うつくしく散る姿こそ #ヒロアカ #夢小説 #女夢主 #スターアンドストライプ
「ちょ、ちょっと待ってよキャシー。シガラギとがいうやつが日本で暴れてるのは知ってるわ。大変なんだってね。でもそれをなんでアメリカの国防の要であるあなたが助けないとならないの」
学生時代からの恋人であった私とキャシー。それが日本とかいう小さな島国で起きているゴタゴタのために亀裂が走っていることに苛立ちを隠せなかった。
そんな私をキャシーは悲しい目をして見ていた。そんな目で私を見ないでほしい。あなたはひだまりの中で静かに笑っているのが一番似合うのに。
「ナマエ、あなたがそんなことをいう人だとは思わなかった」
「で、でもキャシー、あなたの師匠とかいう人がどうにかしてくれるよきっと。あなたが出る幕じゃない」
「師匠は力を失っている。私しかいないんだ。怖い目にあっている人を、私は放っておけない」
「日本にだってヒーローはいるよ。けど、キャシーあなたの代わりはどこにもいないんだから、ねえお願いやめて」
「ナマエ、コスチュームを隠したでしょう。あれでなくてもいいけど、できればあれがいいんだ」
「……キャシー。あなたの個性がもっと凡百の物だったらよかったのに」
「そうだったら、あの時ナマエを助けることもなかったし、私たちが恋仲になることもなかったよ、きっと」
「そんなことない。私はあなたの個性を愛したんじゃなくて、あなたそのものを愛したのに」
「私と個性は切り離せないよ…… ナマエ、そろそろ行くね」
「バカッ……ちゃんと戻ってこなかったら許さないんだからねッ……」
「泣かないで、ナマエ……」
やさしくあたたかな私にキスをくれたキャシーは、髪の毛一本、骨の一欠片も残さず死んでしまった。シガラギは倒せなかったが、弱体化はできたという。
正しさを執行するという脳味噌がアドレナリンでひたひたになっている正義中毒のバカが一人いなくなっただけなのに、私は寂しくて仕方ない。彼女が残した歯ブラシ、殉職で特進してもらった勲章、そしてお揃いで買ったネックレスだとかが私の中に楔のように穿ち続ける。
彼女を運んだ戦闘機乗りの方々に、彼女が散ったという海へ連れていってもらった。暗澹として冷たい海。その海水を瓶に汲んで、墓にかけてみたら少しはあの空っぽの墓に信憑性が出るかなと思っていたけど、何にもなかった。どんなにいとしい人であれ、死んでしまったら失ってしまったらそれまでなのだと私は身を以て知った。
「さよなら」
私は誰にも聞こえないような小さな声で別れを告げた。私の中のケジメをつけるために、キャシーがもういなくなってしまったんだと自分の中に刻むように、静かに。日本の人々は、ヒーローぐらいしか彼女が自国のために死んでいったと知る人はいないだろう。それがどうにも悔しかったけど、恩着せがましく宣うのはきっとキャシーは嫌がるだろうから黙って帰ることにした。まだ瓦礫の山や、愛する人の死など傷だらけの人たちばかりだったけど、諦めようとしてはいなかった。
ひだまりの中、赤ん坊がお父さんに抱かれて笑っている。炊き出しの列は途切れないけど、絶望のあまり道端で座り込む人に食べ物を渡す人がいる。彼女が守った幸せたちが、この小さな島国で芽吹き始めているのを見届けて、私は日本を去った。
2022/10/15
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傷つく君は人間だったね #ヒロアカ #夢小説 #女夢主 #スターアンドストライプ
傷つく君は人間だったね #ヒロアカ #夢小説 #女夢主 #スターアンドストライプ
「それはあなたが女の子だからだよ、キャシー」
「…… ナマエ、もうそれを言うのはやめて」
この言葉がいちばんキャシーを傷つけることがわかっていて、私は言葉を重ねる。それでもキャシーは私から離れていかないと驕り昂り、私は言葉を連ねる。
「でも、本当のことだよ。次は死んじゃうかもしれない。あなたが憧れている師がいるのはわかるけど、その人は男の人で、わたしたちとは違うんだよ」
「何も違わない。性別のせいにしてなにもかもあきらめているのは名前の方だよ」
「昔々、オリンピックっていうスポーツのお祭りがあったというじゃない。あれはなぜ男女で別れていたかわかる?男と女には埋めがたい差があるからだよ」
「…… ナマエはそうやって諦める理由を捏ね回していればいいさ」
呆れたように吐き捨てて、私との会話を終えるキャシー。そんなキャシーが次の日には髪の毛一本残さず死んでしまうなんて誰が想像するだろう。
日本のヴィランは日本のヒーローに任せておけばいいし、日本が産んだ怪物をアメリカが助けてやる義理はないと何度も言ったはずなのに、キャシーは師のために、日本のために、世界のために美しく散っていった。
日本にはカミカゼという言葉があるらしい。国難に神が風を吹かせて救ってくださるらしい。ならばなぜキャシーの死に際吹いてくださらなかった。
放っておいてもカミカゼだなんだと言いながら滅んでいく民族のことなんか知ったことじゃない。
でも、こんな理屈キャシーは一笑に付して戦闘機に立ち、困っている人がいるから助けに行くだなんて自己犠牲のお笑い草にみずからなりにいく。
そんなところが好きなんだけど、死んでしまったら何にもならないじゃない。軽すぎる棺にキャシーは宿っただろうか。魂くらいは、帰ってきてほしいものだけど。
お題は天文学様より
2022/7/13
「それはあなたが女の子だからだよ、キャシー」
「…… ナマエ、もうそれを言うのはやめて」
この言葉がいちばんキャシーを傷つけることがわかっていて、私は言葉を重ねる。それでもキャシーは私から離れていかないと驕り昂り、私は言葉を連ねる。
「でも、本当のことだよ。次は死んじゃうかもしれない。あなたが憧れている師がいるのはわかるけど、その人は男の人で、わたしたちとは違うんだよ」
「何も違わない。性別のせいにしてなにもかもあきらめているのは名前の方だよ」
「昔々、オリンピックっていうスポーツのお祭りがあったというじゃない。あれはなぜ男女で別れていたかわかる?男と女には埋めがたい差があるからだよ」
「…… ナマエはそうやって諦める理由を捏ね回していればいいさ」
呆れたように吐き捨てて、私との会話を終えるキャシー。そんなキャシーが次の日には髪の毛一本残さず死んでしまうなんて誰が想像するだろう。
日本のヴィランは日本のヒーローに任せておけばいいし、日本が産んだ怪物をアメリカが助けてやる義理はないと何度も言ったはずなのに、キャシーは師のために、日本のために、世界のために美しく散っていった。
日本にはカミカゼという言葉があるらしい。国難に神が風を吹かせて救ってくださるらしい。ならばなぜキャシーの死に際吹いてくださらなかった。
放っておいてもカミカゼだなんだと言いながら滅んでいく民族のことなんか知ったことじゃない。
でも、こんな理屈キャシーは一笑に付して戦闘機に立ち、困っている人がいるから助けに行くだなんて自己犠牲のお笑い草にみずからなりにいく。
そんなところが好きなんだけど、死んでしまったら何にもならないじゃない。軽すぎる棺にキャシーは宿っただろうか。魂くらいは、帰ってきてほしいものだけど。
お題は天文学様より
2022/7/13