地獄 #カップリング #ヒロアカ #荼炎 #燈炎

 死んだ後にも地獄があるなら、これ以上の苦しみが待ち受けてるってことなのか。
 
 俺が想像できる苦しみはすべて受けたと思う。
 
 
 
 望んでいた機能を持ち合わせていないがために見捨てられる不安。
 
 持たざるものとして生きなければならないと選択を押し付けられるみじめさ。
 
 そして、文字通り身を焼く苦しみ……お父さんは知ってるのかな。火が燃え移ったことにパニックになって大きく息を吸い込んでしまい……そして、内臓が燃えて……モツにも神経って通ってるんだぜ?
 それに助かってからもじくじくと痛む深いやけど……お母さんの個性のおかげでマシなのかもしれないけど、それでも。
 
 環境的に恵まれた幼少期とは違い、泥水を啜り食べ物も満足になく、そして腐った人間に媚びないと今日の寝床すらない、お父さんからは見えない……見ようともしない沈殿物としての生活。ここはみじめとか痛いとか苦しいとかより、怨みが俺を形作ってくれていたから、あんまり大変じゃなかった。いや、大変じゃなかったというより、痛みを感じる器官もあの日瀬古渡で焼けてしまったんだ。
 
 それに、同じく怒りや悲しみ、そして恨みを抱えたやつらと出会えた。
 陳腐な結束でまとまってる奴らだったけど、社会のあぶれ者といると少しだけ気が楽になった。大人たちが連綿と作り上げた社会からこぼれ落ちたフツウになれなかったやつらたちといると、もしかして俺が雄英に入っていたらこうやってクラスメイトたちとくだらない話をしたりしたかなと不毛な妄想に浸ったりできた。
 友情とか全然感じてなかったはずなのに、つまらない死に方したやつらのことを思い出しては少しだけしんみりとすることもあった。俺にちょっとの人間らしさ、年相応の人間らしさを与えてくれたのは、もう名前も顔も思い出せないあいつらなのかもしれない。
 
 それでも、俺の人生は間違いなく地獄だった。死んだ後もこれ以上の苦しみがあるなんてあまりにも酷じゃないか。まあでも、コロシはコロシだもんな。
 どんな地獄だろうな。弱って死を待つだけになったお父さんは罪を償うポーズだけは上手くて甲斐甲斐しく世話焼いてくれてるけど、それをまたお母さんに押し付けて誰かのためのヒーローになる、とか。そんで、俺はお父さんにブチ切れる個性もなくただ弱って死んでいく。マジで最悪。
 でも、お父さんはヒーローだけど天国にはいけない。子供と妻をこんなにも苛んだんだから。轟家の中で地獄に行くのは俺とお父さんくらいだろうし、地獄でもいいや。お父さんも地獄でいいよね?まぁ回答権は無いんだけど……
 俺とお父さん、誰もいない地獄でもう一回親子をやろう。死んでも、ずっと一緒。かわいくて頑張り屋さんの俺のお誘いを無視したんだからそれくらい、いいだろ?