同じ海を見ていた #ワールドトリガー #夢小説 #女夢主 #木崎レイジ

「ねえ、私まだ指ある?指がないと……指輪がつけられない、せっかくレイジくんがくれたのに……」
それが彼女の両親が涙ながらに伝えてくれた彼女の遺言となった言葉だった。

日常に戦いがあり、負傷があったはずなのにどこかで自分の周りの人のこととして考えることができていなかったのだな、と妙に冷静に考えている自分がいた。葬式を終えたあとは塩をまかなかった。ついてきたければ、ついてきてほしかった。
それから数日しても霊的な気配はなかったので彼女は安らかに眠ったんだろう。作ってもどうせ壊されてしまうので、ボーダーの侵攻が始まってすぐくらいから石造りの墓を作る風習は薄れ、代わりにいつでも身につけていられて、いつでも持って逃げれるという点から遺骨の炭素をダイヤモンドに変える技術が発達し、短期間で供給できるようになった。それほど沢山の人が亡くなっているということだ。技術の発達には必ず要因がある。今回の場合は死だっただけで。
彼女の両親のご好意で、ダイアモンドと一欠片いただいた。あたたかく穏やかだった彼女は冷たい石ころになってしまった。意外と涙は出ない。

突然らしくないネックレスなんて付け出した俺に何も言う人はいない。皆も知ってるんだろうか、彼女の死を。聞いてまわることでもないので黙っているが本当は誰かに話したかった。彼女の話を聞いて欲しかった。それほどに俺は今弱っているのかもしれない。大切な人を喪った、痛かっただろう、怖かっただろう。守ってやれたら、よかったのにな。

2021/1/25