「エマちゃん、俺ドラケンくんとエマちゃんの子供に生まれたかった」
「どうしたどうした?」
春風があたたかい、アフタヌーンティにはちょうどいい季節。なぜかエマちゃんに呼び出されケーキセットを突いている俺は、突然そんなことを言ってしまった。
エマちゃんは突然の告白に動揺こそしたものの、ひいたわ、などの暴言はしまっておいてくれている。
「なんでウチと、その、子供になりたいの?」
「俺さ、ドラケンくんとエマちゃんのこと二人ともすごく大好きでさ」
ざ、と葉擦れの音が決死の呟きをさらっていく。けれど届けたい人の一人には確実に届いているという緊張感が全身を走るのがわかる。
「大好きな二人の子供になれたら、俺は幸せになれるんだと思うんだ……」
「ウチが親になるってこと?」
「そう……あとドラケンくんがお父さん」
「ちょっと想像つかない。いい父親になれるかな」
「なれるよ。二人ならなれるよ。子供ができるだけじゃ親になれないと思う。うちの親みたいに」
「じゃあ、どうやって良い親になるの?」
「お父さんがお母さんのことを本当の意味で大好きで、お母さんもそうなの」
「ふーん……」
「そんな二人の間で笑っていたいな……」
「晋が死んだあと、そうなるってこと?」
「うん。俺生まれ変わりを信じてるから、そうなれるなら死んでもいい」
「やめなよ。ウチは晋が死んだら悲しいよ」
「ありがとう、エマちゃん」
俺だって、二人が死んでしまって悲しいよ。二人の親を亡くしたみたいな悲しさは、二度とこんな悲しくならないような、内臓の一部に心があるとしたら、引き裂かれたまま戻らなくなっちゃった気がするくらい。
泣きながら二人の写真を抱えて寺に行ったよ。坊主に諭されて、線香を買った。花を買った。二人が神様の元に運ばれて花いっぱいの、何も苦しみのない世界で俺を待っていてくれていると信じて。
