もしかしたら、外の世界はここより良いところかもしれませんし」
「どうかな。わからない」
「けど、行くんですか」
「ああ」
私の記憶の中のねえさまは、笑っていました。
それから、長い時が流れました。
禪院の男の雑巾のように扱われ、そう生きることに何も思わなくなった、この世の何にも思うところがなくなった頃、真希ねえさまは帰ってきました。
笑顔などなく、ただ禪院の男たちを鏖殺していきました。私はそれを見て、真希ねえさまは外の世界で本当に幸せだったのか聞いてみたくなりました。
「ねえさま」
「[FN:ナマエ]か」
「そうです。真希ねえさま、外の世界は、楽しかったですか?」
「……そうだなぁ、うーん……結果的にそんなにハッピーってことではなかったけど、過程は、良かった」
「そうですか。よかったですね」
「なんかうれしくなさそうだな。[FN:ナマエ]、私に不幸になってほしかったか?」
「……そうでないと、あの時真希ねえさまに私も連れてってと言えなかった私のことが、許せなくなりますから」
「そうか。まぁ、お疲れ。[FN:ナマエ]、この死体の処理、頼めるか?」
「わかりました。全部混ぜて同じ穴に適当に埋葬します」
「いいね。じゃあ、また」
「真希ねえさま、元気で」
「[FN:ナマエ]もな」
私の最後の記憶の中のねえさまは、頬を歪めるようなつまらない笑い方をしていました。畳む
真希ねえさまが出て行ってしまうと聞いてから、私の心は休まりませんでした。
禪院の男たちから我が身を守る……貞操を守り、同意なく孕まないでいるには、禪院の女は弱すぎました。そんな弱い禪院の女の中でも真希ねえさまは私の希望でした。
もしかしたら、私も頑張れば真希ねえさまのようにできるかもしれない、と。
でも、真希ねえさまが出ていく日が近づくにつれてそれは違うと実感するようになりました。
真希ねえさまは、どんなにこの世を恨んでも、絶望に足をすくわれそうになっても歩みを止めないのです。どんなにいじめられても、悪態をついて立ち上がるのです。私のように、されたことにばかり目を向けていつまでもそこで嘆いてるような女とは違ったのです。
私は禪院と他の呪術の家系との婚姻関係を結んで関係を確認する駒以外の役割はできないでしょう。
もう抗ったり、新しい世界に希望を持って駆け出す気力は無いのです。
真希ねえさまのように、叩かれても叩き返したり、次叩かれないようにするために頭を回すこともできず、ただ怯えて身体を縮めることしかできないのです。これは努力がどうとかでは無いと思っています。私が弱いから、と卑屈になる気もありません。
真希ねえさまのことは羨ましいとは思いますが、まだ、この禪院の女という生を続けるつもりなのだと、驚きと侮蔑の念があります。もうやめればいいのに、外に行ってもつらいだけだと思うのですが……
「おお、[FN:ナマエ]。見送りに来てくれたのか」
「ねえさま」
「こんな夜逃げみたいな出発になったけど、まあなんとかやるから」
「ええ、その、私……ねえさまのこと」
「うん、応援してくれんだよな」
「……ええ。ねえさまがのゆく先が……幸せでありますように」
「はは、そんなことできると思ってないだろ」
「もしかしたら、外の世界はここより良いところかもしれませんし」
「どうかな。わからない」
「けど、行くんですか」
「ああ」
私の記憶の中のねえさまは、笑っていました。
それから、長い時が流れました。
禪院の男の雑巾のように扱われ、そう生きることに何も思わなくなった、この世の何にも思うところがなくなった頃、真希ねえさまは帰ってきました。
笑顔などなく、ただ禪院の男たちを鏖殺していきました。私はそれを見て、真希ねえさまは外の世界で本当に幸せだったのか聞いてみたくなりました。
「ねえさま」
「[FN:ナマエ]か」
「そうです。真希ねえさま、外の世界は、楽しかったですか?」
「……そうだなぁ、うーん……結果的にそんなにハッピーってことではなかったけど、過程は、良かった」
「そうですか。よかったですね」
「なんかうれしくなさそうだな。[FN:ナマエ]、私に不幸になってほしかったか?」
「……そうでないと、あの時真希ねえさまに私も連れてってと言えなかった私のことが、許せなくなりますから」
「そうか。まぁ、お疲れ。[FN:ナマエ]、この死体の処理、頼めるか?」
「わかりました。全部混ぜて同じ穴に適当に埋葬します」
「いいね。じゃあ、また」
「真希ねえさま、元気で」
「[FN:ナマエ]もな」
私の最後の記憶の中のねえさまは、頬を歪めるようなつまらない笑い方をしていました。畳む
習作 #ブルーロック #カップリング #ネスカイ
習作 #ブルーロック #カップリング #ネスカイ
これは夢だとわかっていた。
こんなこと、彼がするはずがないというのは僕が一番よくわかっているからだ。
夢の中の僕は怪我をてしまって入院している。もうサッカーができなくなるかもしれない。
それでもカイザーは僕のお見舞いにマメに来てくれて、「お前が戻るのを待っている」とか「お前がいないとうまくいかないことがある」なんて言ってくれる。
俺がこうあってほしいと思っていることが夢になってるとしたらとっても情けないし恥ずかしいから早く目覚めたいんだけど、どうしても目覚めることができない。僕に優しい言葉を吐き続けるカイザーの形をした幻に相槌を打つ。
役に立たなくなった僕に構うカイザーはカイザーじゃない。こんな僕の願望で歪んでしまったカイザーと話しているとおかしくなりそうだ。
ドッ、とベッドに誰かが座る衝撃があり、目が覚めた。
「何寝てんだ」
「深夜なので……」
寝汗でしっとりと湿ったシャツを脱ぎ捨てて、あわい金髪から肌の青薔薇へと目を滑らせた。僕の夢の中のとは全くもって違う、僕の知っているカイザーが不機嫌そうに僕のベッドサイドに座っている。
「今日は俺が深夜に帰国するって知ってただろ」
「……! 知ってました!」
「なら何で寝てる」
「えへ……! そ、そうですよねカイザー!あなたはそうでなくちゃ!そうであってください!ね!ね!」
「うるさい。適当な運動着用意しろ。少し身体動かすから、付き合え」
「もちろんです!」
ベッドから飛び起きて、カイザーのクローゼットから運動着とサッカー用の厚手の靴下を取り出して渡した。さも当然かのように受け取り、何も言わずに着替え始める。そう、そうこれが僕の知るカイザーだ。誰のことも見ずに自分の道を進んでいく光、後ろに続く民草のために道を拓く皇帝。僕はすっかりうれしくなって、室内練習場の空調と電気を操作して、ストレッチ用のマットを持って行った。
夢の中のカイザーは起こして悪かったとか言うだろうけど現実のは言わない。それでいい。それが、いい。
これは夢だとわかっていた。
こんなこと、彼がするはずがないというのは僕が一番よくわかっているからだ。
夢の中の僕は怪我をてしまって入院している。もうサッカーができなくなるかもしれない。
それでもカイザーは僕のお見舞いにマメに来てくれて、「お前が戻るのを待っている」とか「お前がいないとうまくいかないことがある」なんて言ってくれる。
俺がこうあってほしいと思っていることが夢になってるとしたらとっても情けないし恥ずかしいから早く目覚めたいんだけど、どうしても目覚めることができない。僕に優しい言葉を吐き続けるカイザーの形をした幻に相槌を打つ。
役に立たなくなった僕に構うカイザーはカイザーじゃない。こんな僕の願望で歪んでしまったカイザーと話しているとおかしくなりそうだ。
ドッ、とベッドに誰かが座る衝撃があり、目が覚めた。
「何寝てんだ」
「深夜なので……」
寝汗でしっとりと湿ったシャツを脱ぎ捨てて、あわい金髪から肌の青薔薇へと目を滑らせた。僕の夢の中のとは全くもって違う、僕の知っているカイザーが不機嫌そうに僕のベッドサイドに座っている。
「今日は俺が深夜に帰国するって知ってただろ」
「……! 知ってました!」
「なら何で寝てる」
「えへ……! そ、そうですよねカイザー!あなたはそうでなくちゃ!そうであってください!ね!ね!」
「うるさい。適当な運動着用意しろ。少し身体動かすから、付き合え」
「もちろんです!」
ベッドから飛び起きて、カイザーのクローゼットから運動着とサッカー用の厚手の靴下を取り出して渡した。さも当然かのように受け取り、何も言わずに着替え始める。そう、そうこれが僕の知るカイザーだ。誰のことも見ずに自分の道を進んでいく光、後ろに続く民草のために道を拓く皇帝。僕はすっかりうれしくなって、室内練習場の空調と電気を操作して、ストレッチ用のマットを持って行った。
夢の中のカイザーは起こして悪かったとか言うだろうけど現実のは言わない。それでいい。それが、いい。
2023年8月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する
お題:もしも #カップリング #ヒロアカ #荼炎 #燈炎
お題:もしも #カップリング #ヒロアカ #荼炎 #燈炎
もしも、もしも俺がお父さんの個性だけを受け継いでお父さんを超える炎を出し続けてもなんの支障もないからだに生まれていたら、どんな人生を送っただろう。
高校なんか行かなくてもお父さんの右腕として活躍していたかもしれない。
でもお父さんは高校は行った方がいいと、俺に興味を持っているから進路に口を出してきたかもしれない。俺は仕方ないなぁなんて言って、雄英でアオハルしたりできたのかもしれない。
仲間と切磋琢磨して、お父さんの過保護を嘆いてみせたりして、自分の才能に酔いしれるタイミングがあるかもしれない。
ああ、俺は俺に生まれて良かったと、心から思えたかもしれない。
……そんな夢を見た日は本当に気分が悪い。心からそうであって欲しかった未来が決して手に入らないものであると何度でも思い知らないといけなくなる。そんな自分が可哀想で、ダサくて。
もしも、なんて夢想は俺が叶えない限り現実にはならないんだよ。努力しないと、夢は現実にならないんだよ。……努力したって、叶わないことだってあるんだよ。生まれつきのことは、努力したって満足いかない結果になることの方が多い。そんなの俺が一番わかっているし、そのために俺が今できることを頑張っているのに俺の深層心理はそう思ってなくて、何の努力もしないでこう在れたら、と俺の脳に映し出す。残酷すぎて涙が出そうだ。
ひとしきり毒づいたら、顔を洗って歩き出す。俺は、俺のやり方でお父さんに俺を認めさせる。夢見る乙女なんてやらねぇ。夢は見るけど、俺が俺の手で叶える。
なんだか少年漫画の主人公みたいだ。友情努力勝利。友情は無ぇけど、努力と勝利はあるだろ。
そんな鮮烈な復讐心を、いまだに思い出す。
焼け爛れた身体を懸命に世話をするかつて俺がこうありたいと心から願った人。こうありたかったからこそ、もう何もできない俺の世話を焼くみたいなつまんねぇことやって欲しくなかった。本当に本当に、この人生は……言葉にならない虚しさに襲われる。
もし、願いが叶うなら……戦いの中で死にたかった。たぶんあのまま家族を皆殺しにしてしまっていたら後悔しただろうけど、なんの価値もなくみじめったらしく排泄物を垂れ流すより全然ましだ。巨悪は去り、ハッピーエンドみたいな空気になってるのを見るのも嫌だ。
もし、願いが、今からでも、叶うなら……
すべてやり直して、俺が俺のやり方でヒーローに……
それは無理か。俺はフツウに生きるしか道が用意されてなくて、俺はそう生きたいわけじゃなかったんだから。お父さんがあの時来てくれていたなら、まだ何か変わったかな。
いや、そのもしもは叶わない。お父さんは、俺のところになんか来ない。行けなくて、じゃなくて行かなくて、なんだから。俺のお願いなんてとっくに聞いてもらえなかったんだよ。お父さんにとって、価値がなかったから。
わかっているはずなのに、あまりにひどいやつを好きになってしまって苦しくて笑いが止まらない。お父さんは能天気に「燈矢、うれしいことがあったのか?」なんてニコニコしてるし。もう個性もないから何もできないけど、バカバカしくって逆に面白い。ひどいやつ。大嫌い。大嫌い。大嫌い。
もしも、もしも俺がお父さんの個性だけを受け継いでお父さんを超える炎を出し続けてもなんの支障もないからだに生まれていたら、どんな人生を送っただろう。
高校なんか行かなくてもお父さんの右腕として活躍していたかもしれない。
でもお父さんは高校は行った方がいいと、俺に興味を持っているから進路に口を出してきたかもしれない。俺は仕方ないなぁなんて言って、雄英でアオハルしたりできたのかもしれない。
仲間と切磋琢磨して、お父さんの過保護を嘆いてみせたりして、自分の才能に酔いしれるタイミングがあるかもしれない。
ああ、俺は俺に生まれて良かったと、心から思えたかもしれない。
……そんな夢を見た日は本当に気分が悪い。心からそうであって欲しかった未来が決して手に入らないものであると何度でも思い知らないといけなくなる。そんな自分が可哀想で、ダサくて。
もしも、なんて夢想は俺が叶えない限り現実にはならないんだよ。努力しないと、夢は現実にならないんだよ。……努力したって、叶わないことだってあるんだよ。生まれつきのことは、努力したって満足いかない結果になることの方が多い。そんなの俺が一番わかっているし、そのために俺が今できることを頑張っているのに俺の深層心理はそう思ってなくて、何の努力もしないでこう在れたら、と俺の脳に映し出す。残酷すぎて涙が出そうだ。
ひとしきり毒づいたら、顔を洗って歩き出す。俺は、俺のやり方でお父さんに俺を認めさせる。夢見る乙女なんてやらねぇ。夢は見るけど、俺が俺の手で叶える。
なんだか少年漫画の主人公みたいだ。友情努力勝利。友情は無ぇけど、努力と勝利はあるだろ。
そんな鮮烈な復讐心を、いまだに思い出す。
焼け爛れた身体を懸命に世話をするかつて俺がこうありたいと心から願った人。こうありたかったからこそ、もう何もできない俺の世話を焼くみたいなつまんねぇことやって欲しくなかった。本当に本当に、この人生は……言葉にならない虚しさに襲われる。
もし、願いが叶うなら……戦いの中で死にたかった。たぶんあのまま家族を皆殺しにしてしまっていたら後悔しただろうけど、なんの価値もなくみじめったらしく排泄物を垂れ流すより全然ましだ。巨悪は去り、ハッピーエンドみたいな空気になってるのを見るのも嫌だ。
もし、願いが、今からでも、叶うなら……
すべてやり直して、俺が俺のやり方でヒーローに……
それは無理か。俺はフツウに生きるしか道が用意されてなくて、俺はそう生きたいわけじゃなかったんだから。お父さんがあの時来てくれていたなら、まだ何か変わったかな。
いや、そのもしもは叶わない。お父さんは、俺のところになんか来ない。行けなくて、じゃなくて行かなくて、なんだから。俺のお願いなんてとっくに聞いてもらえなかったんだよ。お父さんにとって、価値がなかったから。
わかっているはずなのに、あまりにひどいやつを好きになってしまって苦しくて笑いが止まらない。お父さんは能天気に「燈矢、うれしいことがあったのか?」なんてニコニコしてるし。もう個性もないから何もできないけど、バカバカしくって逆に面白い。ひどいやつ。大嫌い。大嫌い。大嫌い。
俺はな〜んも、わるくない!③ #ヒロアカ #モブ焦
俺はな〜んも、わるくない!③ #ヒロアカ #モブ焦
【下記の注意書きを必ずお読みください】
この作品はフィクション(現実ではない、ウソの物語)/現実では絶対やっちゃダメです🔞
⚠️未成年の性的搾取 ⚠️同意のない性行為
なぜ私が罪に問われているのでしょう?
私は、両親に愛されて育ちました。
世界で素晴らしい生き物として尊重され、大切にされて育ちました。その証として、神様しかできないことがたくさんできました。
一時間くらいでしたら、対象の時を止めることができます。複数人を止めるのは流石にできませんが、一人くらいでしたらどうってことありません。
やがて私は、私の力を、私の存在を崇める人々のことを教え導くことになりました。当然ですね。私以外の人間は、とても愚かで、救いのない世界を生きなければなりませんので、私が助けてやらないとなりません。
それなのに、あの、轟焦凍ときたら。
父親に虐げられて、母親にも虐げられた可哀想なやつだと思って救いの手を差し伸べたら、生意気にも私に救いの力がないと言ったのです。恵まれないお前のために私が助けてあげると言ったのに、それを無碍にしたのです。
それから先のことは、あまりよく覚えていないのです。
そう、きっと個性が暴走したのでしょう。気づいたらそこにいた信者たちも、そして轟焦凍の時も止まっていました。
私は、どうにかして轟焦凍を救おうと思い、性交をしようと考えました。
私は何度もその方法で信者たちを救い、子を授かったり、運命が好転した者もいます。だから同じように、救おうと思ったのです。
慣らしもしない尻穴はちっとも気持ち良くありませんでした。え? そんなことは聞いてない? そうですか……何の反応もないまま、私は轟焦凍の尻穴で吐精しました。途端頭がはっきりして、何だかどうでも良くなってしまったのです。私の救いに価値を感じない奴なんてのたれ死んでしまえばいいのです。
だから私は悪くありません。
救いの手を払い除けた轟焦凍が、全て悪いのです。そのくらい分かりますよね? なぜ私がこんな狭くて暗いところに閉じ込められ、あまつさえ手錠なんかかけられないとならないのでしょうか。あなたたち、死後罰を受けますよ。
神に授けられた個性がそれを証明しています。神たる私を虐げて、私が悪いだなんて小さな価値観で測って。愚かなやつ。地獄へ堕ちろ。畳む
【下記の注意書きを必ずお読みください】
この作品はフィクション(現実ではない、ウソの物語)/現実では絶対やっちゃダメです🔞
⚠️未成年の性的搾取 ⚠️同意のない性行為
なぜ私が罪に問われているのでしょう?
私は、両親に愛されて育ちました。
世界で素晴らしい生き物として尊重され、大切にされて育ちました。その証として、神様しかできないことがたくさんできました。
一時間くらいでしたら、対象の時を止めることができます。複数人を止めるのは流石にできませんが、一人くらいでしたらどうってことありません。
やがて私は、私の力を、私の存在を崇める人々のことを教え導くことになりました。当然ですね。私以外の人間は、とても愚かで、救いのない世界を生きなければなりませんので、私が助けてやらないとなりません。
それなのに、あの、轟焦凍ときたら。
父親に虐げられて、母親にも虐げられた可哀想なやつだと思って救いの手を差し伸べたら、生意気にも私に救いの力がないと言ったのです。恵まれないお前のために私が助けてあげると言ったのに、それを無碍にしたのです。
それから先のことは、あまりよく覚えていないのです。
そう、きっと個性が暴走したのでしょう。気づいたらそこにいた信者たちも、そして轟焦凍の時も止まっていました。
私は、どうにかして轟焦凍を救おうと思い、性交をしようと考えました。
私は何度もその方法で信者たちを救い、子を授かったり、運命が好転した者もいます。だから同じように、救おうと思ったのです。
慣らしもしない尻穴はちっとも気持ち良くありませんでした。え? そんなことは聞いてない? そうですか……何の反応もないまま、私は轟焦凍の尻穴で吐精しました。途端頭がはっきりして、何だかどうでも良くなってしまったのです。私の救いに価値を感じない奴なんてのたれ死んでしまえばいいのです。
だから私は悪くありません。
救いの手を払い除けた轟焦凍が、全て悪いのです。そのくらい分かりますよね? なぜ私がこんな狭くて暗いところに閉じ込められ、あまつさえ手錠なんかかけられないとならないのでしょうか。あなたたち、死後罰を受けますよ。
神に授けられた個性がそれを証明しています。神たる私を虐げて、私が悪いだなんて小さな価値観で測って。愚かなやつ。地獄へ堕ちろ。畳む
2023年7月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する
地獄 #カップリング #ヒロアカ #荼炎 #燈炎
地獄 #カップリング #ヒロアカ #荼炎 #燈炎
死んだ後にも地獄があるなら、これ以上の苦しみが待ち受けてるってことなのか。
俺が想像できる苦しみはすべて受けたと思う。
望んでいた機能を持ち合わせていないがために見捨てられる不安。
持たざるものとして生きなければならないと選択を押し付けられるみじめさ。
そして、文字通り身を焼く苦しみ……お父さんは知ってるのかな。火が燃え移ったことにパニックになって大きく息を吸い込んでしまい……そして、内臓が燃えて……モツにも神経って通ってるんだぜ?
それに助かってからもじくじくと痛む深いやけど……お母さんの個性のおかげでマシなのかもしれないけど、それでも。
環境的に恵まれた幼少期とは違い、泥水を啜り食べ物も満足になく、そして腐った人間に媚びないと今日の寝床すらない、お父さんからは見えない……見ようともしない沈殿物としての生活。ここはみじめとか痛いとか苦しいとかより、怨みが俺を形作ってくれていたから、あんまり大変じゃなかった。いや、大変じゃなかったというより、痛みを感じる器官もあの日瀬古渡で焼けてしまったんだ。
それに、同じく怒りや悲しみ、そして恨みを抱えたやつらと出会えた。
陳腐な結束でまとまってる奴らだったけど、社会のあぶれ者といると少しだけ気が楽になった。大人たちが連綿と作り上げた社会からこぼれ落ちたフツウになれなかったやつらたちといると、もしかして俺が雄英に入っていたらこうやってクラスメイトたちとくだらない話をしたりしたかなと不毛な妄想に浸ったりできた。
友情とか全然感じてなかったはずなのに、つまらない死に方したやつらのことを思い出しては少しだけしんみりとすることもあった。俺にちょっとの人間らしさ、年相応の人間らしさを与えてくれたのは、もう名前も顔も思い出せないあいつらなのかもしれない。
それでも、俺の人生は間違いなく地獄だった。死んだ後もこれ以上の苦しみがあるなんてあまりにも酷じゃないか。まあでも、コロシはコロシだもんな。
どんな地獄だろうな。弱って死を待つだけになったお父さんは罪を償うポーズだけは上手くて甲斐甲斐しく世話焼いてくれてるけど、それをまたお母さんに押し付けて誰かのためのヒーローになる、とか。そんで、俺はお父さんにブチ切れる個性もなくただ弱って死んでいく。マジで最悪。
でも、お父さんはヒーローだけど天国にはいけない。子供と妻をこんなにも苛んだんだから。轟家の中で地獄に行くのは俺とお父さんくらいだろうし、地獄でもいいや。お父さんも地獄でいいよね?まぁ回答権は無いんだけど……
俺とお父さん、誰もいない地獄でもう一回親子をやろう。死んでも、ずっと一緒。かわいくて頑張り屋さんの俺のお誘いを無視したんだからそれくらい、いいだろ?
死んだ後にも地獄があるなら、これ以上の苦しみが待ち受けてるってことなのか。
俺が想像できる苦しみはすべて受けたと思う。
望んでいた機能を持ち合わせていないがために見捨てられる不安。
持たざるものとして生きなければならないと選択を押し付けられるみじめさ。
そして、文字通り身を焼く苦しみ……お父さんは知ってるのかな。火が燃え移ったことにパニックになって大きく息を吸い込んでしまい……そして、内臓が燃えて……モツにも神経って通ってるんだぜ?
それに助かってからもじくじくと痛む深いやけど……お母さんの個性のおかげでマシなのかもしれないけど、それでも。
環境的に恵まれた幼少期とは違い、泥水を啜り食べ物も満足になく、そして腐った人間に媚びないと今日の寝床すらない、お父さんからは見えない……見ようともしない沈殿物としての生活。ここはみじめとか痛いとか苦しいとかより、怨みが俺を形作ってくれていたから、あんまり大変じゃなかった。いや、大変じゃなかったというより、痛みを感じる器官もあの日瀬古渡で焼けてしまったんだ。
それに、同じく怒りや悲しみ、そして恨みを抱えたやつらと出会えた。
陳腐な結束でまとまってる奴らだったけど、社会のあぶれ者といると少しだけ気が楽になった。大人たちが連綿と作り上げた社会からこぼれ落ちたフツウになれなかったやつらたちといると、もしかして俺が雄英に入っていたらこうやってクラスメイトたちとくだらない話をしたりしたかなと不毛な妄想に浸ったりできた。
友情とか全然感じてなかったはずなのに、つまらない死に方したやつらのことを思い出しては少しだけしんみりとすることもあった。俺にちょっとの人間らしさ、年相応の人間らしさを与えてくれたのは、もう名前も顔も思い出せないあいつらなのかもしれない。
それでも、俺の人生は間違いなく地獄だった。死んだ後もこれ以上の苦しみがあるなんてあまりにも酷じゃないか。まあでも、コロシはコロシだもんな。
どんな地獄だろうな。弱って死を待つだけになったお父さんは罪を償うポーズだけは上手くて甲斐甲斐しく世話焼いてくれてるけど、それをまたお母さんに押し付けて誰かのためのヒーローになる、とか。そんで、俺はお父さんにブチ切れる個性もなくただ弱って死んでいく。マジで最悪。
でも、お父さんはヒーローだけど天国にはいけない。子供と妻をこんなにも苛んだんだから。轟家の中で地獄に行くのは俺とお父さんくらいだろうし、地獄でもいいや。お父さんも地獄でいいよね?まぁ回答権は無いんだけど……
俺とお父さん、誰もいない地獄でもう一回親子をやろう。死んでも、ずっと一緒。かわいくて頑張り屋さんの俺のお誘いを無視したんだからそれくらい、いいだろ?
2023年6月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する
ノーチャンス! #夢小説 #ヒロアカ #飯田天晴
ノーチャンス! #夢小説 #ヒロアカ #飯田天晴
私の個性はエンジンの持久力を上げるための内燃機関。願ってもない個性だと思っていた。
飯田家が個性婚をやっている、というのは誰の目にも明らかだった。けれど飯田家がそれを表明しなかったから誰も言及しなかった。轟家があんなふうになってしまってからも、何も言わずにしれっとヒーロー活動してる。兄のほうはもうヒーローとして使い物にならないし、もしかしたら子供に夢を託したりしちゃうかもって。
だからちょっと期待しちゃった。
私にも、インゲニウムとワンチャンあるかなって。
でもそんなものなかった。飯田家はもうそういうのやめるんだって。こんなカス個性を引いてしまってから生きている価値を飯田家の個性婚に見出してるような私が悪いとでも言いたいのか、インゲニウムのサイドキックたちはあわれなものを見る目で私を見た。
「どうしたの」
「天晴さん」
車椅子に乗った精悍な顔立ちの青年が不思議そうに見上げてくる。
サイドキックの人がかいつまんで天晴さんに私のことを説明すると、明らかに顔が引き攣っているようだった。
それもそうか。自分の種でうまいことやろうとしている女なんかふつうにキモいわ。ヒーローも人間だったってことか。知らなかった。
それなのに天晴さんは、私に言葉を尽くして別の道で生きるように説得してくれた。個性だけが全てじゃないって。
でもそれって、"持っている"側の感覚よね。お金、学歴、美貌なんかと同じで持ってる側はお金じゃないんだよ、とかいけしゃあしゃあと言ってのけるんだ。"持っていない"側の僻みなんか思いもよらない。
そのままの君ていてほしい。
太陽は太陽のままそこに輝くことに意味がある。そのすがたを手が届くなんて思いもしないくらい遠くから眺めて、あんなに綺麗なひとがいるんだから私も、と思わせてほしい。偶像崇拝に近いような感じかな。
私の個性はエンジンの持久力を上げるための内燃機関。願ってもない個性だと思っていた。
飯田家が個性婚をやっている、というのは誰の目にも明らかだった。けれど飯田家がそれを表明しなかったから誰も言及しなかった。轟家があんなふうになってしまってからも、何も言わずにしれっとヒーロー活動してる。兄のほうはもうヒーローとして使い物にならないし、もしかしたら子供に夢を託したりしちゃうかもって。
だからちょっと期待しちゃった。
私にも、インゲニウムとワンチャンあるかなって。
でもそんなものなかった。飯田家はもうそういうのやめるんだって。こんなカス個性を引いてしまってから生きている価値を飯田家の個性婚に見出してるような私が悪いとでも言いたいのか、インゲニウムのサイドキックたちはあわれなものを見る目で私を見た。
「どうしたの」
「天晴さん」
車椅子に乗った精悍な顔立ちの青年が不思議そうに見上げてくる。
サイドキックの人がかいつまんで天晴さんに私のことを説明すると、明らかに顔が引き攣っているようだった。
それもそうか。自分の種でうまいことやろうとしている女なんかふつうにキモいわ。ヒーローも人間だったってことか。知らなかった。
それなのに天晴さんは、私に言葉を尽くして別の道で生きるように説得してくれた。個性だけが全てじゃないって。
でもそれって、"持っている"側の感覚よね。お金、学歴、美貌なんかと同じで持ってる側はお金じゃないんだよ、とかいけしゃあしゃあと言ってのけるんだ。"持っていない"側の僻みなんか思いもよらない。
そのままの君ていてほしい。
太陽は太陽のままそこに輝くことに意味がある。そのすがたを手が届くなんて思いもしないくらい遠くから眺めて、あんなに綺麗なひとがいるんだから私も、と思わせてほしい。偶像崇拝に近いような感じかな。
ワンドロ:ケーキ #レゾ #ヒロアカ #鳥師弟
ワンドロ:ケーキ #レゾ #ヒロアカ #鳥師弟
「ケーキっておいしいよね。俺さ、大人になってから初めて食べたんだけど美味しすぎてびっくりしたよ」
こうやって不遇だった子供時代をさらけだして特段憐れんだり気遣ったりしたりをせず、そうかとだけ言ってくれるこの後輩のことが不思議で仕方がない。
情が薄いというわけではない。むしろ他人のために自分を捧げることができる英雄たりえる精神を持ったひとだ。
「この前の時任さん(ホークス事務所事務員)のお誕生会でチマチマケーキ食べてるなと思っていましたが、そういうことでしたか」
「食べたらなくなるし」
「そりゃ、そうだ」
「くだらなくて、涙が出そうになるくらい大切な時間だったよ。終わっちゃうのすごく寂しかったな〜……」
「感傷的ですね……またやればいいじゃないですか。誕生日は毎年来ますよ」
「ほんと、そうだよねぇ……誕生日を迎えられるように頑張ろうね」
「ホークスか頑張るんで、俺は高みの見物してます」
「ちょっと前までは俺が頑張るんでホークスは休んでてください!って張り切ってたのに」
「ホークスはただぼんやり休んでるより身体動かしてたほうが気がまぎれるタイプかなと思ってのことです。そうですよね?」
「そう。その通り。だから俺あんまり家に帰ってないんだよね。一人で休んでると考えが悪い方向にばっかりいっちゃって」
「だからカプセルホテルでの目撃情報がたくさんあるんですね」
「そう。他人のいびき聞こえる環境が一番ゆっくりできる」
「へー。よくわからないですね。あの生活感のなさ納得です」
「まあ使わないから、物置だよね」
「あの立地を物置に……」
「使いたかったら使ってもいいよ」
「ほんとですか? じゃあ今度みんなでシャトレーゼのケーキ全種類買って食べましょう」
「楽しそう。不二家のもやりたい。猫の形したやつとか」
「いいですね」
あるかどうかもわからない未来の約束をするのは楽しい。そこまで頑張るかって思えるから。叶えられなくてもいい。そっちの方が楽しみだからくだらなくて何にも替えられない約束をする。ささやかな幸せを想像して眠りにつくのも楽しい。消化試合みたいに生きるより、ずっといい。
「ケーキっておいしいよね。俺さ、大人になってから初めて食べたんだけど美味しすぎてびっくりしたよ」
こうやって不遇だった子供時代をさらけだして特段憐れんだり気遣ったりしたりをせず、そうかとだけ言ってくれるこの後輩のことが不思議で仕方がない。
情が薄いというわけではない。むしろ他人のために自分を捧げることができる英雄たりえる精神を持ったひとだ。
「この前の時任さん(ホークス事務所事務員)のお誕生会でチマチマケーキ食べてるなと思っていましたが、そういうことでしたか」
「食べたらなくなるし」
「そりゃ、そうだ」
「くだらなくて、涙が出そうになるくらい大切な時間だったよ。終わっちゃうのすごく寂しかったな〜……」
「感傷的ですね……またやればいいじゃないですか。誕生日は毎年来ますよ」
「ほんと、そうだよねぇ……誕生日を迎えられるように頑張ろうね」
「ホークスか頑張るんで、俺は高みの見物してます」
「ちょっと前までは俺が頑張るんでホークスは休んでてください!って張り切ってたのに」
「ホークスはただぼんやり休んでるより身体動かしてたほうが気がまぎれるタイプかなと思ってのことです。そうですよね?」
「そう。その通り。だから俺あんまり家に帰ってないんだよね。一人で休んでると考えが悪い方向にばっかりいっちゃって」
「だからカプセルホテルでの目撃情報がたくさんあるんですね」
「そう。他人のいびき聞こえる環境が一番ゆっくりできる」
「へー。よくわからないですね。あの生活感のなさ納得です」
「まあ使わないから、物置だよね」
「あの立地を物置に……」
「使いたかったら使ってもいいよ」
「ほんとですか? じゃあ今度みんなでシャトレーゼのケーキ全種類買って食べましょう」
「楽しそう。不二家のもやりたい。猫の形したやつとか」
「いいですね」
あるかどうかもわからない未来の約束をするのは楽しい。そこまで頑張るかって思えるから。叶えられなくてもいい。そっちの方が楽しみだからくだらなくて何にも替えられない約束をする。ささやかな幸せを想像して眠りにつくのも楽しい。消化試合みたいに生きるより、ずっといい。
ワンドロ:絆 #カップリング #ヒロアカ #荼炎 #燈炎
ワンドロ:絆 #カップリング #ヒロアカ #荼炎 #燈炎
俺の仏壇を拝んで、”荼毘”になってから数日くらいはさ……親子の絆が俺とお父さんを結びつけてくれるって思ってたんだよ。
でも実際そんなことはなくて、俺が「初めまして」だなんて言ったらお父さんは気づきもしなかった。絆なんてウソだね。お互いの努力があって関係を維持しようと関わり続ける意思のことを絆って呼んでることを、荼毘になりたての俺に伝えてやりたいよ。かわいそうな俺。もしかしたら殺し続けることでお父さんが俺のこと見つけてくれないかなって期待してたんだぜ。罪が俺たちを結ぶ絆になるかもしれないって。でもそんなことなかった。俺だって生殖にそんな夢見てるような歳じゃないけどさ、もしかしたら血のつながりにはなんかしらの絆が生まれるのかもって。でも全然そんなことなかった! 俺のこと憎らしい人殺しを見る目で見た! 俺ずーっと、お父さんのこと待ってたのに。涙なんか出るなって言ってたら本当に出なくなっちゃうまで焼けてしまったのに。お父さんがあの時来てくれたらこんなことにはなっていなかったのに。お父さんのせいなのに。
あんな目で、俺を見た。
俺の仏壇を拝んで、”荼毘”になってから数日くらいはさ……親子の絆が俺とお父さんを結びつけてくれるって思ってたんだよ。
でも実際そんなことはなくて、俺が「初めまして」だなんて言ったらお父さんは気づきもしなかった。絆なんてウソだね。お互いの努力があって関係を維持しようと関わり続ける意思のことを絆って呼んでることを、荼毘になりたての俺に伝えてやりたいよ。かわいそうな俺。もしかしたら殺し続けることでお父さんが俺のこと見つけてくれないかなって期待してたんだぜ。罪が俺たちを結ぶ絆になるかもしれないって。でもそんなことなかった。俺だって生殖にそんな夢見てるような歳じゃないけどさ、もしかしたら血のつながりにはなんかしらの絆が生まれるのかもって。でも全然そんなことなかった! 俺のこと憎らしい人殺しを見る目で見た! 俺ずーっと、お父さんのこと待ってたのに。涙なんか出るなって言ってたら本当に出なくなっちゃうまで焼けてしまったのに。お父さんがあの時来てくれたらこんなことにはなっていなかったのに。お父さんのせいなのに。
あんな目で、俺を見た。
ワンドロ:ふたり #カップリング #荼炎 #燈炎 #ヒロアカ
ワンドロ:ふたり #カップリング #荼炎 #燈炎 #ヒロアカ
あのとき、お父さん助けてとは言えなかった。助けを求めるというのは自分が相手に無償の加護を求めることであり自分が不良品であることを認めることに等しかったから。
いや、言ったほうのかもしれない。
助けて
痛い
怖い
と。
それはどれも届かなかった。そこにいない人にどれだけ伝えたいと思っても伝わるようなもんじゃない。テレパシーとかないからね。それにパニックになって叫ぼうとして深く息を吸ってしまったら、炎は簡単に肺に届き、喉を灼いた。
そして、俺は荼毘になって「はじめまして」と言った。焼けた喉から絞り出された声は燈矢のものだとわからなかったみたい。
あれから俺はうめき声しかあげれないまだ死んでない焼死体になったわけだけど、その声の方が燈矢のものだってわかるみたい。
俺がどれだけなじっても、ずっと相槌を打ってくれる。それも興味ないやつにやる適当な返事じゃなくて、ちゃんと会話になってるやつ。俺がこんなふうになる前に気づいて欲しかったんだけど、それができなかったから俺たちは……いま戻せない時を、消せない過去を取り出して眺めては今を生きている。変なの。バカみたい。でも今の俺はちょっと満足してる。許してはないけど、満足している。
あのとき、お父さん助けてとは言えなかった。助けを求めるというのは自分が相手に無償の加護を求めることであり自分が不良品であることを認めることに等しかったから。
いや、言ったほうのかもしれない。
助けて
痛い
怖い
と。
それはどれも届かなかった。そこにいない人にどれだけ伝えたいと思っても伝わるようなもんじゃない。テレパシーとかないからね。それにパニックになって叫ぼうとして深く息を吸ってしまったら、炎は簡単に肺に届き、喉を灼いた。
そして、俺は荼毘になって「はじめまして」と言った。焼けた喉から絞り出された声は燈矢のものだとわからなかったみたい。
あれから俺はうめき声しかあげれないまだ死んでない焼死体になったわけだけど、その声の方が燈矢のものだってわかるみたい。
俺がどれだけなじっても、ずっと相槌を打ってくれる。それも興味ないやつにやる適当な返事じゃなくて、ちゃんと会話になってるやつ。俺がこんなふうになる前に気づいて欲しかったんだけど、それができなかったから俺たちは……いま戻せない時を、消せない過去を取り出して眺めては今を生きている。変なの。バカみたい。でも今の俺はちょっと満足してる。許してはないけど、満足している。
ママとお父さんのだいすきな私 #夢小説 #カップリング #鬼滅の刃 #おばみつ
ママとお父さんのだいすきな私 #夢小説 #カップリング #鬼滅の刃 #おばみつ
お父さんとママのこと大すきだけど、今日だけはおうちに帰りたくなかった。
ママとおんなじ桃色の髪が大すき。けど、今日学校で男の子にからかわれた。そうめんのピンク色食べすぎたエロ女って。
そんなことお父さんに言ったら男の子のこと何しちゃうかわからないし、ママと同じ髪の色をからかわれたなんて言ったらママは悲しむに決まってる。
公園のベンチに座ったまま五時のかねを聞いた。学校が終わったらまっすぐおうちに帰ってきて、ランドセルをおいてから遊ぶのよってママ言ってたのに。
多分お父さんもママも探している。見つかりたくなくて公園を出たけど、お店の近くだからきっとすぐ見つかっちゃう。
「花」
「お父さん」
「どうしたんだ、みんな心配してたんだぞ」
そう言ってお父さんはランドセルごと私を抱き上げた。今日の髪型はお父さんがくるくるにしてリボンをつけてくれた。それなのに、帰る時には給食当番のお帽子かぶってきたからお父さんは何かわかったのか、何も聞かずにお店に戻ってママに連絡しているみたいだった。
「髪のことで何か言われたんだろう」
「わかったの?」
「ああ、ママも言われていた」
「あいつらがばかなんだってわかるんだけど、けど……ママと同じ髪なのにそんなこと言われて悔しかった」
「お前はえらいな。お父さんと違って時分の気持ちを言葉にできる」
「そう? お父さん毎日ママにだいすきっていってるじゃん」
「それは、そうだが……」
「子供たちにも言ってる」
「言わないと伝わらないことがあるからな……っていうことはお前が一番わかってそうだけどな。もうそろそろママ帰ってくるから、ちゃんと話してやってくれるか?」
「うん……」
「ンモ〜っっっ!!花ちゃん! 甘露寺花ちゃん!! し、心配したのよ〜っ!!どうしたの? 怪我はない??」
「ないよ……」
「何か嫌なことがあったの? 今日の晩御飯がピーマンの肉詰めなのが嫌? ママかパパが嫌なこと言っちゃった??」
「違うの……」
給食当番のお帽子をとると、桃色の髪がふわりとこぼれ落ちた。ママと同じ髪の色と、お父さんと同じ瞳の色。どっちもだいすきだ。ママになんて言おうかモジモジしてたら、お父さんが何か言いたげにソワソワしている。
「あのね……この髪の色はそうめんのピンク食べすぎたエロ女って……」
「くだらん」
「パパは静かにしてて!」
「すまん」
お父さんはママに弱すぎる。惚れた弱みってすごいんだなぁっていつも思う。
「もちろんそんな言いがかり言うのは変だわ。でも、悲しいわよね……」
「そうなの。くだらないってわかってるんだけど、悲しかったの……」
ただ聞いて、私の気持ちをわかって欲しかった。ママは私のことをわかってくれる。
ママだいすき。
お父さんも好き。
▼
「花、今日の髪型はどうする」
「んーと、髪がちゃんと見えるような感じがいい。くるくるにして」
「わかった」
お父さんにお願いしてかわいくしてもらった。ママとお父さんの子供だもん。いつだって一番かわいいし、ママとお父さんの宝物だもん。エロだからなんだっていうのよ。くだらないバカの言葉で傷つくことがあったって、いいの。ママとお父さんがぎゅってしれくれるんだから。
お父さんとママのこと大すきだけど、今日だけはおうちに帰りたくなかった。
ママとおんなじ桃色の髪が大すき。けど、今日学校で男の子にからかわれた。そうめんのピンク色食べすぎたエロ女って。
そんなことお父さんに言ったら男の子のこと何しちゃうかわからないし、ママと同じ髪の色をからかわれたなんて言ったらママは悲しむに決まってる。
公園のベンチに座ったまま五時のかねを聞いた。学校が終わったらまっすぐおうちに帰ってきて、ランドセルをおいてから遊ぶのよってママ言ってたのに。
多分お父さんもママも探している。見つかりたくなくて公園を出たけど、お店の近くだからきっとすぐ見つかっちゃう。
「花」
「お父さん」
「どうしたんだ、みんな心配してたんだぞ」
そう言ってお父さんはランドセルごと私を抱き上げた。今日の髪型はお父さんがくるくるにしてリボンをつけてくれた。それなのに、帰る時には給食当番のお帽子かぶってきたからお父さんは何かわかったのか、何も聞かずにお店に戻ってママに連絡しているみたいだった。
「髪のことで何か言われたんだろう」
「わかったの?」
「ああ、ママも言われていた」
「あいつらがばかなんだってわかるんだけど、けど……ママと同じ髪なのにそんなこと言われて悔しかった」
「お前はえらいな。お父さんと違って時分の気持ちを言葉にできる」
「そう? お父さん毎日ママにだいすきっていってるじゃん」
「それは、そうだが……」
「子供たちにも言ってる」
「言わないと伝わらないことがあるからな……っていうことはお前が一番わかってそうだけどな。もうそろそろママ帰ってくるから、ちゃんと話してやってくれるか?」
「うん……」
「ンモ〜っっっ!!花ちゃん! 甘露寺花ちゃん!! し、心配したのよ〜っ!!どうしたの? 怪我はない??」
「ないよ……」
「何か嫌なことがあったの? 今日の晩御飯がピーマンの肉詰めなのが嫌? ママかパパが嫌なこと言っちゃった??」
「違うの……」
給食当番のお帽子をとると、桃色の髪がふわりとこぼれ落ちた。ママと同じ髪の色と、お父さんと同じ瞳の色。どっちもだいすきだ。ママになんて言おうかモジモジしてたら、お父さんが何か言いたげにソワソワしている。
「あのね……この髪の色はそうめんのピンク食べすぎたエロ女って……」
「くだらん」
「パパは静かにしてて!」
「すまん」
お父さんはママに弱すぎる。惚れた弱みってすごいんだなぁっていつも思う。
「もちろんそんな言いがかり言うのは変だわ。でも、悲しいわよね……」
「そうなの。くだらないってわかってるんだけど、悲しかったの……」
ただ聞いて、私の気持ちをわかって欲しかった。ママは私のことをわかってくれる。
ママだいすき。
お父さんも好き。
▼
「花、今日の髪型はどうする」
「んーと、髪がちゃんと見えるような感じがいい。くるくるにして」
「わかった」
お父さんにお願いしてかわいくしてもらった。ママとお父さんの子供だもん。いつだって一番かわいいし、ママとお父さんの宝物だもん。エロだからなんだっていうのよ。くだらないバカの言葉で傷つくことがあったって、いいの。ママとお父さんがぎゅってしれくれるんだから。
俺たちのグッズが出た #カップリング #ヒロアカ #ミリ環
俺たちのグッズが出た #カップリング #ヒロアカ #ミリ環
「波動さんのぬいぐるみを着飾って楽しむ趣味ができた」
「へー」
「あのね、いろんな作家さんが帽子とか洋服とか作ってて……」
「かわいい。波動さんはこういう少女趣味な服着ることなさそうだから尚更」
「そう。波動さんは絶対にこんなフリルフリルした服は着ない」
「着ないねえ……波動さんは服のこと隠すべきところを隠すくらいの勢いしかないと思う。その流れで言うと俺は環とファットと切島くんとてつてつくんのアクリルジオラマ持ってる」
「あ、あれ俺も好き。ファットが集合写真の時前に横たわるタイプの上司だってことをしっかり描いてるし」
「そこかぁ……」
「そう。いつもはかなり大雑把でアホっぽい大人のフリしてるけど、一番税金とか法律のことわかってるし、労働時間に気を使ってるし、労災とかの手続き手伝ってくれる。そういうタイプの大人でもある」
「いい職場だ」
「うん。切島くんとてつてつくんはあのキラキラした目でカニカマを食べる俺を見て、カニの形質が出てこないか待っててかわいい。カニカマのことカニだと思ってて……」
「かわいい。環が仕事先でうまくやってるみたいでよかった」
「うん。みんなが元気な限りは頑張りたいな」
「そう、そうありたいよね」
「ね」
「波動さんのぬいぐるみを着飾って楽しむ趣味ができた」
「へー」
「あのね、いろんな作家さんが帽子とか洋服とか作ってて……」
「かわいい。波動さんはこういう少女趣味な服着ることなさそうだから尚更」
「そう。波動さんは絶対にこんなフリルフリルした服は着ない」
「着ないねえ……波動さんは服のこと隠すべきところを隠すくらいの勢いしかないと思う。その流れで言うと俺は環とファットと切島くんとてつてつくんのアクリルジオラマ持ってる」
「あ、あれ俺も好き。ファットが集合写真の時前に横たわるタイプの上司だってことをしっかり描いてるし」
「そこかぁ……」
「そう。いつもはかなり大雑把でアホっぽい大人のフリしてるけど、一番税金とか法律のことわかってるし、労働時間に気を使ってるし、労災とかの手続き手伝ってくれる。そういうタイプの大人でもある」
「いい職場だ」
「うん。切島くんとてつてつくんはあのキラキラした目でカニカマを食べる俺を見て、カニの形質が出てこないか待っててかわいい。カニカマのことカニだと思ってて……」
「かわいい。環が仕事先でうまくやってるみたいでよかった」
「うん。みんなが元気な限りは頑張りたいな」
「そう、そうありたいよね」
「ね」
運命の赤い糸が目に見えないばかりに #カップリング #ヒロアカ #ミリ環
運命の赤い糸が目に見えないばかりに #カップリング #ヒロアカ #ミリ環
「波動さん、綺麗だったね」
「うん。ドレスの色がすごく似合ってたね」
波動さんの結婚式か終わった後、俺が大阪に帰る前にちょっと時間作ろうと言って会っているけどやっぱり毎日顔を合わせていたときよりはお互いの今を探り合っているような気がする。いつもはちょっと話しただけで昨日さよならと言って別れたくらいのノリで話せるのに。
「いいなあ、結婚」
「ミリオ、結婚したい人がいるの?」
「うん。いる」
「そうなんだ……したいなら、すればいいのに」
「そうもいかない事情があって……でも、俺が死ぬ時はその人に喪主を頼みたいと思ってて」
「そういう理由で結婚考える人っているんだ」
「結婚はロマンスだけではやっていけないからね」
「何か知っているような口ぶりだね」
「まあ俺も社会に揉まれていろいろ見てきたってこと」
「そっか」
「っていうか、やっと環が話してくれた気がする。聞かれたら答えるだったじゃん。さっきまで」
「いや俺たちなんだかんだで一年会ってないから、今のミリオのノリがわからなくて」
「変わらないよ、そんなの」
「変わるよ。波動さんだってあんな……俺たち以外のやつと結婚したし……」
「さみしいならさみしいってちゃんと言いなよ」
「ほんとだ……さみしい! もう俺たちとドッジボールとか缶けりとかしてくれないかもしれない……」
「それはないでしょ。あの子、勝てる勝負好きじゃん」
「俺は別に手を抜いているわけでは……」
そこまで言って、俺は言葉を失った。俺だけが誰とも結婚したいほどの関係性を作れていない焦りが顔を出したのだ。別にそんなもの無くてもいいんだけど、無いと二人と一緒になれないような気がして。いやもう、違う道を歩いているんだから一緒じゃなくてもいいんだけど、少しでも共通点が多くないと俺だけその輪からいなくなっちゃうような気がして。くだらないのはわかってる。みんなと一緒じゃないからとパートナーを求めたってそんなのパートナーの人に失礼だっていうのもわかる。わかるけど今日の俺は波動さんの結婚に少なからずショックを受けてしまっているのだと思う。
「ミリオまで結婚しちゃったら、俺どうしたらいいんだろう」
「どうもしなくていいよ」
「それは、わかるけど……」
せっかく久しぶりに会ったのだからこんな湿っぽい話はしたくないのに、一度マイナス思考が始まったら下り坂を駆け下りるように止まらない。ミリオはそんな俺を知ってるから、マイナス思考には運動が一番とか言って、スマホから底抜けに明るいおなじみの前奏を流し出した。
「ラ、ラジオ体操第二……あー運動する気なんかないのにこの前奏を聞くとあー……身体が勝手に……」
「でしょ? 俺最近ウジウジした時はラジオ体操してんの」
「へー」
日が暮れた公園でいい大人二人、しかも多少名の売れた二人がラジオ体操をしているのは滑稽に映ってはいたものの、みんなあの前奏には我慢できずに文句垂れながらも深呼吸まで済ませてしまった。
「どうしたのルミリオンじゃん。急にラジオ体操とかして」
「今日は友達の結婚式があって」
「文脈機能してないけど?」
「ダハハ」
知らない人とも積極的に雑談できるミリオの影でそれを眺めていた。
「環、また気分落ち込んだら俺のこと思い出して。俺はずっと味方だから。そして、ラジオ体操をして」
「う、うん……」
「スマホ出して。サブスク入ってる?入ってなかったら俺が買ってあげる」
「入ってない。っていうか圧がすごい」
「ファットも切島くんもてつてつくんもいい人たちだから大丈夫だろうけど、それでも環は落ち込むでしょ。そしたら俺がいるってわかってたら、安心するといいなって……もう何もかも嫌になったら俺のとこ来ればいいし……」
「ありがと……」
こんなにいいやつが近くにいるのに、俺は何を落ち込む必要があったんだろう。それでも俺はこういう気質だから落ち込むんだろうけど、その度浮かんで来れる。縦の糸と横の糸、水と魚、錘と浮きの俺たち。まあなんと、いい関係じゃないか。
「波動さん、綺麗だったね」
「うん。ドレスの色がすごく似合ってたね」
波動さんの結婚式か終わった後、俺が大阪に帰る前にちょっと時間作ろうと言って会っているけどやっぱり毎日顔を合わせていたときよりはお互いの今を探り合っているような気がする。いつもはちょっと話しただけで昨日さよならと言って別れたくらいのノリで話せるのに。
「いいなあ、結婚」
「ミリオ、結婚したい人がいるの?」
「うん。いる」
「そうなんだ……したいなら、すればいいのに」
「そうもいかない事情があって……でも、俺が死ぬ時はその人に喪主を頼みたいと思ってて」
「そういう理由で結婚考える人っているんだ」
「結婚はロマンスだけではやっていけないからね」
「何か知っているような口ぶりだね」
「まあ俺も社会に揉まれていろいろ見てきたってこと」
「そっか」
「っていうか、やっと環が話してくれた気がする。聞かれたら答えるだったじゃん。さっきまで」
「いや俺たちなんだかんだで一年会ってないから、今のミリオのノリがわからなくて」
「変わらないよ、そんなの」
「変わるよ。波動さんだってあんな……俺たち以外のやつと結婚したし……」
「さみしいならさみしいってちゃんと言いなよ」
「ほんとだ……さみしい! もう俺たちとドッジボールとか缶けりとかしてくれないかもしれない……」
「それはないでしょ。あの子、勝てる勝負好きじゃん」
「俺は別に手を抜いているわけでは……」
そこまで言って、俺は言葉を失った。俺だけが誰とも結婚したいほどの関係性を作れていない焦りが顔を出したのだ。別にそんなもの無くてもいいんだけど、無いと二人と一緒になれないような気がして。いやもう、違う道を歩いているんだから一緒じゃなくてもいいんだけど、少しでも共通点が多くないと俺だけその輪からいなくなっちゃうような気がして。くだらないのはわかってる。みんなと一緒じゃないからとパートナーを求めたってそんなのパートナーの人に失礼だっていうのもわかる。わかるけど今日の俺は波動さんの結婚に少なからずショックを受けてしまっているのだと思う。
「ミリオまで結婚しちゃったら、俺どうしたらいいんだろう」
「どうもしなくていいよ」
「それは、わかるけど……」
せっかく久しぶりに会ったのだからこんな湿っぽい話はしたくないのに、一度マイナス思考が始まったら下り坂を駆け下りるように止まらない。ミリオはそんな俺を知ってるから、マイナス思考には運動が一番とか言って、スマホから底抜けに明るいおなじみの前奏を流し出した。
「ラ、ラジオ体操第二……あー運動する気なんかないのにこの前奏を聞くとあー……身体が勝手に……」
「でしょ? 俺最近ウジウジした時はラジオ体操してんの」
「へー」
日が暮れた公園でいい大人二人、しかも多少名の売れた二人がラジオ体操をしているのは滑稽に映ってはいたものの、みんなあの前奏には我慢できずに文句垂れながらも深呼吸まで済ませてしまった。
「どうしたのルミリオンじゃん。急にラジオ体操とかして」
「今日は友達の結婚式があって」
「文脈機能してないけど?」
「ダハハ」
知らない人とも積極的に雑談できるミリオの影でそれを眺めていた。
「環、また気分落ち込んだら俺のこと思い出して。俺はずっと味方だから。そして、ラジオ体操をして」
「う、うん……」
「スマホ出して。サブスク入ってる?入ってなかったら俺が買ってあげる」
「入ってない。っていうか圧がすごい」
「ファットも切島くんもてつてつくんもいい人たちだから大丈夫だろうけど、それでも環は落ち込むでしょ。そしたら俺がいるってわかってたら、安心するといいなって……もう何もかも嫌になったら俺のとこ来ればいいし……」
「ありがと……」
こんなにいいやつが近くにいるのに、俺は何を落ち込む必要があったんだろう。それでも俺はこういう気質だから落ち込むんだろうけど、その度浮かんで来れる。縦の糸と横の糸、水と魚、錘と浮きの俺たち。まあなんと、いい関係じゃないか。
永遠 #カップリング #ヒロアカ #荼炎 #燈炎
永遠 #カップリング #ヒロアカ #荼炎 #燈炎
結局お父さんは個性婚の結果として俺らを作って、何かを得ることができたんだろうか。
おだやかに風が吹くとてもいい季節なんだと思う。水の底から見る景色みたいにぼんやり歪んだ視界、ごうごうと血の流れだけが聞こえる耳、風の流れすらわからない肌。どれもがこの季節を教えてくれないけど、お父さんが教えてくれるんだ。
「燈矢、今日は風が吹いているんだ。優しい風だ。燈矢の周りにだって吹いてるぞ」
「見てごらん、あれは……何らかの鳥だ」
とか。
俺は多分もうお父さんの願い、一番になりたかったという願いを叶えてあげられない。けれどこうして大切に余生を過ごしている。ほかに願いがあるなら、俺でも叶えてあげられられる願いがあればいいんだけど、こんな身体じゃもう無理だ。俺がこの前、こんな弱くなった俺を見られたくない、捨てて欲しいと言ったら、
「なにを言うんだ燈矢。俺は燈矢に……家族に、俺がなにを大切にしなければいけなかったか、俺の本当の願いは何かということを教えてもらったんだ」
「そうなんだ……お父さんの願いって、何?」
「それは、燈矢。家族がみんな幸せを感じながら生きることだ」
「そっか……いまからでも、まだそうなれるなら、そうなりたいね……」
「過去は消えない。変えることはできない。けれど、おそらく……過去を現在や未来で雪ぐことはできると思うんだ。燈矢はどう思う」
「俺は、それでもいいよ。これから……っても、そう長くはないけど俺や俺のきょうだい達のわだかまりを雪いでよ」
「ありがとう、燈矢」
「自分の考えややりたいこと、これがイイと思った事を家族に押し付けないだけでちょっと進歩」
そうやってちょっと笑っただけで頬が裂けるように痛い。けどお父さんも苦笑いの部類では、るけど、笑ってくれたから、いい。今の俺は、それでいい。
畳む
結局お父さんは個性婚の結果として俺らを作って、何かを得ることができたんだろうか。
おだやかに風が吹くとてもいい季節なんだと思う。水の底から見る景色みたいにぼんやり歪んだ視界、ごうごうと血の流れだけが聞こえる耳、風の流れすらわからない肌。どれもがこの季節を教えてくれないけど、お父さんが教えてくれるんだ。
「燈矢、今日は風が吹いているんだ。優しい風だ。燈矢の周りにだって吹いてるぞ」
「見てごらん、あれは……何らかの鳥だ」
とか。
俺は多分もうお父さんの願い、一番になりたかったという願いを叶えてあげられない。けれどこうして大切に余生を過ごしている。ほかに願いがあるなら、俺でも叶えてあげられられる願いがあればいいんだけど、こんな身体じゃもう無理だ。俺がこの前、こんな弱くなった俺を見られたくない、捨てて欲しいと言ったら、
「なにを言うんだ燈矢。俺は燈矢に……家族に、俺がなにを大切にしなければいけなかったか、俺の本当の願いは何かということを教えてもらったんだ」
「そうなんだ……お父さんの願いって、何?」
「それは、燈矢。家族がみんな幸せを感じながら生きることだ」
「そっか……いまからでも、まだそうなれるなら、そうなりたいね……」
「過去は消えない。変えることはできない。けれど、おそらく……過去を現在や未来で雪ぐことはできると思うんだ。燈矢はどう思う」
「俺は、それでもいいよ。これから……っても、そう長くはないけど俺や俺のきょうだい達のわだかまりを雪いでよ」
「ありがとう、燈矢」
「自分の考えややりたいこと、これがイイと思った事を家族に押し付けないだけでちょっと進歩」
そうやってちょっと笑っただけで頬が裂けるように痛い。けどお父さんも苦笑いの部類では、るけど、笑ってくれたから、いい。今の俺は、それでいい。
畳む
only you #カップリング #ブルーロック #スナロレ
only you #カップリング #ブルーロック #スナロレ
「殴ったんだって? お前のパスをこぼしたチームメイトを」
「説教は受けてやったよ」
へらへらと笑う俺のツラを、オヤジだったなら起き上がれなくなるまでぶん殴ったけどスナッフィーはただその瞳をぎょろぎょろと動かして黙っている。
「やっとサッカーしてやってもいいかな? と思ったのにさ、俺よりヘタクソなやつばっかりで頭きたんだよ。俺よりずっと長く練習してきても俺以下の実力しか出せない奴らが結託して、えらそうにお前のやり方は良くないなんて言うんだぜ。スポーツは結果が全てだろ。馴れ合いとか、感傷とか。一番いらないものにこだわってるやつらばっかりなんだよ」
俺は言い訳するように長々と俺を怒らせた奴の方が悪いと並べ立てた。かっこ悪い。これじゃガキみたいだ。俺の言葉を黙って聞いていたスナッフィーは、トチって死んだ親友のことでも思い出してるのか目をすっと細めて、俺を見た。そしてそれを誤魔化すかのように小脇に抱えたボールを足先でいじり始めた。
「ロレンツォ、お前の言うとおりでもあるし、俺の経験則で言うと少し違うと思う。努力の積み重ねを美しいと思うのはどこでも一緒だ。サッカーはチームスポーツだからみんなが美しいと言うものを美しいと言っておくだけでもその集団には親しみを持ってもらえるんだよ。これは大人だから知ってるズルだ。大人はズルの手数が子供より多く知ってる。その代わり自分の経験してきたこと以外のことに恐れを抱く。だからロレンツみたいな、生育環境が違うやつがいるだけで異なる価値観への恐れが減る……ことを見越していたんだが、そうじゃないかもな。ロレンツォの言うとおり、結果が全てだ。それなのに文句を言うチームメイトはおかしいな」
「だろ?!」
「おかしいが、ロレンツォ、お前もじきに忖度ってやつを学んだほうがいい……ロレンツォが楽に生きるために」
「そんなもん、いらない。俺は金にならない、形にないものは信じない。他人からの信頼も必要ない。そんなもの、すぐ無くすか……自分から壊しちまうんだ」
「悩むことも大事だがな、夜は悩まないほうがいい。グラウンドに行こう。少しだけ練習してから寝よう」
「いいよ」
「ありがとう、ロレンツォ」
こうして俺は、ちょっと問題を起こすとロレンツォが構ってくれることを学んでしまった。これは大人になってからも続くんだけど、徐々に構ってもらえなくなった。そのうえ、構ってもらいたくて問題行動を起こしてるということがスナッフィーにバレてるみたいで恥ずかしくなった。そんなことをしてまでスナッフィーの気を引きたいみたいで。
でも一番気を引けるのは俺が結果を出せた時だ。それに気づいてからは俺はもうそりゃあ真面目にサッカーした。ちょっとでもスナッフィーの視界に入れるように、スナッフィーの夢を叶える道具としてうまく使えるんだぜとアピールした。虚しくなんかなかった。
死んだ親友とスナッフィーが写ってる写真を写真立てに入れてるのを見て、俺はいつもなんだか気が重かった。生きて、スナッフィーのことを見てるのは俺なのに、スナッフィーは地獄の釜の中をずーっと眺めて、時々現実を見ては親友の影をグラウンドの中に探している。
別に虚しくなんかない。俺はスナッフィーとは金と契約で繋がってるだけだし。信頼とか、無いし。そのはずなのに、俺何故かそんなスナッフィーに苛立ちを感じている。スナッフィーは気づいてか気づいてないのか、何も言わずに俺らのプレーを上から目線で眺めている。むかつく、嫌い、いなくなれ。そんな単純な苛立ちでしか自分の感情を表現できない。だから多分俺がチームメイトを殴ったのってスナッフィーのせいじゃないのか? いやでも、言われたな。自分の問題を他人のせいにするなって。
「殴ったんだって? お前のパスをこぼしたチームメイトを」
「説教は受けてやったよ」
へらへらと笑う俺のツラを、オヤジだったなら起き上がれなくなるまでぶん殴ったけどスナッフィーはただその瞳をぎょろぎょろと動かして黙っている。
「やっとサッカーしてやってもいいかな? と思ったのにさ、俺よりヘタクソなやつばっかりで頭きたんだよ。俺よりずっと長く練習してきても俺以下の実力しか出せない奴らが結託して、えらそうにお前のやり方は良くないなんて言うんだぜ。スポーツは結果が全てだろ。馴れ合いとか、感傷とか。一番いらないものにこだわってるやつらばっかりなんだよ」
俺は言い訳するように長々と俺を怒らせた奴の方が悪いと並べ立てた。かっこ悪い。これじゃガキみたいだ。俺の言葉を黙って聞いていたスナッフィーは、トチって死んだ親友のことでも思い出してるのか目をすっと細めて、俺を見た。そしてそれを誤魔化すかのように小脇に抱えたボールを足先でいじり始めた。
「ロレンツォ、お前の言うとおりでもあるし、俺の経験則で言うと少し違うと思う。努力の積み重ねを美しいと思うのはどこでも一緒だ。サッカーはチームスポーツだからみんなが美しいと言うものを美しいと言っておくだけでもその集団には親しみを持ってもらえるんだよ。これは大人だから知ってるズルだ。大人はズルの手数が子供より多く知ってる。その代わり自分の経験してきたこと以外のことに恐れを抱く。だからロレンツみたいな、生育環境が違うやつがいるだけで異なる価値観への恐れが減る……ことを見越していたんだが、そうじゃないかもな。ロレンツォの言うとおり、結果が全てだ。それなのに文句を言うチームメイトはおかしいな」
「だろ?!」
「おかしいが、ロレンツォ、お前もじきに忖度ってやつを学んだほうがいい……ロレンツォが楽に生きるために」
「そんなもん、いらない。俺は金にならない、形にないものは信じない。他人からの信頼も必要ない。そんなもの、すぐ無くすか……自分から壊しちまうんだ」
「悩むことも大事だがな、夜は悩まないほうがいい。グラウンドに行こう。少しだけ練習してから寝よう」
「いいよ」
「ありがとう、ロレンツォ」
こうして俺は、ちょっと問題を起こすとスナッフィーが構ってくれることを学んでしまった。これは大人になってからも続くんだけど、徐々に構ってもらえなくなった。そのうえ、構ってもらいたくて問題行動を起こしてるということがスナッフィーにバレてるみたいで恥ずかしくなった。そんなことをしてまでスナッフィーの気を引きたいみたいで。
でも一番気を引けるのは俺が結果を出せた時だ。それに気づいてからは俺はもうそりゃあ真面目にサッカーした。ちょっとでもスナッフィーの視界に入れるように、スナッフィーの夢を叶える道具としてうまく使えるんだぜとアピールした。虚しくなんかなかった。
死んだ親友とスナッフィーが写ってる写真を写真立てに入れてるのを見て、俺はいつもなんだか気が重かった。生きて、スナッフィーのことを見てるのは俺なのに、スナッフィーは地獄の釜の中をずーっと眺めて、時々現実を見ては親友の影をグラウンドの中に探している。
別に虚しくなんかない。俺はスナッフィーとは金と契約で繋がってるだけだし。信頼とか、無いし。そのはずなのに、俺何故かそんなスナッフィーに苛立ちを感じている。スナッフィーは気づいてか気づいてないのか、何も言わずに俺らのプレーを上から目線で眺めている。むかつく、嫌い、いなくなれ。そんな単純な苛立ちでしか自分の感情を表現できない。だから多分俺がチームメイトを殴ったのってスナッフィーのせいじゃないのか? いやでも、言われたな。自分の問題を他人のせいにするなって。
そういうバカみたいな悩みはサッカーしてる時だけはついてこなかった。俺はただ、俺の中の嫌な俺が顔を出さないようにサッカーをしている。なんでもよかったんだ。サッカーじゃなくても。でもサッカーじゃなくちゃ、俺はここに居ない。まだあの今生の延長線上にある地獄で息ができなくなっているに違いない。ある意味、俺を救おうとして手放した大人より悪質なのかもしれない。あーあー、やめ。サッカーしよう。
「殴ったんだって? お前のパスをこぼしたチームメイトを」
「説教は受けてやったよ」
へらへらと笑う俺のツラを、オヤジだったなら起き上がれなくなるまでぶん殴ったけどスナッフィーはただその瞳をぎょろぎょろと動かして黙っている。
「やっとサッカーしてやってもいいかな? と思ったのにさ、俺よりヘタクソなやつばっかりで頭きたんだよ。俺よりずっと長く練習してきても俺以下の実力しか出せない奴らが結託して、えらそうにお前のやり方は良くないなんて言うんだぜ。スポーツは結果が全てだろ。馴れ合いとか、感傷とか。一番いらないものにこだわってるやつらばっかりなんだよ」
俺は言い訳するように長々と俺を怒らせた奴の方が悪いと並べ立てた。かっこ悪い。これじゃガキみたいだ。俺の言葉を黙って聞いていたスナッフィーは、トチって死んだ親友のことでも思い出してるのか目をすっと細めて、俺を見た。そしてそれを誤魔化すかのように小脇に抱えたボールを足先でいじり始めた。
「ロレンツォ、お前の言うとおりでもあるし、俺の経験則で言うと少し違うと思う。努力の積み重ねを美しいと思うのはどこでも一緒だ。サッカーはチームスポーツだからみんなが美しいと言うものを美しいと言っておくだけでもその集団には親しみを持ってもらえるんだよ。これは大人だから知ってるズルだ。大人はズルの手数が子供より多く知ってる。その代わり自分の経験してきたこと以外のことに恐れを抱く。だからロレンツみたいな、生育環境が違うやつがいるだけで異なる価値観への恐れが減る……ことを見越していたんだが、そうじゃないかもな。ロレンツォの言うとおり、結果が全てだ。それなのに文句を言うチームメイトはおかしいな」
「だろ?!」
「おかしいが、ロレンツォ、お前もじきに忖度ってやつを学んだほうがいい……ロレンツォが楽に生きるために」
「そんなもん、いらない。俺は金にならない、形にないものは信じない。他人からの信頼も必要ない。そんなもの、すぐ無くすか……自分から壊しちまうんだ」
「悩むことも大事だがな、夜は悩まないほうがいい。グラウンドに行こう。少しだけ練習してから寝よう」
「いいよ」
「ありがとう、ロレンツォ」
こうして俺は、ちょっと問題を起こすとロレンツォが構ってくれることを学んでしまった。これは大人になってからも続くんだけど、徐々に構ってもらえなくなった。そのうえ、構ってもらいたくて問題行動を起こしてるということがスナッフィーにバレてるみたいで恥ずかしくなった。そんなことをしてまでスナッフィーの気を引きたいみたいで。
でも一番気を引けるのは俺が結果を出せた時だ。それに気づいてからは俺はもうそりゃあ真面目にサッカーした。ちょっとでもスナッフィーの視界に入れるように、スナッフィーの夢を叶える道具としてうまく使えるんだぜとアピールした。虚しくなんかなかった。
死んだ親友とスナッフィーが写ってる写真を写真立てに入れてるのを見て、俺はいつもなんだか気が重かった。生きて、スナッフィーのことを見てるのは俺なのに、スナッフィーは地獄の釜の中をずーっと眺めて、時々現実を見ては親友の影をグラウンドの中に探している。
別に虚しくなんかない。俺はスナッフィーとは金と契約で繋がってるだけだし。信頼とか、無いし。そのはずなのに、俺何故かそんなスナッフィーに苛立ちを感じている。スナッフィーは気づいてか気づいてないのか、何も言わずに俺らのプレーを上から目線で眺めている。むかつく、嫌い、いなくなれ。そんな単純な苛立ちでしか自分の感情を表現できない。だから多分俺がチームメイトを殴ったのってスナッフィーのせいじゃないのか? いやでも、言われたな。自分の問題を他人のせいにするなって。
「殴ったんだって? お前のパスをこぼしたチームメイトを」
「説教は受けてやったよ」
へらへらと笑う俺のツラを、オヤジだったなら起き上がれなくなるまでぶん殴ったけどスナッフィーはただその瞳をぎょろぎょろと動かして黙っている。
「やっとサッカーしてやってもいいかな? と思ったのにさ、俺よりヘタクソなやつばっかりで頭きたんだよ。俺よりずっと長く練習してきても俺以下の実力しか出せない奴らが結託して、えらそうにお前のやり方は良くないなんて言うんだぜ。スポーツは結果が全てだろ。馴れ合いとか、感傷とか。一番いらないものにこだわってるやつらばっかりなんだよ」
俺は言い訳するように長々と俺を怒らせた奴の方が悪いと並べ立てた。かっこ悪い。これじゃガキみたいだ。俺の言葉を黙って聞いていたスナッフィーは、トチって死んだ親友のことでも思い出してるのか目をすっと細めて、俺を見た。そしてそれを誤魔化すかのように小脇に抱えたボールを足先でいじり始めた。
「ロレンツォ、お前の言うとおりでもあるし、俺の経験則で言うと少し違うと思う。努力の積み重ねを美しいと思うのはどこでも一緒だ。サッカーはチームスポーツだからみんなが美しいと言うものを美しいと言っておくだけでもその集団には親しみを持ってもらえるんだよ。これは大人だから知ってるズルだ。大人はズルの手数が子供より多く知ってる。その代わり自分の経験してきたこと以外のことに恐れを抱く。だからロレンツみたいな、生育環境が違うやつがいるだけで異なる価値観への恐れが減る……ことを見越していたんだが、そうじゃないかもな。ロレンツォの言うとおり、結果が全てだ。それなのに文句を言うチームメイトはおかしいな」
「だろ?!」
「おかしいが、ロレンツォ、お前もじきに忖度ってやつを学んだほうがいい……ロレンツォが楽に生きるために」
「そんなもん、いらない。俺は金にならない、形にないものは信じない。他人からの信頼も必要ない。そんなもの、すぐ無くすか……自分から壊しちまうんだ」
「悩むことも大事だがな、夜は悩まないほうがいい。グラウンドに行こう。少しだけ練習してから寝よう」
「いいよ」
「ありがとう、ロレンツォ」
こうして俺は、ちょっと問題を起こすとスナッフィーが構ってくれることを学んでしまった。これは大人になってからも続くんだけど、徐々に構ってもらえなくなった。そのうえ、構ってもらいたくて問題行動を起こしてるということがスナッフィーにバレてるみたいで恥ずかしくなった。そんなことをしてまでスナッフィーの気を引きたいみたいで。
でも一番気を引けるのは俺が結果を出せた時だ。それに気づいてからは俺はもうそりゃあ真面目にサッカーした。ちょっとでもスナッフィーの視界に入れるように、スナッフィーの夢を叶える道具としてうまく使えるんだぜとアピールした。虚しくなんかなかった。
死んだ親友とスナッフィーが写ってる写真を写真立てに入れてるのを見て、俺はいつもなんだか気が重かった。生きて、スナッフィーのことを見てるのは俺なのに、スナッフィーは地獄の釜の中をずーっと眺めて、時々現実を見ては親友の影をグラウンドの中に探している。
別に虚しくなんかない。俺はスナッフィーとは金と契約で繋がってるだけだし。信頼とか、無いし。そのはずなのに、俺何故かそんなスナッフィーに苛立ちを感じている。スナッフィーは気づいてか気づいてないのか、何も言わずに俺らのプレーを上から目線で眺めている。むかつく、嫌い、いなくなれ。そんな単純な苛立ちでしか自分の感情を表現できない。だから多分俺がチームメイトを殴ったのってスナッフィーのせいじゃないのか? いやでも、言われたな。自分の問題を他人のせいにするなって。
そういうバカみたいな悩みはサッカーしてる時だけはついてこなかった。俺はただ、俺の中の嫌な俺が顔を出さないようにサッカーをしている。なんでもよかったんだ。サッカーじゃなくても。でもサッカーじゃなくちゃ、俺はここに居ない。まだあの今生の延長線上にある地獄で息ができなくなっているに違いない。ある意味、俺を救おうとして手放した大人より悪質なのかもしれない。あーあー、やめ。サッカーしよう。
碇 #レゾ #ヒロアカ #鳥師弟
碇 #レゾ #ヒロアカ #鳥師弟
「常闇くん……」
「なんです。そんな神妙な顔して」
「俺この前常闇くんとモスバーガー食べに行ったじゃん。あの時ね、オニポテリング一個くれたじゃん」
「そうだったかな。確か師が初めてモス来たわ〜などと言っていたので、オニポテを食べずにいるのはなと思い」
「それはさ、雪見だいふくの一個だったり、ピノの一個みたいなそういう……」
「ああ、まあでもそこまで食に執着がないから俺はそういうのはいいんです」
「えー、常闇くんの方が大人みたい」
「執着の先は人それぞれです」
「そっかあ……常闇くんは、何に執着してんの?」
「そうですね……職場環境ですかね。ホークスが想像している以上に異形個性は蔑まれるので、ホークスみたいに名前が売れてて、若い女性のファンが多いヒーローの下だと働きやすいんですよ」
「あー、そういう。なんかもっと俗物的な回答がもらえるかなって……」
「あなたにそんな顔させたくなかったから言わないでいたんですが」
「なんだ、隠してたんだ」
「まぁ、そうですね」
ホークスのせいではないのに、そうやって俺のことを自分ごとのように傷ついてくれるあなたの顔が見たくてこの話をしたのかもしれない。
たかだか五年程度早く生まれた程度で世界は変えられない。そんなことくらい俺ですらわかっているのに、ホークスは釈然としない顔をして俺に降りかかる悪意を嘆いてくれている。
「俺はそうやって傷つく常闇くんに何してあげられるかな」
「うーん……スマブラをしたり、温泉に行ったり、潮干狩りに行ったり、ポットのお湯が切れそうだったら補充したり、靴を揃えたり、事務所の鍵をちゃんとしめたり……」
「最後の方申し訳ないと思ってはいるけどできてないやつ出てきたな……俺さ、小さい頃からゲームっていうかテレビもなくてそういう経験? 子供の頃みんなやっているであろうことが本当にできてなくて……できればそういう子供時代を取り戻したいんだよね」
「隠し事なくてえらいじゃないですか。いいですよ。やりましょう。スマブラでも、アサガオの観察でもなんでも」
「わーい。楽しみだな」
「そしたら、元気にしてないとダメですからね」
「肝に銘じます」
そういうことをちゃんと言葉にしないと、ホークスはフラフラとどこかに行ってしまいそうだから俺はホークスがここに居たくなりそうなことを並べ立てる。この人はどんなに親しい人であれ失う経験がありすぎて、執着が薄すぎるから自分の命すら軽んじるような言動が見受けられる。俺はそれを見るのがなんだか悲しくて、この人の速度を落とすようなことをしてしまう。
それでも、執着しているものを分け与えるような信頼をされているのだと思うと、どこかに行ってしまう前に声くらいはかけてもらえるのかもしれないと自惚れてしまう。あんまり期待しないほうが良さそうだとは思うのだが。
「常闇くん……」
「なんです。そんな神妙な顔して」
「俺この前常闇くんとモスバーガー食べに行ったじゃん。あの時ね、オニポテリング一個くれたじゃん」
「そうだったかな。確か師が初めてモス来たわ〜などと言っていたので、オニポテを食べずにいるのはなと思い」
「それはさ、雪見だいふくの一個だったり、ピノの一個みたいなそういう……」
「ああ、まあでもそこまで食に執着がないから俺はそういうのはいいんです」
「えー、常闇くんの方が大人みたい」
「執着の先は人それぞれです」
「そっかあ……常闇くんは、何に執着してんの?」
「そうですね……職場環境ですかね。ホークスが想像している以上に異形個性は蔑まれるので、ホークスみたいに名前が売れてて、若い女性のファンが多いヒーローの下だと働きやすいんですよ」
「あー、そういう。なんかもっと俗物的な回答がもらえるかなって……」
「あなたにそんな顔させたくなかったから言わないでいたんですが」
「なんだ、隠してたんだ」
「まぁ、そうですね」
ホークスのせいではないのに、そうやって俺のことを自分ごとのように傷ついてくれるあなたの顔が見たくてこの話をしたのかもしれない。
たかだか五年程度早く生まれた程度で世界は変えられない。そんなことくらい俺ですらわかっているのに、ホークスは釈然としない顔をして俺に降りかかる悪意を嘆いてくれている。
「俺はそうやって傷つく常闇くんに何してあげられるかな」
「うーん……スマブラをしたり、温泉に行ったり、潮干狩りに行ったり、ポットのお湯が切れそうだったら補充したり、靴を揃えたり、事務所の鍵をちゃんとしめたり……」
「最後の方申し訳ないと思ってはいるけどできてないやつ出てきたな……俺さ、小さい頃からゲームっていうかテレビもなくてそういう経験? 子供の頃みんなやっているであろうことが本当にできてなくて……できればそういう子供時代を取り戻したいんだよね」
「隠し事なくてえらいじゃないですか。いいですよ。やりましょう。スマブラでも、アサガオの観察でもなんでも」
「わーい。楽しみだな」
「そしたら、元気にしてないとダメですからね」
「肝に銘じます」
そういうことをちゃんと言葉にしないと、ホークスはフラフラとどこかに行ってしまいそうだから俺はホークスがここに居たくなりそうなことを並べ立てる。この人はどんなに親しい人であれ失う経験がありすぎて、執着が薄すぎるから自分の命すら軽んじるような言動が見受けられる。俺はそれを見るのがなんだか悲しくて、この人の速度を落とすようなことをしてしまう。
それでも、執着しているものを分け与えるような信頼をされているのだと思うと、どこかに行ってしまう前に声くらいはかけてもらえるのかもしれないと自惚れてしまう。あんまり期待しないほうが良さそうだとは思うのだが。
私をうまく使ってくれるだけでいいのに。 #夢小説 #ヒロアカ #飯田天晴
私をうまく使ってくれるだけでいいのに。 #夢小説 #ヒロアカ #飯田天晴
私の個性はエンジンの持久力を上げるための内燃機関。願ってもない個性だと思っていた。
飯田家が個性婚をやっている、というのは誰の目にも明らかだった。けれど飯田家がそれを表明しなかったから誰も言及しなかった。轟家があんなふうになってしまってからも、何も言わずにしれっとヒーロー活動してる。兄のほうはもうヒーローとして使い物にならないし、もしかしたら子供に夢を託したりしちゃうかもって。
だからちょっと期待しちゃった。
私にも、インゲニウムとワンチャンあるかなって。
でもそんなものなかった。飯田家はもうそういうのやめるんだって。こんなカス個性を引いてしまってから生きている価値を飯田家の個性婚に見出してるような私が悪いとでも言いたいのか、インゲニウムのサイドキックたちはあわれなものを見る目で私を見た。
「どうしたの」
「天晴さん」
車椅子に乗った精悍な顔立ちの青年が不思議そうに見上げてくる。
サイドキックの人がかいつまんで天晴さんに私のことを説明すると、明らかに顔が引き攣っているようだった。
それもそうか。自分の種でうまいことやろうとしている女なんかふつうにキモいわ。ヒーローも人間だったってことか。知らなかった。
それなのに天晴さんは、私に言葉を尽くして別の道で生きるように説得してくれた。個性だけが全てじゃないって。
でもそれって、"持っている"側の感覚よね。お金、学歴、美貌なんかと同じで持ってる側はお金じゃないんだよ、とかいけしゃあしゃあと言ってのけるんだ。"持っていない"側の僻みなんか思いもよらない。
そのままの君ていてほしい。
太陽は太陽のままそこに輝くことに意味がある。そのすがたを手が届くなんて思いもしないくらい遠くから眺めて、あんなに綺麗なひとがいるんだから私も、と思わせてほしい。偶像崇拝に近いような感じかな。畳む
私の個性はエンジンの持久力を上げるための内燃機関。願ってもない個性だと思っていた。
飯田家が個性婚をやっている、というのは誰の目にも明らかだった。けれど飯田家がそれを表明しなかったから誰も言及しなかった。轟家があんなふうになってしまってからも、何も言わずにしれっとヒーロー活動してる。兄のほうはもうヒーローとして使い物にならないし、もしかしたら子供に夢を託したりしちゃうかもって。
だからちょっと期待しちゃった。
私にも、インゲニウムとワンチャンあるかなって。
でもそんなものなかった。飯田家はもうそういうのやめるんだって。こんなカス個性を引いてしまってから生きている価値を飯田家の個性婚に見出してるような私が悪いとでも言いたいのか、インゲニウムのサイドキックたちはあわれなものを見る目で私を見た。
「どうしたの」
「天晴さん」
車椅子に乗った精悍な顔立ちの青年が不思議そうに見上げてくる。
サイドキックの人がかいつまんで天晴さんに私のことを説明すると、明らかに顔が引き攣っているようだった。
それもそうか。自分の種でうまいことやろうとしている女なんかふつうにキモいわ。ヒーローも人間だったってことか。知らなかった。
それなのに天晴さんは、私に言葉を尽くして別の道で生きるように説得してくれた。個性だけが全てじゃないって。
でもそれって、"持っている"側の感覚よね。お金、学歴、美貌なんかと同じで持ってる側はお金じゃないんだよ、とかいけしゃあしゃあと言ってのけるんだ。"持っていない"側の僻みなんか思いもよらない。
そのままの君ていてほしい。
太陽は太陽のままそこに輝くことに意味がある。そのすがたを手が届くなんて思いもしないくらい遠くから眺めて、あんなに綺麗なひとがいるんだから私も、と思わせてほしい。偶像崇拝に近いような感じかな。畳む
2023年5月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する
太陽のようなきみ #夢小説 #男夢主 #赤木晴子
太陽のようなきみ #夢小説 #男夢主 #赤木晴子
桜木みたいな恥も外聞もなく好きだって言えるような奴の方が人生上手くいきそうだよな。
そんな僻みっぽいやつだから、俺は晴子ちゃんに「ごめんね」されちゃったのかもしれない。涙も出てこない。見る目がないやつだな、と貶すこともできない。まだ好きだから。
桜木はバスケットボールプレイヤーが好きだという晴子ちゃんの言葉通り、バスケを始めたらしい。
そんな、そんなこと言うなら、俺だって小学校からずっとバスケやってるんだけどな。……プライドを晴子ちゃんのために投げ捨てて、愛を乞うこともできない俺だからダメだったのかも。結局俺は晴子ちゃんのことが好きだと感じていながらも自分が一番可愛くて大事なんだ。そういう、ずるさみたいなのが晴子ちゃんには見えていたのかもしれない。桜木にとっては、何百人ふられた後のたまたま晴子ちゃんなのかもしれないけど、俺はそうじゃない。俺の方がずっと前から好きだった。
好き、が早いもの勝ちじゃないっていうのは俺が一番よくわかってるのにな。真夏の体育館で桜木のこと応援してる晴子ちゃんを横目に俺はバイトへ向かった。俺はたまたま、姉ちゃんがバスケ部のマネージャーしてるから差し入れって形にすれば晴子ちゃんの視界に入れるんだ。そうじゃなきゃ誰がバスケ部なんかに差し入れなんかするかよ。
日差しが俺を責めるように差し込む。俺は悪くない。ただ、人を好きになっただけなんだ。
桜木みたいな恥も外聞もなく好きだって言えるような奴の方が人生上手くいきそうだよな。
そんな僻みっぽいやつだから、俺は晴子ちゃんに「ごめんね」されちゃったのかもしれない。涙も出てこない。見る目がないやつだな、と貶すこともできない。まだ好きだから。
桜木はバスケットボールプレイヤーが好きだという晴子ちゃんの言葉通り、バスケを始めたらしい。
そんな、そんなこと言うなら、俺だって小学校からずっとバスケやってるんだけどな。……プライドを晴子ちゃんのために投げ捨てて、愛を乞うこともできない俺だからダメだったのかも。結局俺は晴子ちゃんのことが好きだと感じていながらも自分が一番可愛くて大事なんだ。そういう、ずるさみたいなのが晴子ちゃんには見えていたのかもしれない。桜木にとっては、何百人ふられた後のたまたま晴子ちゃんなのかもしれないけど、俺はそうじゃない。俺の方がずっと前から好きだった。
好き、が早いもの勝ちじゃないっていうのは俺が一番よくわかってるのにな。真夏の体育館で桜木のこと応援してる晴子ちゃんを横目に俺はバイトへ向かった。俺はたまたま、姉ちゃんがバスケ部のマネージャーしてるから差し入れって形にすれば晴子ちゃんの視界に入れるんだ。そうじゃなきゃ誰がバスケ部なんかに差し入れなんかするかよ。
日差しが俺を責めるように差し込む。俺は悪くない。ただ、人を好きになっただけなんだ。
個性の証明 #カップリング #ヒロアカ #荼炎 #燈炎
個性の証明 #カップリング #ヒロアカ #荼炎 #燈炎
西暦20XX年——ビルの光が空を覆い、人々が空を自由に駆けるようになっても、人権や個性がなくなっていない近未来。
「燈矢の体を捨てる……?」
「ええ、騙し騙しやってきましたけど、もう燈矢さんの体は限界なんです。ボロボロのまま焦凍さんと戦って、さらにボロボロになって、今までつぎはぎしてきましたけど、限界です」
「肉体を捨ててしまったら、燈矢はどうなるんです」
「そうですね。脳を機械の体に乗せましょう」
お医者様がいうことは突飛なことに聞こえたが、国内で五つの症例があるという。脳を取り出して機械の脊髄や諸神経と繋ぎ、肉体が死んだとしても生きることができるという。燈矢は一度体調を崩してから二ヶ月意識がないのでは本人に確認できないので親である俺たちが決めれるという。
冷は、生かしてやりたいという。
例え死刑を待つ身であっても、目が動いて私とコミュニケーションをとることができていた燈矢をみすみす死なせてしまいたくはないという。
俺は、決めかねていた。
手術では個性を引き継ぐことはできないという。自らの個性に強くこだわり、指先すら動かせない体でもお父さんに俺の技を見てもらいたいんだとタッチパッドを使ってコミュニケーションをとった燈矢が、果たして個性を持たない自分を受け入れることができるだろうか。
時間は予断を許さず、俺は疑問を持ちながらも燈矢の命を諦める決断はできなかった。
手術は成功した。
燈矢は肉体の死による死を免れ、医療によるメンテナンスを生涯必要とする体になった。
夏雄が見舞いに行った時に目を覚ましたという燈矢は、指先を見つめては涙をこぼしたという。指先、それは最初に炎を灯した器官だと気づき、病室に急いだ。
「お父さん、俺」
「燈矢」
「本当に……何にもなくなっちゃった……」
「燈矢、お前はお前でいてくれるだけでいいんだ」
「俺は、お父さんに認められる俺以外を俺と認めてやれないよ」
「燈矢」
「お父さんならわかってくれると思った……個性がない自分を認めてやれない気持ちがさ……死刑になるために生かされたの? 俺」
「……燈矢、それは」
「もういいよ、バイバイ。お父さん。俺はお父さんが全てだったんだよ」
「と「もう帰って」
それが永訣の別れとなるとは考えても見なかった。燈矢は死刑判決を受け、世間の声に押されて異例の早さで刑が執行された。頸部を縄で圧迫された跡が残った遺体が轟家に戻ってきた。
燈矢は最後の食事をとらずに死刑に望んだらしい。自ら栄養を取らなくても生きながらえる体を忌まわしく思っていたらしく、体を壁にぶつけるなどの自傷が目立ったという。
脳だけを燃やし、燈矢の骨壷に納めた。陶器の壺に収まった燈矢はまるで初めて抱いた時のように小さく、頼りなかった。
『個性の証明』 完
西暦20XX年——ビルの光が空を覆い、人々が空を自由に駆けるようになっても、人権や個性がなくなっていない近未来。
「燈矢の体を捨てる……?」
「ええ、騙し騙しやってきましたけど、もう燈矢さんの体は限界なんです。ボロボロのまま焦凍さんと戦って、さらにボロボロになって、今までつぎはぎしてきましたけど、限界です」
「肉体を捨ててしまったら、燈矢はどうなるんです」
「そうですね。脳を機械の体に乗せましょう」
お医者様がいうことは突飛なことに聞こえたが、国内で五つの症例があるという。脳を取り出して機械の脊髄や諸神経と繋ぎ、肉体が死んだとしても生きることができるという。燈矢は一度体調を崩してから二ヶ月意識がないのでは本人に確認できないので親である俺たちが決めれるという。
冷は、生かしてやりたいという。
例え死刑を待つ身であっても、目が動いて私とコミュニケーションをとることができていた燈矢をみすみす死なせてしまいたくはないという。
俺は、決めかねていた。
手術では個性を引き継ぐことはできないという。自らの個性に強くこだわり、指先すら動かせない体でもお父さんに俺の技を見てもらいたいんだとタッチパッドを使ってコミュニケーションをとった燈矢が、果たして個性を持たない自分を受け入れることができるだろうか。
時間は予断を許さず、俺は疑問を持ちながらも燈矢の命を諦める決断はできなかった。
手術は成功した。
燈矢は肉体の死による死を免れ、医療によるメンテナンスを生涯必要とする体になった。
夏雄が見舞いに行った時に目を覚ましたという燈矢は、指先を見つめては涙をこぼしたという。指先、それは最初に炎を灯した器官だと気づき、病室に急いだ。
「お父さん、俺」
「燈矢」
「本当に……何にもなくなっちゃった……」
「燈矢、お前はお前でいてくれるだけでいいんだ」
「俺は、お父さんに認められる俺以外を俺と認めてやれないよ」
「燈矢」
「お父さんならわかってくれると思った……個性がない自分を認めてやれない気持ちがさ……死刑になるために生かされたの? 俺」
「……燈矢、それは」
「もういいよ、バイバイ。お父さん。俺はお父さんが全てだったんだよ」
「と「もう帰って」
それが永訣の別れとなるとは考えても見なかった。燈矢は死刑判決を受け、世間の声に押されて異例の早さで刑が執行された。頸部を縄で圧迫された跡が残った遺体が轟家に戻ってきた。
燈矢は最後の食事をとらずに死刑に望んだらしい。自ら栄養を取らなくても生きながらえる体を忌まわしく思っていたらしく、体を壁にぶつけるなどの自傷が目立ったという。
脳だけを燃やし、燈矢の骨壷に納めた。陶器の壺に収まった燈矢はまるで初めて抱いた時のように小さく、頼りなかった。
『個性の証明』 完
鯉のぼりばっかり景気がいい #ヒロアカ #カプなし #轟冬美
鯉のぼりばっかり景気がいい #ヒロアカ #カプなし #轟冬美
夏も焦凍もこの家には寄り付かないのにお父さんは、しぼんだ身体を折り曲げて金太郎人形を玄関に飾り、鯉のぼりをあげる。
この辺じゃいちばん大きな鯉のぼりだ。
健康を祈る男児はだれひとりここにはいないのに、鯉のぼりは風を受けて元気にはためいている。夏くんはゼミのみんなと飲み会、焦凍は学校、燈矢兄さんは刑務所。
この鯉のぼりを買った時は燈矢兄さんの初節句だという。その頃にはまさかこんなことになるなんて誰も想像してなかった。
あの、燈矢兄さんの罪の告白……
轟家の罪の告白を思い出すたびに冷や汗が出る。けどほんの少しだけ、うれしかった。燈矢兄さんが生きていてくれて。そして期待した。もしかしたら燈矢兄さんが焦凍を虐待するお父さんを止めてくれないかなって。私じゃできなかったことを燈矢兄さんなら叶えてくれるんじゃないかって。
でも現実はそううまくいかない。燈矢兄さんは燈矢兄さんのためだけに行動した。やっぱり私の中のわだかまりは私か解決するしかなさそうだ。
燈矢兄さんのための仏壇はあの時から閉まったままだ。たぶんお父さんがやった。生きている人間の菩提を弔っても仕方ないもんね。そういう時ばっかり、マメなんだから。
夏も焦凍もこの家には寄り付かないのにお父さんは、しぼんだ身体を折り曲げて金太郎人形を玄関に飾り、鯉のぼりをあげる。
この辺じゃいちばん大きな鯉のぼりだ。
健康を祈る男児はだれひとりここにはいないのに、鯉のぼりは風を受けて元気にはためいている。夏くんはゼミのみんなと飲み会、焦凍は学校、燈矢兄さんは刑務所。
この鯉のぼりを買った時は燈矢兄さんの初節句だという。その頃にはまさかこんなことになるなんて誰も想像してなかった。
あの、燈矢兄さんの罪の告白……
轟家の罪の告白を思い出すたびに冷や汗が出る。けどほんの少しだけ、うれしかった。燈矢兄さんが生きていてくれて。そして期待した。もしかしたら燈矢兄さんが焦凍を虐待するお父さんを止めてくれないかなって。私じゃできなかったことを燈矢兄さんなら叶えてくれるんじゃないかって。
でも現実はそううまくいかない。燈矢兄さんは燈矢兄さんのためだけに行動した。やっぱり私の中のわだかまりは私か解決するしかなさそうだ。
燈矢兄さんのための仏壇はあの時から閉まったままだ。たぶんお父さんがやった。生きている人間の菩提を弔っても仕方ないもんね。そういう時ばっかり、マメなんだから。
お題:冬 #カップリング #ヒロアカ #荼炎 #燈炎
お題:冬 #カップリング #ヒロアカ #荼炎 #燈炎
夏は膿が止まらないけど、冬は肌というか、肌の下の筋組織が軋んで痛む。
痛むからといってそれから逃れる術はなく、ただうーうーと、うめくことしかできない。
お父さんは夏にできた膿を拭うより冬の肌の軋みの方が見ていてつらいらしい。前者は自分で膿をぬぐってやることができて、目に見えてそして行動として何かやったつもりになれるからいいのかもしれない。
お父さんはじつに甲斐甲斐しく俺の世話を焼く。この1%でも俺の子供時代にしてくれていたらこんなことにはなってないはずなんだけど、後悔先に立たず。
お父さんの罪であり、個性社会の膿であり、お父さんの後悔そのものである俺。ほんとはそんなふうに生まれてきたはずじゃなくて、焦凍とは性能が違うだけでSSRだったはずなんだよ。そうじゃなきゃ、あんなに焦凍やお父さんのことを追い詰めることはできなかっただろ。
数々のifをかいくぐって、俺は今お父さんの負債としてこの家の畳のシミの範囲を広げることしかできない。
どこで間違った?
何がいけなかった。
一緒に考えて、手を取り合って答えを出そう。この奇跡みたいな時間を使ってさ。俺のこと見てくれるんでしょ? それってほんとに、ただ見るだけの見る? 見て、聞いて、答えてくれる見るじゃなくて? 熱で風の音がして、よく聞こえないんだ……
夏は膿が止まらないけど、冬は肌というか、肌の下の筋組織が軋んで痛む。
痛むからといってそれから逃れる術はなく、ただうーうーと、うめくことしかできない。
お父さんは夏にできた膿を拭うより冬の肌の軋みの方が見ていてつらいらしい。前者は自分で膿をぬぐってやることができて、目に見えてそして行動として何かやったつもりになれるからいいのかもしれない。
お父さんはじつに甲斐甲斐しく俺の世話を焼く。この1%でも俺の子供時代にしてくれていたらこんなことにはなってないはずなんだけど、後悔先に立たず。
お父さんの罪であり、個性社会の膿であり、お父さんの後悔そのものである俺。ほんとはそんなふうに生まれてきたはずじゃなくて、焦凍とは性能が違うだけでSSRだったはずなんだよ。そうじゃなきゃ、あんなに焦凍やお父さんのことを追い詰めることはできなかっただろ。
数々のifをかいくぐって、俺は今お父さんの負債としてこの家の畳のシミの範囲を広げることしかできない。
どこで間違った?
何がいけなかった。
一緒に考えて、手を取り合って答えを出そう。この奇跡みたいな時間を使ってさ。俺のこと見てくれるんでしょ? それってほんとに、ただ見るだけの見る? 見て、聞いて、答えてくれる見るじゃなくて? 熱で風の音がして、よく聞こえないんだ……
2023年4月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する
お題:耳 #カップリング #ヒロアカ #荼炎 #燈炎
お題:耳 #カップリング #ヒロアカ #荼炎 #燈炎
水の中で聞く人の声みたいに、どこかぼんやりとした音が耳に届く。聞こえるからと言って返事をするだけの声帯は焼け落ちてしまっているので、目の動きで文字入力ができる機械でお父さんと意思疎通をする。
とはいえ細かいニュアンスまでは伝えきれない。そんな苛立ちをぶつけようにも身体はどこも動かない。
身体中の水分が入れても入れても蒸発するのに、お父さんは俺の胃腸につながる管に水を切らさないようにどんなに遅い夜中だって欠かさず点検している。そんなこともうしなくていいよ、無駄だよって言ってもいいんだ、って言って俺の世話を焼いてお父さん自身がが気持ちよくなってるのをみたくないのにそれを伝えられず俺は横たわることしかできない。
なんていうかこう、俺が無駄だからやめろって言っても俺のために何かしてくれるのがうれしくないワケじゃない。なんだけど、お父さんが俺を見る目が将来楽しみな息子、じゃなくて自分が世話をしなくては弱って死んでしまう可哀想な息子、になってるのが嫌なんだよな。
ああ、あの戦いで死ねればよかった。こんな無様を晒すぐらいなら。
水の中で聞く人の声みたいに、どこかぼんやりとした音が耳に届く。聞こえるからと言って返事をするだけの声帯は焼け落ちてしまっているので、目の動きで文字入力ができる機械でお父さんと意思疎通をする。
とはいえ細かいニュアンスまでは伝えきれない。そんな苛立ちをぶつけようにも身体はどこも動かない。
身体中の水分が入れても入れても蒸発するのに、お父さんは俺の胃腸につながる管に水を切らさないようにどんなに遅い夜中だって欠かさず点検している。そんなこともうしなくていいよ、無駄だよって言ってもいいんだ、って言って俺の世話を焼いてお父さん自身がが気持ちよくなってるのをみたくないのにそれを伝えられず俺は横たわることしかできない。
なんていうかこう、俺が無駄だからやめろって言っても俺のために何かしてくれるのがうれしくないワケじゃない。なんだけど、お父さんが俺を見る目が将来楽しみな息子、じゃなくて自分が世話をしなくては弱って死んでしまう可哀想な息子、になってるのが嫌なんだよな。
ああ、あの戦いで死ねればよかった。こんな無様を晒すぐらいなら。
お題:はさみ #ヒロアカ が#カップリング #荼炎 #燈炎
お題:はさみ #ヒロアカ が#カップリング #荼炎 #燈炎
すーっと銀色の刃が俺を包む何重にもなった包帯を裂いてゆく。
もう長く持たない俺のために、訪問看護の人が来てくれている。お父さんは何か言ってるみたいだけどジージーと耳鳴りがするだけで何も聞こえない。でも触れ方でわかる。こわごわと俺がいつ気が変わってここを火の海にしてしまわないかと触れる方が訪問看護師さん。で、素人のくせに扱いがぶきっちょで、俺の皮膚がずるりと剥けてしまったときにびくっ、と震えるのがお父さん。お母さんは、ひんやりとしてるから一番よくわかる。
こんなになってまで、弱く守られるだけの俺に存在価値なんてあるのかな。
少なくとも俺自身は今の俺のことものすごくみじめだと思う。お父さんは知ってか知らずか、俺が暑いと感じてほんの少し身じろぎをしただけで氷枕をあててくれている。こんなになるまでお父さんは俺のことを見なかったんだと思うと涙が出そうになるけど、こんなコゲコゲになってて涙なんか出るわけなじゃん。
すーっと銀色の刃が俺を包む何重にもなった包帯を裂いてゆく。
もう長く持たない俺のために、訪問看護の人が来てくれている。お父さんは何か言ってるみたいだけどジージーと耳鳴りがするだけで何も聞こえない。でも触れ方でわかる。こわごわと俺がいつ気が変わってここを火の海にしてしまわないかと触れる方が訪問看護師さん。で、素人のくせに扱いがぶきっちょで、俺の皮膚がずるりと剥けてしまったときにびくっ、と震えるのがお父さん。お母さんは、ひんやりとしてるから一番よくわかる。
こんなになってまで、弱く守られるだけの俺に存在価値なんてあるのかな。
少なくとも俺自身は今の俺のことものすごくみじめだと思う。お父さんは知ってか知らずか、俺が暑いと感じてほんの少し身じろぎをしただけで氷枕をあててくれている。こんなになるまでお父さんは俺のことを見なかったんだと思うと涙が出そうになるけど、こんなコゲコゲになってて涙なんか出るわけなじゃん。
泥の中でいっしょだよ #夢小説 #ヒロアカ #だいなま
泥の中でいっしょだよ #夢小説 #ヒロアカ #だいなま
だいなまちゃんは、わたしを助けてくれたんだよ。
“イギョウ”の人たちがおとうさんのしごとをうばってしまったと言って、いつもお家にいるようになった。わたしが学校からかえってくると、お父さんはお酒くさいいきを吐いて「うるせえ」とどなってカンを投げてくるようになった。
わたしはおとうさんといっしょにいたくなくて、公えんに行った。だいなまちゃんはそこにいたんだ。
「ク?」
くりくりおめめがかわいいだいなまちゃん。だいなまちゃんは「ひろってあげてください」とダンボール箱に入れられて、お腹がぐうぐうなっててかわいそうだった。わたしよりかわいそうなコを見つけてわたしは嬉しかった。わたしの手でも助けることができるコがいて、弱いだけの子どもじゃないんだって思えた。
だいなまちゃんに、お母さんがくれたお昼ごはんのお金を使ってメロンパンを買ってあげた。わたしと半分こなのに、とっても喜んでくれた。「クソが! クソが!」っていう鳴き声が喜んでいるのかはわからないけど。
だいなまちゃんはお家にはつれてかえれない。お父さんの気にさわるのはまちがいないから。さむい雨がふる中、泣いてすがるだいなまちゃんをふりはらっていくのは心がいたいけど、どうにもできなかった。うちのゴミ箱に入っていた古いセーターを入れたけど、温まりたいだけじゃないんだ。わたしも同じだからわかる。だれかにそばにいてほしいんだよね、だいなまちゃん。だいなまちゃんの小さなおててをにぎって、ごめんねと言ったけどだいなまちゃんは泣いていた。
いつかだいなまちゃんが本当の家族……わたしみたいな弱い子供じゃない、だいなまちゃんのことを助けてくれる人がくるからね。それまでわたしが生きのびさせないと。運動会のバトンリレーみたいに次の人に渡せるように。
だいなまちゃんは、わたしを助けてくれたんだよ。
“イギョウ”の人たちがおとうさんのしごとをうばってしまったと言って、いつもお家にいるようになった。わたしが学校からかえってくると、お父さんはお酒くさいいきを吐いて「うるせえ」とどなってカンを投げてくるようになった。
わたしはおとうさんといっしょにいたくなくて、公えんに行った。だいなまちゃんはそこにいたんだ。
「ク?」
くりくりおめめがかわいいだいなまちゃん。だいなまちゃんは「ひろってあげてください」とダンボール箱に入れられて、お腹がぐうぐうなっててかわいそうだった。わたしよりかわいそうなコを見つけてわたしは嬉しかった。わたしの手でも助けることができるコがいて、弱いだけの子どもじゃないんだって思えた。
だいなまちゃんに、お母さんがくれたお昼ごはんのお金を使ってメロンパンを買ってあげた。わたしと半分こなのに、とっても喜んでくれた。「クソが! クソが!」っていう鳴き声が喜んでいるのかはわからないけど。
だいなまちゃんはお家にはつれてかえれない。お父さんの気にさわるのはまちがいないから。さむい雨がふる中、泣いてすがるだいなまちゃんをふりはらっていくのは心がいたいけど、どうにもできなかった。うちのゴミ箱に入っていた古いセーターを入れたけど、温まりたいだけじゃないんだ。わたしも同じだからわかる。だれかにそばにいてほしいんだよね、だいなまちゃん。だいなまちゃんの小さなおててをにぎって、ごめんねと言ったけどだいなまちゃんは泣いていた。
いつかだいなまちゃんが本当の家族……わたしみたいな弱い子供じゃない、だいなまちゃんのことを助けてくれる人がくるからね。それまでわたしが生きのびさせないと。運動会のバトンリレーみたいに次の人に渡せるように。
俺たちの間だって愛だよ #スラムダンク #夢小説 #男夢主 #木暮公延
俺たちの間だって愛だよ #スラムダンク #夢小説 #男夢主 #木暮公延
俺が一番嫌いなタイプのひとだった。
だっさいメガネ、髪型、ボーボーの眉毛。どれもが冴えない、どこにでもいるただのメガネくんだった。なんでそんな子がうちの……若干チャラめのバスケサークルに入ったんだろうか。偏差値がいい大学だから、他大の女の子目当てに入ってくるやつは結構いたけど、木暮くんはそういうタイプでもなさそうだった。
「木暮君はさ、どうしてうちのサークルに入ったの」
馬鹿正直にウーロン茶だけを飲み、かたくなにビールを拒む木暮くんのグラスにウーロン茶の上からビールを注ぎながら質問した。木暮くんは顔をひきつらせながら驚いたような顔をして俺を見た。ピアスだらけの耳、金髪。自分が生きてきた世界にはいなかったであろう、ヤンキーとはまた違うタイプのワルぶってるやつ。木暮くんは驚きながらも怯んだ様子はなく、俺の目を見て答えた。
「このサークルが……趣味で続けていくなら一番いいかと思ったんです」
「ふーん。まあまあ合ってる。俺らみんな医者になりたいからさ、突き指とか怖いしそんなに……めちゃくちゃガチってわけじゃないんだけど、いまあるバスケサークルの中では1番まじめかもね」
「先輩がそう俺に説明してくれたんですよ。入学式のときに」
「えーそうだっけ。覚えてない」
「はは」
俺は木暮くんからグラスを奪って、ウーロン茶とビールが混ざった苦いだけの水を飲み干した。
「ありがとうございます」
「べつにお礼言うようなことじゃないでしょ。俺がイヤなことしたんだから」
ごめんね? と謝るつもりもないセリフを吐き出して、俺は木暮くんとLINEを交換した。絵文字もスタンプもない、アイコンもデフォという、木暮くんらしいっちゃらしいユーザーを、俺は何をするでもなく眺めていた。
やがて通知が来て、「これからよろしくお願いします」と言うメッセージが来た。
「先輩からありがたいこと教えたげる。医者狙いの女の子ってマジでいるからね。下半身の躾はちゃんとするんだよ。それで何人も失敗してるから」と送ると、「ご忠告、痛み入ります」って。上司と部下じゃないんだから。
「明日バスケする?」と聞くと、『します』と即答。なんだ、この熱意。ずーっと芽が出なかった湘北で腐らずプレイしていただけはある。三井があとから参戦してきて、レギュラーの座を明け渡すことになって思わなかったはずはないのに、またバスケがしたくなるだけのものを、木暮くんは持っているのかもしれない。俺はそれがまぶしくて、自分がやる気のない怠けものに見えてしまって少しだけ苦しくなった。
一年生は一限がある代わりに、十九時にはフリーになることが多いという。それでも予習復習があるからいつでも暇ってわけじゃないけど、俺たちは時間を見つけて、あの小さなカゴにボールを放る生活をした。何を話すわけでもないのに、終わる頃には俺は久しく体験していなかった感覚を取り戻しつつあった。言葉を交わしたり、飲み会をして汚らしい飲み方をした訳でもないのに、俺木暮くんに親しみを感じていた。ひまつぶしにしては、あまりに心地よい時間がすぎていった。男同士の友情なんてもう手放してしまって、二度と手に入らないと思っていたけどそんなことないと信じさせてくれた。
本当はそれだけでよかったのに、どちらがどうしたとかじゃなくていつの間には俺らはおよそ友情とは呼べない関係になっていた。多分俺が酔ってた時にベロチューしちゃったら、木暮くん俺のこと恋愛的な意味で好きだったみたいな感じのこと言ってそんでもって……その辺からは記憶がない。までも、俺はたくさんいるセフレの中の一人に彼が参加しただけで、俺はまた大切な友達を失ったのだと被害者ヅラをした。
そんなふうに余裕ぶってたのは最初のうちだけで、木暮くんがときどきうちにきて真面目に勉強したり、一緒にご飯作ったり、木暮くんの十九の誕生日を祝ったり、なんか恋人同士みたいなことをした。木暮くんと一緒にいる時間が長くなればなるほど他のセフレと会う時間は無くなって、俺の生活には木暮くんが深く根付くようになった。
打算も、裏切りもない……穏やかな結びつきが俺たちの間にあった。
今まで女としてきたような、将来の専業主婦生活のための前置きじみたおままごとじみた関係ではなく、心から信頼し、そして大切にしあうことができた。友達から恋人になってしまってから、俺はもう女を好きになれないと悲観的になったこともあったし、友情を壊してまで恋という結びつきを選ばなくてもといじけたこともあった。けれどそのたび木暮くんは俺より一つ下なのに説教じみたことを言うのにそれでいて腑に落ちる解説をしてくれた。
俺はこんなに木暮くんが大切で、木暮くんだって俺のこと愛してくれてるのに、手を繋いで歩いたり路上でキスなんてできやしない。それがなんだか切なくて、俺はよく木暮くんと並んで歩くとき少しだけ距離を置くのだった。
木暮くんは俺が外面繕いたがるくせにその繕う時に使った針で傷ついているのをよく知っているので、眠りに着く前俺の頭をたくさん撫でてくれる。
俺は親父の病院を継ぐとしたら多分子供を残すことを求められるだろう。だからこれは終わりのある物語なんだと、木暮くんとずっとずっと一緒にいたいという期待を何度でも踏み潰す。期待をすれば、叶わなかった時に苦しい気持ちになる。俺の気持ちを知ってか知らずか、木暮くんは俺が悲しい気持ちになるとなぜかそれを察知して「ナマエさん、大丈夫です。俺はずっとそばにいますから」と言ってくれるのだ。永遠にしたいと願えば願うほど、それに伴う困難の多さに眩暈がする。この温もりだけを信じて守っているだけでいいならどれだけよかったか。
もしかしたら俺が大学卒業するまでに同性婚ができるようになっているかもしれない。そんな一ミリ以下の望みをいつまでも叩いて伸ばして、味わっている。叶うわけないと予防線を張りながら俺は、自分の言葉で社会を動かそうともせず、ただ誰かがそれを叶えてくれることを夢見ている。俺は弱いんだろうか。不甲斐ないんだろうか。そんな葛藤を木暮くんは知ってか知らずか、「今日はナマエさんがご飯当番ですね。楽しみです」なんて笑うんだ。ああ、目が覚めたら世の中がなんかいい感じに変わっててさ、俺たちが好き同士だったとしても誰も気持ち悪がらない、ふーんそうなんだでスルーされるようになってないかな。だめかな。畳む
俺が一番嫌いなタイプのひとだった。
だっさいメガネ、髪型、ボーボーの眉毛。どれもが冴えない、どこにでもいるただのメガネくんだった。なんでそんな子がうちの……若干チャラめのバスケサークルに入ったんだろうか。偏差値がいい大学だから、他大の女の子目当てに入ってくるやつは結構いたけど、木暮くんはそういうタイプでもなさそうだった。
「木暮君はさ、どうしてうちのサークルに入ったの」
馬鹿正直にウーロン茶だけを飲み、かたくなにビールを拒む木暮くんのグラスにウーロン茶の上からビールを注ぎながら質問した。木暮くんは顔をひきつらせながら驚いたような顔をして俺を見た。ピアスだらけの耳、金髪。自分が生きてきた世界にはいなかったであろう、ヤンキーとはまた違うタイプのワルぶってるやつ。木暮くんは驚きながらも怯んだ様子はなく、俺の目を見て答えた。
「このサークルが……趣味で続けていくなら一番いいかと思ったんです」
「ふーん。まあまあ合ってる。俺らみんな医者になりたいからさ、突き指とか怖いしそんなに……めちゃくちゃガチってわけじゃないんだけど、いまあるバスケサークルの中では1番まじめかもね」
「先輩がそう俺に説明してくれたんですよ。入学式のときに」
「えーそうだっけ。覚えてない」
「はは」
俺は木暮くんからグラスを奪って、ウーロン茶とビールが混ざった苦いだけの水を飲み干した。
「ありがとうございます」
「べつにお礼言うようなことじゃないでしょ。俺がイヤなことしたんだから」
ごめんね? と謝るつもりもないセリフを吐き出して、俺は木暮くんとLINEを交換した。絵文字もスタンプもない、アイコンもデフォという、木暮くんらしいっちゃらしいユーザーを、俺は何をするでもなく眺めていた。
やがて通知が来て、「これからよろしくお願いします」と言うメッセージが来た。
「先輩からありがたいこと教えたげる。医者狙いの女の子ってマジでいるからね。下半身の躾はちゃんとするんだよ。それで何人も失敗してるから」と送ると、「ご忠告、痛み入ります」って。上司と部下じゃないんだから。
「明日バスケする?」と聞くと、『します』と即答。なんだ、この熱意。ずーっと芽が出なかった湘北で腐らずプレイしていただけはある。三井があとから参戦してきて、レギュラーの座を明け渡すことになって思わなかったはずはないのに、またバスケがしたくなるだけのものを、木暮くんは持っているのかもしれない。俺はそれがまぶしくて、自分がやる気のない怠けものに見えてしまって少しだけ苦しくなった。
一年生は一限がある代わりに、十九時にはフリーになることが多いという。それでも予習復習があるからいつでも暇ってわけじゃないけど、俺たちは時間を見つけて、あの小さなカゴにボールを放る生活をした。何を話すわけでもないのに、終わる頃には俺は久しく体験していなかった感覚を取り戻しつつあった。言葉を交わしたり、飲み会をして汚らしい飲み方をした訳でもないのに、俺木暮くんに親しみを感じていた。ひまつぶしにしては、あまりに心地よい時間がすぎていった。男同士の友情なんてもう手放してしまって、二度と手に入らないと思っていたけどそんなことないと信じさせてくれた。
本当はそれだけでよかったのに、どちらがどうしたとかじゃなくていつの間には俺らはおよそ友情とは呼べない関係になっていた。多分俺が酔ってた時にベロチューしちゃったら、木暮くん俺のこと恋愛的な意味で好きだったみたいな感じのこと言ってそんでもって……その辺からは記憶がない。までも、俺はたくさんいるセフレの中の一人に彼が参加しただけで、俺はまた大切な友達を失ったのだと被害者ヅラをした。
そんなふうに余裕ぶってたのは最初のうちだけで、木暮くんがときどきうちにきて真面目に勉強したり、一緒にご飯作ったり、木暮くんの十九の誕生日を祝ったり、なんか恋人同士みたいなことをした。木暮くんと一緒にいる時間が長くなればなるほど他のセフレと会う時間は無くなって、俺の生活には木暮くんが深く根付くようになった。
打算も、裏切りもない……穏やかな結びつきが俺たちの間にあった。
今まで女としてきたような、将来の専業主婦生活のための前置きじみたおままごとじみた関係ではなく、心から信頼し、そして大切にしあうことができた。友達から恋人になってしまってから、俺はもう女を好きになれないと悲観的になったこともあったし、友情を壊してまで恋という結びつきを選ばなくてもといじけたこともあった。けれどそのたび木暮くんは俺より一つ下なのに説教じみたことを言うのにそれでいて腑に落ちる解説をしてくれた。
俺はこんなに木暮くんが大切で、木暮くんだって俺のこと愛してくれてるのに、手を繋いで歩いたり路上でキスなんてできやしない。それがなんだか切なくて、俺はよく木暮くんと並んで歩くとき少しだけ距離を置くのだった。
木暮くんは俺が外面繕いたがるくせにその繕う時に使った針で傷ついているのをよく知っているので、眠りに着く前俺の頭をたくさん撫でてくれる。
俺は親父の病院を継ぐとしたら多分子供を残すことを求められるだろう。だからこれは終わりのある物語なんだと、木暮くんとずっとずっと一緒にいたいという期待を何度でも踏み潰す。期待をすれば、叶わなかった時に苦しい気持ちになる。俺の気持ちを知ってか知らずか、木暮くんは俺が悲しい気持ちになるとなぜかそれを察知して「ナマエさん、大丈夫です。俺はずっとそばにいますから」と言ってくれるのだ。永遠にしたいと願えば願うほど、それに伴う困難の多さに眩暈がする。この温もりだけを信じて守っているだけでいいならどれだけよかったか。
もしかしたら俺が大学卒業するまでに同性婚ができるようになっているかもしれない。そんな一ミリ以下の望みをいつまでも叩いて伸ばして、味わっている。叶うわけないと予防線を張りながら俺は、自分の言葉で社会を動かそうともせず、ただ誰かがそれを叶えてくれることを夢見ている。俺は弱いんだろうか。不甲斐ないんだろうか。そんな葛藤を木暮くんは知ってか知らずか、「今日はナマエさんがご飯当番ですね。楽しみです」なんて笑うんだ。ああ、目が覚めたら世の中がなんかいい感じに変わっててさ、俺たちが好き同士だったとしても誰も気持ち悪がらない、ふーんそうなんだでスルーされるようになってないかな。だめかな。畳む