ケームショに入れるだなんだとやりあっているのをどこか他人事のように聞いていた。その結果お父さんが俺を引き取って暮らすときいて笑ってしまった。失敗作だと捨てたくせに燃え滓になってから拾っても意味ないんだよ。

あれだけ人を殺しても、引き取り手がいるとシャバの空気を吸えちゃうんだなと思った。
三方ってアマゾンに売ってるんだな、というのが正直な感想だった。三方っていうのは時代劇とかで切腹する人が使う刀を乗せているあの台のこと。
三方にのせた短刀を、足でぐいと押しつけると目に見えて焦っている。こんなにあわてるのを見るのは俺が燈矢だと知った時以来か。

「どうしたの、お父さん」
「と、燈矢」
「燈矢はもう死んだんだよ」
わざとお父さんと呼ぶと、一瞬明るい表情になったのが気に障ったのでわざと神経を逆撫でするようなことを言った。その言葉でまた辛そうな顔になるのがもっとうれしかった。笑顔のことを花がほころぶような、なんて例えるけど花が褪せて萎れていく様に喩えたいくらい未来のない顔。でも誰にも見せてやらない。やっと俺のものになったのだから。
震えながら指が短刀の柄にふれて、掴んだ。今死なれても、まだ贖罪には至らない。けど荒い息を短く吸って、腹に刀身を差し入れた心意気は買ってやってもいい。
「許されたなんて思うなよ」
ホッとしたような顔をしやがったので釘を刺しておいた。俺が保護観察処分となってから、鍵付きの厚い壁の檻に程なく近い部屋に入れて監禁しておきながらわざわざ自分で食べ物を運んでくるものだから、少しいじってみたくなって。かわいそうな父親ぶってんじゃねえぞと念押ししたくて。外から見たら道を間違えたかもしれないけど反省して献身的に尽くす父親に見えているんだろうけど冗談じゃない。
これから時間をかけてじっくり締め殺すんだから待っててよ。お父さん。

2022/7/26 wavebox