#MHA / #八百万百
ヤオモモ←夢主
ももちゃんは、いつもわたしと一緒にいてくれるのだと思っていた。
大きなおうちは素敵な家具で満たされていて、お洋服もいつだってきれい。白い服は白いまま着ている。
ももちゃんは物知りだから、ばかなわたしが何を聞いても絵付きの辞典をめくってわかりやすく教えてくれた。ももちゃんがいたから中学校を卒業できたのだと思う。
ももちゃんはヒーローになるという。
あぶないよ、ももちゃんは博士になったらいいよというわたしに、ナマエさんが困った時に助けてあげたいんです。って言った。
そんなの社交辞令だと思うけと、少しだけ信じることができた。
ももちゃんのことを体育祭の時こっそり見ていた。すごい。頭も良く、かっこいい、強くて優しい。神は二物以上のものを与えたんだと思う。
他の世界のひとになっちゃったんだな、と思った。そもそも同じ世界のひとじゃなかったけど、かみさまみたいなももちゃんが気まぐれで下界におりてきていただけなんだと思う。そんなこと聞いたらやさしいももちゃんは悲しむと思う。
でも私がももちゃんのことをもっと悲しませることができるとしたら?
「ももちゃん、人を殺したことある?」
「まさか……ナマエさん?」
「そう、ナマエだよ。ずっとももちゃんより劣ってた、わたし」
「劣ってなんか……ッ!」
「やさしいね、ももちゃん。でもさよなら。わたしかあなた。どちらかが死ぬしかないの」
「……捕らえます」
「やってみなよ」
クスリの力で得たものはすぐになくなってしまった。ほぼ無個性に近い私が何かできるだなんて思ったのがばかだったのかもしれない。
「ナマエさん……罪を償って、またわたしと」
「……ももちゃんは、ばかだね」
「ばかでいいです。また一緒にお泊まり会しましょうね。眠るのを怖がったナマエさんか眠るまでお話しきかせて差し上げます」
「……まっててくれる?」
「もちろんです」
まっすぐな瞳は強くやさしいももちゃんのままだった。変わったのは私だけだったのかもしれない。
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