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みやこ 成人/神奈川への望郷の念が強い

(waveboxへ飛びます/めちゃまじコメントうれしい/レスはてがろぐ) てがろぐ(ゲロ袋/ブログ/告解室)

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カテゴリ「全年齢向け」に属する投稿49件]

ネスカイワンドロワンライ #カップリング #ブルーロック #ネスカイ

ネスカイワンドロワンライ #カップリング #ブルーロック #ネスカイ

 唇を大切な相手にくっつけることを愛情表現だと最初に定義づけた人は、何を考えていたのかなんとなくわかる。
 朝目が覚めて最初に目に入るのは、僕の手のひらに収まる大きさのカイザーぬい。朝日を受けてまたたく金髪までは再現しきれないけど、あの淡い金はよく似た色があるもんなんだなと感心した。
 
 不敵な笑みを浮かべるカイザーぬい。ああかわいい、愛しい、なんかよくわからないけど心がつやつやして角が取れる。今日は寒いから、こっそり通販したあたたかいガウンを着せてやる。
「おはよう♡ カイザー。今日も頑張ろうね」
 そう言ってカイザーぬいにキスをして到底他人には見せられない笑みを浮かべていると、よく知った足音が聞こえてきてあわててぬいをしまった。
「お、おはようございます。カイザー」
「おはよう…… 本物にキスはしないのか?」
「えっ……じゃあ遠慮なく、あでもまだシャワー浴びてなくて」
「いいから」
「はぁい」
 
 
「あの綿の唇にはキスできて、俺のにはできねえのな」
「それとこれとは話が別……ってカイザーあのぬいぐるみの存在を知って」
「まぁな。普通に聞こえるんだよ。お前があの綿と会話してんのが」
「あれを会話とみなしてくれるのかわいい。カイザー大好き」
「……わかんねぇなぁ……」
 呆れた様子のカイザーは、興味をなくしたようだった。足音が離れていくのがわかる。
 カイザーぬいにこっそりキスをする。今度は本体にできる勇気が湧くように。唇にしてしまったら、僕らの中の何かが劇的に変わってしまうような気がして怖くて、あの双眸が失望の色に染まってしまうのが怖くて。
 
 
「じゃあカイザー♡シャワー浴びてくるから待っててね♡」
 本物の代わり、という意識はない。本当はこうできたらなぁという願いはある。カイザーとこんなふうになってみたいな、という祈りも、ある。
 綿のカイザーは何も言わない。ただ不適な笑みを浮かべて僕がシャワールームに向かうのを見守ってくれる。僕はカイザーとの繋がりはサッカーだけかと思っていたけど、そうでもないみたい。人として、彼のことが好きなんだと思う。その確信が自分でも持てていなかったけどあのキスをしたい、って気持ちは多分本物だった。
 
 熱いシャワーでも気分は晴れなかった。
 
 僕が浮かない気持ちでいても、ぬいはそうでもないみたいだった。いつもニコニコ(?)してるし。
「そうだなぁ……お互い引退したら、もう少し真面目に考えてみようかな……」
 それじゃ遅いよ、と言っているのか、そういう気持ちになった時がベストタイミングだよ、と言っているのかはわからないけど、ぬいぐるみのカイザーはぶすっとした顔をしない。かわいいカイザー(ぬいぐるみ)。
 情けない僕だけど、見守っててね。畳む

だいすき #ストリートファイター6 #夢小説 #春麗

だいすき #ストリートファイター6 #夢小説 #春麗

 リーフェンみたいに才能の芽が出ていたりパソコンができるわけでもなく、最近春麗さんに弟子入りした人みたいにひたむきに努力できるわけでもなく。ただ春麗さんの教室に足繁く通うだけの存在。それが私。
 でもそれに特段不満があるわけではない。私には私のポジションが与えられ、私の視点から春麗さんに関わることができる。
「おはようナマエさん。今日も元気かしら」
「ええ、おかげさまで。肩こりや腰痛が軽くなったんですよ」
「まぁ、それは良かった」
 そう言って微笑む春麗さんの、自分の生徒が良い方向に向かったことをうれしく思うためのパーツである喜びだってあっていいのだと私は思っている。
 
 
 思っていた。
 
 
 いつからだろう。
 春麗さんが穏やかに視線を送るもの全てが憎らしく、そんなことできるはずがない、こんなことを表に出してしまったら敬遠されるに違いないのに、それでも、どうしてもつらい。
 つらくても、私はこの”春麗さんの教室に通う生徒”の役から降りたくない。私の役はもうすぐ破滅とともになくなると分かっていても、まだ私に春麗さんが話しかけてくれたり、昔の話をしてくださったりする間柄で居させてくれるのなら、ここに居たい。
「ナマエさんどうかした? 眉間にシワが」
「あ、ああ。ちょっと歯が痛くて」
「ダメよ。歯が痛いのは放っておいてはダメ。すぐに悪くなってしまうわ」
「はぁい」
 好きな人が私を気にかけてくれる。こんな幸せがあるか? 些細であるはずもない。私は、欠けることなく幸せに満ちている。畳む

お題:闇、ハロウィン #カップリング #ヒロアカ #荼炎 #燈炎

お題:闇、ハロウィン #カップリング #ヒロアカ #荼炎 #燈炎

 光の当たる場所にいたことは、闇を渡り歩くようになってからわかる。
 
 誰にも、特にお父さんには言えなかったけど実は暗い場所は見るのも居るのも怖かったけど、今はそんなこと言ってられなくなった。焼けこげてつぎ当てた皮膚の色がどんどん沈着しているのと、皮膚だけでなく筋肉にまで食い込んでいる縫い跡があんまりにもバケモノで陽が落ちてから、夜の深い闇に紛れる以外の選択肢がなくなった。且つ、深くフードを被ってマスクをする怪しい風貌でも干渉されない環境といえば人間の個体数の母数が多い都会になる。
 そんな俺がそこでしか生きられない時間・場所であるにもかかわらずハロウィンという祭で一儲けしようとした層のせいで静かな散歩すらできなくなってしまう。
「あ! オニーサァン笑 どしたんすかそんな俯いちゃってさ〜!!今日ハロウィンすよ!盛り上がっていかなきゃ損ですよぉ〜!!」
 なんていう輩に絡まれてしまう。普段人通りなんて皆無である道を選んでも、だ。ここで消し炭にしてやることも時間をかけてじっくり殺してやることもできる。けどなんか気分が乗らないのはヤツのハロウィンコスがエンデヴァーだったからだ。
「お前、エンデヴァーのファンなの」
「いやショージキファンではないかな! 俺の体格に合ってるヒロコスの中でドンキで投げ売りになってるのがコレだったってわけ」
「ふーん…… エンデヴァーっていいところないかな」
「無いわけじゃないとは思うけど……俺には見えてこないかな〜……ってか、オニーサンエンデヴァーのファン?! 同担拒否? オニーサンもエンデヴァーコス買ったら?!」
「ファン……ファンってか、まぁ複雑な気持ち」
「そうなんだ〜 までも、俺が見た時まだ全然在庫あったよ!」
「そうなんだ。ありがと」
「いいってことよ!じゃね♡」
 騒々しい男はぬるくなった缶ビールを押し付けて去っていった。初めて飲むビールは成人式のあとお父さんとって決めてたけどもう叶わないだろうからまぁいいかと思いプルタブをあげておろした。
 苦くて、つまんない味だった。胃のあたたかさや思考を奪う酩酊感もなにも楽しくない。
 
 昔お母さんにお願いしてお父さんのヒーロースーツを模した服を作ってもらったのを思い出した。本当にうれしくて、どこに行くにも着て行ったのを思い出して虚しさと怒りと、それと何か言語化しにくい気持ちが湧いてきた。オールマイトのは腐るほど売られてたけどまぁ、お父さんは一般ウケしなかったらしくて売ってなかった。だから特別だったんだけどあんなにわかが着てるくらい陳腐なものになってしまったとわかって心から苛立った。
 とはいえ、父さんはヒロコスが売られるほど人気が出てきたみたいで、背筋がむずむずする。この積み上げた信頼、浮ついた人気、お父さんの考える正しさをめちゃくちゃにできるのかと思うと胸が躍った。踊るっていうか、胸がぽかぽかするっていうか。好きな子のとまどう顔が見たいってのもまた愛だよな。
 出かけた時とは打って変わって機嫌良く帰宅(ってもダンボール敷いた公園だけど)した。
「お! ケンちゃん。今日はなんかご機嫌だな」
「うん。いいことあってさ」
「よかったなぁ。でも今日は気をつけてな。羽目を外した若いやつらに殺される路上生活のやつらは片手で足りないくらいいるからな」
「わかった。ありがと」
 こんな満たされた気持ちになったのはいつぶりだろう。そして、また次にこんな気持ちになれるのはいつだろう。いつものようにスマホで登録者が全然いないお父さんのYouTubeチャンネルを視聴する。今日も悪いヤツをやっつけたんだって。お父さんの考える、悪いヤツを。
 
 お父さんは、お父さん的には悪いヤツじゃないらしい。そこが面白くて俺は画面の向こうのお父さんから目を離せない。お父さんの考える正しさって何。それを聞く前に俺は捨てられてしまったから、今度ちゃんと話す機会があるなら聞いてみたいな。畳む

お題:星月夜 #ヒロアカ #カップリング #荼炎 #燈炎

お題:星月夜 #ヒロアカ #カップリング #荼炎 #燈炎
 瀬古渡で泣いてた俺も、こんな夜空を見ていたっけな。
 いや、夜空なんか見る余裕もなくってお父さんが来てくれるのを待ってた。いまこうしてしみじみと星を眺めていられるのは、俺が何者がみんなに知ってもらえたからだと思う。
 
 すごく晴れ晴れとした気分だ。
 
 秘密を一人で抱えるのは本当に辛かった。生きていくことが辛すぎてお父さんの提示した人生を生きることが頭によぎったのは一度や二度じゃない。
 けどそのたび、望んだ性能を持った新しいオモチャで遊ぶお父さんを見て、そして俺の仏壇に手を合わせたときにやっと決意が固まった。
 
 お父さん、震えてた。
 ショックだったのかな。自分が厳格に守ってきた正しさに反している息子がいて。
 あの時、俺が生きていると分かった時焦凍のことも何もかも忘れて「燈矢、生きていたのか!心配してたんだぞ」の一言や、駆け寄って抱きしめるとかそういうのがあったらここまで拗れてないかもしれないけど、お父さんは目を見開いて震えてるだけだった。俺が炎をけしかけても、焦凍が必死に呼びかけても。
 
 今ごろお父さんどうしてるかな。お父さんの病院で治療を受けてるみたいだけど、アンチが病院まで押しかけて大変そう。病室から俺が見てるのと同じ月を見てるんだろうか。
 ここまで長かったぶん、暴露してしまってからの時間が充実しすぎていてたまらず笑顔になる。顔の筋肉がひきつれて痛いけど、やっとここまで来れたと思ったら笑いが止まらなかった
 。
 俺のこと考えてるかな。なんて言おうとか、そういうの。次会った時、なんで言うかな。俺のこと、なんて呼ぶのかな。

ぬいぬい #ブルーロック #カップリング #ネスカイ

ぬいぬい #ブルーロック #カップリング #ネスカイ

「こ、これは……」
「新しいグッズだとよ。いらねーってのに」
「僕にください」
「あ? まぁ別にいいけど」
「ありがとうございます!」
 
 こうして手のひらに収まるサイズのカイザーを僕が所有するという大興奮な生活が幕を開けた。
 
 男のぬいぐるみ趣味なんて一番バカにされてしまう環境なんだけど、僕がカイザーのぬいぐるみにどう転んだってカイザーが絶対着ないような少女趣味な服を作って着せ替えしたり、家具を作ったり、連れ出して写真を撮っているのを見ても誰も何も言わなかった。
 チームメイトたちに聞いたら「この商品を見た時ネスならやると思ったし、カイザーがくれてやらないなら俺らで買ってやろうと思ってた」という。
 意外とこいつら僕のことわかってるしいいやつだなと思った。
 
「カイザー、僕、少し旅行に」
「一人でか?」
「まぁ、一人ですね」
「あの綿とだろ」
「なんでわかったんですか」
「お前が遠征する先々の観光地で俺のぬいぐるみと写真を撮ってるのが話題になってる」
「えっ……」
「旅行いくなら俺も連れてけ。お前と旅行行くと楽しむだけでいいから好きなんだ」
「!??!!?!!♡♡♡!!?♡!??♡♡!♡♡♡♡♡♡♡♡♡はい!!!!♡♡♡♡♡♡♡♡♡」
 
 こうして、ネスとカイザーとカイザーぬいは旅行を楽しみましたとさ。
 
 おしまい

習作② #ブルーロック #カップリング #ネスカイ

習作② #ブルーロック #カップリング #ネスカイ
 好きな歯磨き粉の味、コーヒーには何を入れるか、好きなタオルの素材、シーツは毎日取り替えたい、嗜好品として好きな食べ物と、アスリートの身体を作るための食事の中で好きな食べ物……等々。
 知らなくても僕自身のパフォーマンスには影響しないものだけど、こういった知識を仕入れることをやめようと思ったことはない。
 なんでカイザーのことをこんなに大切に思っているのかもわからない。わからないというか、言葉で説明できない、というのが正しい。
 言葉にするとなると「何となく」とか「好きだから」とかいう一見陳腐に聞こえる言葉でしかこの感情を飾れないのなら、最初から言葉にしないほうがいい。
 カイザーは僕がいなくなったら、自分好みの生活に辿り着くための速度が落ちるだけで、僕がいないと何もできないなんてことではない。カイザー自身でもできるけど、僕がやりたいって言うからやらせてくれているだけ
 。
 僕はそれをカイザーの優しさだと思ってるけど、他の人はそう見えてない、カイザーが僕をこき使っているように見えているらしい。「ネス、あなたはカイザーの召使じゃなくてあなたはあなたの人生を生きたほうがいい」なんて。
 そういうやつと話していると頭にくるけど、僕のことを心配してくれているんだと自分に言い聞かせている。それでもイラつくけど、一回ひどく怒鳴ったらカイザーに洗脳されてるからそういうことをしてしまうんだなんていう超理論を掲げられて、相手の中でもう答えが決まってることにこちらが何を言っても意味がないと悟り、話だけ聞いて満足して帰ってもらった。
 確か、スポンサーの親族だったはず。そうでもなきゃ、話切り上げて練習に戻ってる。
 
 僕は僕の選択で僕の人生を生きているからこそ、これなんだ。これが一番納得いってる。一番かっこよくて一番強い人の影でいられることがどんなにうれしいかわからないなら黙っていて欲しい。僕は今本当に幸せなんだから。

水底 #呪術廻戦 #禪院真希 #夢小説 #女夢主

水底 #呪術廻戦 #禪院真希 #夢小説 #女夢主

 真希ねえさまが出て行ってしまうと聞いてから、私の心は休まりませんでした。
 禪院の男たちから我が身を守る……貞操を守り、同意なく孕まないでいるには、禪院の女は弱すぎました。そんな弱い禪院の女の中でも真希ねえさまは私の希望でした。
 
 もしかしたら、私も頑張れば真希ねえさまのようにできるかもしれない、と。
 
 でも、真希ねえさまが出ていく日が近づくにつれてそれは違うと実感するようになりました。
 
 真希ねえさまは、どんなにこの世を恨んでも、絶望に足をすくわれそうになっても歩みを止めないのです。どんなにいじめられても、悪態をついて立ち上がるのです。私のように、されたことにばかり目を向けていつまでもそこで嘆いてるような女とは違ったのです。
 私は禪院と他の呪術の家系との婚姻関係を結んで関係を確認する駒以外の役割はできないでしょう。
 もう抗ったり、新しい世界に希望を持って駆け出す気力は無いのです。
 
 真希ねえさまのように、叩かれても叩き返したり、次叩かれないようにするために頭を回すこともできず、ただ怯えて身体を縮めることしかできないのです。これは努力がどうとかでは無いと思っています。私が弱いから、と卑屈になる気もありません。
 真希ねえさまのことは羨ましいとは思いますが、まだ、この禪院の女という生を続けるつもりなのだと、驚きと侮蔑の念があります。もうやめればいいのに、外に行ってもつらいだけだと思うのですが……
 
「おお、[FN:ナマエ]。見送りに来てくれたのか」
「ねえさま」
「こんな夜逃げみたいな出発になったけど、まあなんとかやるから」
「ええ、その、私……ねえさまのこと」
「うん、応援してくれんだよな」
「……ええ。ねえさまがのゆく先が……幸せでありますように」
「はは、そんなことできると思ってないだろ」
「もしかしたら、外の世界はここより良いところかもしれませんし」
「どうかな。わからない」
「けど、行くんですか」
「ああ」
 私の記憶の中のねえさまは、笑っていました。
 
 
 それから、長い時が流れました。
 禪院の男の雑巾のように扱われ、そう生きることに何も思わなくなった、この世の何にも思うところがなくなった頃、真希ねえさまは帰ってきました。
 笑顔などなく、ただ禪院の男たちを鏖殺していきました。私はそれを見て、真希ねえさまは外の世界で本当に幸せだったのか聞いてみたくなりました。
 
「ねえさま」
「[FN:ナマエ]か」
「そうです。真希ねえさま、外の世界は、楽しかったですか?」
「……そうだなぁ、うーん……結果的にそんなにハッピーってことではなかったけど、過程は、良かった」
「そうですか。よかったですね」
「なんかうれしくなさそうだな。[FN:ナマエ]、私に不幸になってほしかったか?」
「……そうでないと、あの時真希ねえさまに私も連れてってと言えなかった私のことが、許せなくなりますから」
「そうか。まぁ、お疲れ。[FN:ナマエ]、この死体の処理、頼めるか?」
「わかりました。全部混ぜて同じ穴に適当に埋葬します」
「いいね。じゃあ、また」
「真希ねえさま、元気で」
「[FN:ナマエ]もな」
 私の最後の記憶の中のねえさまは、頬を歪めるようなつまらない笑い方をしていました。畳む

習作 #ブルーロック #カップリング #ネスカイ

習作 #ブルーロック #カップリング #ネスカイ
 これは夢だとわかっていた。
 
 こんなこと、彼がするはずがないというのは僕が一番よくわかっているからだ。
 夢の中の僕は怪我をてしまって入院している。もうサッカーができなくなるかもしれない。
 それでもカイザーは僕のお見舞いにマメに来てくれて、「お前が戻るのを待っている」とか「お前がいないとうまくいかないことがある」なんて言ってくれる。
 俺がこうあってほしいと思っていることが夢になってるとしたらとっても情けないし恥ずかしいから早く目覚めたいんだけど、どうしても目覚めることができない。僕に優しい言葉を吐き続けるカイザーの形をした幻に相槌を打つ。
 役に立たなくなった僕に構うカイザーはカイザーじゃない。こんな僕の願望で歪んでしまったカイザーと話しているとおかしくなりそうだ。
 
 
 ドッ、とベッドに誰かが座る衝撃があり、目が覚めた。
 
「何寝てんだ」
「深夜なので……」
 寝汗でしっとりと湿ったシャツを脱ぎ捨てて、あわい金髪から肌の青薔薇へと目を滑らせた。僕の夢の中のとは全くもって違う、僕の知っているカイザーが不機嫌そうに僕のベッドサイドに座っている。
 
「今日は俺が深夜に帰国するって知ってただろ」
「……! 知ってました!」
「なら何で寝てる」
「えへ……! そ、そうですよねカイザー!あなたはそうでなくちゃ!そうであってください!ね!ね!」
「うるさい。適当な運動着用意しろ。少し身体動かすから、付き合え」
「もちろんです!」
 ベッドから飛び起きて、カイザーのクローゼットから運動着とサッカー用の厚手の靴下を取り出して渡した。さも当然かのように受け取り、何も言わずに着替え始める。そう、そうこれが僕の知るカイザーだ。誰のことも見ずに自分の道を進んでいく光、後ろに続く民草のために道を拓く皇帝。僕はすっかりうれしくなって、室内練習場の空調と電気を操作して、ストレッチ用のマットを持って行った。

 夢の中のカイザーは起こして悪かったとか言うだろうけど現実のは言わない。それでいい。それが、いい。

ママとお父さんのだいすきな私 #夢小説 #カップリング #鬼滅の刃 #おばみつ

ママとお父さんのだいすきな私 #夢小説 #カップリング #鬼滅の刃 #おばみつ

 お父さんとママのこと大すきだけど、今日だけはおうちに帰りたくなかった。
 
 ママとおんなじ桃色の髪が大すき。けど、今日学校で男の子にからかわれた。そうめんのピンク色食べすぎたエロ女って。
 
 そんなことお父さんに言ったら男の子のこと何しちゃうかわからないし、ママと同じ髪の色をからかわれたなんて言ったらママは悲しむに決まってる。
 公園のベンチに座ったまま五時のかねを聞いた。学校が終わったらまっすぐおうちに帰ってきて、ランドセルをおいてから遊ぶのよってママ言ってたのに。
 多分お父さんもママも探している。見つかりたくなくて公園を出たけど、お店の近くだからきっとすぐ見つかっちゃう。
 

「お父さん」
「どうしたんだ、みんな心配してたんだぞ」
 そう言ってお父さんはランドセルごと私を抱き上げた。今日の髪型はお父さんがくるくるにしてリボンをつけてくれた。それなのに、帰る時には給食当番のお帽子かぶってきたからお父さんは何かわかったのか、何も聞かずにお店に戻ってママに連絡しているみたいだった。
「髪のことで何か言われたんだろう」
「わかったの?」
「ああ、ママも言われていた」
「あいつらがばかなんだってわかるんだけど、けど……ママと同じ髪なのにそんなこと言われて悔しかった」
「お前はえらいな。お父さんと違って時分の気持ちを言葉にできる」
「そう? お父さん毎日ママにだいすきっていってるじゃん」
「それは、そうだが……」
「子供たちにも言ってる」
「言わないと伝わらないことがあるからな……っていうことはお前が一番わかってそうだけどな。もうそろそろママ帰ってくるから、ちゃんと話してやってくれるか?」
「うん……」
 
「ンモ〜っっっ!!花ちゃん! 甘露寺花ちゃん!! し、心配したのよ〜っ!!どうしたの? 怪我はない??」
「ないよ……」
「何か嫌なことがあったの? 今日の晩御飯がピーマンの肉詰めなのが嫌? ママかパパが嫌なこと言っちゃった??」
「違うの……」
 給食当番のお帽子をとると、桃色の髪がふわりとこぼれ落ちた。ママと同じ髪の色と、お父さんと同じ瞳の色。どっちもだいすきだ。ママになんて言おうかモジモジしてたら、お父さんが何か言いたげにソワソワしている。
「あのね……この髪の色はそうめんのピンク食べすぎたエロ女って……」
「くだらん」
「パパは静かにしてて!」
「すまん」
 お父さんはママに弱すぎる。惚れた弱みってすごいんだなぁっていつも思う。
「もちろんそんな言いがかり言うのは変だわ。でも、悲しいわよね……」
「そうなの。くだらないってわかってるんだけど、悲しかったの……」
 ただ聞いて、私の気持ちをわかって欲しかった。ママは私のことをわかってくれる。
 ママだいすき。
 お父さんも好き。
 
 ▼
、今日の髪型はどうする」
「んーと、髪がちゃんと見えるような感じがいい。くるくるにして」
「わかった」
 お父さんにお願いしてかわいくしてもらった。ママとお父さんの子供だもん。いつだって一番かわいいし、ママとお父さんの宝物だもん。エロだからなんだっていうのよ。くだらないバカの言葉で傷つくことがあったって、いいの。ママとお父さんがぎゅってしれくれるんだから。

俺たちのグッズが出た #カップリング #ヒロアカ #ミリ環

俺たちのグッズが出た #カップリング #ヒロアカ #ミリ環

「波動さんのぬいぐるみを着飾って楽しむ趣味ができた」
「へー」
「あのね、いろんな作家さんが帽子とか洋服とか作ってて……」
「かわいい。波動さんはこういう少女趣味な服着ることなさそうだから尚更」
「そう。波動さんは絶対にこんなフリルフリルした服は着ない」
「着ないねえ……波動さんは服のこと隠すべきところを隠すくらいの勢いしかないと思う。その流れで言うと俺は環とファットと切島くんとてつてつくんのアクリルジオラマ持ってる」
「あ、あれ俺も好き。ファットが集合写真の時前に横たわるタイプの上司だってことをしっかり描いてるし」
「そこかぁ……」
「そう。いつもはかなり大雑把でアホっぽい大人のフリしてるけど、一番税金とか法律のことわかってるし、労働時間に気を使ってるし、労災とかの手続き手伝ってくれる。そういうタイプの大人でもある」
「いい職場だ」
「うん。切島くんとてつてつくんはあのキラキラした目でカニカマを食べる俺を見て、カニの形質が出てこないか待っててかわいい。カニカマのことカニだと思ってて……」
「かわいい。環が仕事先でうまくやってるみたいでよかった」
「うん。みんなが元気な限りは頑張りたいな」
「そう、そうありたいよね」
「ね」

運命の赤い糸が目に見えないばかりに #カップリング #ヒロアカ #ミリ環

運命の赤い糸が目に見えないばかりに #カップリング #ヒロアカ #ミリ環

「波動さん、綺麗だったね」
「うん。ドレスの色がすごく似合ってたね」


 波動さんの結婚式か終わった後、俺が大阪に帰る前にちょっと時間作ろうと言って会っているけどやっぱり毎日顔を合わせていたときよりはお互いの今を探り合っているような気がする。いつもはちょっと話しただけで昨日さよならと言って別れたくらいのノリで話せるのに。
「いいなあ、結婚」
「ミリオ、結婚したい人がいるの?」
「うん。いる」
「そうなんだ……したいなら、すればいいのに」
「そうもいかない事情があって……でも、俺が死ぬ時はその人に喪主を頼みたいと思ってて」
「そういう理由で結婚考える人っているんだ」
「結婚はロマンスだけではやっていけないからね」
「何か知っているような口ぶりだね」
「まあ俺も社会に揉まれていろいろ見てきたってこと」
「そっか」

「っていうか、やっと環が話してくれた気がする。聞かれたら答えるだったじゃん。さっきまで」
「いや俺たちなんだかんだで一年会ってないから、今のミリオのノリがわからなくて」
「変わらないよ、そんなの」
「変わるよ。波動さんだってあんな……俺たち以外のやつと結婚したし……」
「さみしいならさみしいってちゃんと言いなよ」
「ほんとだ……さみしい! もう俺たちとドッジボールとか缶けりとかしてくれないかもしれない……」
「それはないでしょ。あの子、勝てる勝負好きじゃん」
「俺は別に手を抜いているわけでは……」


 そこまで言って、俺は言葉を失った。俺だけが誰とも結婚したいほどの関係性を作れていない焦りが顔を出したのだ。別にそんなもの無くてもいいんだけど、無いと二人と一緒になれないような気がして。いやもう、違う道を歩いているんだから一緒じゃなくてもいいんだけど、少しでも共通点が多くないと俺だけその輪からいなくなっちゃうような気がして。くだらないのはわかってる。みんなと一緒じゃないからとパートナーを求めたってそんなのパートナーの人に失礼だっていうのもわかる。わかるけど今日の俺は波動さんの結婚に少なからずショックを受けてしまっているのだと思う。
 
「ミリオまで結婚しちゃったら、俺どうしたらいいんだろう」
「どうもしなくていいよ」
「それは、わかるけど……」
 せっかく久しぶりに会ったのだからこんな湿っぽい話はしたくないのに、一度マイナス思考が始まったら下り坂を駆け下りるように止まらない。ミリオはそんな俺を知ってるから、マイナス思考には運動が一番とか言って、スマホから底抜けに明るいおなじみの前奏を流し出した。
 
「ラ、ラジオ体操第二……あー運動する気なんかないのにこの前奏を聞くとあー……身体が勝手に……」
「でしょ? 俺最近ウジウジした時はラジオ体操してんの」
「へー」
 日が暮れた公園でいい大人二人、しかも多少名の売れた二人がラジオ体操をしているのは滑稽に映ってはいたものの、みんなあの前奏には我慢できずに文句垂れながらも深呼吸まで済ませてしまった。
「どうしたのルミリオンじゃん。急にラジオ体操とかして」
「今日は友達の結婚式があって」
「文脈機能してないけど?」
「ダハハ」
 知らない人とも積極的に雑談できるミリオの影でそれを眺めていた。
「環、また気分落ち込んだら俺のこと思い出して。俺はずっと味方だから。そして、ラジオ体操をして」
「う、うん……」
「スマホ出して。サブスク入ってる?入ってなかったら俺が買ってあげる」
「入ってない。っていうか圧がすごい」
「ファットも切島くんもてつてつくんもいい人たちだから大丈夫だろうけど、それでも環は落ち込むでしょ。そしたら俺がいるってわかってたら、安心するといいなって……もう何もかも嫌になったら俺のとこ来ればいいし……」
「ありがと……」
 
 こんなにいいやつが近くにいるのに、俺は何を落ち込む必要があったんだろう。それでも俺はこういう気質だから落ち込むんだろうけど、その度浮かんで来れる。縦の糸と横の糸、水と魚、錘と浮きの俺たち。まあなんと、いい関係じゃないか。 

永遠 #カップリング #ヒロアカ #荼炎 #燈炎

永遠 #カップリング #ヒロアカ #荼炎 #燈炎

 結局お父さんは個性婚の結果として俺らを作って、何かを得ることができたんだろうか。
 おだやかに風が吹くとてもいい季節なんだと思う。水の底から見る景色みたいにぼんやり歪んだ視界、ごうごうと血の流れだけが聞こえる耳、風の流れすらわからない肌。どれもがこの季節を教えてくれないけど、お父さんが教えてくれるんだ。
「燈矢、今日は風が吹いているんだ。優しい風だ。燈矢の周りにだって吹いてるぞ」
「見てごらん、あれは……何らかの鳥だ」
 とか。
 
 俺は多分もうお父さんの願い、一番になりたかったという願いを叶えてあげられない。けれどこうして大切に余生を過ごしている。ほかに願いがあるなら、俺でも叶えてあげられられる願いがあればいいんだけど、こんな身体じゃもう無理だ。俺がこの前、こんな弱くなった俺を見られたくない、捨てて欲しいと言ったら、
「なにを言うんだ燈矢。俺は燈矢に……家族に、俺がなにを大切にしなければいけなかったか、俺の本当の願いは何かということを教えてもらったんだ」
「そうなんだ……お父さんの願いって、何?」
「それは、燈矢。家族がみんな幸せを感じながら生きることだ」
「そっか……いまからでも、まだそうなれるなら、そうなりたいね……」
「過去は消えない。変えることはできない。けれど、おそらく……過去を現在や未来で雪ぐことはできると思うんだ。燈矢はどう思う」
「俺は、それでもいいよ。これから……っても、そう長くはないけど俺や俺のきょうだい達のわだかまりを雪いでよ」
「ありがとう、燈矢」
「自分の考えややりたいこと、これがイイと思った事を家族に押し付けないだけでちょっと進歩」
 そうやってちょっと笑っただけで頬が裂けるように痛い。けどお父さんも苦笑いの部類では、るけど、笑ってくれたから、いい。今の俺は、それでいい。
畳む

only you #カップリング #ブルーロック #スナロレ

only you #カップリング #ブルーロック #スナロレ

「殴ったんだって? お前のパスをこぼしたチームメイトを」
「説教は受けてやったよ」
 へらへらと笑う俺のツラを、オヤジだったなら起き上がれなくなるまでぶん殴ったけどスナッフィーはただその瞳をぎょろぎょろと動かして黙っている。
「やっとサッカーしてやってもいいかな? と思ったのにさ、俺よりヘタクソなやつばっかりで頭きたんだよ。俺よりずっと長く練習してきても俺以下の実力しか出せない奴らが結託して、えらそうにお前のやり方は良くないなんて言うんだぜ。スポーツは結果が全てだろ。馴れ合いとか、感傷とか。一番いらないものにこだわってるやつらばっかりなんだよ」
 俺は言い訳するように長々と俺を怒らせた奴の方が悪いと並べ立てた。かっこ悪い。これじゃガキみたいだ。俺の言葉を黙って聞いていたスナッフィーは、トチって死んだ親友のことでも思い出してるのか目をすっと細めて、俺を見た。そしてそれを誤魔化すかのように小脇に抱えたボールを足先でいじり始めた。
「ロレンツォ、お前の言うとおりでもあるし、俺の経験則で言うと少し違うと思う。努力の積み重ねを美しいと思うのはどこでも一緒だ。サッカーはチームスポーツだからみんなが美しいと言うものを美しいと言っておくだけでもその集団には親しみを持ってもらえるんだよ。これは大人だから知ってるズルだ。大人はズルの手数が子供より多く知ってる。その代わり自分の経験してきたこと以外のことに恐れを抱く。だからロレンツみたいな、生育環境が違うやつがいるだけで異なる価値観への恐れが減る……ことを見越していたんだが、そうじゃないかもな。ロレンツォの言うとおり、結果が全てだ。それなのに文句を言うチームメイトはおかしいな」
「だろ?!」
「おかしいが、ロレンツォ、お前もじきに忖度ってやつを学んだほうがいい……ロレンツォが楽に生きるために」
「そんなもん、いらない。俺は金にならない、形にないものは信じない。他人からの信頼も必要ない。そんなもの、すぐ無くすか……自分から壊しちまうんだ」
「悩むことも大事だがな、夜は悩まないほうがいい。グラウンドに行こう。少しだけ練習してから寝よう」
「いいよ」
「ありがとう、ロレンツォ」
 
 
 
 こうして俺は、ちょっと問題を起こすとロレンツォが構ってくれることを学んでしまった。これは大人になってからも続くんだけど、徐々に構ってもらえなくなった。そのうえ、構ってもらいたくて問題行動を起こしてるということがスナッフィーにバレてるみたいで恥ずかしくなった。そんなことをしてまでスナッフィーの気を引きたいみたいで。
 でも一番気を引けるのは俺が結果を出せた時だ。それに気づいてからは俺はもうそりゃあ真面目にサッカーした。ちょっとでもスナッフィーの視界に入れるように、スナッフィーの夢を叶える道具としてうまく使えるんだぜとアピールした。虚しくなんかなかった。
 死んだ親友とスナッフィーが写ってる写真を写真立てに入れてるのを見て、俺はいつもなんだか気が重かった。生きて、スナッフィーのことを見てるのは俺なのに、スナッフィーは地獄の釜の中をずーっと眺めて、時々現実を見ては親友の影をグラウンドの中に探している。
 別に虚しくなんかない。俺はスナッフィーとは金と契約で繋がってるだけだし。信頼とか、無いし。そのはずなのに、俺何故かそんなスナッフィーに苛立ちを感じている。スナッフィーは気づいてか気づいてないのか、何も言わずに俺らのプレーを上から目線で眺めている。むかつく、嫌い、いなくなれ。そんな単純な苛立ちでしか自分の感情を表現できない。だから多分俺がチームメイトを殴ったのってスナッフィーのせいじゃないのか? いやでも、言われたな。自分の問題を他人のせいにするなって。
「殴ったんだって? お前のパスをこぼしたチームメイトを」
「説教は受けてやったよ」
 へらへらと笑う俺のツラを、オヤジだったなら起き上がれなくなるまでぶん殴ったけどスナッフィーはただその瞳をぎょろぎょろと動かして黙っている。
「やっとサッカーしてやってもいいかな? と思ったのにさ、俺よりヘタクソなやつばっかりで頭きたんだよ。俺よりずっと長く練習してきても俺以下の実力しか出せない奴らが結託して、えらそうにお前のやり方は良くないなんて言うんだぜ。スポーツは結果が全てだろ。馴れ合いとか、感傷とか。一番いらないものにこだわってるやつらばっかりなんだよ」
 俺は言い訳するように長々と俺を怒らせた奴の方が悪いと並べ立てた。かっこ悪い。これじゃガキみたいだ。俺の言葉を黙って聞いていたスナッフィーは、トチって死んだ親友のことでも思い出してるのか目をすっと細めて、俺を見た。そしてそれを誤魔化すかのように小脇に抱えたボールを足先でいじり始めた。
「ロレンツォ、お前の言うとおりでもあるし、俺の経験則で言うと少し違うと思う。努力の積み重ねを美しいと思うのはどこでも一緒だ。サッカーはチームスポーツだからみんなが美しいと言うものを美しいと言っておくだけでもその集団には親しみを持ってもらえるんだよ。これは大人だから知ってるズルだ。大人はズルの手数が子供より多く知ってる。その代わり自分の経験してきたこと以外のことに恐れを抱く。だからロレンツみたいな、生育環境が違うやつがいるだけで異なる価値観への恐れが減る……ことを見越していたんだが、そうじゃないかもな。ロレンツォの言うとおり、結果が全てだ。それなのに文句を言うチームメイトはおかしいな」
「だろ?!」
「おかしいが、ロレンツォ、お前もじきに忖度ってやつを学んだほうがいい……ロレンツォが楽に生きるために」
「そんなもん、いらない。俺は金にならない、形にないものは信じない。他人からの信頼も必要ない。そんなもの、すぐ無くすか……自分から壊しちまうんだ」
「悩むことも大事だがな、夜は悩まないほうがいい。グラウンドに行こう。少しだけ練習してから寝よう」
「いいよ」
「ありがとう、ロレンツォ」
 
 
 
 こうして俺は、ちょっと問題を起こすとスナッフィーが構ってくれることを学んでしまった。これは大人になってからも続くんだけど、徐々に構ってもらえなくなった。そのうえ、構ってもらいたくて問題行動を起こしてるということがスナッフィーにバレてるみたいで恥ずかしくなった。そんなことをしてまでスナッフィーの気を引きたいみたいで。
 でも一番気を引けるのは俺が結果を出せた時だ。それに気づいてからは俺はもうそりゃあ真面目にサッカーした。ちょっとでもスナッフィーの視界に入れるように、スナッフィーの夢を叶える道具としてうまく使えるんだぜとアピールした。虚しくなんかなかった。

 死んだ親友とスナッフィーが写ってる写真を写真立てに入れてるのを見て、俺はいつもなんだか気が重かった。生きて、スナッフィーのことを見てるのは俺なのに、スナッフィーは地獄の釜の中をずーっと眺めて、時々現実を見ては親友の影をグラウンドの中に探している。
 別に虚しくなんかない。俺はスナッフィーとは金と契約で繋がってるだけだし。信頼とか、無いし。そのはずなのに、俺何故かそんなスナッフィーに苛立ちを感じている。スナッフィーは気づいてか気づいてないのか、何も言わずに俺らのプレーを上から目線で眺めている。むかつく、嫌い、いなくなれ。そんな単純な苛立ちでしか自分の感情を表現できない。だから多分俺がチームメイトを殴ったのってスナッフィーのせいじゃないのか? いやでも、言われたな。自分の問題を他人のせいにするなって。
 そういうバカみたいな悩みはサッカーしてる時だけはついてこなかった。俺はただ、俺の中の嫌な俺が顔を出さないようにサッカーをしている。なんでもよかったんだ。サッカーじゃなくても。でもサッカーじゃなくちゃ、俺はここに居ない。まだあの今生の延長線上にある地獄で息ができなくなっているに違いない。ある意味、俺を救おうとして手放した大人より悪質なのかもしれない。あーあー、やめ。サッカーしよう。

碇 #レゾ #ヒロアカ #鳥師弟

#レゾ #ヒロアカ #鳥師弟
「常闇くん……」
「なんです。そんな神妙な顔して」
「俺この前常闇くんとモスバーガー食べに行ったじゃん。あの時ね、オニポテリング一個くれたじゃん」
「そうだったかな。確か師が初めてモス来たわ〜などと言っていたので、オニポテを食べずにいるのはなと思い」
「それはさ、雪見だいふくの一個だったり、ピノの一個みたいなそういう……」
「ああ、まあでもそこまで食に執着がないから俺はそういうのはいいんです」
「えー、常闇くんの方が大人みたい」
「執着の先は人それぞれです」
「そっかあ……常闇くんは、何に執着してんの?」
「そうですね……職場環境ですかね。ホークスが想像している以上に異形個性は蔑まれるので、ホークスみたいに名前が売れてて、若い女性のファンが多いヒーローの下だと働きやすいんですよ」
「あー、そういう。なんかもっと俗物的な回答がもらえるかなって……」
「あなたにそんな顔させたくなかったから言わないでいたんですが」
「なんだ、隠してたんだ」
「まぁ、そうですね」
 ホークスのせいではないのに、そうやって俺のことを自分ごとのように傷ついてくれるあなたの顔が見たくてこの話をしたのかもしれない。
 たかだか五年程度早く生まれた程度で世界は変えられない。そんなことくらい俺ですらわかっているのに、ホークスは釈然としない顔をして俺に降りかかる悪意を嘆いてくれている。
「俺はそうやって傷つく常闇くんに何してあげられるかな」
「うーん……スマブラをしたり、温泉に行ったり、潮干狩りに行ったり、ポットのお湯が切れそうだったら補充したり、靴を揃えたり、事務所の鍵をちゃんとしめたり……」
「最後の方申し訳ないと思ってはいるけどできてないやつ出てきたな……俺さ、小さい頃からゲームっていうかテレビもなくてそういう経験? 子供の頃みんなやっているであろうことが本当にできてなくて……できればそういう子供時代を取り戻したいんだよね」
「隠し事なくてえらいじゃないですか。いいですよ。やりましょう。スマブラでも、アサガオの観察でもなんでも」
「わーい。楽しみだな」
「そしたら、元気にしてないとダメですからね」
「肝に銘じます」
 そういうことをちゃんと言葉にしないと、ホークスはフラフラとどこかに行ってしまいそうだから俺はホークスがここに居たくなりそうなことを並べ立てる。この人はどんなに親しい人であれ失う経験がありすぎて、執着が薄すぎるから自分の命すら軽んじるような言動が見受けられる。俺はそれを見るのがなんだか悲しくて、この人の速度を落とすようなことをしてしまう。
 それでも、執着しているものを分け与えるような信頼をされているのだと思うと、どこかに行ってしまう前に声くらいはかけてもらえるのかもしれないと自惚れてしまう。あんまり期待しないほうが良さそうだとは思うのだが。

私をうまく使ってくれるだけでいいのに。 #夢小説 #ヒロアカ #飯田天晴

私をうまく使ってくれるだけでいいのに。 #夢小説 #ヒロアカ #飯田天晴

 私の個性はエンジンの持久力を上げるための内燃機関。願ってもない個性だと思っていた。
 飯田家が個性婚をやっている、というのは誰の目にも明らかだった。けれど飯田家がそれを表明しなかったから誰も言及しなかった。轟家があんなふうになってしまってからも、何も言わずにしれっとヒーロー活動してる。兄のほうはもうヒーローとして使い物にならないし、もしかしたら子供に夢を託したりしちゃうかもって。
 
 だからちょっと期待しちゃった。
 
 私にも、インゲニウムとワンチャンあるかなって。
 
 でもそんなものなかった。飯田家はもうそういうのやめるんだって。こんなカス個性を引いてしまってから生きている価値を飯田家の個性婚に見出してるような私が悪いとでも言いたいのか、インゲニウムのサイドキックたちはあわれなものを見る目で私を見た。
「どうしたの」
「天晴さん」
 車椅子に乗った精悍な顔立ちの青年が不思議そうに見上げてくる。
 サイドキックの人がかいつまんで天晴さんに私のことを説明すると、明らかに顔が引き攣っているようだった。
 それもそうか。自分の種でうまいことやろうとしている女なんかふつうにキモいわ。ヒーローも人間だったってことか。知らなかった。
 それなのに天晴さんは、私に言葉を尽くして別の道で生きるように説得してくれた。個性だけが全てじゃないって。
 でもそれって、"持っている"側の感覚よね。お金、学歴、美貌なんかと同じで持ってる側はお金じゃないんだよ、とかいけしゃあしゃあと言ってのけるんだ。"持っていない"側の僻みなんか思いもよらない。
 
 そのままの君ていてほしい。
 太陽は太陽のままそこに輝くことに意味がある。そのすがたを手が届くなんて思いもしないくらい遠くから眺めて、あんなに綺麗なひとがいるんだから私も、と思わせてほしい。偶像崇拝に近いような感じかな。畳む

太陽のようなきみ #夢小説 #男夢主 #赤木晴子

太陽のようなきみ #夢小説 #男夢主 #赤木晴子

 桜木みたいな恥も外聞もなく好きだって言えるような奴の方が人生上手くいきそうだよな。
 
 そんな僻みっぽいやつだから、俺は晴子ちゃんに「ごめんね」されちゃったのかもしれない。涙も出てこない。見る目がないやつだな、と貶すこともできない。まだ好きだから。
 桜木はバスケットボールプレイヤーが好きだという晴子ちゃんの言葉通り、バスケを始めたらしい。
 そんな、そんなこと言うなら、俺だって小学校からずっとバスケやってるんだけどな。……プライドを晴子ちゃんのために投げ捨てて、愛を乞うこともできない俺だからダメだったのかも。結局俺は晴子ちゃんのことが好きだと感じていながらも自分が一番可愛くて大事なんだ。そういう、ずるさみたいなのが晴子ちゃんには見えていたのかもしれない。桜木にとっては、何百人ふられた後のたまたま晴子ちゃんなのかもしれないけど、俺はそうじゃない。俺の方がずっと前から好きだった。
 好き、が早いもの勝ちじゃないっていうのは俺が一番よくわかってるのにな。真夏の体育館で桜木のこと応援してる晴子ちゃんを横目に俺はバイトへ向かった。俺はたまたま、姉ちゃんがバスケ部のマネージャーしてるから差し入れって形にすれば晴子ちゃんの視界に入れるんだ。そうじゃなきゃ誰がバスケ部なんかに差し入れなんかするかよ。
 日差しが俺を責めるように差し込む。俺は悪くない。ただ、人を好きになっただけなんだ。

個性の証明 #カップリング #ヒロアカ #荼炎 #燈炎

個性の証明 #カップリング #ヒロアカ #荼炎 #燈炎


 西暦20XX年——ビルの光が空を覆い、人々が空を自由に駆けるようになっても、人権や個性がなくなっていない近未来。

「燈矢の体を捨てる……?」
「ええ、騙し騙しやってきましたけど、もう燈矢さんの体は限界なんです。ボロボロのまま焦凍さんと戦って、さらにボロボロになって、今までつぎはぎしてきましたけど、限界です」
「肉体を捨ててしまったら、燈矢はどうなるんです」
「そうですね。脳を機械の体に乗せましょう」
 お医者様がいうことは突飛なことに聞こえたが、国内で五つの症例があるという。脳を取り出して機械の脊髄や諸神経と繋ぎ、肉体が死んだとしても生きることができるという。燈矢は一度体調を崩してから二ヶ月意識がないのでは本人に確認できないので親である俺たちが決めれるという。
 冷は、生かしてやりたいという。
 例え死刑を待つ身であっても、目が動いて私とコミュニケーションをとることができていた燈矢をみすみす死なせてしまいたくはないという。
 俺は、決めかねていた。
 手術では個性を引き継ぐことはできないという。自らの個性に強くこだわり、指先すら動かせない体でもお父さんに俺の技を見てもらいたいんだとタッチパッドを使ってコミュニケーションをとった燈矢が、果たして個性を持たない自分を受け入れることができるだろうか。
 時間は予断を許さず、俺は疑問を持ちながらも燈矢の命を諦める決断はできなかった。
 手術は成功した。
 燈矢は肉体の死による死を免れ、医療によるメンテナンスを生涯必要とする体になった。
 夏雄が見舞いに行った時に目を覚ましたという燈矢は、指先を見つめては涙をこぼしたという。指先、それは最初に炎を灯した器官だと気づき、病室に急いだ。
 
「お父さん、俺」
「燈矢」
「本当に……何にもなくなっちゃった……」
「燈矢、お前はお前でいてくれるだけでいいんだ」
「俺は、お父さんに認められる俺以外を俺と認めてやれないよ」
「燈矢」
「お父さんならわかってくれると思った……個性がない自分を認めてやれない気持ちがさ……死刑になるために生かされたの? 俺」
「……燈矢、それは」
「もういいよ、バイバイ。お父さん。俺はお父さんが全てだったんだよ」
「と「もう帰って」
 
 それが永訣の別れとなるとは考えても見なかった。燈矢は死刑判決を受け、世間の声に押されて異例の早さで刑が執行された。頸部を縄で圧迫された跡が残った遺体が轟家に戻ってきた。
 燈矢は最後の食事をとらずに死刑に望んだらしい。自ら栄養を取らなくても生きながらえる体を忌まわしく思っていたらしく、体を壁にぶつけるなどの自傷が目立ったという。
 脳だけを燃やし、燈矢の骨壷に納めた。陶器の壺に収まった燈矢はまるで初めて抱いた時のように小さく、頼りなかった。
 
 『個性の証明』 完 

鯉のぼりばっかり景気がいい #ヒロアカ #カプなし #轟冬美

鯉のぼりばっかり景気がいい #ヒロアカ #カプなし #轟冬美

夏も焦凍もこの家には寄り付かないのにお父さんは、しぼんだ身体を折り曲げて金太郎人形を玄関に飾り、鯉のぼりをあげる。
この辺じゃいちばん大きな鯉のぼりだ。

健康を祈る男児はだれひとりここにはいないのに、鯉のぼりは風を受けて元気にはためいている。夏くんはゼミのみんなと飲み会、焦凍は学校、燈矢兄さんは刑務所。
この鯉のぼりを買った時は燈矢兄さんの初節句だという。その頃にはまさかこんなことになるなんて誰も想像してなかった。
あの、燈矢兄さんの罪の告白……
轟家の罪の告白を思い出すたびに冷や汗が出る。けどほんの少しだけ、うれしかった。燈矢兄さんが生きていてくれて。そして期待した。もしかしたら燈矢兄さんが焦凍を虐待するお父さんを止めてくれないかなって。私じゃできなかったことを燈矢兄さんなら叶えてくれるんじゃないかって。
でも現実はそううまくいかない。燈矢兄さんは燈矢兄さんのためだけに行動した。やっぱり私の中のわだかまりは私か解決するしかなさそうだ。
燈矢兄さんのための仏壇はあの時から閉まったままだ。たぶんお父さんがやった。生きている人間の菩提を弔っても仕方ないもんね。そういう時ばっかり、マメなんだから。

 お題:冬 #カップリング #ヒロアカ #荼炎 #燈炎

 お題:冬 #カップリング #ヒロアカ #荼炎 #燈炎

 夏は膿が止まらないけど、冬は肌というか、肌の下の筋組織が軋んで痛む。
 痛むからといってそれから逃れる術はなく、ただうーうーと、うめくことしかできない。
 お父さんは夏にできた膿を拭うより冬の肌の軋みの方が見ていてつらいらしい。前者は自分で膿をぬぐってやることができて、目に見えてそして行動として何かやったつもりになれるからいいのかもしれない。
 お父さんはじつに甲斐甲斐しく俺の世話を焼く。この1%でも俺の子供時代にしてくれていたらこんなことにはなってないはずなんだけど、後悔先に立たず。
 お父さんの罪であり、個性社会の膿であり、お父さんの後悔そのものである俺。ほんとはそんなふうに生まれてきたはずじゃなくて、焦凍とは性能が違うだけでSSRだったはずなんだよ。そうじゃなきゃ、あんなに焦凍やお父さんのことを追い詰めることはできなかっただろ。
 数々のifをかいくぐって、俺は今お父さんの負債としてこの家の畳のシミの範囲を広げることしかできない。
 どこで間違った?
 
 何がいけなかった。
 
 一緒に考えて、手を取り合って答えを出そう。この奇跡みたいな時間を使ってさ。俺のこと見てくれるんでしょ? それってほんとに、ただ見るだけの見る? 見て、聞いて、答えてくれる見るじゃなくて? 熱で風の音がして、よく聞こえないんだ……

お題:耳 #カップリング #ヒロアカ #荼炎 #燈炎

お題:耳 #カップリング #ヒロアカ #荼炎 #燈炎

 水の中で聞く人の声みたいに、どこかぼんやりとした音が耳に届く。聞こえるからと言って返事をするだけの声帯は焼け落ちてしまっているので、目の動きで文字入力ができる機械でお父さんと意思疎通をする。
 とはいえ細かいニュアンスまでは伝えきれない。そんな苛立ちをぶつけようにも身体はどこも動かない。
 身体中の水分が入れても入れても蒸発するのに、お父さんは俺の胃腸につながる管に水を切らさないようにどんなに遅い夜中だって欠かさず点検している。そんなこともうしなくていいよ、無駄だよって言ってもいいんだ、って言って俺の世話を焼いてお父さん自身がが気持ちよくなってるのをみたくないのにそれを伝えられず俺は横たわることしかできない。
 なんていうかこう、俺が無駄だからやめろって言っても俺のために何かしてくれるのがうれしくないワケじゃない。なんだけど、お父さんが俺を見る目が将来楽しみな息子、じゃなくて自分が世話をしなくては弱って死んでしまう可哀想な息子、になってるのが嫌なんだよな。
 ああ、あの戦いで死ねればよかった。こんな無様を晒すぐらいなら。

お題:はさみ #ヒロアカ が#カップリング #荼炎 #燈炎

お題:はさみ #ヒロアカ#カップリング #荼炎 #燈炎
 すーっと銀色の刃が俺を包む何重にもなった包帯を裂いてゆく。
 もう長く持たない俺のために、訪問看護の人が来てくれている。お父さんは何か言ってるみたいだけどジージーと耳鳴りがするだけで何も聞こえない。でも触れ方でわかる。こわごわと俺がいつ気が変わってここを火の海にしてしまわないかと触れる方が訪問看護師さん。で、素人のくせに扱いがぶきっちょで、俺の皮膚がずるりと剥けてしまったときにびくっ、と震えるのがお父さん。お母さんは、ひんやりとしてるから一番よくわかる。
 こんなになってまで、弱く守られるだけの俺に存在価値なんてあるのかな。
 少なくとも俺自身は今の俺のことものすごくみじめだと思う。お父さんは知ってか知らずか、俺が暑いと感じてほんの少し身じろぎをしただけで氷枕をあててくれている。こんなになるまでお父さんは俺のことを見なかったんだと思うと涙が出そうになるけど、こんなコゲコゲになってて涙なんか出るわけなじゃん。

泥の中でいっしょだよ #夢小説 #ヒロアカ #だいなま

泥の中でいっしょだよ #夢小説 #ヒロアカ #だいなま

 だいなまちゃんは、わたしを助けてくれたんだよ。
 
 “イギョウ”の人たちがおとうさんのしごとをうばってしまったと言って、いつもお家にいるようになった。わたしが学校からかえってくると、お父さんはお酒くさいいきを吐いて「うるせえ」とどなってカンを投げてくるようになった。
 わたしはおとうさんといっしょにいたくなくて、公えんに行った。だいなまちゃんはそこにいたんだ。
「ク?」
 くりくりおめめがかわいいだいなまちゃん。だいなまちゃんは「ひろってあげてください」とダンボール箱に入れられて、お腹がぐうぐうなっててかわいそうだった。わたしよりかわいそうなコを見つけてわたしは嬉しかった。わたしの手でも助けることができるコがいて、弱いだけの子どもじゃないんだって思えた。
 だいなまちゃんに、お母さんがくれたお昼ごはんのお金を使ってメロンパンを買ってあげた。わたしと半分こなのに、とっても喜んでくれた。「クソが! クソが!」っていう鳴き声が喜んでいるのかはわからないけど。
 だいなまちゃんはお家にはつれてかえれない。お父さんの気にさわるのはまちがいないから。さむい雨がふる中、泣いてすがるだいなまちゃんをふりはらっていくのは心がいたいけど、どうにもできなかった。うちのゴミ箱に入っていた古いセーターを入れたけど、温まりたいだけじゃないんだ。わたしも同じだからわかる。だれかにそばにいてほしいんだよね、だいなまちゃん。だいなまちゃんの小さなおててをにぎって、ごめんねと言ったけどだいなまちゃんは泣いていた。
 いつかだいなまちゃんが本当の家族……わたしみたいな弱い子供じゃない、だいなまちゃんのことを助けてくれる人がくるからね。それまでわたしが生きのびさせないと。運動会のバトンリレーみたいに次の人に渡せるように。

ifのない世界 #ヒロアカ #カップリング #荼炎 #燈炎

ifのない世界 #ヒロアカ #カップリング #荼炎 #燈炎

 僕の名前は、轟燈矢。
 お父さんと、お母さんと、僕の三人暮らし。仲の良いお父さんとお母さん、そしてその二人の唯一の宝である俺。何も欠けない幸せ。プロヒーローであるお父さんは過保護なくらい僕を気にしていて、ちょっと鬱陶しいくらい……
 
 
 
 だいたいわかってくるだよ。
 自分が見る夢の傾向が。
 あれだけのことをされていながら、俺はいつだってお父さんに必要とされたいと心のどこかで願っている。俺の個性に満足して次のガチャを回さないで、俺の性能が気に食わなかったからってボックスに閉じ込めないでと俺の中のかわいそうな子供が泣いている。俺はもう泣いてやれないから、他の方法で感情を表すしかない。例えば怒り。
 俺はこうして人を理不尽に焼いていれば、いつかお父さんが俺のこと見つけれくれるんじゃないかって思っていた。
 でも、いつからか期待は俺を苦しめるだけだとわかったので俺は俺のために人を殺すことにした。俺が強くなったと、俺の火力がより一層強力になったと証明するための試験紙としての、殺し。
 だから、捕まって人を殺したことへの謝罪をして欲しそうな時はどうしたらいいかわからなかった。悲しそうな顔をして、謝罪の言葉を並べたら幾分スッキリしたんだろうか。
 でもでも、俺が殺した人たちにお父さんがひどい中傷を受けていると聞いたときには、俺がしてきたことは結果的にお父さんを苛んでいるかと思うと目的を達成していると言えるのかもしれない。
 どんなやり方だったとしても、結果への道をあきらめない。そう、だって俺、努力《エンデヴァー》の息子だし。ね。

言葉になると形がわかる #ブルーロック #カップリング #ひおから

言葉になると形がわかる #ブルーロック #カップリング #ひおから

 分析だなんて、他人を解ったふうに上から眺めているだけでわかったつもりになっているのは滑稽なようでいて、少しだけ羨ましかった。
 でもね、こうして隣に立ってみたり敵同士になってピッチでぎちぎちにやり合わないとわからないこともあるんだってこと、烏くんが一番よく知っているはずなのに、僕が心の底にしまっておいた気持ちを取り出して僕に見せるんだろう。見たくないから、しまっておいたのに。
 この気持ちもそう。
 意識したくないから、しまっておいたのに。

永遠にならないふたり #ブルーロック #カップリング #ひおから

永遠にならないふたり #ブルーロック #カップリング #ひおから
 旅人、なんて名前がついているくらいだから他人に対しての強い執着がなく、言うなればドライな人だった。僕にアドバイスじみたことを言ったかと思えば、ふらりとどこかへ消えた。消えては、現れ、僕に構ったり無言でボールを蹴って寄越しては言葉を交わすことなく語り合った。

 僕たちみたいにサッカーをする奴は、サッカーをすることで通じ合えることがある。言葉にしないとわからないこともあるけど、言葉にしなくてもわかることがある。例えば、僕のサッカーへの興味の薄さはすぐに感じ取られてしまった。
 バンビ大阪ユースは、未来のサッカープレイヤーを夢見てサッカーが大好きな人ばかりだ。そんな中で、他人と違う気持ちを抱いていたのだから行動に現れたのかもしれない。烏くんからそのことを言及されて湧いた感情は、一番近い言葉を使うなら……安心というものがふさわしい。やっと自分の中で言葉にできずわだかまっていた感情が言葉になった瞬間だった。形のないもやが自分の中にあるより、誰かが使い古した言葉にしたほうが腹落ちする。まだ完全に理解したとは言えないけど、烏くんが僕の世界に色をつけたのは確かだった。
 烏くんにとっては何気ない一瞬なのだろうけど、僕は深く楔を打ったみたいに永遠になってしまった。自分への期待というものが掴めないまま、烏くんと相対することになりそうだ。言葉を交わさなくてもいい、プレーで見せるから。結果を期待するのは苦手だけど、新しい自分に出会えそうで少しだけ、わくわくしてる。

天より高く海より深い愛 #ヒロアカ #カップリング #荼炎 #燈炎

天より高く海より深い愛 #ヒロアカ #カップリング #荼炎 #燈炎

 夏は燈矢の瑕から膿が止まらない。
 時には肉が縫い目から剥がれて落ちていることすらある。固形物を食べているところを見たことがない。さまざまな要因から、燈矢はもう長くないということを思い知らされる。燈矢もそれがわかっているらしく、刑罰の一種として個性を抑制させる薬をわざと飲まずにおいて、俺を焼き殺そうとする。
 一度憎んだ父親が甲斐甲斐しく介護をするのは嫌なのだろう。けれど冷や冬美、夏雄や焦凍にも危害を加えてしまったらそれこそ取り返しがつかない。だからこうして俺の命だけで勘弁してもらおうという腹だ。
 そんな浅はかな計略はとっくに見抜かれているらしく、燈矢は俺がどれだけ献身的に世話をしようと、話しかけようとも反応は剣呑なものだった。
「お父さん、俺が早く死ねばいいって思ってるだろ」
「そんなこと思わない。燈矢、俺を信じろ」
「信じろ? 信じて、捨てただろ」
「捨てたわけじゃ」
「結果的に捨ててんの。焦凍が生まれるまでに生んだ命すべてに謝れ」
「燈矢、俺は」
「うるせえッ!!」
 罵声ともに、蒼炎が上がる。燈矢の居室はどれだけ塗り直しても焦げが絶えることはない。最初こそ塗り直していたが、有機溶剤に引火してからはそのままにしている。いっそこの炎に巻かれてしまったら燈矢は気分がスッキリするだろうかなんて考えて炎に触れようとしたら、ふっ、と炎は消えた。
「死ぬぞ」
「……」
「お父さん、お前は生きて償い続けないといけない。死ぬなんて、俺が許さない。俺が死んでも、死ぬな。後追いなんかして楽になろうとするなよ」
「わかっている、わかっているが……」
「どうしても辛くて、生きていたくないなら……その時は俺が殺してやるよ」
 燈矢は、修行をせがんで俺の手を引いていた時と同じ笑顔でそう言った。
 
  
 2022/7/29

DABI NEVER DIE! #ヒロアカ #カップリング #荼炎 #燈炎

DABI NEVER DIE! #ヒロアカ #カップリング #荼炎 #燈炎
 人はいつ死ぬのか。
 お父さんにたんまりかけたガソリンの臭さに辟易しながらも、俺はそんなことを考えた。病院には、たくさんの死にかけた人間たちのうめきで満たされていて、そのどれもが生きてはいなかった。俺もその一員となってうめきの波間に揺られていたんだけど、俺はこんなふうに死にたくないと思って一念発起して今は思い出の瀬古渡にいる。
 俺はそうだなあ……俺の次の子ガチャが回された時、お母さんが次の子供を妊娠したと知った時死んでしまったんだと思う。俺を見限って俺があこがれた世界から遠ざけられなんの面白みもない人生を歩めといわれた時に……そして……焦凍が生まれて俺の息の根は止まってしまった。
 お父さんはいつ死ぬのか。
 俺が今少しでも火を出してしまえばお父さんは火だるまになって死んでしまうんだけど、そうじゃない。お父さんは俺が殺した。荼毘が全世界に向けてお父さんの非道を晒してしまったことで、ヒーローとしてのお父さんは死んでしまった。
 俺が殺してしまったのだと気づいた時、感じていたのは脳を突くよろこびと虚しさだった。守るはずの民衆から唾はかれて罵声を浴びせられ、ザマアミロ、俺を蔑ろにするからそんな目に遭うんだと思ったけどよろこびは風船がしぼんでいくみたいに小さくなっていった。俺はお父さんをどうしたかったんだろう。一人で修行した成果を見て欲しかったのかな。お父さんが焦凍じゃなくて俺を選んで教育し直すっていう夢はたくさん見たけど、それが俺の深層心理だなんて信じたくない。
 ガソリンが鼻に入ってしまったらしくむせているけど口はガムテープで塞がっていて苦しそうにもぞもぞしているお父さん。情けなくて、かわいそう。俺はお父さんのでかいケツを蹴り飛ばして天を仰いだ。月のないいい夜だ。さぞお父さんを燃やした炎がうつくしく映えるだろう。
 しばらく、酒を飲みながらガソリンまみれのお父さんを眺めていた。
 抵抗するそぶりは見せなかった。黙って横になって、まるで点火を待っているかのようだった。憎しみで、怒りでいっぱいだった俺なら迷いなくつけただろうけど、今の俺はなんだか頭がぼんやり霧がかかったようにまとまらない。
 死んでしまったらこの世で受ける罰は全て放り投げて逝けると思っているのだろうか。そうだったら、悔しい。お父さんの罪の具現である俺が生きてるのに、罪を犯した張本人が死んで楽になってどうするんだよ。俺は思い直して公園の水道までお父さんを引きずっていき、石鹸で雑に洗い流した。
「許してくれるのか……?」
「んなわけねーだろボケが。生きて罪をすすげ」
「復讐を果たした方が燈矢の気が晴れるかと思ったが」
「俺は、今の気分はそうじゃなかった。今後殺したくなった時は殺されて」
「……わかった」
「生きてる方が苦しいことだってあるから。俺はそれを見て気を晴らすよ」
「そうか……」
「今日は帰ろう」
 そう言って、お父さんお抱えの運転手さんに来てもらって家に帰った。ガソリン臭いお父さんを車に迎え入れても何も言及しないあたりプロだなあって思う。びしょ濡れで何処か虚な目をして外を見ているお父さんが可愛くって、ほんとゾクゾクしちゃった。サイコーすぎる!もっとやろう!


2022/11/6

洗モル中… #モルカー #夢小説

洗モル中… #モルカー #夢小説

 機械の洗車もいいけど、わたしは断然手洗い派だ。洗車中じっとしているわけじゃないから全身ずぶ濡れは確定だし、それなりの大きさ、毛並みがあるから大変な作業ではあるんだけども終わった後のふわふわ感は機械には敵わない。と信じたい。
「プリンちゃん、シャワーだよ」
「ぷい」
 プリンと名付けたモルカーは、名前に恥じる墨色をしている。この前キャンプにいったときに落ち葉にはしゃいでしまい全身で土に向かってごろんごろんと転げていたのだから納得の汚れ具合だ。
 プリンちゃんはそれなりにシャワーというものがわかってきたのか、ブラッシングの際も大人しくお腹を地面にくっつけてやりやすいようにしてくれる……のは最初の五分間だけなのでおやつ代わりのお野菜をたくさん持ち込む。
 お湯をかけて洗剤を泡立てていくのだが、寒がらないように手早く済まさないと逃げたりすねたりしてしまう。モコモコの泡に包まれたプリンちゃんはうっとりするくらいかわいいのだけど、写真なんか撮ってたら早くしろーっ!ってぷいぷい泡ぶくを飛ばして来るから懸命に洗うに専念する。
 最後にお湯をかけている時は気持ちよさそうで、眠たそうだ。大抵洗車のあとは眠っている。ぷいぷい言いながら。
 ドライヤーは音が苦手らしくちょっとプルプル震えている。でもこの工程を省くわけにはいかないのでニンジンをひとかけらあげた。夢中になってカリポリカリポリかじってる間に乾かすと、フンワリ……フカフカのモルカーが一体……
「プリンちゃんが一番かわいいよ」
「ぷ」
 知らんよ、なのかわかってるよ、なのか知る由もない。プリンちゃんはいま世界で一番フカフカなモルカーであることは間違いない。汚れがちなお腹の毛だってもぐりこんで洗ったからもうモッフモフだ。かわいいプリンちゃん。ずっと一緒にいてね。

2021/1/21

あたたかなひとみ #モルカー #夢小説

あたたかなひとみ #モルカー #夢小説

「やばい、もう燃料がない」
 うっかりしているとないもの。モルカーの燃料。
 メーターを見てびっくりしたけどすぐ先にお野菜スタンドがあって安心した。スーパーで買えるような人間用の野菜を与えてもいいけど、大きさの問題でコスパが悪すぎるからモルカー用の野菜を売っているモルカースタンドに寄る。
「レタス入ってるといいねえ」
 基本的に三千円分、二千円分くらいの区分けがあって中身の野菜は選べない。ヌヌヌと千円札を三枚飲み込んだお野菜コーナーは、コーヒーの自販機のようにカゴを下に置いておくとドカドカとお野菜が落ちてくる仕組みだ。
 レタスとニンジンと小松菜。まあまあ悪くない取り合わせだ。停車中のプリンちゃんも車輪?前腕?をモルモル回して早くレタスをよこせよこせと言っている。ような気がする。
「今度はどこにいこうか」
「ぷいぷい」
 どこでもいいよ、なのかモルカーも入れるという温泉、モル湯につかりたいから箱根がいいなのか、海が見たいから茅ヶ崎にいこうなのかわからないけど、どこにいくにもプリンちゃんと一緒だ。そんなこと知らない風のプリンちゃんはうれしそうにカリポリしている。
「おいしい?」
「ぷい」
 黒豆のようなつやつやした瞳がスタンドの灯りに照らされてさらにつやめいている気がする。せわしなく動くほっぺとお口だけが音を作っている。


2021/1/21

俺だけが目覚めない夢 #ヒロアカ #夢小説 #女夢主 #心操人使

俺だけが目覚めない夢 #ヒロアカ #夢小説 #女夢主 #心操人使

 あの時、個性を使ってでも行くなと言ってしまえてたらよかったのか。何度自問しても答えは出ない。答えを持つ人は桐の棺に収まって目を閉じている。俺が人のために個性を使いたいというのだから使うべきじゃないというだろうか、それとも。いつもはそんなこと自分で答えを出すのに、この線香のにおいと念仏のようなものを聞き流していると正常な判断が失われてしまうような気がする。
 死と隣り合わせだなんて座学でも実践でも学んだから理解したつもりでいた。けれど学びはどこまでも学びで、背中に這い寄る冷たさに似た焦燥が脳に満ちてやっと実感が湧いてきた。ああ、ナマエ、死んじゃったのかと。
 顔だけ四角い窓から出している理由を誰も聞かない。見せられないような状態になってしまったのだろうと容易に想像がつくのだ。クラスメイトの誰もが縁者を亡くしている。そのうちの誰かがひどい死に方をしたのなら想像がつくのだろう。
 クラスメイトのだれもが帰ってしまって、親族しかいない式場で通夜振る舞いに呼ばれた。あなたはナマエちゃんの何だったのと当然聞かれた。お付き合いさせていただいていましたというと口々に慰めの言葉をかけられた。親族の方だってつらいだろうに、なぜ半年と少し付き合ったくらいの俺にやさしくできるんだろう。

 半年と少し。
 自分で数えてあまりの短さに呆気に取られてしまう。そんなに短かっただろうか。あんなにまぶしくて、夢みたいな日々がそんなに、短かっただろうか。
 俺だけが夢から覚めてここにいるみたいだ。
 
 
 ヴィランとの戦争が本格化して壊されやすい墓をたてる風習が下火となって、代わりに開発されたのが遺骨の炭素をダイヤモンドにする技術だった。
 遺骨ぐらいの炭素じゃそんなに大きな粒ができるわけではないので、ナマエのご両親がご厚意で下さった石はほんの爪先程度だった。それでもうれしかった。死んでしまってもこの燕脂色をしたベルベットの箱を見るだけでも思い出せる。仕事の都合上身につけることはできないことが残念だけど、時には一人の時間も必要ってことで。
 寮生活の時はナマエだったダイヤにいってきますとただいまを言っていたら同室のやつに怖がられてしまったので、一人暮らしになった今、堂々と言える。
「いってきます。ナマエ」
 返事はない。
 さやさやと揺れるカーテンの向こうに、電車を待つ駅のホームに。そんなところにいるはずもないのに探してしまう、という歌があったが、無意識のうちに探してしまう。
 そんなことをしていると知ったらナマエは笑うだろうけど、置いていかれるということはそういうことなんだとやり返すつもりだ。俺がもっと爺さんになって、俺だとわからないくらいにヨボヨボになってから。


2022/7/28