永遠にならないふたり #ブルーロック #カップリング #ひおから
 旅人、なんて名前がついているくらいだから他人に対しての強い執着がなく、言うなればドライな人だった。僕にアドバイスじみたことを言ったかと思えば、ふらりとどこかへ消えた。消えては、現れ、僕に構ったり無言でボールを蹴って寄越しては言葉を交わすことなく語り合った。

 僕たちみたいにサッカーをする奴は、サッカーをすることで通じ合えることがある。言葉にしないとわからないこともあるけど、言葉にしなくてもわかることがある。例えば、僕のサッカーへの興味の薄さはすぐに感じ取られてしまった。
 バンビ大阪ユースは、未来のサッカープレイヤーを夢見てサッカーが大好きな人ばかりだ。そんな中で、他人と違う気持ちを抱いていたのだから行動に現れたのかもしれない。烏くんからそのことを言及されて湧いた感情は、一番近い言葉を使うなら……安心というものがふさわしい。やっと自分の中で言葉にできずわだかまっていた感情が言葉になった瞬間だった。形のないもやが自分の中にあるより、誰かが使い古した言葉にしたほうが腹落ちする。まだ完全に理解したとは言えないけど、烏くんが僕の世界に色をつけたのは確かだった。
 烏くんにとっては何気ない一瞬なのだろうけど、僕は深く楔を打ったみたいに永遠になってしまった。自分への期待というものが掴めないまま、烏くんと相対することになりそうだ。言葉を交わさなくてもいい、プレーで見せるから。結果を期待するのは苦手だけど、新しい自分に出会えそうで少しだけ、わくわくしてる。