DABI NEVER DIE! #ヒロアカ #カップリング #荼炎 #燈炎
人はいつ死ぬのか。
お父さんにたんまりかけたガソリンの臭さに辟易しながらも、俺はそんなことを考えた。病院には、たくさんの死にかけた人間たちのうめきで満たされていて、そのどれもが生きてはいなかった。俺もその一員となってうめきの波間に揺られていたんだけど、俺はこんなふうに死にたくないと思って一念発起して今は思い出の瀬古渡にいる。
俺はそうだなあ……俺の次の子ガチャが回された時、お母さんが次の子供を妊娠したと知った時死んでしまったんだと思う。俺を見限って俺があこがれた世界から遠ざけられなんの面白みもない人生を歩めといわれた時に……そして……焦凍が生まれて俺の息の根は止まってしまった。
お父さんはいつ死ぬのか。
俺が今少しでも火を出してしまえばお父さんは火だるまになって死んでしまうんだけど、そうじゃない。お父さんは俺が殺した。荼毘が全世界に向けてお父さんの非道を晒してしまったことで、ヒーローとしてのお父さんは死んでしまった。
俺が殺してしまったのだと気づいた時、感じていたのは脳を突くよろこびと虚しさだった。守るはずの民衆から唾はかれて罵声を浴びせられ、ザマアミロ、俺を蔑ろにするからそんな目に遭うんだと思ったけどよろこびは風船がしぼんでいくみたいに小さくなっていった。俺はお父さんをどうしたかったんだろう。一人で修行した成果を見て欲しかったのかな。お父さんが焦凍じゃなくて俺を選んで教育し直すっていう夢はたくさん見たけど、それが俺の深層心理だなんて信じたくない。
ガソリンが鼻に入ってしまったらしくむせているけど口はガムテープで塞がっていて苦しそうにもぞもぞしているお父さん。情けなくて、かわいそう。俺はお父さんのでかいケツを蹴り飛ばして天を仰いだ。月のないいい夜だ。さぞお父さんを燃やした炎がうつくしく映えるだろう。
しばらく、酒を飲みながらガソリンまみれのお父さんを眺めていた。
抵抗するそぶりは見せなかった。黙って横になって、まるで点火を待っているかのようだった。憎しみで、怒りでいっぱいだった俺なら迷いなくつけただろうけど、今の俺はなんだか頭がぼんやり霧がかかったようにまとまらない。
死んでしまったらこの世で受ける罰は全て放り投げて逝けると思っているのだろうか。そうだったら、悔しい。お父さんの罪の具現である俺が生きてるのに、罪を犯した張本人が死んで楽になってどうするんだよ。俺は思い直して公園の水道までお父さんを引きずっていき、石鹸で雑に洗い流した。
「許してくれるのか……?」
「んなわけねーだろボケが。生きて罪をすすげ」
「復讐を果たした方が燈矢の気が晴れるかと思ったが」
「俺は、今の気分はそうじゃなかった。今後殺したくなった時は殺されて」
「……わかった」
「生きてる方が苦しいことだってあるから。俺はそれを見て気を晴らすよ」
「そうか……」
「今日は帰ろう」
そう言って、お父さんお抱えの運転手さんに来てもらって家に帰った。ガソリン臭いお父さんを車に迎え入れても何も言及しないあたりプロだなあって思う。びしょ濡れで何処か虚な目をして外を見ているお父さんが可愛くって、ほんとゾクゾクしちゃった。サイコーすぎる!もっとやろう!
2022/11/6
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夢とカプが混在しています/#夢小説 タグと#カップリング タグをつけていますので、よきに計らっていただけますと幸いです
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みやこ 成人/神奈川への望郷の念が強い
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2023年3月13日の投稿[8件]
洗モル中… #モルカー #夢小説
洗モル中… #モルカー #夢小説
機械の洗車もいいけど、わたしは断然手洗い派だ。洗車中じっとしているわけじゃないから全身ずぶ濡れは確定だし、それなりの大きさ、毛並みがあるから大変な作業ではあるんだけども終わった後のふわふわ感は機械には敵わない。と信じたい。
「プリンちゃん、シャワーだよ」
「ぷい」
プリンと名付けたモルカーは、名前に恥じる墨色をしている。この前キャンプにいったときに落ち葉にはしゃいでしまい全身で土に向かってごろんごろんと転げていたのだから納得の汚れ具合だ。
プリンちゃんはそれなりにシャワーというものがわかってきたのか、ブラッシングの際も大人しくお腹を地面にくっつけてやりやすいようにしてくれる……のは最初の五分間だけなのでおやつ代わりのお野菜をたくさん持ち込む。
お湯をかけて洗剤を泡立てていくのだが、寒がらないように手早く済まさないと逃げたりすねたりしてしまう。モコモコの泡に包まれたプリンちゃんはうっとりするくらいかわいいのだけど、写真なんか撮ってたら早くしろーっ!ってぷいぷい泡ぶくを飛ばして来るから懸命に洗うに専念する。
最後にお湯をかけている時は気持ちよさそうで、眠たそうだ。大抵洗車のあとは眠っている。ぷいぷい言いながら。
ドライヤーは音が苦手らしくちょっとプルプル震えている。でもこの工程を省くわけにはいかないのでニンジンをひとかけらあげた。夢中になってカリポリカリポリかじってる間に乾かすと、フンワリ……フカフカのモルカーが一体……
「プリンちゃんが一番かわいいよ」
「ぷ」
知らんよ、なのかわかってるよ、なのか知る由もない。プリンちゃんはいま世界で一番フカフカなモルカーであることは間違いない。汚れがちなお腹の毛だってもぐりこんで洗ったからもうモッフモフだ。かわいいプリンちゃん。ずっと一緒にいてね。
2021/1/21
機械の洗車もいいけど、わたしは断然手洗い派だ。洗車中じっとしているわけじゃないから全身ずぶ濡れは確定だし、それなりの大きさ、毛並みがあるから大変な作業ではあるんだけども終わった後のふわふわ感は機械には敵わない。と信じたい。
「プリンちゃん、シャワーだよ」
「ぷい」
プリンと名付けたモルカーは、名前に恥じる墨色をしている。この前キャンプにいったときに落ち葉にはしゃいでしまい全身で土に向かってごろんごろんと転げていたのだから納得の汚れ具合だ。
プリンちゃんはそれなりにシャワーというものがわかってきたのか、ブラッシングの際も大人しくお腹を地面にくっつけてやりやすいようにしてくれる……のは最初の五分間だけなのでおやつ代わりのお野菜をたくさん持ち込む。
お湯をかけて洗剤を泡立てていくのだが、寒がらないように手早く済まさないと逃げたりすねたりしてしまう。モコモコの泡に包まれたプリンちゃんはうっとりするくらいかわいいのだけど、写真なんか撮ってたら早くしろーっ!ってぷいぷい泡ぶくを飛ばして来るから懸命に洗うに専念する。
最後にお湯をかけている時は気持ちよさそうで、眠たそうだ。大抵洗車のあとは眠っている。ぷいぷい言いながら。
ドライヤーは音が苦手らしくちょっとプルプル震えている。でもこの工程を省くわけにはいかないのでニンジンをひとかけらあげた。夢中になってカリポリカリポリかじってる間に乾かすと、フンワリ……フカフカのモルカーが一体……
「プリンちゃんが一番かわいいよ」
「ぷ」
知らんよ、なのかわかってるよ、なのか知る由もない。プリンちゃんはいま世界で一番フカフカなモルカーであることは間違いない。汚れがちなお腹の毛だってもぐりこんで洗ったからもうモッフモフだ。かわいいプリンちゃん。ずっと一緒にいてね。
2021/1/21
あたたかなひとみ #モルカー #夢小説
あたたかなひとみ #モルカー #夢小説
「やばい、もう燃料がない」
うっかりしているとないもの。モルカーの燃料。
メーターを見てびっくりしたけどすぐ先にお野菜スタンドがあって安心した。スーパーで買えるような人間用の野菜を与えてもいいけど、大きさの問題でコスパが悪すぎるからモルカー用の野菜を売っているモルカースタンドに寄る。
「レタス入ってるといいねえ」
基本的に三千円分、二千円分くらいの区分けがあって中身の野菜は選べない。ヌヌヌと千円札を三枚飲み込んだお野菜コーナーは、コーヒーの自販機のようにカゴを下に置いておくとドカドカとお野菜が落ちてくる仕組みだ。
レタスとニンジンと小松菜。まあまあ悪くない取り合わせだ。停車中のプリンちゃんも車輪?前腕?をモルモル回して早くレタスをよこせよこせと言っている。ような気がする。
「今度はどこにいこうか」
「ぷいぷい」
どこでもいいよ、なのかモルカーも入れるという温泉、モル湯につかりたいから箱根がいいなのか、海が見たいから茅ヶ崎にいこうなのかわからないけど、どこにいくにもプリンちゃんと一緒だ。そんなこと知らない風のプリンちゃんはうれしそうにカリポリしている。
「おいしい?」
「ぷい」
黒豆のようなつやつやした瞳がスタンドの灯りに照らされてさらにつやめいている気がする。せわしなく動くほっぺとお口だけが音を作っている。
2021/1/21
「やばい、もう燃料がない」
うっかりしているとないもの。モルカーの燃料。
メーターを見てびっくりしたけどすぐ先にお野菜スタンドがあって安心した。スーパーで買えるような人間用の野菜を与えてもいいけど、大きさの問題でコスパが悪すぎるからモルカー用の野菜を売っているモルカースタンドに寄る。
「レタス入ってるといいねえ」
基本的に三千円分、二千円分くらいの区分けがあって中身の野菜は選べない。ヌヌヌと千円札を三枚飲み込んだお野菜コーナーは、コーヒーの自販機のようにカゴを下に置いておくとドカドカとお野菜が落ちてくる仕組みだ。
レタスとニンジンと小松菜。まあまあ悪くない取り合わせだ。停車中のプリンちゃんも車輪?前腕?をモルモル回して早くレタスをよこせよこせと言っている。ような気がする。
「今度はどこにいこうか」
「ぷいぷい」
どこでもいいよ、なのかモルカーも入れるという温泉、モル湯につかりたいから箱根がいいなのか、海が見たいから茅ヶ崎にいこうなのかわからないけど、どこにいくにもプリンちゃんと一緒だ。そんなこと知らない風のプリンちゃんはうれしそうにカリポリしている。
「おいしい?」
「ぷい」
黒豆のようなつやつやした瞳がスタンドの灯りに照らされてさらにつやめいている気がする。せわしなく動くほっぺとお口だけが音を作っている。
2021/1/21
俺だけが目覚めない夢 #ヒロアカ #夢小説 #女夢主 #心操人使
俺だけが目覚めない夢 #ヒロアカ #夢小説 #女夢主 #心操人使
あの時、個性を使ってでも行くなと言ってしまえてたらよかったのか。何度自問しても答えは出ない。答えを持つ人は桐の棺に収まって目を閉じている。俺が人のために個性を使いたいというのだから使うべきじゃないというだろうか、それとも。いつもはそんなこと自分で答えを出すのに、この線香のにおいと念仏のようなものを聞き流していると正常な判断が失われてしまうような気がする。
死と隣り合わせだなんて座学でも実践でも学んだから理解したつもりでいた。けれど学びはどこまでも学びで、背中に這い寄る冷たさに似た焦燥が脳に満ちてやっと実感が湧いてきた。ああ、ナマエ、死んじゃったのかと。
顔だけ四角い窓から出している理由を誰も聞かない。見せられないような状態になってしまったのだろうと容易に想像がつくのだ。クラスメイトの誰もが縁者を亡くしている。そのうちの誰かがひどい死に方をしたのなら想像がつくのだろう。
クラスメイトのだれもが帰ってしまって、親族しかいない式場で通夜振る舞いに呼ばれた。あなたはナマエちゃんの何だったのと当然聞かれた。お付き合いさせていただいていましたというと口々に慰めの言葉をかけられた。親族の方だってつらいだろうに、なぜ半年と少し付き合ったくらいの俺にやさしくできるんだろう。
半年と少し。
自分で数えてあまりの短さに呆気に取られてしまう。そんなに短かっただろうか。あんなにまぶしくて、夢みたいな日々がそんなに、短かっただろうか。
俺だけが夢から覚めてここにいるみたいだ。
ヴィランとの戦争が本格化して壊されやすい墓をたてる風習が下火となって、代わりに開発されたのが遺骨の炭素をダイヤモンドにする技術だった。
遺骨ぐらいの炭素じゃそんなに大きな粒ができるわけではないので、ナマエのご両親がご厚意で下さった石はほんの爪先程度だった。それでもうれしかった。死んでしまってもこの燕脂色をしたベルベットの箱を見るだけでも思い出せる。仕事の都合上身につけることはできないことが残念だけど、時には一人の時間も必要ってことで。
寮生活の時はナマエだったダイヤにいってきますとただいまを言っていたら同室のやつに怖がられてしまったので、一人暮らしになった今、堂々と言える。
「いってきます。ナマエ」
返事はない。
さやさやと揺れるカーテンの向こうに、電車を待つ駅のホームに。そんなところにいるはずもないのに探してしまう、という歌があったが、無意識のうちに探してしまう。
そんなことをしていると知ったらナマエは笑うだろうけど、置いていかれるということはそういうことなんだとやり返すつもりだ。俺がもっと爺さんになって、俺だとわからないくらいにヨボヨボになってから。
2022/7/28
あの時、個性を使ってでも行くなと言ってしまえてたらよかったのか。何度自問しても答えは出ない。答えを持つ人は桐の棺に収まって目を閉じている。俺が人のために個性を使いたいというのだから使うべきじゃないというだろうか、それとも。いつもはそんなこと自分で答えを出すのに、この線香のにおいと念仏のようなものを聞き流していると正常な判断が失われてしまうような気がする。
死と隣り合わせだなんて座学でも実践でも学んだから理解したつもりでいた。けれど学びはどこまでも学びで、背中に這い寄る冷たさに似た焦燥が脳に満ちてやっと実感が湧いてきた。ああ、ナマエ、死んじゃったのかと。
顔だけ四角い窓から出している理由を誰も聞かない。見せられないような状態になってしまったのだろうと容易に想像がつくのだ。クラスメイトの誰もが縁者を亡くしている。そのうちの誰かがひどい死に方をしたのなら想像がつくのだろう。
クラスメイトのだれもが帰ってしまって、親族しかいない式場で通夜振る舞いに呼ばれた。あなたはナマエちゃんの何だったのと当然聞かれた。お付き合いさせていただいていましたというと口々に慰めの言葉をかけられた。親族の方だってつらいだろうに、なぜ半年と少し付き合ったくらいの俺にやさしくできるんだろう。
半年と少し。
自分で数えてあまりの短さに呆気に取られてしまう。そんなに短かっただろうか。あんなにまぶしくて、夢みたいな日々がそんなに、短かっただろうか。
俺だけが夢から覚めてここにいるみたいだ。
ヴィランとの戦争が本格化して壊されやすい墓をたてる風習が下火となって、代わりに開発されたのが遺骨の炭素をダイヤモンドにする技術だった。
遺骨ぐらいの炭素じゃそんなに大きな粒ができるわけではないので、ナマエのご両親がご厚意で下さった石はほんの爪先程度だった。それでもうれしかった。死んでしまってもこの燕脂色をしたベルベットの箱を見るだけでも思い出せる。仕事の都合上身につけることはできないことが残念だけど、時には一人の時間も必要ってことで。
寮生活の時はナマエだったダイヤにいってきますとただいまを言っていたら同室のやつに怖がられてしまったので、一人暮らしになった今、堂々と言える。
「いってきます。ナマエ」
返事はない。
さやさやと揺れるカーテンの向こうに、電車を待つ駅のホームに。そんなところにいるはずもないのに探してしまう、という歌があったが、無意識のうちに探してしまう。
そんなことをしていると知ったらナマエは笑うだろうけど、置いていかれるということはそういうことなんだとやり返すつもりだ。俺がもっと爺さんになって、俺だとわからないくらいにヨボヨボになってから。
2022/7/28
うつくしくない愛 #ヒロアカ #夢小説 #女夢主 #治崎廻
うつくしくない愛 #ヒロアカ #夢小説 #女夢主 #治崎廻
治崎は、潔癖症だったのだと思う。
思う、と断定できないのは本人の口から聞いたわけではないからだ。本人は人が無許可で消毒もせず触れ合う方がおかしいと言っていた。それはそれで本人の世界の中では正しいことなので言及しないでいたが、私にも消毒を強要し、私に触れようもんなら私の体を隅からすみまで消毒しようとし、それが終わってやっと触れようというものだから辟易した。デリケートゾーンを消毒液で浸される苦しみは言葉を失ってしまうが、当の本人は慣れたとかなんとかで苦に思ってないのでやめてもらえない。クソみたいなやつだったけど、噂には、腕もなく頭も多少おかしくなっていると聞いてバチが当たったんだとうれしくなった。
名前は知らないけど、治崎の悪行に個性を利用されてしまった女の子がいたらしい。その子を手懐けるために私を利用しようと思ったこともあったらしく、母親の真似事をしろと命じられたこともあった。当然、拒否したが背中に拳銃のつめたさを感じてしまうとどうにもできなかった。そんなことは言い訳だと強くただしい人は私を非難するかもしれない。命が脅かされてなくて、優しくて、強い力を持った人。わたしはそんな人が羨ましくてたまらなかった。靴を舐め、媚びへつらうような生き方しかできないのだ。弱く生まれ弱く育つと。
その女の子は私に多少懐いて、本当の両親のことなどを話してくれたが、それっきりだった。
何の役にも立たないと叱責しながらも、それでも治崎は私に優しく触れた。それだけのことなのに忘れたくとも忘れられない。優しくて頼れる夫に恵まれて、何不自由なく生活をしているのに路地裏で狂ったように笑う治崎を見つけて足早に駆け寄った。
「治崎」
「あ? ナマエかあ。お前がオヤジを隠してるのか?」
「……なわけないでしょ」
「なら用はない。消えろ」
けたけた笑う治崎の頭を思い切り蹴飛ばして逃げた。怒声が背中に刺さり、あのころの習性で身を屈めたくなるが、持っていたペットボトルを投げ、ぽこんという間抜けな音を立てて当たるのを見た。
さよなら治崎、サイテーな男。願わくばさっさと死ね。
2022/7/10
治崎は、潔癖症だったのだと思う。
思う、と断定できないのは本人の口から聞いたわけではないからだ。本人は人が無許可で消毒もせず触れ合う方がおかしいと言っていた。それはそれで本人の世界の中では正しいことなので言及しないでいたが、私にも消毒を強要し、私に触れようもんなら私の体を隅からすみまで消毒しようとし、それが終わってやっと触れようというものだから辟易した。デリケートゾーンを消毒液で浸される苦しみは言葉を失ってしまうが、当の本人は慣れたとかなんとかで苦に思ってないのでやめてもらえない。クソみたいなやつだったけど、噂には、腕もなく頭も多少おかしくなっていると聞いてバチが当たったんだとうれしくなった。
名前は知らないけど、治崎の悪行に個性を利用されてしまった女の子がいたらしい。その子を手懐けるために私を利用しようと思ったこともあったらしく、母親の真似事をしろと命じられたこともあった。当然、拒否したが背中に拳銃のつめたさを感じてしまうとどうにもできなかった。そんなことは言い訳だと強くただしい人は私を非難するかもしれない。命が脅かされてなくて、優しくて、強い力を持った人。わたしはそんな人が羨ましくてたまらなかった。靴を舐め、媚びへつらうような生き方しかできないのだ。弱く生まれ弱く育つと。
その女の子は私に多少懐いて、本当の両親のことなどを話してくれたが、それっきりだった。
何の役にも立たないと叱責しながらも、それでも治崎は私に優しく触れた。それだけのことなのに忘れたくとも忘れられない。優しくて頼れる夫に恵まれて、何不自由なく生活をしているのに路地裏で狂ったように笑う治崎を見つけて足早に駆け寄った。
「治崎」
「あ? ナマエかあ。お前がオヤジを隠してるのか?」
「……なわけないでしょ」
「なら用はない。消えろ」
けたけた笑う治崎の頭を思い切り蹴飛ばして逃げた。怒声が背中に刺さり、あのころの習性で身を屈めたくなるが、持っていたペットボトルを投げ、ぽこんという間抜けな音を立てて当たるのを見た。
さよなら治崎、サイテーな男。願わくばさっさと死ね。
2022/7/10
ずっと一緒 #呪術廻戦 #夢小説 #女夢主 #五条悟
同じ海を見ていた #ワールドトリガー #夢小説 #女夢主 #木崎レイジ
同じ海を見ていた #ワールドトリガー #夢小説 #女夢主 #木崎レイジ
「ねえ、私まだ指ある?指がないと……指輪がつけられない、せっかくレイジくんがくれたのに……」
それが彼女の両親が涙ながらに伝えてくれた彼女の遺言となった言葉だった。
日常に戦いがあり、負傷があったはずなのにどこかで自分の周りの人のこととして考えることができていなかったのだな、と妙に冷静に考えている自分がいた。葬式を終えたあとは塩をまかなかった。ついてきたければ、ついてきてほしかった。
それから数日しても霊的な気配はなかったので彼女は安らかに眠ったんだろう。作ってもどうせ壊されてしまうので、ボーダーの侵攻が始まってすぐくらいから石造りの墓を作る風習は薄れ、代わりにいつでも身につけていられて、いつでも持って逃げれるという点から遺骨の炭素をダイヤモンドに変える技術が発達し、短期間で供給できるようになった。それほど沢山の人が亡くなっているということだ。技術の発達には必ず要因がある。今回の場合は死だっただけで。
彼女の両親のご好意で、ダイアモンドと一欠片いただいた。あたたかく穏やかだった彼女は冷たい石ころになってしまった。意外と涙は出ない。
突然らしくないネックレスなんて付け出した俺に何も言う人はいない。皆も知ってるんだろうか、彼女の死を。聞いてまわることでもないので黙っているが本当は誰かに話したかった。彼女の話を聞いて欲しかった。それほどに俺は今弱っているのかもしれない。大切な人を喪った、痛かっただろう、怖かっただろう。守ってやれたら、よかったのにな。
2021/1/25
「ねえ、私まだ指ある?指がないと……指輪がつけられない、せっかくレイジくんがくれたのに……」
それが彼女の両親が涙ながらに伝えてくれた彼女の遺言となった言葉だった。
日常に戦いがあり、負傷があったはずなのにどこかで自分の周りの人のこととして考えることができていなかったのだな、と妙に冷静に考えている自分がいた。葬式を終えたあとは塩をまかなかった。ついてきたければ、ついてきてほしかった。
それから数日しても霊的な気配はなかったので彼女は安らかに眠ったんだろう。作ってもどうせ壊されてしまうので、ボーダーの侵攻が始まってすぐくらいから石造りの墓を作る風習は薄れ、代わりにいつでも身につけていられて、いつでも持って逃げれるという点から遺骨の炭素をダイヤモンドに変える技術が発達し、短期間で供給できるようになった。それほど沢山の人が亡くなっているということだ。技術の発達には必ず要因がある。今回の場合は死だっただけで。
彼女の両親のご好意で、ダイアモンドと一欠片いただいた。あたたかく穏やかだった彼女は冷たい石ころになってしまった。意外と涙は出ない。
突然らしくないネックレスなんて付け出した俺に何も言う人はいない。皆も知ってるんだろうか、彼女の死を。聞いてまわることでもないので黙っているが本当は誰かに話したかった。彼女の話を聞いて欲しかった。それほどに俺は今弱っているのかもしれない。大切な人を喪った、痛かっただろう、怖かっただろう。守ってやれたら、よかったのにな。
2021/1/25
陽炎 #ポケモン剣盾 #夢小説 #男夢主
陽炎 #ポケモン剣盾 #夢小説 #男夢主
架空の誰かに向けていたとしても、彼が恋の歌を歌うのは嫌だった。どんな相手を想像して歌っているんだろう、と想像してしまうからだ。
スパイクタウンのジムを引退してからの彼は肩の力が抜けたように活動している。ライブを精力的に開催したり、バイクでその辺を走っているのを見たりする。
俺はしがない楽器屋の息子だ。
いずれこの寂れた町の小さな楽器屋を継ぐのかと思うと、気が重いのと同時に、ずっとネズのそばに居られるのだと思うとうれしく思う。
錆びたチャイムが来店を知らせる。あんな奇抜な髪あいつしかいない。
「よう、きてやりましたよ」
「おー、いらっしゃい」
「ギターできてますか」
「ああ、さっき上がったところ」
大体のチューニングはネズが行うが、細かいところは俺がやってる。その方が音がいいんだそうだ。
「そうだ、ネズ。八百屋の親父、店閉めるってよ」
「……そうですか」
一瞬のためらいがあり、受容。誰よりもこの街が発展するよう、未来につなげようとしたネズに伝えるのは気が滅入るが、いつかは知り及ぶことになるだろうと思い、伝えた。
「さびしくなりますね」
「ああ、都会の息子さんのところに行くっていうからな」
「おれが何をしても、無駄なことのように思えてきます」
「なんだ? 弱気だな」
「おまえしか聞いている人がいないからですよ」
「そっか……」
沈黙が夕日さす店内を満たしている。
この街から去る決断なんて、俺はできない。幼いころから彼のそばで彼の努力を見てきたから、最後の最後までそばに居てやりたいと決めている。
「おまえは、居なくならないでくださいよ」
「そのつもりだ。ネズがもういいっていうまで居てやるよ」
「それはそれでうっとおしいですね」
やっといつもの生意気な調子が戻ってきた。やっぱりネズはこうでなきゃ。
からん、と音を立てて珍しい来店を告げた。ネズの妹のマリィだ。今は兄からスパイクジムを継ぎ、立派に切り盛りしている。
「アニキ、素直がいいけんね」
「なんです、急に」
「ウチが知らんとでも? いつもナマエさんのこと話し「ワーッッ!!!」」
ネズから珍しく大きな声が出た。今日は珍しいことだらけだ。退屈なこの街もこの兄弟がいると華やぐ。
「俺の噂してんの? 家で?」
「そうそう、ナマエさん素敵やなって」
「またあ……」
「アニキ、素直がいいけんね」
「わ、わかりましたよ……」
「ねー、俺を置いて話さないでよー」
「すーぐナマエさんのこと話すけんね、心配せんとき」
「えーなになに」
「じゃ、邪魔者は帰るけん。アニキ、もうネチネチしたコイバナは効きたくない」
「わかりましたよ……」
「じゃあねー」
「じゃあね、ナマエさん」
「なになに、なんだったの」
「ナマエ」
「何、急に改まって」
「おまえのことがずっと好きでした」
「えっ……コイバナってそういうこと?」
「そういうことです。多分おまえは女性を好きになるだろうから、黙っていましたが、もう疲れました。一方的に想っていただけですが、返事のない恋の歌は飽きたんです」
「えっ待って、勝手に決めないでよ……急に好きって言われても実感わかないけど……ネズ、何、好きって、なに」
「教えないとわかりませんか?」
「わからないよ……俺たちずっと幼馴染だったじゃん……それとは違うの?」
「おまえはそうでないとしても、おれは違いますね。おまえにキスをしたいし、抱かれたい」
「お、おお……」
「ドブみたいな顔いろになりましたね」
「驚きがすごくて」
「はは、面白い」
「てめえ人ごとみたいに」
「ナマエ、返事は」
「イエスでお願いします……でも抱くとかはまだ保留でいいすか」
「まあ、よしとしましょう」
「ありがと……」
「でも、キスは今」
します、という言葉は俺の唇の間ではぜた。ネズの口紅がべったりうつった後解放された。
「お、おお……」
「ふふ、嫌になりましたか?」
「いや、意外と……いけるなと思いまして」
「おや、そうですか」
「やべ、ちんこ勃ってきた」
「そんな躾のなっていないちんこ、引き取り手がいませんよ」
「ネズ意外に居なくていい」
そんな情熱的なセリフが出てくるとは思わなかった。ネズが目を丸くした後なんだこいつという目で見てくる。
高く結ったネズの髪を解いて、俺からキスをした。友達だったとか、恋人になったとかどうでもいい。ただこいつを愛しいと思った。
2022/2/26
架空の誰かに向けていたとしても、彼が恋の歌を歌うのは嫌だった。どんな相手を想像して歌っているんだろう、と想像してしまうからだ。
スパイクタウンのジムを引退してからの彼は肩の力が抜けたように活動している。ライブを精力的に開催したり、バイクでその辺を走っているのを見たりする。
俺はしがない楽器屋の息子だ。
いずれこの寂れた町の小さな楽器屋を継ぐのかと思うと、気が重いのと同時に、ずっとネズのそばに居られるのだと思うとうれしく思う。
錆びたチャイムが来店を知らせる。あんな奇抜な髪あいつしかいない。
「よう、きてやりましたよ」
「おー、いらっしゃい」
「ギターできてますか」
「ああ、さっき上がったところ」
大体のチューニングはネズが行うが、細かいところは俺がやってる。その方が音がいいんだそうだ。
「そうだ、ネズ。八百屋の親父、店閉めるってよ」
「……そうですか」
一瞬のためらいがあり、受容。誰よりもこの街が発展するよう、未来につなげようとしたネズに伝えるのは気が滅入るが、いつかは知り及ぶことになるだろうと思い、伝えた。
「さびしくなりますね」
「ああ、都会の息子さんのところに行くっていうからな」
「おれが何をしても、無駄なことのように思えてきます」
「なんだ? 弱気だな」
「おまえしか聞いている人がいないからですよ」
「そっか……」
沈黙が夕日さす店内を満たしている。
この街から去る決断なんて、俺はできない。幼いころから彼のそばで彼の努力を見てきたから、最後の最後までそばに居てやりたいと決めている。
「おまえは、居なくならないでくださいよ」
「そのつもりだ。ネズがもういいっていうまで居てやるよ」
「それはそれでうっとおしいですね」
やっといつもの生意気な調子が戻ってきた。やっぱりネズはこうでなきゃ。
からん、と音を立てて珍しい来店を告げた。ネズの妹のマリィだ。今は兄からスパイクジムを継ぎ、立派に切り盛りしている。
「アニキ、素直がいいけんね」
「なんです、急に」
「ウチが知らんとでも? いつもナマエさんのこと話し「ワーッッ!!!」」
ネズから珍しく大きな声が出た。今日は珍しいことだらけだ。退屈なこの街もこの兄弟がいると華やぐ。
「俺の噂してんの? 家で?」
「そうそう、ナマエさん素敵やなって」
「またあ……」
「アニキ、素直がいいけんね」
「わ、わかりましたよ……」
「ねー、俺を置いて話さないでよー」
「すーぐナマエさんのこと話すけんね、心配せんとき」
「えーなになに」
「じゃ、邪魔者は帰るけん。アニキ、もうネチネチしたコイバナは効きたくない」
「わかりましたよ……」
「じゃあねー」
「じゃあね、ナマエさん」
「なになに、なんだったの」
「ナマエ」
「何、急に改まって」
「おまえのことがずっと好きでした」
「えっ……コイバナってそういうこと?」
「そういうことです。多分おまえは女性を好きになるだろうから、黙っていましたが、もう疲れました。一方的に想っていただけですが、返事のない恋の歌は飽きたんです」
「えっ待って、勝手に決めないでよ……急に好きって言われても実感わかないけど……ネズ、何、好きって、なに」
「教えないとわかりませんか?」
「わからないよ……俺たちずっと幼馴染だったじゃん……それとは違うの?」
「おまえはそうでないとしても、おれは違いますね。おまえにキスをしたいし、抱かれたい」
「お、おお……」
「ドブみたいな顔いろになりましたね」
「驚きがすごくて」
「はは、面白い」
「てめえ人ごとみたいに」
「ナマエ、返事は」
「イエスでお願いします……でも抱くとかはまだ保留でいいすか」
「まあ、よしとしましょう」
「ありがと……」
「でも、キスは今」
します、という言葉は俺の唇の間ではぜた。ネズの口紅がべったりうつった後解放された。
「お、おお……」
「ふふ、嫌になりましたか?」
「いや、意外と……いけるなと思いまして」
「おや、そうですか」
「やべ、ちんこ勃ってきた」
「そんな躾のなっていないちんこ、引き取り手がいませんよ」
「ネズ意外に居なくていい」
そんな情熱的なセリフが出てくるとは思わなかった。ネズが目を丸くした後なんだこいつという目で見てくる。
高く結ったネズの髪を解いて、俺からキスをした。友達だったとか、恋人になったとかどうでもいい。ただこいつを愛しいと思った。
2022/2/26